ロシアはグルジア問題で、対欧米「強硬路線」を選択し、全面的対決を決意したのか?(じじ放談) | 日本のお姉さん

ロシアはグルジア問題で、対欧米「強硬路線」を選択し、全面的対決を決意したのか?(じじ放談)

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▼ロシアはグルジア問題で、対欧米「強硬路線」を選択し、全面的対決を決意したのか?(じじ放談)
8月26日付け日本経済新聞は「WTO加盟:ロシア、交渉凍結も。グルジア巡りプーチン首相、米欧と対立姿勢。大統領NATOとの断絶示唆」と題する以下1,2,3の記事を掲載した。(抜粋)

1.ロシアのプーチン首相は25日、「世界貿易機関(WTO)加盟の利益は見られない。」と述べ、WTO加盟交渉を凍結する方針を表明した。具体的には金融・サービス分野への外資の参入規制の緩和や農業市場の開放などの合意事項がほごにされる可能性がある。

2.メドベージェフ大統領も同日、北大西洋条約機構(NATO)との関係断絶も辞さない強硬姿勢を示した。NATOが19日の緊急外相理事会で(ロシアとの)協力関係の見直しを示唆してロシアにグルジアからの軍の完全撤退を求めたことに関し、メドべージェフ大統領は「ロシアは関係の完全な断絶を含めて準備ができている。ロシアは困らない」などと発言した。アフガンでの対テロ作戦でロシアの協力を求めてきたNATOの足元を見透かし、揺さぶりを掛ける狙いとみられる。

3.ロシアはNATO加盟を掲げる親欧米政権を崩壊させ、ロシアを迂回する石油と天然ガスのパイプラインが経由するグルジアを旧ソ連時代のように支配下におく思惑がある。

第1(ロシアの強硬姿勢は戦略的なものか?それとも戦術的駆け引きなのか?)26日付け日本経済新聞はロシアの強硬姿勢の背景を以下のとおり解釈する。
(1)NATOはアフガンの平和維持作戦を巡り軍と物資の輸送でロシア領内を通過させるよう要請。「NATOはロシア以上に協力を必要としている(ラブロフ外相)」と判断している。
(2)米欧はイランの核開発問題でもロシアの協力が不可欠だ。
(3)ロシアへのエネルギー依存を深める独仏などはロシアとの急速な関係悪化は避けたいとの本音が見え隠れする。
(4)「誰もグルジアのために大国ロシアとは戦わない」ーロシアの強硬姿勢の裏にはそんな計略がある。

今回、グルジア問題についてプーチン首相(皇帝)が「WTO加盟は必要ない。」と米国を牽制した。同日、子分のメドベージェフ大統領が「NATOとの関係断絶も辞さない」と発言した。プーチン皇帝が前面に出てきた。(大国ロシアの復活を悲願とするプーチンの心理を解析する)
東独が西独に併合される契機となった「ベルリンの壁崩壊」当時、プーチンはKGB中堅官僚として東独に駐在していた。「なぜ、東独軍は東ベルリン市民の暴動を鎮圧しないのか?」と激怒したといわれる。直後、米国と世界を二分したソビエト体制が崩壊した。東独を初め旧ワルシャワ条約機構傘下の国々はすべてNATOに吸収合併された。旧ソ連の共和国であったバルト三国も率先してNATOに加盟した。プーチンはバルト三国に隣接するサンクトペテルベルグ市の公務員として、旧ソビエト連邦崩壊を「歯ぎしりしながら」眺めていた。ロシアの尊厳は失われ、外国資本が土足で乱入し、マフィアが跳梁跋扈した。21世紀になり、折からの資源価格の高騰でロシアはようやく一息ついた。対外債務を完済し、外貨準備も世界第3位になった。ロシアが国内問題に忙殺されている間に、ロシアの国力衰退を馬鹿にしたNATOが着々と東方に勢力拡大した。ついに、ロシアの伝統的防衛ラインであるウクライナやグルジアにも魔の手が延びてきた。ナポレオンやヒットラーのロシア侵攻は軍事力に依拠したものであるが、昨今の欧米勢力の東進は「非暴力的な手法で領地を拡大する」戦術である。「選挙で親欧米勢力に実権を掌握させる」手口である。

