福島大野病院事件で感じたこと (Heja Japan )
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2006年2月18日、不幸な患者さんを救えなかった産婦人科医が逮捕された。ようやく、昨日、刑事裁判で無罪判決が下った。
ひとまず、加藤先生にはお疲れさまでした、と申し上げたい。無罪判決といったって、職業柄、おめでたさとはほど遠い。無念の思いが消え去るはずは無いのだから。いつか、ご遺族の方々に伝わる時が来るとお祈り致します。この裁判を通して学んだ、私にとって最も衝撃的なこと。それは以下の下り。記者会見より。
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質問:県の事故調査委員会では、「剥離を中断して、子宮摘出に進むべきだ」としているが、この報告書が出たときに違和感を覚えたのか。また今日の判決を聞いてあの報告書をどう思うか。
加藤医師:報告書が出た時点でやはり違和感があり、当時の事務長に話をしたが、諸々の事情から、「患者様の保障のため」ということを盾に何も言うことができない状態になってしまいました。報告書には県の病院局の意向も入っていると聞いていましたので、今日の日が終われば、病院局の方と話することができますし、調査委員会の先生方とも話をすることがあるかと思いますので、その時にまたいろいろな話をお聞きしたいとは考えています。
質問:「保障のため」というが、具体的に誰が言ったのか。
加藤医師:僕には事務長がそう話していました。実際に、本当にそうなのかは病院局や調査委員会の方と話して、お聞きしたいとは思っています。
平岩弁護士:事故調査委員会の報告書では、「癒着と分かった段階で、子宮摘出に移行すべき」という書き方がされている。そうれあれば、検察官は真っ先に調査委員会の報告書を「甲1号証」として提出するはずですが、証拠請求すらしていない。それは、証拠として出された場合には、弁護側から当然作成経緯について痛烈な反論が予想されると判断したからだと思います。このことは当初から弁護側が予想していて、冒頭陳述からそうした主張をしています。県立大野病院事故調査委員会報告書 平成17年3月22日
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福島県調査委員会の報告書と今回の裁判を通して明らかになった事実とは雲泥の差があるのである。県の事故調査委員会の報告が警察の介入を招いたきっかけとも言われている。調査委員会と加藤先生の見解が異なっていたことが推測される。それが、事故の事実に迫り、妥当な意見だったならともかく、当の検察に証拠採用もされぬほのものだったことが判明したと言えよう。一説には保証のための報告書と言う見方もあった。はからずも、記者会見では、やはりそうだったのかと思わされた。これ、本当に恐ろしいことだ。自治体、お役所は横並びの対応を取ることが多いとされる。今までにも公的病院における、たくさんの信じられない和解や示談成立を見てきた。この裏に当該自治体の示談金を払う目的のために作られた調査報告書があるのじゃなかろうか?そんなことを想像すると、公立病院だけは働きたくないと強く思った。ご遺族、ご家族の慰撫と係争処理のために医師が人柱にされて良い訳無いのである。
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次に、この裁判でご家族の求める真実は明らかになったのだろうか?医学的には真実は明らかになったとおもうのだが、やはりご納得はされていないようだ。お気持ちはお察しできるが。だって、県の調査委員会と裁判で分ったことの乖離が大きすぎるもの。これだけ違えば、担当医にウソがあるのじゃないか、と普通疑うよな。この裁判を通して改めて思うのが、公平な第三者の専門家集団による調査機関と中立な第三者の患者対応機関が必要だということ。今回で言えば福島県とはなんの関係もない純粋な専門家による調査機関が必要だったのだろう。今回のように「保証」のために、調査がゆがめられてしまう恐れがあるような、危ない調査機関ならば、間違った”真実”を伝え、ご遺族の気持ちをかき乱すだけでは無く、担当医の逮捕にまでつながることがはっきりした。そんな調査機関ならばない方が良い。中立公平な調査機関の設立が望まれる。それが、真実を知る第一歩。しかし、それには関係者の免責を前提にしなければ、真実は解明しがたい。現に先進諸国の航空事故調査委員会、医療事故調査委員会は免責を前提にし、真実の解明に重きを置いている。それは、真実の解明が、当事者をばっして、ご遺族の慰撫に答えるよりも重きが置かれているからだと思う。事故、ミスからの教訓を後世に伝え、対策を練ることが再発防止に最重要とされるからに他ならない。事故やミスの真実を解明し、後世に役立てること。これは多くの医療事故、ミスなどの被害者の方々が望まれることだ。その思いは加害者となってしまう医療従事者と共有できるものなのだ。それから、医療に落ち度があろうと無かろうと、ご遺族、被害患者さんのケアをどうするか。そこも大きな課題だろう。これも第三者でなければケアは難しいだろう。
そして、マスメディアにはもっと中立性と客観性をもってほしい。今回の報道で加藤医師の写真を載せ、悲嘆にくれる家族の肉声をのせながら、「帝王切開死、医師無罪」と言う見出しは暗に不当判決とでも言いたげな、心証操作を行なっているように思える。こういう表面的で扇情的な記事しか書けないのだろうか?どうすれば救えたのか?を考えれば、当時の田舎の産科の現状や医師不足、医療現場の疲弊など、国が放置してきた医療の構造疲労を抜きには考えられないだろうに。そのようなところを掘り下げるような骨太の記事、見て見たいなぁ。そして、肝心の厚生省。コメント無いのはちーと寂しくない?適切な医療の提供は県や国の仕事でもあるのだ。医師一人ではどうしようもない事例はシステムが救うしかないのだから。再発防止に当たり、どうすべきか、そして、なにをとりくんでいるのかをアピールしても良かったんじゃなかろうか?
