もう一つの自民党総裁選。自民党の派閥解体はさらに進展するか?台頭する自民党維新の動き。(じじ放談 | 日本のお姉さん

もう一つの自民党総裁選。自民党の派閥解体はさらに進展するか?台頭する自民党維新の動き。(じじ放談

ようちゃん、おすすめ記事。↓

▼もう一つの自民党総裁選。自民党の派閥解体はさらに進展するか?台頭する自民党維新の動き。(じじ放談)
自民党総裁選挙は9月12日告示、22日投票が決まった。本命は我が麻生太郎といわれるが、政治の世界は「一寸先は闇」というから、結果は下駄をはくまで分からない。新自民党総裁・総理の役割は「選挙管理内閣」である。速やかに衆議院を解散して、政権構想の是非を国民に問い審判を仰ぐことになる。結果、国民の支持を得られれば政界再編を主導して本格的な組閣を行うことになる。筆者は麻生太郎を密かに応援してきた。「いよいよ大願成就か」と感じていないといえば嘘になる。テレビや新聞には「麻生太郎の対抗馬は誰か?」「上げ潮派の後押しで小池百合子は立候補するか?」などの憶測報道が氾濫している。庶民の関心は「誰が総裁になるか?」であるから、商い第1のメディアが、庶民のニーズに応じて候補者になるかもしれぬ人物を追いかけ取材するのはやむをえない。だが、「自民党総裁選」には別の側面もある。
歴代自民党総裁は「総理大臣に就任し絶大な権力を振るう」というウマミがあったから、総裁選となれば、「敵味方が死力を尽くして戦った」ものである。最も有名なのが、田中角栄が数百億円を投じて自民党国会議員を買収し、福田赳夫に逆転勝ちした」とされる「角福戦争」である。当時は中選挙区制であったから、派閥は「選挙応援」や「カネ」の面倒をみた。正月には「モチ代」と称して、子分1人当たり数百万円を配る等、きめ細かに面倒をみたものである。親分(派閥の首領)の日頃の恩顧に感謝すべく子分は、親分の指示・命令に従って総裁選に臨んだ。「義理と人情」の貸し借り関係が自民党国会議員の骨髄に達していた。派閥に所属する自民党国会議員は首領への義理を第1とし、国民への義務を第2とみなした。順番を間違えると「ムラ」では生きていけない。政治資金規正法の改正で、派閥の集金能力が低下し、幹事長を初めとする執行部がカネの面倒を見るようになった。さらに小選挙区制の導入で、派閥の力だけでは当選することができなくなった。「カネと選挙」の面倒を見ることができない派閥の首領にとって「大臣、副大臣、官房副長官、総理補佐官、政務官」等政府の役職や党役員ポストに子分を押し込むことが唯一の仕事になった。小泉純一郎は閣僚を指名するにあたり「派閥の推薦は受けない」との原則を打ち出した。派閥の力を削ぐためである。小泉後継の安倍晋三はこれに加え「派閥横断のチャレンジ議連」を立ち上げ、総裁選挙における派閥の力を押さえこんだ。「選挙とカネと人事」に関して面倒を見ることができなくなった派閥は息も絶え絶えとなった。小泉と安倍の6年で推進された「派閥解体」の作業は、安倍首相の健康悪化による突然の辞任で一歩後退した。派閥の首領は「捲土重来」この機会を逃さず、「失地回復」「起死回生」の策動に出た。これが前回の自民党総裁選における「福田擁立劇」である。前回の自民党総裁選は、麻生派を除く全派閥の首領が「福田擁立」で動いた。音頭をとったのが清和会の森喜朗、古賀派の古賀誠、山崎派の山崎拓である。「派閥の出番」を求めていた中小派閥の首領はわれ先に「福田擁立船」に飛び乗った。見事、「派閥談合による福田総裁」を誕生させることができた。派閥の勢いが復活したかに見えた。