ロシアの最大の国益は何か?
第1に外敵から国家を防衛し、ロシア国民の生命と財産を守ることである。これに勝る課題はない。次に、国家経済の発展や近隣諸国との友好親善である。NATOや欧米諸国との友好親善がこれに当たる。優先順位を間違えてはならない。国家の安全保障こそすべてを犠牲にする覚悟をもって対処すべき最重要課題である。ロシアの、そしてスラブ民族の何物にも代え難い文化的伝統である。ヒットラーの侵略を撃退し、ヒットラー軍を壊滅させた戦争もこの精神で行われた。物事の順番を間違えてはならない。

(グルジアへの強硬姿勢に対するロシア国民・ロシア軍の支持)
テレビ報道によると、ロシア国民の圧倒的多数が今回のグルジア侵攻作戦を支持しているという。もちろん「大国ロシアの復活」を狙う軍部が反対するはずはない。南オセチア自治州の住民多数はロシア国籍を保有しているという。ロシア軍はロシア国民を救済するために他国(グルジア)に侵攻した訳である。我が国は北朝鮮に多くの日本人を拉致されながら「お涙頂戴」という情けない状態である。「カネで取引しよう」と持ちかけている。国家・民族としての矜持はかけらも見られない。独立国家グルジアに軍隊を侵攻し駐留させることは、米国のイラク駐留、欧米軍のアフガン駐留と同様不当なものである。米国は米国中枢部へのテロで数千人が殺害されたとしてアフガンに報復攻撃を仕掛け、おそらく数十万人を殺害した。イラクでは合理的理由もなく一方的に軍事占領し同程度の住民・兵士を殺害した。事の善悪はともかく、これが現実である。大国は力で弱小国をねじ伏せることができる。我が国は憲法第9条で自ら「腰縄手錠をかけ」お飾りの自衛隊しか持っていないから拉致被害者を救出することもできない。「国民の命と暮らしを守れない日本」を実証しているのが「拉致問題」である。

(プーチンとメドベージェフが強硬姿勢を打ち出した背景)
米国やEU並びにNATOへの揺さぶりという戦術的な意味がないとはいえない。「敵の出方」を窺っている側面もあろう。湖面に石を投げて「波紋の広がり方」を眺めているのかもしれぬ。だが、「単なる戦術」と見るべきでもない。「欧米・NATOと断絶し、対立する」最悪の事態を想定していることはメドベージェフの発言から推察することができる。「やれるなら、やってみよ」という開き直りの姿勢が見える。「共倒れも辞さず」という覚悟ではないか。ポーランドとチェコに「米国がミサイル迎撃システムを配備する可能性」が高くなった、ウクライナとグルジアのNATO加盟も現実的課題になった。ロシア側に立つと「ヒットラーがポーランドを越えてモスクワに侵攻してきた」と同様の危機感を抱いているのではないか。「ロシア存亡の危機」と感じているのではあるまいか。ウクライナ・グルジアを防衛ラインと規定するロシアは、グルジア問題で妥協するつもりはあるまい。「対NATO戦争も辞さない」という覚悟を決めたのではあるまいか。これまで「対米融和」「対NATO融和」を優先したばかりに、NATOの東方拡大を許しロシアの国益を損なったと反省しているのではないか。

