あなたの捨てたゴミは、本当に“捨てられて”いるか? | 日本のお姉さん

あなたの捨てたゴミは、本当に“捨てられて”いるか?

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【暮らしとエコロジーを考える“ゴミ捨て人生”にさようなら】 あなたの捨てたゴミは、本当に“捨てられて”いるか?
徳島県上勝町のゼロ・ウェイストをリポート 「ゴミをゼロにする社会」、ゼロ・ウェイストとはどんな取り組みか。徳島県勝浦郡上勝町のゴミ処理の様子を「ゼロ・ウェイストアカデミー」理事の松岡夏子さんに聞いた・・・ 。
私たちは地域の自治体の指示に従い、燃えるゴミ、容器包装、古紙などに分別して、所定の日にゴミを出す。この時点で、市民(区民)としての責任を果たし、ゴミと「おさらばした」と私たちは思う。しかし、実はゴミ問題はここから始まるのだ。日本では平均してゴミの8割を焼却処分している。しかし多くの焼却炉は老朽化し、建て替えの時期を迎えている。焼却炉のハイテク化に伴い建設費は高騰し、予算が足りない自治体も多い。建設が決まっても、住民の反対運動が起きる。焼却炉は迷惑者扱いされているのだ。焼却灰の埋め立て地の問題もある。最終処分場は、日本中どこも満杯状態だ。どの自治体も、ゴミ処理に頭を悩ませている。そんな中、ゼロ・ウェイスト(環境の負担になるゴミやムダをゼロにする)の考え方が広まりつつある。提唱者は英国の経済学者、ロビン・マレー氏。 1996年にオーストラリアの首都キャンベラがゼロ・ウェイスト宣言し、世界を驚かせた。ほかには米国のサンフランシスコ、バークレー、ニュージーランドやカナダなどでゼロ・ウェイストが広まっている。

・日本初のゼロ・ウェイスト宣言を行った徳島県の町
日本で初めてゼロ・ウェイスト宣言を行ったのは、徳島県勝浦郡の上勝町だ。2003年に「2020年までに焼却・埋め立て処分をなくす最善の努力をする」と宣言し、2005年にNPO法人(特定非営利活動法人)「ゼロ・ウェイストアカデミー」を設立した。上勝町は人口2000人。“棚田百選”に選ばれた美しい山間の町だ。元気なお年寄りが営む「葉っぱビジネス」(南天、笹、山ブドウ、紅葉などの葉を周辺の山で採取し、「つまもの」として料亭などに出荷する事業)が注目を集めた町でもある。このゼロ・ウェイストアカデミー初代事務局長の松岡夏子さんが、6月、神奈川県逗子市の市民交流センターで、上勝町のゼロ・ウェイストの取り組みを紹介した。松岡さんは大学に在学中、産業廃棄物の不法投棄で問題になった香川県土庄町の豊島(てしま)を訪れたことがきっかけで、ゴミ問題に興味を持つようになった。環境先進国のデンマークで留学中に上勝町のゼロ・ウェイストの取り組みを知り、ゼロ・ウェイストアカデミー設立のための町臨時職員として、 2004年に上勝町に移住。2005年4月に同法人が発足し、理事兼初代事務局長を務めた。現在は神戸大学国際分科学研究科に所属し、環境政策を研究しながら理事を務める。「上勝町では、ゼロ・ウェイスト宣言する以前からゴミ問題に取り組んでいました。1995年から、すべての生ゴミを堆肥化することを決定し、電動式ゴミ処理機やコンポスター(注1)の購入に助成金を出しました」と、松岡さんは上勝町でのゴミ処理の歴史を説明した。「1997年に『容器包装リサイクル法』が施行されたのをきっかけに、ゴミの19種類の分別を始めました。リサイクル資源を使って製品を作る企業を探し、分別したゴミを売却し町の現金収入としたのです」リサイクルできないゴミは焼却処理していたが、2000年に「ダイオキシン類対策特別措置法」が施行され、焼却炉が発生するダイオキシンに対する規制が厳しくなった。上勝町の焼却炉は基準を超えるダイオキシンを発生するため、閉鎖せざるを得なくなった。「高額な費用を払って新しい焼却炉を建設するより、上勝町は焼却ゴミの量を減らす道を選んだのです。ゴミの分別を34種に増やし、資源回収を徹底しました」当初は35分類だったが、容器包装リサイクル法の完全施行に伴い、「プラスチックボトル」と「プラスチック類」を「プラスチック製容器包装類」にまとめたため、35分類から34分類になったという。上勝町では、実際にどのようにして34分別を行っているのだろう。手間のかかる作業ではないのだろうか。

