▼“自主流通小麦”、世にはばかるメーカーへの直販がもたらした、顔の見える小麦作りの喜び(日経)
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▼“自主流通小麦”、世にはばかるメーカーへの直販がもたらした、顔の見える小麦作りの喜び(日経)
国産小麦の流通が劇的な変化を見せ始めた。十勝の北海道ホープランドとおやつカンパニーが始める小麦の契約栽培は、これまでになかった作る喜びを農家にもたらした・・・ 。昨年の農政改革に諸手を挙げて喜んだ男がいる。これで丹精した小麦を食品メーカーに直接売ることが出来るようになった、と小躍りするのだ。 それは、生涯の目標として胸裏に温存していた製粉工場を仲間と建設するという夢を引っ張り出すことにもつながってきた。男の名前は、妹尾英美、北海道十勝平野のど真ん中で110ヘクタールの農地を持ち、小麦や野菜を作る64歳。
・生産者と食品メーカーが直接取
国産小麦の流通が劇的な変化を見せ始めた。2007年4月、食糧法(主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律)が一部改正、そのことが大幅な規制緩和となって、小麦生産農家と食品メーカーの直接取引が可能になった。これにより小麦市場に新たな事業が誕生しようとしている。 小麦は長いあいだ政府の干渉作物だった。生産される小麦は政府が買い上げ、その後、製粉会社などに売り渡し、製粉会社は民間企業へ売却するという形態が採られてきた。これが平成10年ころから、徐々に民間流通が取り入れられていき、今では全量民間流通に委ねられることになった。従来は、直接取引するとなると、ヤミ米(自主流通米)のような位置付けにならざるを得なかったが、それが公認されることになったのだ。 小麦を販売するのは、北海道・幕別町にある農業生産法人、北海道ホープランド。買うのは三重県に本社を置く、おやつカンパニー。8月19日に同社の松田好旦(よしあき)社長が北海道ホープランドの社長、妹尾英美さんを訪問し、小麦粉を直接買い付ける契約条件を整えた。 取引量は、2008年度産は約60トン(製粉後の粉ベース)。来年の夏に収穫する分も同程度を予定し、再来年は大幅に増量するという。さらに、ゆくゆくは、おやつカンパニーが年間に使用する小麦粉1万2000トンのうち、約20パーセントまで取引量を増やしていきたいという。 直接取引で何が、どう変わるのか。
・国産小麦がどこで手に入るか、最初は見当もつかなかった
小麦農家はこれまで、手塩にかけた小麦が、どこでどんな商品になるのか、誰に喜ばれているのか、見当がつかなかった。妹尾さんが言う。 「長い年月をかけて、それこそ、先祖の代から耕作技術を確立してきた小麦も、これまでは、どんな製品になっているのか、具体像がつかめなかった。それが来年は、おやつカンパニーさんの、かれこれ、という商品になり、それをおいしく食べてくれる人の表情が見えるようになるのですから、農家冥利に尽きるというものです」 いっぽうの、おやつカンパニーは、国内生産者の顔が見える「安心・安全」を消費者に訴求することが出来る。食の安全性追求という、高邁な精神のアピールは、食品会社にとって無償の価値を生むことになる。 同社は1959年「ベビーラーメン(のちにベビースターラーメンと改称)」を世に出したことで知られている。スナック菓子やカップラーメンなどを製造、販売する会社だ。来年は「ベビーラーメン」の誕生から50年を迎える。その周年企画として国産小麦を使用した製品作りの企画が持ち上がった。 担当のマーケティング室主任・福西正雄さんは、「国産小麦が、どこに在り、どのように入手できるものか、まったく見当もつかず、農業関連団体など方々へ電話をした末に、北海道ホープランドの妹尾さんに行き着いた」と、直接取引の経緯を話す。 「およそ60トンの買い付け量は、当社が1日に使用する小麦の量に過ぎませんが、それでも付加価値をつけながら食の安全と安心に対する会社の姿勢を打ち出していくきっかけにしたい」 今のところは、製品のすべてを国産小麦に切り替えるというよりも、広報宣伝活動の一翼を担うことが出来れば、周年記念事業は成功、と話す。 「とりあえずは『ベビースターラーメン』で妹尾さんの小麦を使わせてもらう予定です、その後は『フランスパン工房』(昨年発売されたヒット商品)でも使用が可能かどうか、研究していくことになります」
・生産者が作り易い品種ばかりを作りつづけてきた
