ロシアは世界の政治地図を測るリトマス試験紙。(じじ放談)
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▼ロシアは世界の政治地図を測るリトマス試験紙。ロシア軍のグルジア侵攻が変える世界の政治地図を読み解く。(じじ放談)
ロシアが米国の一極支配に反抗し敵対してくれるから、世界の政治地図が見えやすくなった。世界は今「帝国以後」の世界を巡り、大国は勢力圏争奪戦を、弱小国は「どの勢力に与すれば生き残れるか」を模索する段階になった。グルジア問題は、キューバ危機以来45年ぶりに米国とロシアが直接対決する構造となった。衰退する覇権国家米国に勝負を挑む新興大国ロシアという図式だ。サル山のボス猿(米国)の力の衰えを見て、若い猿(ロシア)が挑戦しているとみなしてよい。以下、ロシア軍がグルジアに侵攻したことを契機として顕在化した米国とロシアの対立を軸にして、世界の政治地図を分析してみたい。グルジア問題はヨーロッパにおいて最大の関心事である。我が国から見ると「遠い異国での出来事」であるから関心は薄い。我が国の原油供給に直接の影響はないから、我が外務省は「余裕綽綽」で高見の見物である。いかなる国家といえども、国益と関係が薄い問題について「省エネ」で臨むのはやむをえない。
第1.米国の一極支配を拒否するロシアと中国
目下のところ、ロシアと中国は上海協力機構という準軍事同盟の盟友である。定期的に「合同軍事演習」を開催している。特に、ロシアと中国は「米国の一極支配を掘り崩したい」との強い願望を共有している。上海協力機構の加盟国はロシアと中国、そして中央アジア5か国である。オブ参加がインド、パキスタン、イラン、ベラルーシである。一昨日の国連安保理では「ロシアのグルジアへの軍事進攻を非難する声が支配的であった」という。だが、常任理事国であるロシアと中国が欠席していたというから「犬の遠吠え」という感じだ。中国は「チベット・東トルキスタン(ウイグル)・内モンゴル等民族独立を願う反政府勢力を抱えている」から、ロシアが仕掛けた「南オセチアとアブハジアの独立国家承認」まで踏み込むことはできなかった。ただロシアの顔を潰さない配慮をしたという一線で踏みとどまり「上海協力機構の団結」を優先した。という訳で、常任理事国5か国中2か国が「ロシアのグルジア侵攻作戦」を非難せず、肯定又は黙認する立場であるから、国連が何らかの機能を果たすと期待することはできない。目下、国連は蚊帳の外におかれている。ロシアがドイツ・フランス・イタリアとそれぞれ個別に折衝して「落とし所」を模索している段階である。ロシアは国連を無視しているばかりではなく、米国との対話にも消極的である。あえて国連と米国を無視する姿勢を示し「米国の世界支配を崩す」又は「米国が妥協案を出してくる」のを待っているのかもしれぬ。米国の妥協案には「ポーランドとチェコに配備する予定のミサイル迎撃システムの中止」が含まれなければならない、とロシアは考えているに相違ない。あるいは、グルジアに対するロシアの影響力を米国が承認することを「取引条件」と考えているかもしれぬ。
第2.米国とEU(独・仏・伊)、EUとロシアの関係
米国とロシアは疎遠である。経済交流も活発ではない。喧嘩しても失うものは少ないから「喧嘩し易い相手」ということになる。一方、米国とEUの主要国は北大西洋条約機構(NATO)という軍事同盟の同盟国であり経済関係も濃密である。EU特に独・仏・伊とロシアは経済的な相互依存関係にある。ロシアはEUとの貿易で稼ぎ、EUもロシアのエネルギー資源への依存度が高い。今回、EU議長国であるフランスが「ロシアに経済制裁を科すべし」と唱えるポーランドほか旧東欧諸国の主張を抑え「ロシアへの経済制裁は議決しない」という方針を打ち出した。「ロシアとは事を構えたくはない」というフランスの本音が出たのであろう。フランス人エマニュエル・トッドは「帝国以後」で「EUの米国からの自立」と「EUとロシアとの戦略的同盟の構築」を掲げている。ロシアに親近感を持つフランス社会の文化的風土を反映した論考かもしれぬ。そういえば、米国のイラク戦争に頑強に反対したのはフランスの外相であった。プーチン首相とプーチンの代官であるメドベージェフ大統領があえて「米国を無視している」のは、「米国の一極支配は認めない」ということを実践し、ヨーロッパの問題は「ヨーロッパの主要国首脳が協議して決める」ということであろう。