第1.派閥の勢いが(一時的に)復活した背景を読み解く
派閥の談合という自民党の「悪しき風習」が復活したのは、安倍晋三の突然の辞任という特殊事情があったからだ。前回の総裁選当時、派閥横断の安倍軍団が機能不全に陥っていた。安倍軍団を束ねる安倍晋三は病気で入院していた。「施政方針演説直後に政権を放り出す」という未曽有の不始末を仕出かしたことで安倍晋三は「謹慎蟄居処分」に付され病院に幽閉された。指導者を失った安倍軍団は統一した行動がとれなくなった。かろうじて、安倍軍団の副将中川昭一(伊吹派)と参謀甘利明(山崎派)、菅義偉(古賀派)などが麻生太郎陣営に馳せ参じ参戦しただけである。安倍軍団が指導者不在で統一した行動をとれなかったことが、派閥首領の跳梁跋扈を許した最大の原因である。特に、最大派閥清和会(町村派)は、安倍晋三を病院に幽閉・隔離して発言を差し止めた上、外部との連絡を遮断した。加えて派閥内の締め付けを強化した。安倍晋三の動きを抑え込み、清和会(町村派)を「福田総裁」一本でまとめ上げることに成功した。清和会(町村派)の動向を窺っていた他の派閥が「福田擁立」に走った。「勝ち馬」に乗って戦後の恩賞に与ろうという魂胆である。

第2.安倍晋三の病気回復と安倍軍団の活動再開
安倍晋三が活動再開した。町村派の古参議員や反安倍の筆頭加藤紘一などは「活動再開が早すぎる。3年や5年は謹慎・蟄居すべきだ。騒ぎすぎる」と批判した。安倍晋三は、平沼赳夫や中川昭一らとの研究会に出席するほか、古賀派の丹羽や塩崎等との勉強会の座長に就任した。派閥を超えた活動を再開し、安倍軍団の再編・強化に乗り出した。自民党最大派閥町村派(清和会)には、安倍を慕う中堅・若手が少なくない。安倍の派閥横断型活動を見て、派閥の首領森喜朗は、町村派(清和会)の分裂を恐れた。派閥分裂を危惧する森喜朗と中川秀直は安倍晋三の派閥復帰を勧誘し続けた。森と中川秀直の説得が実を結び、安倍晋三は派閥に復帰した。「中川秀直より下位での復帰」という条件をつけ「相談役」に就任した。
「相談役」というのは、代表世話人である中川秀直や町村信孝の下位である。安倍晋三を派閥に復帰させることに成功した森喜朗は「派閥の分裂を回避できた」と頬をふくらませニンマリした。

第3.自民党の派閥解体はさらに加速するか?
9月3日付け日本経済新聞は「総裁選:町村派(清和会)は自主投票」と題する以下の記事を掲載した。
(1)最大派閥である町村派(清和会)は2日夜、森喜朗元首相、安倍晋三前首相、町村信孝官房長官、中川秀直元幹事長が都内で会談し、支持候補の一本化はせず自主投票で臨む方針を決めた。