今後、こうした食品メーカーが増えることが予想される。生産者はこれまで、小麦が国に管理されていたため、耕作し易い品種(うどん用に品種改良された小麦)を生産しつづけてきた。 そのために、消費量が伸びないうどん用小麦は余剰気味になっているのが現状だ。反対に、市場が求めるパン用途の国産小麦は病害虫に弱いなどリスクが大きいため、ごくわずかな量が作られてきたに過ぎない。 しかし、食糧法の改正によって、今後は需要側のニーズに応える形で小麦が作られる可能性が高まった。パン業界ひとつとってみても、これまでは、国産麦か外麦かというこだわりはほとんど無かった。 それが、近年、消費者の食の安全性を求める機運が社会現象に発展し、国産小麦の株は上がる一方となっている。製品に国産小麦を使用していることを表示したいメーカーは少なくないはずだ。 妹尾さんは、そのことについての期待をこう語った。 ニーズに応えられる技術を持った農家には絶好のチャンス「ぜひ、こんな小麦を作って欲しい、といったリクエストを生産者に出してもらいたい、食品メーカーと共に育っていくのが農家の喜びなんですよ、国に管理されたころは、品質が良かろうが悪かろうが政府が買い上げてくれましたから、努力しない人もする人も、等しく収益が得られた。これからは違います。良質の小麦が作れない農家は淘汰されていくはずです、需要者の要求に応えていく技術を持った農家には、チャンス到来というわけです」 北海道ホープランドとおやつカンパニー、2社の新しい試みは、小麦の関係者にどう映っているのか。 これまで取材を重ねてきたオホーツク沿岸の農家の、特に若い後継者がある生産者は、「息子の時代の農業を考える上で大きな興味」と言い、今後も引き続き情報が欲しいと語った。 また、十勝の小麦農家、集荷業者、JA農協など、小麦に携わる関連業者も、一様に時代の趨勢と分析しながら、「近い将来、確実に自分の問題になる出来事」と受け止め、この試みの推移を注視していく姿勢だ。 帯広で1950年からつづく「ますやパン」(満寿屋商店)の杉山雅則社長は、この試みに注目する1人。「これまで多くのルールに縛られてきた小麦ですから、一戸の農家と食品メーカーの間で直に取引されるということは、衝撃的なニュースです」と、十勝産小麦の新たな進展に大きな期待を持つ。その一方で「心配なのは大手のパンメーカーの動きです、潤沢な資金で国産小麦を根こそぎ持っていきかねません、そうなれば、中小はひとたまりもない」と危惧も語った。
・さらに自前の製粉工場が持てれば、小ロットでも売れる
農業生産法人・北海道ホープランド代表の妹尾さんは、さらなる高みを見据えている。十勝に製粉会社を作る構想だ。 「十勝はこれだけの穀倉地帯なのに、製粉会社がない。穀物の生産基地という位置付けだったんですよ。私の長年の夢は製粉会社を興すことなんです。ついに、と言えば大げさですが、仲間に声をかける条件が整ったと感じています。 これからも、メーカーなどと直接取引を増やしていくつもりです、食品加工業界はじゅうぶん成熟していますから、これからの戦略は消費者が求める国産原料に、どう、こだわっていくかがテーマになってくるはずです。 自前の製粉工場を持つことができれば、様々な用途の小麦を製粉できるし、現状では叶えられない極めて小さいロットでも、求めに応じて製粉し、それこそ、1キロでも欲しい人に直接売ることができます、自社ブランドを作って販売できます」 今までは政府の無制限買い入れに頼りきっていたり、制度や慣習にしたがったりして、自由な発想が生まれにくかった。妹尾さんは20歳そこそこで米国に農業研修で留学するなど、常に新しい分野に分け入ることを信条としてきた。農業生産法人の認可を取得したのも、十勝ではもっとも早い1人だった。 おやつカンパニーとの直接取引を契機に、小麦の将来の展望が開けてきた妹尾さんは、この秋にも、製粉工場設立メンバーの大枠を決めることにしている。 「今すぐ参集してくれる農家は10軒ほどです、十勝の農家10軒といえば、耕作面積も500~600ヘクタールと大規模になります、産出する小麦の量は2500トンを超えて、小さなJAが年間に取り扱う総量と匹敵する規模になるんです」 共同事業者は農家のほかに、集荷業者、帯広の菓子メーカーなども加わる予定という。 「できれば、おやつカンパニーさんにも共同事業者として加わってもらいたいと希望しているんです。先ほど帰られたんですけど、おやつカンパニーの松田社長も、この話には乗り気でして、これからは、事業計画を詰めながら共に歩むことを考えていきたい、と意気投合しました」 農家の工夫と努力が報われる直接取引。求めに応じて品質の高いものを作りたいという農家の当たり前とも言える思いと、顔の見える原材料を使いたいという企業のニーズが、ここにきてようやく合致することとなった。コメがたどったのと似たような道を、今、小麦が歩み始めようとしていると言ってもいいのかもしれない。 たしかに、国産小麦はコメと違って栽培の制約は多く、生産量が急激に増えることはないだろう。しかし、小麦と企業、そして消費者との新たな関係が始まったのは確かなようだ。 (つづく)
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日本のお姉さんの意見。↓
お料理教室の仲間も、北海道の小麦を使っているし
友達のB子も北海道の小麦をネットで仕入れて
パンを作っている。みんな、安心して食べられる日本産が
好きなのです。北海道の小麦で作ったパンはおいしいですヨ。