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▼げに恐ろしきは医療事故調査委員会(Heja Japan )
大野病院事件にて、あらためて第三者の専門家集団による調査機関と中立な第三者の患者対応機関が必要だということを痛感した。一方で調査委員会を設立することの恐ろしさも、まざまざと感じた。この事件で設置された福島県調査委員会の報告書に医師の明らかな過失と受け取られかねない、問題となる記載があったのである。この調査委員会の動きが発端で警察の介入をよんだとされる。この報告書の作成に当たって、担当医やその師匠である教授から意義を申し立てられたにもかかわらず、斟酌しなかった訳だ。まぁ、第三者委員会であるから、耳を貸さないのもわからないでもないが、その理由が「患者さんに補償ができなくなる。」妙な意図が働いたことが伺われる。
以下、医療維新、佐藤章・福島県立医大産婦人科教授が判決直後の真情を吐露より。
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――医療事故の調査と言えば、「県立大野病院医療事故調査委員会」がまとめた報告書が発端になっています。以前、先生に、「加藤医師の過失と受け取られかねない部分があるので、訂正を求めた」とお聞きしました。
・はい。ここ(佐藤先生の教授室)に院長と県の病院局長が来て、「もうこれで認めてください」と言うから、「ダメだ」と言ったんです。
――それは遺族への補償に使うからですか。
・そうです。「先生、これはこういう風に書かないと、保険会社が保険金を払ってくれない」と言ったんです。
――でも、県はそれを否定しています。
・絶対にそんなことはありません。医療事故調査委員会の委員の先生方も、そう(補償に使う)と聞いているそうです。
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この医療事故調査委員会には当然、医師が含まれていた訳である。要は、県は気の毒なご家族に保証をあて、そうそうに和解してしまいたかったに違いない。ベストを尽くしたにもかかわらず、残念な結果となり、ただでさえ打ちのめされていただろうに、調査委員会から無体な追い打ちをかけられ、ご家族には土下座までさせられ、逮捕までされてしまい、マスコミには殺人者のような扱いをされ、気概も誇りも傷つけられた加藤先生のご心痛は想像もつかないほど大きな物であろう。この事故調査委員会が妙な報告をしていなければ、なにも起こらなかったかもしれなかったのである。警察の唯一の功績と思えるのは、このような不可解な調査委員会がもたらす、実害を広く知らしめた点に思える。もし、警察が釣られて動かなければ、おそらく、医師が煮え湯を飲まされ、人殺しと呼ばわれ、誇りと名誉を傷つけられる代償と引き換えに、ご遺族に和解と慰謝料が渡ったのではないかと推測される。もう一件、恐ろしい事故調査委員会の被害により逮捕されてしまった、有名な冤罪事件がある。医師ならば知っておかねばならない、2001年の東京女子医大事件。事故責任を押し付けた大学に最も怒りを感じる。こともあろうに勤めていた女子医大の調査委員会の誤った報告書が元で冤罪になってしまったのだ。当然、内部のお医者さん達が作った報告書な訳だ。これらの2件の冤罪事件のように、専門家集団による調査委員会ですら、調査委員会のありようによっては冤罪事件が頻発しかねないのだ。
調査委員会が情に流されたり、世論に迎合したり、あるいは大きな組織を守るために、あるいは政治家や権力者の口利きがあったりして、不当に担当医が人柱にされては絶対にならない。
第三者による中立性を保つっていうことが、いかに難しいことか。このような2例の実例を鑑みれば、過失があろうと無かろうと、まず、免責の保証が無ければ、調査委員会で安易に協力もできないだろう。そして、調査委員会の暴走を防ぐにはどうすべきか。調査委員会の監督なども必要になろう。
マスコミや一般の方々が医療事故調査委員会に信頼や安心を求めるのとどうように、医療従事者にも信頼と安心が得られる事故調でなくてはならない。
なにより、医師にとっては医師の信頼のおける機関でなくては調査委員会設置に同意は難しいのではないか?今取りざたされている、厚生省または天下り組織の病院評価機構などは、多くの医師から信頼を失っている。そんなところに、透明性、中立性の担保も不確かなまま、拙速に設置しては大変なことになりかねない。
