通貨圏なき「円」の限界 (田村秀男) | 日本のお姉さん

通貨圏なき「円」の限界 (田村秀男)

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通貨圏なき「円」の限界 (田村秀男)
通貨とは単なるモノ・サービスの交換手段ではない。他国に比べたその国の豊かさを左右する。富の格差はその通貨の通用度の差から生じる。世界を貿易の決済通貨別に色分けると、ドル圏とユーロ圏に大別される。円は時折、ドル、ユーロと並ぶ国際通貨だと言われるが、周辺国・地域に貿易決済圏はない。日本はむしろ中国など他のアジアと同じくドル決済圏に所属する。中南米、さらにアラブなど産油国の大半もドル圏である。ユーロ圏は独仏などユーロ加盟国と周辺のEU(欧州連合)加盟国及びEU加盟をめざす国を含む。ロシアはドル、ユーロの混合型で、ルーブルの決済圏は存在しない。世界の金融市場はドルが支配している。ユーロ建て債券の発行は盛んだが、証券、商品、さらに先物など金融派生商品(デリバティブ)などドル建ての市場は多様で層も厚い。米国の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)危機が昨年8月に勃発したとき、欧州の金融市場ではドル資金が不足し、米連邦準備制度理事会(FRB)が緊急融通した。欧州の金融機関がドル建ての金融商品を主に取引しているからだ。

■米独は賃上げのゆとり
自国通貨による決済圏を持たざる日本と、持てる米、ドイツの差は歴然としている。グラフ(左)は、日米独の賃金の推移である。米国はドル高、ドル安とは無関係に一貫して賃金を上げている。ドイツはユーロ高で産業の競争力が不利になっているにもかかわらず、賃上げを続けている。日本だけが賃金を据え置いている。自国の通貨でビジネスができれば、企業の製品価格は圏内では一律でよい。進出先の賃金が安い国でその製品をつくれば利益は膨らみ、母国で賃上げするゆとりがうまれる。日本が日本の賃金水準の十数分の1以下の中国で製造・販売してその価格を円建てで日本国内と同じにすれば企業収益と本国の賃金はどうなるだろうか。もちろ ん、現地企業など同業者との競争が激しければ、値下げするしかないが、それでは同一製品なのに価格が違い、一物一価の法則を企業自ら壊し、混乱しよう。少なくても、米国もドイツも自国で値上げすれば海外でもただちに値上げし、国内の物価上昇などに応じて賃上げしている。ユーロ高の欧州は日本でも乗用車など製品値上げを繰り返してきたことからも明らかだ。

■悪循環を生む円安頼み
賃金水準が上がらない日本では、さらにパートや派遣・請負いと正社員との賃金格差が深刻な社会問題を引き起している。個人消費は抑えられ、企業はますます外需に頼らざるをえない。ところがサブプライム危機以降は米国の消費が冷え込み、それが世界に波及してきた。中国、インドな ど新興国は対米輸出が減り、新興国に設備や部品を輸出してきた日本の景気も後退してきた。輸出競争はますます激しくなるので、円安に頼るしかない。する と、石油や鉄鉱石、穀物など原材料の円建て価格はさらに上昇する。輸出価格は上げられない、輸入コストは上昇して資源国に富が移転する。ツケを払うのは消 費者で内需は一層落ち込むという悪循環が生じている。もうひとつのグラフ(右)は、日独の輸出、輸入の単価を比較したものだ。ユーロ圏のドイツは輸入コストの上昇と並行して輸出単価を引き上げている。ドイツは国内から外に所得を流出させていない。基軸通貨ドルを持つ米国は世界の金融不安、景気後退の震源地なのだが、意外とゆとりがある。巨額の財政赤字にもかかわらず、共和、民主両党とも景気刺激のため財政の大判振る舞い策を競う。いくらドル安になっても、世界は原油や製品を買うためにドルを必要とするので、ドルは底なしに暴落する可能性がないからだ。こうみると、日本にとって周辺のアジアと共通の通貨圏を持つことが、死活問題であることがわかる。だが、円による決済圏は韓国や中国の反発が予想され、事実上不可能だ。残る選択肢はユーロに習った東アジア共通通貨の実現だが、それも一部専門家の間での構想にとどまっている。
(特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS)
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▼カネ、モノそしてヒト、3つを安売る日本の閉塞 解は何か (田村秀男)
産経新聞朝刊【経済が告げる】編集委員・田村秀男 「3つの安売り」日本の解(2008.8.31 02:34 )

