【日経ビジネス リポート】 「東京にあっても私学は厳しく、危機感は強い」
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【日経ビジネス リポート】 「東京にあっても私学は厳しく、危機感は強い」~さらば工学部(8)
東京理科大学・竹内伸学長に聞く
大都市部と地方の私立大学の置かれた状況の違いはどこにあるのか。日経ビジネス誌8月18日号特集「さらば工学部 6・3・3・4年制を突き破れ」の連動インタビューシリーズの第8回では、首都圏の大学として東京理科大学を取り上げる・・・ 。
大都市部と地方の私立大学の置かれた状況の違いはどこにあるのか。日経ビジネス誌8月18日号特集「さらば工学部 6・3・3・4年制を突き破れ」の連動インタビューシリーズの第8回と第9回ではこのテーマについて考えたい。今回は首都圏の大学として東京理科大学を取り上げる。
早稲田大学、慶応義塾大学を頂点に、首都圏の私立大学に学生が集まる傾向が強まっている。東京都新宿区に本拠を置く東京理科大学の竹内伸学長は、「東京にあっても私学は厳しい」と語る。私立大学は理工系であるなしに関係なく2極化が顕著になろうとしています。 早稲田大学、慶応義塾大学をはじめとして、東京六大学、青山学院大学、中央大学といった有力私立大学の工学部では学生は増える傾向もあります。私たちの大学は、何とか2極化の上の方につけている状況です。
・関西からも学生を取り込みたい。
全国の高校生の入学先が東京の大学に集中している面があるのでしょう。 私たちの大学については、元来、全学生の約7割が関東地区から来ています。ですから、私たちの大学はまだまだ全国ブランドとは言えません。いわば「東日本ブランド」です。関西に行くと、まだまだ知られていない。東京集中の恩恵を受けているとは言えないのです。 関東だけでは学生は集まりません。本校への北関東・南関東・東京地区からの志願者は2002年度入試で3万6726人でしたが、2006年度入試で3万 671人となりました。4年間で約6000人も減少したわけです。志願者全体はこの間、5万2774人から4万5269人と減っており、関東の減少が大きく響いています。私たちの大学でも学生募集に苦労しているというわけです。ですから、何とか関西に進出して、学生を獲得したいと考えています。今年で関東以外の都市を会場とした入学試験を行って3年目になります。今年度は札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡の5カ所で開催しました。来年度入試からは、6カ所目として、広島でも行います。私たちは「地方キャンペーン」をやっているところです。主に大阪府や広島県をターゲットとして、大学のPR行動をする。若い人たちにとってイメージは大切です。私たちの大学も、できれば、早慶並みに志願者を集めなければなりません。 10月11日には、「東京理科大学フェアin広島」を大々的に実施します。従来、大阪から西は、一気に福岡まで飛んでしまっていました。広島は空白地帯だったのです。関西の人の間ではどうしても京阪神の大学の人気が高いため、そこへ進学してしまいます。関西の方で「理科大」と言うと、私立の岡山理科大学の方が有名なのです。関西でも、東京理科大学を選んでもらいたいのです。今のところは、受験はしても入学まで至らないことが課題です。入学率が関東と比べるとどうしても低い。そのため合格者を定員の何倍も出さなければなりません。関東地区ならば20~40%で、東京は約25%です。それに対して、北海道は1~2%ほど。近畿で2~3%。 地方からの学生取り込みに力を入れていますが、まだまだ安心できません。
・理工系人材の65%が私学出身
東京にあっても危機感は強いですよ。国は私学を含めた底辺部分をきちんと手当てしてほしい。「イノベーション、イノベーション」と言います。確かにシーズを出すことは大切でしょう。しかし、イノベーションを形にしていくには、技術者全体のレベルが高まらないと実現はできない。今の国の科学技術政策は、エリート大学だけが視野に入っていることに不満があります。科学技術の平均的なレベルを上げようという意識がない。 やはり私立大学の教育が充実しない限りはダメなのです。理工系人材のおよそ65%は私学から出ています。日本の科学技術の底辺を支えているのは私学なのです。日本の科学技術のレベルは、どれだけ私学からいい人材を出すかにかかっています。突き詰めると私学への資金です。研究資金の偏在が起こり、“貧富の差”があまりに激しい。私学助成金は毎年1%ずつ減少する傾向にあります。その一方で、国からの競争的資金の半分は、わずか10%の大学に集中しています。本校は裾野でしかない。分配先のトップが入れ替わればまだいいですが、固定化してしまっている。どうか私学に目を向けてほしい。
・頭の痛い理科教育の荒廃
根本的には理科離れを食い止めることが大切です。結局、高校の教育に問題がありそうです。物理も化学も全然実験をしないと言います。ペーパーテストだけやるようなことになっている。何とかしないといけません。東京理科大学は、1881年に、「東京物理学講習所(1883年から東京物理学校)」として創設されました。理数系教員を輩出することを目的としていました。全国の中学校、高等学校で、本校出身の教員が教壇に立っています。 1980年代の終わりから、教員需要が減って、教職に就く卒業生はいったん激減しました。それが、最近、団塊世代の退職もあって、教員需要が再び増えています。私たちは、ここで優秀な理数系教員を出していかなければと、教職教育の授業を増やしています。2008年に、教職支援センターを発足させ、実践的な教職教育の体制を整えて、教員養成力を復活しようと考えています。 来年度には、新しい大学院として、科学教育研究科というものも作ります。専門性を備えた教員を養成するのです。さらには、科学に精通したジャーナリストになれるような、科学について啓蒙できる人材を養成していきたいと考えています。(談)
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