今回の裁判の判決とその後に出された警察庁長官の談話より、ひとまず、医療萎縮を回避させようという、意図が感じられる。拙速に妙な事故調査委員会を設置するよりは、医師からも信頼が寄せられる調査委員会の設立にじっくり取り組む時間ができたのではないだろうか?今回の裁判で重要な各界の発言を以下に記す。
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大野事件裁判判決より
「本件では、一部の文献と臨床上との認識や見解が一致していない。検察の主張は、一部の文献の記述に依拠しているとは認められるが、それを医学的準則として採用することはできない。医師に行為義務を負わせ、その義務に反した者に刑罰を科する基準となり得る医学的準則は、臨床に携わる医師が当該場面に直面した場合に、ほとんどの者がその基準に従った医療措置を講じているといえる程度の一般性、通有性を具備したものでなければならない。
このように解さなければ、医療措置と一部の文献に記載されている内容に齟齬があるような場合、医師は容易かつ迅速に治療法の選択ができなくなり、医療現場に混乱をもたらす。また刑罰の科される基準が明確でない。また、医療行為が身体に対する侵襲を伴うものである以上、患者の生命や身体に対する危険性があることは自明であり、そもそも医療行為の結果を正確に予測することは困難である。医療行為を中止する義務があるとするためには、検察官が、当該行為に危険があるということだけでなく、当該行為を中止しない場合の危険性を具体的に示し、より適切な方法が他にあることを証明しなければならず、このような立証を具体的に行うためには少なくとも相当数の根拠となる臨床症例の提示が必要不可欠である」
医師法21条、異常死の届け出について、全国医師連盟の会見より
福島地裁が医師法21条における異状死について、「診療を受けている当該疾病によって死亡したような場合は、異状の要件を欠く」という見解を示した点を高く評価した。代表の黒川衛氏は、「これまで異状死の定義はあいまいだったが、今回の福島地裁の見解により、異状死として届け出るケースをある程度判断しやすくなるはずだ」と語った。
医療への捜査、適切に対応 大野病院事件で警察庁長官
また、吉村長官は一般論とした上で「警察として医療の場での事件、事故にどう対応するかは簡単にいかない部分がある。医師が医療過程でどのような具体的措置を講じるべきか人の生死を左右する決断をする際、警察の捜査が消極的な方向に影響を与えることはあってはならない」との考えを示した。
最後に前出の福島医大、佐藤教授の発言より
今回のように刑事訴追に使われる可能性を考えると、事故調査報告書をどう書けばいいか、難しいですね。厚生労働省が考える「医療安全調査委員会」も、うまく機能するのか。だから私が思うのは、行政ではなく、医師同士、専門家同士が調査して、「これはお前、ダメだ」などと自浄作用を働かせる仕組みの必要性です。そうでないと、国民は納得しないと思います。
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現実離れした上に、医師の人権を無視されそうな罰則規定までついてきそうな事故調査委員会が、信頼揺らぐ厚生省またはその関連団体に拙速に設置されるくらいなら、医学会が透明中立性のある、医師に信頼される調査組織を作った方がよっぽどいい気がしている。専門家組織の行った調査は検察に尊重されるのではないだろうか?ともあれ、各学会、医師会には軽々に厚生省案に突っ走って欲しくない。慎重な制度設計を求めるとともに、厚生省に頼らない道を模索すべきでないかとも思う。だいたい、医療行政のめちゃくちゃぶりを見ていると、こんな重大な事故調を運営する能力があるとは私には思えない。
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ようちゃん。↓
★スウェーデンで勤務する医師の 解説を詠んでみると「医療事故どうするかの結論としては、 医師に免責を条件に 真実を話させ、事故の再発を防ぐ、患者には訴訟させない。これしかない。現に北欧で やっているんだ。」と現に「被害者」として 係争中の方からは、「とんでもない!許せない!」として 一蹴されるであろう。ことを 力説されてる。>と日本とスェーデンの違いを踏まえて書いています。
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