ドルというマネーが住宅ブームで膨張し、おかげで中国などアジア新興国、それらに設備や部品を供給する日本も景気拡大を謳歌(おうか)してきたが、バブル景気は崩壊した。あぶくがとれると、それまで見えなかった地肌の荒れ具合がよく見える。日本はどうか。
日本の生の姿はカネ、モノ、ヒト(労働)の「トリプル安」である。円は依然として超低金利。米国のヘッジファンドが大量に調達してたたき売り、より高い利 回りの米国債など証券、原油・穀物で運用して荒稼ぎする。超低金利のおかげで老後に不安を抱える個人の金融資産は増えない。円高に転じると企業収益が損な われ、株安、さらに外貨預金に賭けた消費者も打撃を受ける。外需に頼る日本の企業はシェア低下を恐れ、エネルギー、原材料価格が上がっても製品価格を上げられない。人件費を圧縮するために賃金を据え置くか、非正規雇用にシフトする。家計は財布のヒモを締めるので内需は減退、各社はまたもや価格を上げられない。 こうみると危機はバブル崩壊の本家の米国よりも日本のほうがもっと深刻だ。米国では財政赤字をものともせず、オバマ民主党、マケイン共和党の両大統領候補 とも財政大盤振る舞い策を競っている。中国も日本も欧州もいざとなれば基軸通貨ドルを買い支えてくれるという国際システムがあるから、米国にはゆとりがあ る。対照的に日本の政策論議は迷走している。国の特別会計などで官僚が隠している財源、「埋蔵金」を召し上げ、道路建設や燃料代高騰に苦 しむ漁民らにばらまけ、という声もある。元財務官僚の高橋洋一東洋大学教授によれば、埋蔵金総額は約50兆円、すぐに取りだせる額は約15兆円。確かに、 都内一等地官舎の専用テニスコートの維持に使うよりは、零細漁民や業者に配るのは社会正義にかなう。だが、埋蔵金は家計のへそくりと同じく、使えるのは一 回きりである。ばらまけば景気がよくなるという時代はとっくに過ぎた。
解は別のところにある。日本の病状が「3つの安売り」だとすれば、 それをどう改めるか。金利は金融経済情勢次第だとしても、モノとヒトは国家の通貨戦略次第で価値を是正できる。欧州共通通貨ユーロを持つドイツと基軸通貨 ドルの米国と日本を比べてみるとよい。日本は米独と違い、周辺地域や世界で自国通貨による貿易決済圏を持たない。過去8年間の日米独の賃金の推移をみる と、米独ともほぼ一貫して賃金を上げている。ドイツは急速なユーロ高の中でも賃上げし、米国はそれをしのぐ。日本だけが賃金を据え置いている。自国の通貨でビジネスができれば、企業の製品価格は圏内では一律でよい。米国もドイツも企業は自国で製品を値上げすれば海外でもただちに値上げする。進出 先の賃金が安い国でその製品をつくれば利益は膨らみ、母国で賃上げするゆとりが生まれる。現地企業での競争が激しければ、値下げするしかないが、それでは 同一通貨の同一製品なのに価格が違い、混乱しよう。自国通貨でビジネスできる通貨圏を持つことは、とどのつまりはその国を豊かにし、持たざる国はひたすら他国通貨で競い、カネもモノもヒトも安くするしかない。政治的な軋轢(あつれき)から「円圏」が困難としても、円主導による共通の通貨圏を東アジア、相互依存度の高いアジア太平洋で持つことは、米金融危機後の日本の富の戦略なのだ。(たむら ひでお)
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▼運命の九月、きたる! (新世紀のビッグブラザー)
いよいよ明日から、韓国経済の運命の月と言われる九月が始まります韓国九月危機説(韓国が九月に通貨危機を迎えるかもしれない、という説)は、元々は以下の韓国証券業界とインターネット中心に出回った「噂」から始まったと思うのですが(それ以前のソースをご存知なら、教えて下さい。)、今や様々な韓国のメディアが、この九月危機説に触れる状況に陥っています。
『今度は「9月外国為替危機」の怪談 韓国速報 08/7/11
http://www.worldtimes.co.jp/kansok/kan/keizai/080711-2.html
何故、韓国九月危機説が広まったのか。これは話として面白いというのも無論あるでしょうが、それ以上に韓国の各指標が悪化し、噂の真実味が日々増し続けていることも原因だと思います。実は、わたしは現在、オークラ出版(撃論ムック)から韓国経済に関する執筆の仕事を貰っており、すでに作業を開始しています。ちなみにタイトル(仮)は『崩壊進行中の韓国経済の病理』となっています。この仕事の関係で、わたしは最新の韓国経済の指標を集め、まとめました。その結果は、確かに背筋が寒くなるようなものでした。以下、韓国の経済指標最新版をまとめてご紹介しましょう。

