ブッシュの8年が、米国の一極支配を終わらせ、世界各地の紛争を招き寄せた。(じじ放談) | 日本のお姉さん

ブッシュの8年が、米国の一極支配を終わらせ、世界各地の紛争を招き寄せた。(じじ放談)

ようちゃん、おすすめ記事。↓
▼ブッシュの8年が、米国の一極支配を終わらせ、世界各地の紛争を招き寄せた。(じじ放談)
米国中枢部への旅客機による同時多発テロからすでに7年が経過した。時間の流れは速い。世界貿易センタービルに旅客機2機が激突し、高層ビルが崩壊する映像が今でも鮮明に残っている。直後、ブッシュ大統領は「国際テロ組織アルカイダの犯行」と断定し、米国議会で「テロとの20年戦争」を高らかに宣言した。ブッシュは何度も「ジャスティス」という言葉を使った。正義は米国と共にあるという確信に満ちた「宣戦布告」であった。米国民を初め世界中が米国の「対テロ戦争」を支持した。ブッシュが最も輝いていた時である。

米国は即座に行動を起こした。アフガニスタンへの空爆を敢行し、難攻不落といわれたタリバンの要塞をたちまち攻略した。余勢をかってイラクに侵攻し1か月で制圧した。世界は「さすが米国は強い、向かう所敵なし」と感じた。だが、振り返ってみると、米国のアフガン制圧は「ロシアが支援していた北部同盟やイランが支援していた部族組織」の地上戦闘に依存した勝利であった。メディアはもっぱら米国の巡航ミサイルや爆撃機による空爆の成果を宣伝したから、部族連合による地道な地上戦の役割が過少評価された。米国は約1か月でイラクのフセイン軍を撃破したが、早すぎた勝利であったから、武器弾薬を温存したフセイン軍残党の掃討作戦に四苦八苦した。イラクのゲリラ戦は激化し米軍の死傷者も激増した。イラク駐留米軍は、治安を回復するため、旧フセイン軍残党の将校・兵士を大量にイラク治安軍に登用した。ようやくイラクの治安が回復した。(アフガン戦争開始から7年。米国の威信は失墜したのか?)
8月27日付け日本経済新聞は「米の威信低下、世界に影」と題する以下1,2,3の記事を掲載した。(米コロラド州デンバー=丸谷浩史記者)

1.グルジア紛争、北朝鮮の核施設の無能力化中断、アフガニスタンの治安悪化、世界で相次ぐ地域の不安定化は、テロとの戦いを主題に据え、8年間の苦闘を続けたブッシュ米政権の退場が近いことと軌を一にしている。イラク戦争の泥沼化によって、米国の威信は国内外で低下、各地に生じた「力の空白」をさまざまな国や勢力が埋めようとしている。

2.ブッシュ大統領は2期目になって国際協調路線に転換し、欧州との間に生じた亀裂の修復を模索、核実験まで強行した北朝鮮の核保有は黙認する形で対話路線に踏み出した。揺れる米国の姿に、超大国の自信や権威はうかがえない。任期切れまで5か月を切り、レームダック化が進む政権の足元を、世界は見透かしている感がある。

3.11月の大統領選挙で、共和党は外交で基本的にブッシュ政権を継続し、民主党は国際協調重視の路線を敷く。多極化した世界は次期米大統領の出方をうかがっている。

日経新聞は表題で「米国の威信低下」というが、丸谷記者の報告では「米国の一極支配が崩れ、世界は力の空白を埋めるべく動き出した」旨述べている。つまり、米国の力を世界が恐れなくなったという。「威信が低下した」というより、「米国の威信が失墜した」というべきだろう。編集者が米国に配慮し穏便な表現に改めたのではなかろうか。