(2)津島、古賀両派も現状では独自候補の擁立には動かず慎重に情勢を見守っている。

なお、3日のテレビニュースで森喜朗は「自主投票という意味は、今回の総裁選挙には清和会(町村派)の候補は出さないということだ。派閥がまとまって行動するという原則を変えた訳ではない。」旨の弁解をした。解説者は「清和会は一致団結して麻生候補を支援するという意味だろう」と述べていた。
理由はいろいろあろうが、今回の自民党総裁選では「派閥が跳梁跋扈する」可能性は消えた。首領各位は派閥の分裂を防ぐため、やむを得ず「自主投票せざるをえない」立場に追い込まれた。派閥横断組織である安倍軍団が動き出せば、最大派閥の町村派(清和会)でも分裂は必至だ。派閥の首領は危険を犯すことはできない。下手な行動をとれば、安倍軍団に与する二番手の謀反を誘発し、派閥から放逐される。安倍軍団の副将である中川昭一は伊吹派の会長代行、古賀派の菅義偉は古賀派の中堅・若手に絶大な影響力を持っている。山崎派の甘利明は派閥を二分する勢いがある。その他、古賀派の塩崎元官房長官、山崎派の石原元国土交通大臣等、安倍軍団には自民党中堅層の実力者がそろっている。つまり、安倍軍団が活動再開すれば、個人商店である二階俊博グループを除く全派閥が分裂し崩壊する可能性が高いのである。「派閥談合による福田康夫擁立」というのは、安倍晋三の病状悪化による突然の辞任と入院治療という異常事態が生んだ特殊な現象であって、自民党の派閥が全体として復活・再生したと見るべきではない。派閥は分裂と溶解の過程にある。今回の総裁選は「だめ押し」となる可能性をはらんでいる。

第4、「上げ潮派」の中川秀直は小池百合子を擁立できるか?
利権や女性問題で醜聞が絶えない中川秀直は国民的人気が皆無である。本人が一番知っている。そこで、大衆に受けがよい小池百合子を前面に立て「一戦交える」動きを見せている。旗印は小泉内閣が唱道した「規制緩和と自由主義経済のさらなる推進」である。一言でいうと「経済を活性化して税収を増やす」という路線である。小泉構造改革は、外資とりわけ欧米の金融資本に「濡れ手に粟」のぼろもうけをさせたから、欧米諸国には人気がある。トヨタをはじめ輸出で稼ぐ大企業もこれに賛同している。輸出企業の広告で食っている日本経済新聞も「小泉路線復活」に期待を寄せる論調を掲げている。「上げ潮派」に対する内外の期待があるから、中川秀直・小池百合子も「不戦敗」という訳にはいかない。「負け戦」覚悟で出馬し戦うほかはない。

第5.石原伸晃は出馬するか?
所属する山崎派は、甘利明が押さえているから、総裁候補となる推薦人20人を山崎派内で確保するのは困難である。だからこれまで石原伸晃は「浮かない顔」をしていた。発言も慎重であった。本日夕方のテレビニュースで石原伸晃は満面に笑みを浮かべ「明日、塩崎恭久元官房長官らと相談して結論を出す」と語っていた。推薦人20人確保のメドが立ったのかもしれぬ。ということは、安倍軍団の一部を割いて、石原伸晃擁立を実現するという構想かもしれぬ。

第6、自民党総裁選を構想する
今回の総裁選挙は「役者をとり揃え、政策論争を中心に、明るく華やかにやる」ことが至上命題となっている。だから、強力なライバルが数名登場することが望ましい。麻生太郎後援会長の鳩山邦夫前法相が「勝ち過ぎはダメ。厳しく競い合って勝つのが望ましい」と主張するのは正解である。悪役が強ければ強いほど、ヒーローは輝く。映画の世界だけではなく、現実世界でも真実だろう。聴衆から見て「ハラハラドキドキ」させる緊迫感がなければ楽しくない。大衆が「固唾をのむ」ほどのストーリーでなければ、興味と関心を持続してもらえない。暗すぎても飽きられる。適度なユーモアが含まれていなければならぬ。という訳で、麻生陣営は「2・3目残して勝つ」程度の碁を打つべきだろう。相手の陣営に塩を送ることで、雰囲気を盛り上げる配慮も大事だ。相手陣営の士気が萎えないよう、できれば複数の陣営が立ち上がるよう側面的に支援すべきである。「枯れ木も山の賑わい」というから、中堅で、将来有望な数名の候補者が登場した方が面白い。1対1ではギスギスするし後遺症が残る。