【大韓民国 国際収支 2008年6月~2008年7月】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_01.html#BOPJun08-
韓国銀行が(七月分から?)発表する国際収支の項目を若干修正しました。資本収支の中に「金融派生商品」が追加され(どちらかというと、これまで「金融派生商品」がなかった事がおかしいです)、輸出・輸入について、FOBのみならず通関(CIF)ベースがの金額が追加されました。貿易収支(通関)は、わたしが追加しました。ご覧頂くと一目瞭然ですが、韓国はFOBベースでは辛うじて貿易黒字ですが、通関ベースでは貿易赤字を続けています。今年に入り、韓国は5月を除き、全ての月で貿易赤字を続けているわけです。また、ウォン安の脅威に対抗するために、韓国銀行が通貨防衛の為替介入を続けているため、毎月外貨準備高が減少しています。ページの少し下の「大韓民国 国際収支 2007年10月~2008年5月」も合わせてご参照ください。それにしても外貨準備高の七月の減少額はすごいですね。しかも、またもや双子の赤字です。もはや、この「経常収支」「資本収支」が共に赤字化する現象を、「韓国型双子の赤字」と命名しても良さそうな気がします。ちなみに、アメリカの有名な双子の赤字は「経常収支赤字」と「財債赤字」です。アメリカの資本収支は、常に巨額黒字です(これまでは)。

【韓国の対外債務・債権推移 2007年第一四半期~2008年第二四半期】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_01.html#KoreaD&A07
韓国の2008年第二四半期 対外純債務国転落は、どうやら免れたようです。本当に首の皮一枚という感じですが。韓国の純債務国転落は、恐らく2008年8月、つまり今月だと思います。明日、九月からは、韓国は純債務国の可能性が極めて高いのです。

【韓国のGDPと外需依存度(輸出対GDP比率)2007年】
 ■GDP:9,699億ドル
 ■輸出額:3,714億ドル
 ■外需依存度:38.3%
この外需依存度の高さでありながら、韓国は「貿易赤字」なのですから、心寒いものがあります。同じように外需依存度が35%を超えている中国やドイツは、もちろん貿易黒字を維持しています。要するに、韓国は「貿易立国」に失敗したわけです。

【外貨準備高】
 ■7月末時点の外貨準備高:2475億ドル
 ■2008年の累計減少額:▲187億ドル
韓国は今年に入り、七ヶ月連続で外貨準備高を減らしています。年初に何位だったかは忘れましたが、もう「世界第何位の外貨準備高を誇る」という論調は止めた方がいいと思います。毎月、後方ランナーにぶち抜かれて順位を下げる有様で、正直、惨めでなりません。

【物価関連】
 ■7月消費者物価指数:前年同月比5.9%上昇
 ■生産者物価指数:前年同月比12.5%上昇
 ■輸入物価指数:対前年同月比50.6%上昇
企業も消費者も、満身創痍という感じですね。ウォン安傾向が続く限り、多少、資源価格上昇が落ち着いたところで、物価上昇傾向は変わらないでしょう。
【為替相場】
 ■07年10月のピークからの、ウォンの対ドル下落率:約20%
 ■07年7月のピークからの、ウォンの対円下落率:約34%
ウォン安は「輸入物価上昇による、貿易赤字」「韓国の対外債務のウォン建額面増加」「ドル建GDP縮小と、GDP順位の下落」と様々な弊害を呼び起こしています。(最後の一つは直接的には、経済成長とは無関係ですが、韓国人には大ショックでしょう。数カ国にごぼう抜きされたわけですから。)この状況で「ウォン安は韓国輸出企業への恩恵だ!」などと主張できる人は、ある意味、羨ましいです。いえ、皮肉でなく。

【株式相場】
世界の主要株式市場1-8月の下落率(日経新聞 08年08月31日朝刊 1面 「世界のマネー株式離れ鮮明」より)
 ■中国 54.4%
 ■インド 28.2%
 ■ロシア 28.1%   ※BRICSうんたら言っていた奴らw
 ■韓国 22.3%
 ■ドイツ 20.4%
 ■フランス 20.2%
 ■日本 14.6%
 ■米国 13.0%
 ■ブラジル 12.8%
 ■英国 12.7%

『外国人株式・債券全方向売渡(罵倒)..史上最大 `セルコリア`
http://www.edaily.co.kr/news/newsread.asp?strPage=1&newsid=01262806586512240&DirCode=0010102
月外国人証券投資 -96億ドル..史上最大
国内債券2ヶ月目純売渡..株式売渡(罵倒)も長続き
[イーデイリー権所県記者] 先月外国人投資者たちが国内株式と債券を大挙売って去りながら史上最大 `セルコリア`が成り立ったことで現われた.(後略)』他にも何か興味深い指標がありましたら、是非教えて下さい。
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