米露対決が激化すればするほど、EUの調整力が期待されるという仕組みだ。ロシアは「EU主要国取り込み」に励む。米国も大西洋同盟を堅持すべくEUとの協力体制に腐心する。米露対決が沸騰すればするほどEU、とりわけ独・仏の発言力が増すという構図だ。世界の準基軸通貨ユーロを発足させ米ドルの基軸通貨体制にクサビを打ちこんだ独・仏は、いよいよ政治的分野においても主導権を握る時代になったと笑いをかみ殺しているのではないか。サルコジ仏大統領が「シリアの大統領を招待して中東問題に首を突っ込み始めた」のも、EUの政治的影響力を拡大するハラであろう。EUの遠大な「世界戦略」が動き始めた兆しである。
第3.EUの中核国(独・仏・伊)と周辺国(ポーランド・チェコ・バルト三国等)の意見対立
旧ソビエト連邦から直接的又は間接的支配を受けた経験を持つ東欧諸国は「米国への心理的依存」が強い。ロシアの軍事的脅威を実感している東欧諸国は「ロシアを抑え込める力を有するのは米国だけ」と感じている。さらに米国は同盟国に甘いという性格行動傾向があるから、米国から経済的・軍事的支援を受けることができると期待している。プーチンを激怒させた「ポーランドとチェコにミサイル迎撃システムを配備する」件に同意し歓迎しているのも、東欧諸国の「米国頼み・米国依存」を証明している。ロシアは「ポーランド・チェコに米国のミサイル迎撃システムが配備される」ならば、中距離核ミサイルの保有制限等を取り決めた米ソ核軍縮の延長に同意しない旨述べている。「撃墜できない最新鋭の核ミサイルを配備し、ポーランドとチェコに照準をあてる」と脅迫している。
ロシアの中距離核ミサイルの標的となる西欧(独・仏・伊)は、ロシアの核戦力の増強を阻止したいと考えている。ポーランドやチェコが米国と取引して先走りするから西欧が危機に陥ると懸念している。かくして、「ミサイル迎撃システムの配備」を巡り、米国と東欧、独・仏とロシアの利害が一致する。グルジア、ウズベキスタン、キルギスに米軍基地を設けたのも米国の「対露封じ込め戦略の一環」であろう。以上、ヨーロッパ戦線は三つ巴、四つ巴の争いが顕在化しつつある。それぞれが国益を賭けて「妥協のできない争い」に巻き込まれつつある。
第4.ロシアが「反米国家又は反米組織」への支援を強める。
ロシアがイランやベネズエラに最新鋭ミサイル兵器を供与していることは周知のとおりである。最近、ロシアはシリアに「対空ミサイル兵器を供与する」ことで合意した。イスラエル空軍を脅威に感じ、かつイスラエル空軍機による傍若無人な領空侵犯と空爆で被害を受けているいるシリアは「これでイスラエル空軍機の攻撃を撃退できる」と考えても不思議ではない。逆にイスラエルは「虎の子の空軍力」が無力化するのを恐れている。急遽、政府高官をロシアに派遣し、真偽を確認させた。イスラエルの狼狽ぶりが窺える。
イスラエルと米国の空爆を恐れるイランが、ロシアから大量の最新鋭対空ミサイルを購入しているであろうことは容易に想像がつく。昨日、イランのウラン濃縮用遠心分離機は4000台を超えた。「実験段階から量産段階に移行した。さらに、3000台の遠心分離機を増設する方針」との記事を日本経済新聞が報じた。イランがイスラエルや米国の脅迫にひるまず、「濃縮ウラン製造施設の拡充に取り組み公開している」のも、イスラエル空軍や米空母艦載機の空爆に対抗できる「対空ミサイル」をロシアから大量に購入し配備しているためではないかとの疑問がわく。イランは「カラ元気」ではなく「備えあれば憂いなし」という段階に達したのかもしれぬ。
最近、米空軍機がアフガンを空爆して民間人を100人前後殺害したというニュースが世界を駆け巡った。プーチンは早速この問題を取り上げ「米軍の空爆」を非難して見せた。現段階でプーチンはアフガンの反政府勢力タリバンを「支持する」とはいっていない。だがプーチンが「敵の敵は味方」と考え、タリバン支援に乗り出しても不思議ではない。ロシアにとって20年前の敵タリバンは「明日の味方」であっても不思議な事は一つもない。ロシアとタリバンが激突したアフガン戦争において米国は、イスラム義勇軍(タリバン)を全面的に支援した。20数年後、米国は「タリバン掃討作戦」を展開している。ロシアがタリバンを支援しても何の不都合もない。21世紀の「新帝国主義時代」の合言葉は「権謀術数」と「朝令暮改」である。「油断をすると寝首を掻かれる」というのが帝国主義時代の論理である。