・ごみステーションに、各自がゴミを持ち込む
上勝町にゴミ収集車は走っていない、と松岡さんは言う。「各自がごみステーションにゴミを持ち込むシステムです。34種類に分別するのは面倒だと思われがちですが、どこに何を捨てたらいいのか分かりやすく表示してあるので、それほど大変ではありません。ごみステーションに持ってきたゴミを、それぞれの箱に入れていけばいいのです。また、どの素材が、何に再資源化されるのか一目で分かるように表示してあります。ごみステーションは年末年始の3日間以外は毎日開いており、町民の交流の場にもなっています」では、34分別のいくつかとそれらの再利用法を紹介しよう。びんは「透明」「茶色」「リサイクルびん」「その他のびん」と4種に分別し、色によってリサイクルされる 。
乾電池、バッテリーからは、鉛を回収する。蛍光灯からは、断熱材として使うグラスウールと水銀を回収する(壊れた蛍光灯からはグラスウールのみ)紙類は4種に分別。紙パックは紙紐やトイレットペーパーに、ダンボールはダンボールの中芯に、新聞紙は新聞紙の原料に、雑誌とコピー用祇は洗剤や菓子の箱に生まれ変わる。廃食油は肥料として利用する。家電製品は分解して再商品化する。缶類は3種に分別。アルミ缶はリサイクル、スチール缶は建設用資材に、スプレー缶も建設用資材としてリサイクルする。金属性キャップは、建設用資材としてリサイクルする。 リサイクルできないものは埋め立てるか、焼却する。びん類以外のガラス、鏡、体温計、電球などは埋め立てる。ライター、紙おむつやナプキンは焼却処理する。「どうしても燃やさなければならないもの」と名づけた項目もあり、スリッパや靴を捨てる。松岡さんは、ごみステーションの一角に「くるくるショップ」を開店することを、地元の小学生と一緒に企画した。「町民がいらなくなった台所用品、衣類、雑貨などをここに持ってきます。欲しいものは無料で持ち帰ることができます。多くの人がゴミを捨てにきたついでに『くるくるショップ』に立ち寄り、 1日に3~4点が引き取られていきます」地元の高齢者と協力して、不要品を使ってバッグや衣類を作って販売することも開始した。古い鯉のぼりを使って作ったバッグは好評だったそうだ。ゴミの削減だけでなく、活動を提供することによって、介護を必要としない高齢者を増やすことが目的でもある。
・上勝町はゼロ・ウェイストを決断
分別を徹底した結果、2005年の時点で80%のゴミがリサイクル業者に引き渡された。総務省の統計局によると、日本のゴミのリサイクル率は20 パーセント。これと比べると、上勝町のリサイクル率は格段に高い。それほどのリサイクル率を達成したのに、なぜ上勝町はゼロ・ウェイスト宣言をしたのだろう。松岡さんはその理由をこう述べた。「どんなに分別を徹底しても、分別できないもの、リサイクルできないものがあふれていました。それにリサイクルすること自体が、大量のエネルギーを必要とします。リサイクルの過程で、重金属など危険物質の混入が把握できなくなる危険性もあります。リサイクルだけでは、ゴミ問題は解決できない。ゴミとなるものを減らさない限り、本質的な解決はないと気づいたからです」環境問題の「3R」と言われるのが「Reduce:ゴミとなるものを減らす」「Reuse:ものを再使用する」「Recycle:ものを資源として再利用する」だが、ゼロ・ウェイストを実践するには、これらを行う姿勢として「4L」が大切だという。「4L」とは、「Local:なるべく地域主導で行う」「Low cost:なるべく費用をかけない」「Low tech:最新技術に頼らない」「Low Impact:環境への負荷を低くする」である。「実はゼロ・ウェイストは、ゴミだけの問題ではないのです。ウェイストという言葉には、“無駄”や“浪費”という意味があります。1つの製品を作る際に、運搬する時、要らなくなったあとどうなるかなど、あらゆる段階で資源を無駄にしない“ものづくり”を実践することです」と松岡さんは指摘する。「ゴミがゼロになるかどうか判断することが優先事項ではありません。ゼロ・ウェイストは、ある地域における生活をトータルに捉え、資源を有効に活用する仕組みを作り、それによって最終的にゴミになるものを減らそうとする姿勢です。エネルギーに関しても、遠い国から運んだ石油ではなく、地域の資源を使うこともゼロ・ウェイストにつながります。林業が盛んな上勝町では、バイオマス(注2)に取り組んでいます」「でも、消費者、生活者だけでゴミを減らすことには限界があります。拡大生産者責任(生産者が、その製品が使われなくなった時点まで責任を持つこと)を徹底し、デポジット制度(注3)を導入したり、リサイクルできないものや有害物質を含む製品を規制したりすることも必要です」最後に、ゴミとは何ですか、と松岡さんに質問してみた。「現在の日本の社会では、1人の人間が必要としなくなったものが、ゴミとして捨てられることが多くあります。でもその中には、ほかの人が使いたいと思うものもあるはずです」と松岡さんは言う。「誰かにとって使えるものは、ゴミではないと考えています。本当のゴミは、誰にとっても要らなくなったもの、使い道のないものでしょう。この仕事を通して、ゴミを出さないライフスタイルを選ぶことが大事だ、と自然に思えるようになりました」ゴミとは、私たちがどのような生活をし、どのような消費スタイルを選んでいるのかを表す指針であるとも言えよう。ゼロ・ウェイストを知ることは、「ゴミとは何か」を考えるきっかけになるだろう。上勝町以外に、福岡県大木町(人口1万4500人)が2008年3月にゼロ・ウェイスト宣言を行った。神奈川県葉山町(人口3万人)は2009年の宣言に向けて準備中。東京都町田市(人口41万人)と熊本県水俣市(人口2万8000人)が現在、ゼロ・ウェイスト宣言を検討中だ。
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