8月27日付け日本経済新聞は、「覇権国家」である米国の威信を失墜させる以下の記事を掲載した。(以下、表題のみ記す)
(1)ロシア大統領「新冷戦恐れない」。南オセチアなど独立承認。駐留正当化狙う。グルジア紛争で米露の応酬さらに激化。
(2)北朝鮮「核無能力化を中断」。米のテロ指定継続非難。「厳格な核検証」反発
(3)アフガン、治安悪化深刻。邦人男性拉致。人道組織も標的に。タリバン攻勢対応後手
(4)パキスタン大統領選・ザルダリ氏ら出馬
(5)タイ・首相府で座り込み。反政府デモ、1万人以上
(6)米住宅、低迷続く。4四半期連続で下落(4-6月)
以上のほか、イラン大統領は「ホルムズ海峡を封鎖できるよう新たにロシア製潜水艦3隻を建造する」と宣言。ベネズエラはロシアからミサイル等兵器を購入することで合意、イランはロシア製原子力発電所の建設に着手、ミャンマーも同じくロシア製原子力発電所を導入する旨合意。

第1.(ブッシュが「悪の枢軸」と位置付けた北朝鮮とイランから足元を見られコケにされた)
ブッシュがアフガンとイラクを軍事的に制圧した当時、北朝鮮とイランは「次は自分の番か」と脅えていたに違いない。だが、イラクの反政府勢力との戦で米軍の死傷者が激増、米国内で反戦気分が盛り上がった。アフガンでもタリバンが勢いを増した。米国の脅威は巡航ミサイルと空母艦載の爆撃機だけで、米国陸軍の戦闘力は「恐れるに足りない」ことが万人の目に明らかになった。旧フセイン軍残党の力を借りなければイラクの治安を確保できないことがはっきりした。アフガンでもNATO軍の支援を受けているが、戦局は好転せず益々不利になっている。米国と戦争する場合「開戦初期の空爆をしのぐことが出来れば、つまり地上戦特に持久戦に持ち込むことができれば容易に負けない」ことがはっきりした。アフガンとイラク戦争で米国陸軍は弱点を露呈した。イランや北朝鮮は「米国に負けない戦争の仕方」を学んだ。

今回、北朝鮮が米国に対し「約束違反」と非難し、6か国協議の合意事項を一方的に破棄する行為に出たのも「米国をナメテいる」証拠である。人口2200万人の破産国家が、超大国であるはずの米国を脅しつけている。主客転倒というほかはない。イランやベネズエラも負けてはいない。平気で米国を挑発する。世界は米国がこれに激怒して「厳しい措置をとるのではないか」とかたずを飲んで見守るが、何も起こらない。どちらが親分か分からない。世界の警察官であったはずの米国が「犯人扱い」され、悪の枢軸側が「警察官らしく」堂々と振る舞うようになった。世界は、そしてロシアもこの光景を眺めている。米国の一挙手一投足を見守っているが何も起こらない。一度であれば「偶然だろう。米国も我慢し、大人の対応をしているのだ」と好意的にみるが、何度も同様の事態が発生する。そして世界は理解する。「米国の力が大きく堕ちている」ことを。エマニュエル・トッドは「帝国以後」という著作で「米国は自分の力に対応した弱小国家、つまり北朝鮮、イラク、イランを攻撃対象に定め、米国の力を世界に見せつけている」と主張する。米国の力を誇張してみせる演劇の適役に選任されたのが「イラク、イラン、北朝鮮である」という。だが今や、これら弱小国からも軽んじられ馬鹿にされるようになった米国、これら弱小国家から誹謗中傷されながら「耐えているだけ」の米国を、世界はどのように理解すればよいのだろうか。米国の力はせいぜい「人口500万人未満のグルジアやコソボを扱うのが精一杯」というのであろうか。

第2(米国はすでに覇権国家の地位を失っている)
1.覇権国家であるためには、世界中が「ダントツ」であることを認め、「束になってもかなう相手ではない。」と認識するほどに卓越した条件を具備していなければならない。世界の富の40%を保有し、世界に君臨するほどの軍事力を誇っていた1960年代までの米国は、名実ともに「覇権国家」とみなしてよかった。もう一方にソビエト連邦という準覇権国家もいた。

