石平『中国“悪魔の事典”』(小学館クリックシリーズ) | 日本のお姉さん

石平『中国“悪魔の事典”』(小学館クリックシリーズ)

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
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♪石平『中国“悪魔の事典”』(小学館クリックシリーズ)
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最初に装丁への苦言をひとこと。この本の内容と装丁がすこし乖離していて惜しい気がした。 本書はコントブックのように洒落た体裁で組み直すと、あるいは爆発的に売れる要素を持っている。内容はと言えば、中国批判の辛らつさを綴るが、ブラック・ユーモアを通り越した惨劇的な哀切が基調で、しかも初歩的な中国入門編の彩りがあり、題名も「悪魔の事典」ではなくて「チャイナの爆笑問題」とか(ま、それは次回に小生と対談集でもやりますか)。さて、世の中を賑わす中国の反日学生運動の実態とは、天安門事件の再評価の動きに蓋をして封じ込め、共産党批判を回避させるために、「『愛国主義教育』と『反日教育』を(北京が)極力すすめてきた中で、彼ら憤青たちが育てられた」(「憤青」とは怒れる若者たち)と石平さんは分析する。それは「いびつな精神構造の持ち主だから、単細胞的な思考力と激しい気性と猪突猛進的な行動力」をともなう。まさに「かつての紅衛兵たちが毛沢東に使い捨てにされたのと同じように、彼ら憤青も所詮、中国共産党政権にとって都合の良い『オバかさん』なのである」とさっぱりと結論づけられている。斬られた方もこうまで言われては浮かぶ瀬もナシ。
以下、おもしろい定義がまだまだ続く.『幹部というのは、嘘をつくときに顔色一つ変えない異質な人種。自らの責任を絶対に認めないことを信念とする人々』を指す。 共産党員とは「権力の囁きに心酔し、幹部候補生となるには嘘つきを常習として、人間性の半分くらいは捨てる覚悟は必要だ」と石さんは辛辣論調を続ける。『人民日報』には真実は発行の日付けだけで、あとはみんな嘘。庶民は江沢民を「役者」とよび、李鵬を「馬鹿」と読んだ。ちなみに李瑞環は「ならず者」、朱容基は「変人」と呼ばれた。こういう話が満載の書物である。
 
◎◎(註 朱容基の「容」は金編)
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♪(読者の声1)下記ブログによれば、北京ではまったく英語が通じなくてタクシーにも乗れない外国人が多いとか、それじゃとても国際都市とは言えないのでは?北京から帰国したばかりの宮!)さん、如何ですか?(TY生、京都)
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*奧運(オリンピック).com】(48)英語が通じない!?
http://sankei.jp.msn.com/beijing2008/news/080817/gbh0808170757000-n1.htm

北京の街中を歩いていて、やはりというべきか、期待はずれだったというべきか、英語が通じない。毎日利用しているタクシーの運転手と、英語での会話が成立したことも一度もない。北京五輪を見据え、タクシー運転手を対象に英会話の特訓が行われたという記事を読んだが、まだその恩恵にはあずかっていない。街角の情報案内のボランティアも、10人に1人話せれば御の字だ。このため不満を漏らす外国人観光客は少なくない。「漢字表記のメモがないとタクシーには乗れない」とオランダ人記者はこぼす。彼女のガイドブックには漢字が表記されていないので、用をなさないのだ。語学は簡単に習得できるものではないし、中国にあって英語が通じないと嘆く方がおかしいのかもしれない。それでも、タクシーの運転手に中国語で激しく怒鳴られたり、理由もわからないまま、怒りのあまり途中で降ろされたりするのには参ってしまう.一方、メーンプレスセンター(MPC)の周辺には、英語を話すボランティアがたくさん配置されていて、道案内なども不自由しない。だが、世界中から北京五輪を楽しみにやってきた観光客は、もちろんMPCに入ることはできない。メディア対応だけは完璧(かんぺき)だとしても、観光客に不便な思いをさせるのは後々のことを考えると得策ではないだろう。今や観光客だってメディアに負けない発信力があるのだから。  (古川有希)
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(宮崎正弘のコメント)なるほど。逆に北京で英語を使ったことがないので、そういえばそうですね。通じないようです。タクシーや町中では。ホテルは通じます。中国人はアメリカ人と同じで他の国の言葉を覚える意思は希薄です。中華思想の影響でしょうか。

♪(読者の声2)北京五輪女子マラソン、やっぱり日本の選手は顔を見ていても気力を感じなかった。結果は惨敗でした。
中国の選手、地元だけあって予想外の健闘だったと思いました。米国よりメタルの数は多くなるだろう、といわれていますが、中国勢の活躍ぶり、どうですか。(HK生、横浜)
  
(宮崎正弘のコメント)勝敗に関心がないので、それでも女子マラソンの中継をみていました。なぜなら北京市内の主だった箇所、ほとんどの場所に行っておりますので、現在の情景をリアルタイムで確認しました。金メダルを誰が取るか、殆ど関心がありません。悪しからず。マラソンのコースですが、頤和園の端っこから清華大学の構内にはいるなんて知らなかった。先月下旬にも清華大学に立ち寄りましたが、西門はバス停から、のどかな車道を右へ曲がると教職員マンション、食堂、キオスクがあります。日頃、あのあたり自家用を駐車しておりますが、テレビ中継を見る限り車の駐車がなかった。北京大学から中関村。ひごろは車がごった返すところですが、沿道の応援さえ少なかった。ボランティア以外に学生が居ませんでしたね。あれも理由がありそうです。天壇から天安門広場へもどる道筋、前門商店街がマラソンコースに入っていたのも、吃驚でした。開会式前夜にあの商店街が再現されたのですから。 西単は人通りが殆どない。あそこは北京の新宿。群衆がいないということはきっと自宅でテレビを見ていたのでしょうね。

♪(読者の声3)貴誌にでたアメリカ政治に関しての書評ですが、あとどれくらい、アメリカの覇権が続くのか?
 西ローマ帝国は滅亡までに400余年、東ローマ帝国はその3倍かかりましたから、次の覇権国家登場までの過ごし方は多様です。
どちらも国防が異民族頼みとなってイカレていきます。東ローマではアッティラとオノーリアが典型で、旧覇権国家は女性に象徴されます。
アメリカがマイノリティのマジョリティ化が統計的に半世紀から一世代に短縮されたので、その分、旧来の覇権の形は時間枠が狭まりましたね。(MO生、相模原)

(宮崎正弘のコメント)今度のグルジア紛争で、米国はライスを派遣してリップサービスで介入するだけで、軍事的にロシアに手も足も出ない。かの覇権帝国はカフカスに於いてはふたたび「TRADING PLACE」(主役交代)です。
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