第5.恐れられるロシア、頼りにされるロシアの台頭
大国が領土拡大又は勢力圏拡大の衝動を強めるとき、隣接する弱小国家は国家存亡の危機が遭遇する。東欧や北西アジアの中小国家はロシア軍のグルジア侵攻を見て、ヒットラーとスターリンのヨーロッパ侵攻を想起したのではあるまいか。そして「悪夢が再来するのでは」と不安にかられた。領土拡大への衝動を強める中国に隣接する台湾、朝鮮(韓)半島並びにベトナム等も警戒心を高めているはずだ。帝国主義時代は「優勝劣敗」「切り取り自由」という論理が世界の常識となる。「備えのない国は滅ぼされて当然」という雰囲気が醸成される。
中国は「旧大日本帝国陸・海軍が行った中国への侵略戦争」を喧伝している。中国はチベットやウイグル(東トルキスタン)を軍事占領し、同化政策を強引に推し進めている。ベトナムにも50万人の軍兵を動員して侵略し住民多数を虐殺したこともある。「旧日本軍の虐殺行為を非難する前に、まず中国軍が行ったチベット、ウイグル、ベトナムでの集団虐殺を反省したらどうか」といっておきたい。
世界最大の軍事帝国である米国から経済制裁を被り、軍事的圧力に直面している国家又は勢力にとって、ロシアは「頼りになる国家」という側面を持つ。米国の政治的圧力に対抗できるのは当面、ロシア以外にはない。米国の空爆に対抗できるミサイルを供与してくれるのもロシアだけだ。米国を初めとする欧米の経済的・軍事的圧力を受けているイランやベネズエラ、そして最近はシリアが「ロシアへの依存」を深めている。今後、アフガンのタリバンやパキスタンの反米イスラム勢力がロシアに接近しても不思議ではない。
ロシアは米国と異なり「原理原則に忠実な国家」である。旧ソビエト連邦時代は、民族の如何にかかわらず、人材を抜擢した。スターリンやシュワルナゼも少数民族の出身であった。共産主義という教条主義を捨てたロシアにとっての原理原則は「米国の一極支配を許さない」という一点に集約できる。そのため、原油取引をルーブル建てにしたり、反米国家に対する最新兵器の売却を推進している。米国の世界支配にとっての最大の脅威は「9.11で米国中枢を攻撃したアルカイダ」と喧伝されているが事実ではない。数人から十数人規模のテロ組織が、たとえ100や200存在しても米国の敵となる資格はない。「国際テロ組織アルカイダ」は米国がアフガン・イラク戦争を始める口実に利用されただけだ。
米国と正面切って対決し、米国の世界支配に「いちいち文句を言って盾突く」ロシアは、米国から見ると「不倶戴天の敵」ということになる。ロシアは新興国であって地力で米国と張り合う力はない。だから、米国が「大人の対応をとれば」ロシアを懐柔できる余地はある。独仏、日本、中国、インドとロシアの関係は濃淡の差はあるが「是々非々」の関係である。独仏・中国とロシアは経済の相互依存が深まっている。我が国も急速な貿易拡大を見込んでいる。以上、ロシアは各国の政治的位置を測るリトマス試験紙である。ロシアとの関係のあり方で、その国の置かれた状況が分かる。だが、各国の態度はを普遍的なものと考えるのは正しくない。一度の選挙、一回の政変でロシアとの関係が急変することもある。21世紀の国家関係は冷戦時代の如く安定したものにはならない。特に現在「反ロ国家群」や「親ロ国家群」においては、極端から極端にぶれる可能性がある。親日国家といわれた台湾とオーストラリアが、1回の選挙で「反日又は非日国家に転換した」ことと同様「権力が選挙で交代する」民主主義国家においては、外交の連続性は保障されない。
第6.米国に対抗するロシアの力
ロシアは世界最大級の天然ガス・原油生産国である。エネルギー資源大国であるから「資源価格高騰」で潤っている。EUのエネルギー消費の約30%を供給しているといわれるが、東欧諸国においてはエネルギー資源の100%をロシアの原油や天然ガスに依存している国も多いのではないか。これら諸国にとって、ロシアからのエネルギー資源の供給が停止された場合、国家経済が破たんする。ロシアはとりわけ東欧諸国の経済に対する「生殺与奪の権」を握っている。ロシアが外貨を稼げるのはエネルギー資源のほか、米国に対抗できるミサイル・戦闘機などの兵器である。世界各国は「米国が最先端兵器を売ってくれないならば、ロシアから購入する」と考え始めた。特に、イスラエルと隣接し対峙するサウジアラビア、湾岸諸国並びにシリアなどが、ロシア製ミサイルに関心を示している。米国は「イスラエル守護」を国是とする国家であるから、イスラエルの攻撃兵器を無力化する防御兵器を売ってくれない。つまり、最新型対空ミサイルや中距離弾道弾等を配備してイスラエルからの空爆に備えたいと考えても米国は売ってくれない。そこで、登場するのが(イスラエルの軍事的脅威に直面している国家にとって)正義の騎士ロシアという訳である。あるいは、サルコジのフランスも「中東諸国への戦闘機やミサイル並びに原子炉の販路拡大」に強い関心を持っているのかもしれぬ。