2.現在の米国で「覇権国家らしい」のは海軍と核ミサイルだけであろう。それ以外に覇権国家といえるほどのものは見当たらない。基軸通貨米ドルは、過去の遺産で食っているだけで砂上の楼閣である。世界が「米ドルの基軸通貨体制」という蜃気楼を実在するものと錯覚しているから存続できているだけかもしれぬ。世界が虚構に気づけば、たちまち「夢が覚める」という図式かもしれぬ。

3.米国に残された最後の虚構である軍事力に陰りが出てきた。米国は覇権を維持するのが益々困難になった。イラン、ベネズエラ、北朝鮮が米国の軍事力を恐れなくなったのは危険な徴候である。ロシアが久しぶりに「他国に軍隊を侵攻させ居座っている」のも、米国の軍事力を恐れていない証拠である。「戦争するか?」と脅迫しているといっても過言ではない。

4.米国と対立し、経済制裁等で迫害されている国家にとってロシアは「地獄に仏」と映っている。イラン、ベネズエラ、ミャンマーなどの反米国家がロシアに急速接近中である。北朝鮮も「ロシアに色目を使い出した」という雰囲気だ。

5.親米国家であったサウジアラビア等の湾岸諸国が、「非米」に転じ、ロシアへの接近政策に舵を切った。独・仏や我が国も「対米依存から脱却し多角的外交」に踏み出しつつある。結果、独仏も我が国もロシアとの貿易が急拡大中である。


第3.(米国の「覇権以後」に向けて世界は走り出した)
先述した日経の「米の威信低下、世界に影」という記事は、米国に配慮して「米国大統領の任期まで5か月未満であるから政権のレームダック化が進んでいる。世界は次期大統領の出方をうかがっている」と述べる。つまり、大統領選挙直近という特殊事情だから「力の空白が生じた」と弁解している。記者の本音ではあるまい。米国には「世界の覇権を維持する力がない」ことを理解していない者はいない。ブッシュ大統領が交代しても、米国が「覇権国家にふさわしい勢いを取り戻す」と考える者はいない。世界は「米国の覇権以後を読み込み始めた」というべきである。その一端が、ロシアの「グルジア侵攻」であり、北朝鮮の「核無能力化の中断」であり、イランの「ホルムズ海峡封鎖用の潜水艦3隻の建造」である。親米軍事独裁政権ムシャラフを辞任に追い込んだパキスタン与党が分裂したのも、米国の勢いがなくなった情勢と無縁ではない。アフガンにおけるタリバン勢力の伸長も欧米勢力との力関係の変化と考えてよい。

(さいごに)
長年、アフガニスタンで難民救済のための医療と、生活支援のための井戸掘りや灌漑施設の建設に取り組んできた我が国のNGOペシャワール会の伊藤和也(31歳)さんがタリバン勢力に拉致され殺害されたことは誠に残念である。伊藤氏はアフガン難民多数と共に「水の確保」という基本的インフラ事業に取り組み、アフガン民衆から支持され歓迎されていただけに、タリバンの拉致・殺害行為を許すことができない。見境のないタリバン勢力の行状を見るに、アフガンの未来は楽観できない。彼らが再び国家を統治しても「悪逆非道の政治を行う」危険が高い。
なお、拉致され殺害された伊藤和也さんを捜索すべく地元警察が700人以上も出動してくれた。ペシャワール会の支援活動はアフガン難民の心に希望の光をともしたのではないかと推察する。アフガンの大地に掘った幾千の井戸や灌漑用の水路は末永くアフガン難民を励まし続けるに違いない。今回の事件によりペシャワール会は日本に引き上げることになろう。ペシャワール会が、再び、アフガンの大地で復興支援事業並びに医療支援事業に取り組む日が訪れることを期待したい。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~