第7.小泉元首相が「現段階では静観する」と語っている意味は?
前回の総裁選挙で、同じ釜の飯を食った「福田康夫」をいち早く支持する旨の意見表明を行った小泉純一郎が今回は不思議な動きをしている。筋からいうと小泉純一郎は「規制緩和の小泉路線継承」を掲げる中川秀直・小池百合子を応援すると見るのが自然だ。あるいは、「小泉チルドレン」の旗頭となってもおかしくない。麻生太郎は「小泉内閣の5年」で発生した弱者切り捨て路線の見直しを公言しているから、小泉純一郎が麻生陣営に馳せ参じるとは考えにくい。だが、安倍晋三も、麻生太郎も小泉純一郎が抜擢し重用した人物である。麻生太郎や安倍晋三の今日あるのは「小泉純一郎のおかげ」でもある。今回の総裁候補といわれている各位は(郵政造反組の野田聖子を除いて)おおむね小泉純一郎と縁の深い人物である。小泉が最も寵愛し抜擢した安倍晋三が「麻生・安倍軍団」を結成しているから、小泉も心の整理をつけ難いのであろう。忠節を尽くす中川秀直、可愛いい小泉チルドレン。身体は一つしかないから小泉純一郎も困惑しているのだろう。「沈黙は金」を守るのが「最上の策」と考えているのかもしれぬ。
ーーーーーーーーーーーー
(まとめ)
今回の自民党総裁選で、麻生太郎、小池百合子、石原伸晃が立候補するならば、面白い組合せとなる。表面上は小池と石原が「小泉路線継承派」といえるかもしれぬ。我が麻生太郎は「当面、国民生活保護を第1」とした方針を打ち出している。小泉の5年で、大企業は内部留保を急増させ裕福になった。長年の低金利政策で大衆から銀行に富を移転させた結果、銀行も不良債権を処理できた。その代わり国民大衆の窮乏化がさらに深化した。これ以上、「国民生活軽視」の小泉路線を続けるならば、国民は黙っていない。先の参議院選挙で自民党が大敗したのは、小泉内閣5年と安倍内閣1年に対する国民の怒りが爆発したものと考えてよい。現象的には「年金と閣僚の不祥事」並びに「相次ぐ強行採決」が安倍内閣の支持率を低下させたのであるが、国民大衆は「国民生活を犠牲にした小泉・安倍内閣」への怨念を蓄積してきた、というべきである。だから、国民大衆は小沢一郎の「バラマキ公約」に希望を託したのだ。今回の自民党総裁選の候補者は確定していないから、論評するのは早すぎる。派閥の首領には「声がかからない」ことは明白である。派閥の推薦で立候補するのは麻生太郎だけであろう。麻生派はわずか20人、派閥といえるほどの勢力ではない。派閥横断の支援がなければ、当選ラインに達することは不可能だ。中川秀直は安倍晋三の盟友、小池百合子は安倍内閣で防衛大臣に抜擢された。いずれも深い因縁がある。先日、安倍晋三は「中川秀直の規制緩和、パイを大きくする経済成長戦略」について、賛同する旨の秋波を送った。石原伸晃は第二次安倍内閣時代、自民党政調会長に抜擢された。安倍とは塩崎恭久らと共に勉強仲間である。麻生太郎が前回の総裁選挙で大躍進できたのは、安倍軍団の主要メンバーが陣営に馳せ参じたためである。安倍は麻生太郎が最も頼りにしている盟友となった。以上、今回の総裁選においていかなる結論が出ようとも、派閥横断型安倍軍団の影響力が増すことは避けられない。反比例して、派閥(首領)の権限と力はさらに限定的なものとなる。
自民党の体質改善は、福田内閣誕生で一時停止したが、再び加速し始めた。総裁選は自民党の健康状態を図るバロメーターである。派閥横断の安倍軍団が自民党全体に影響力を行使できるようになる時、派閥は死亡宣告を受ける。自民党の再生を意図する「平成維新」の動きが再開した。武田信玄が実父と側近らの旧守派を放逐し強大な「武田軍団」を建設したように、自民党も「派閥のための政党」から「真の国民政党」に脱皮できるか。期待を持って見守りたい。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~