ロシアのプーチンは昨年「金払いの良いペルシャ湾岸諸国」を歴訪して関係改善に努めた。ミサイル兵器の売却等商談を取り決めたのではないか。ロシアから見ると「最新兵器の販路拡大」と「勢力圏拡張」という一石二鳥の政策である。インドネシアへも準最新型の戦闘爆撃機数機を売却した。地球は狭い。「米国の縄張り」を横取りしないことには、ロシアの勢力圏を拡大することはできない。ボス猿を追い払うことなしには、ボスの座をつかむことはできない。最新型兵器を調達したいと考える消費国にとって、米国とロシアが競ってくれることは価格の低下につながるから有難い。米国やロシアは「売り惜しみ」という手を使えない。価格競争を強いられる。米国とロシアの価格競争が激化することは、米国とロシアが談合して「カルテルを結ぶ」よりもメリットがある。「カルテル」を結び、売り手市場になるより、米露の対立による自由競争こそが消費国の利益をもたらす。
第6.「帝国以後」の世界のリーダーはどの勢力か?
最も先行しているのが,独・仏を中核とするEUである。準基軸通貨ユーロは発行残高が米ドルを超えたという。軍事力は米露には及ばないが、核保有国であるフランスがいる。原子力潜水艦も保有している。経済力、技術力も高い。域内の教育水準も高い。懸念材料があるとすれば、約70年間共産主義陣営に属した東欧と、資本主義で経済を発展させてきた西欧の経済格差であろう。米国依存を深める東欧、ロシアとの戦略的同盟を模索する西欧の矛盾を如何に調整しまとめ上げるか、課題は少なくない。
以下、政治的影響力で見ると、中国、ロシア、インド・・という順番であろう。だが、資源価格に国家経済が左右されるロシア、バブル崩壊とインフレで国内の騒乱が予想される中国。いずれも「世界のリーダー」となる要件を欠いている。中国とロシアは「米国の一極支配に対する抵抗勢力」と言う意味で存在意義がある。世界の覇権を握る候補者といえる段階ではない。
我が国の地政学的重要性や高付加価値製品を製造できる日本は、将来、世界の覇権を狙う大国にとって「垂涎の的」である。北朝鮮のテロ指定国家解除を急ぐ米国に対して我が国では「反米・非米感情」がかってない高まり見せた。この機会に乗じて、ロシアと中国は「対日接近・対日融和」に踏み出した。「日露同盟」や「日中同盟」を視野にいれた長期戦略といってよい。幕末の「黒船到来」時代と同様、我が国は世界の標的となっている。我が国の生き残る道は「多角的外交である」というのは、世論の共通理解になりつつあるが、問題は「自主国防力の向上」を巡り、国内に深刻な対立があることだ。非核三原則を呪文の如く唱え「核論議さえも封殺する」という動きがある。特に、親中国、親北朝鮮、親韓国を唱える左翼、民主党(小沢・岡田・左派ほか)、共産・社民・公明の各党、自民党(加藤・山崎・河野・二階ほか)らの政治家、メディアなど多数派を形成している。
今後の政治日程は、安定した保守政権の樹立→偏向教育(教育委員会制度の見直し)と偏向報道の是正(広告企業の注文等)→政権政党の基盤強化→国民意識の転換→日本的価値観の涵養→・・・と戦略的に取り組む必要がある。戦後63年。「腰縄・手錠」で骨抜きになった日本民族が「誇りと勇気」「決断と実行」を回復するのは容易ではない。「戦略なき実践」は盲目である。「実践なき戦略」は空虚である。遅すぎるということはない。着実に前進すべく階段を一歩づつ上るべきである。「継続は力なり」だ。
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聖書の預言通りに世界は動いている。by日本のお姉さん
「第6.「帝国以後」の世界のリーダーはどの勢力か?
最も先行しているのが,独・仏を中核とするEUである。」
「中国とロシアは「米国の一極支配に対する抵抗勢力」と
言う意味で存在意義がある。世界の覇権を握る候補者と
いえる段階ではない。 」