第2(ロシアと欧米の対立が激化した場合、世界はどうなる?)
ロシアは大部分のロシア軍を自国領や南オセチア自治州に撤退している。だが、数百人規模の治安維持軍をグルジア領内に残留させている。交通の要所に検問所を設け、主要な港湾を押さえている。つまり、グルジアを「兵糧攻め」にして、サーカシビリ大統領から民心を離反させ追い落とす戦術をとっている。NATO軍は海軍艦艇で救援物資を運びこんでいる。ロシア海軍と対峙する事態は避けている様子である。軍艦派遣の目的は「救援物資を輸送して支援しているとのイメージ作り」ということであろう。輸送艦ではなく、わずかしか運べない駆逐艦の甲板に並べた救援物資がいかにも「作為」を感じさせる。米国は「同盟国を見捨てない」という形式を踏みたいのであろう。イラク・アフガンで手一杯の米国並びにNATO軍には、ロシアと戦争する余力はあるまい。仮に通常兵力で戦争しても「勝てる」という見込みはない。さらに、ロシアのエネルギー資源とアゼルバイジャンの原油が途絶えればヨーロッパ経済は大混乱に陥る。治安も悪化する。仮に核戦争が勃発すれば人類は地上より消える。という訳で、ロシア軍がグルジアやアゼルバイジャンに侵攻して占領しても、さらにウクライナの親ロシア勢力が分離独立の内戦を惹起しても、NATO軍が介入すると想定することはできない。若干の援助物資と口先介入、加えて「ロシアへの経済制裁」程度であろう。
ロシアは「自給自足できる国」である。長期戦に耐えることができる。その上、ロシアがNATOと対立することを願っている国家がある。イラン・ベネズエラなどの反米・反西欧国家である。彼らは「ロシアを盟主と仰ぎ」団結するかもしれぬ。その他、アフガンのタリバン、イラクの反政府勢力も「米露対立の歓迎派」であろう。米露が対立すれば、欧米軍の中東地域からの撤退が早まると期待しているはずだ。アフガンの旧北部同盟はロシアとの関係が深いから政権を離脱するかもしれぬ。テロ指定国家解除を先延ばししている米国の態度に腹をたてた北朝鮮も「ロシア皇帝陛下」の傘下入りを狙う。朝鮮総連機関紙「朝鮮新報」のウエブサイトで駐北朝鮮ロシア大使館関連の記事が増えた。その兆しかもしれぬ。中国共産党胡錦涛指導部は困難な立場に立たされる。中国は欧米・日本との貿易で生計をたてているから、ロシア陣営に与して欧米日と断交する訳にはいかない。だが、欧米日側に立つと「上海協力機構」は崩壊する。ロシアや中央アジアからの資源を輸入できなくなる。「二者択一」の難問を前にして中国は身動きがとれない。

我が国は、米露が喧嘩状態になれば「北方四島の帰属問題を円満解決して、日露平和条約を締結する」という夢が消える。大旦那の米国の意向に逆らうことはできないから、ようやく動き始めた「日露平和条約締結に向けた交渉」が中断される。北方四島返還はさらに数十年も先送りされる。グルジア問題で、米国とロシアが対決するのは我が国の国益に反する。独仏もそして中国も同じである。今こそ、我が国が先頭に立って、米国とロシアの関係調整に乗り出すべきである。利害を共有する独仏と連携して対処してもよい。駐日グルジア大使館は「我が国グルジア政府を支援してほしい」と願っている。事情は理解できるがむつかしい問題である。NATOとロシアが円満な関係を築くためには、「文明の衝突」の著者ハンチントンがいうように、ローマ教会と正教会という文明の断層線(ベラルーシ、ウクライナ南部はロシア圏)で勢力圏を分けるほかあるまい。グルジア・アゼルバイジャンはロシアとNATOの共有地とすべきだろう。理念的には「民族自立」が原則であるが、わずか数百万人規模の国家で、かつ資源や軍事面の要所に位置するグルジアやアゼルバイジャンが「非同盟中立」を確保できる力はない。政情が安定する国家として存続するためにはやむをえない。また、ロシアが提案している「ポーランドとチェコのミサイル迎撃システムを撤去し、アゼルバイジャンとグルジア付近に米露が共同で管理するミサイル迎撃システムを設置する方式」は一考に値する。こうなると、「欧米よし、ロシアよし、日本よし」の「三方よし」になるのだが、果たしてどうなるか。人間と同様国家も「その場の感情」で行動することが多いから何ともいえない。人類にとって、そして我が国にとって最悪の事態が発生しないことを祈る。米国やロシアが理性的かつ合理的対応をとるよう期待したい。
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