陸自近代化のガンは第7師団と「北海道限定商品」 (清谷信一)
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▼陸自近代化のガンは第7師団と「
北海道限定商品」 (清谷信一)陸自の装備に関していえば近代化を図るためには、前にも書いたように兵力削減が必要不可欠です。
http://kiyotani.at.webry.info/200808/article_3.html ・新戦車と機動戦闘車
率直に申し上げて今の予算額で、陸自の装備を必要なレベルの装備を調達することは不可能でしょう。歩兵戦闘車から自走迫撃砲、装甲野戦救急車に至るまで装甲車輛は絶対的に不足しています。ヘリコプター、通信機も然り、NBCスーツ然り、UAV、UGV然り、ネットバーク化然り、夜間戦闘能力然り。平均すれば陸自の装備は旧式といっていいぐらいです。例えば陸自の兵力を半分に減らして浮いた予算で装備を更新ぐらいのことを考えないといけないといけないのではないでしょうか。外国製は「横幅がありすぎて我が国の我が国では法的に運用できません」というのが陸自のいいわけです。ところがその規制には在日米軍は縛られなかったりするわけです。ならば何故その極端な規制を緩和する方向で関係省庁と調整すべきではありませんか。諸外国に比べ極めて小さな寸法でしか装甲車輛を開発できのないのでは、それは非常に不利でしょう。手足を縛って泳ぐようなものです。それほど我が国の自然環境や道路事情が諸外国に比べて極端に奇異であるのでしょうか。
我が国の防衛産業のレベルは世界最高レベル胸を張るのであれば、外国と同じ条件で開発しその優劣を争わせれば宜しい。それが出来ないのであれば単に天下り先の確保のために国内規制を「非関税障壁」として利用していると非難されても仕方ないでしょう。確かに国内防衛産業基盤の維持は必要です。ですが、だからとってまったく外国製品と競争させず、それにあぐらをかいて、コスト削減も必要ないというぬるま湯的な状況で、果たしてまともな装備が開発できるでしょうか。ぼくが取材した当時内局は既存戦車は近代化しないと断言していました。つまり換言すると新戦車の導入が90式と同じペースだとすると四半世紀先にならないと陸自の戦車隊のネットワーク化は完成しないといっていた訳です。 ところが最近は既存の90式も近代化すると言い出しているようです。恐らく新戦車の導入が本決まりになるまでの方便だったのでしょう。恐らく「既存の戦車が改良できる?じゃあ新戦車はいらないね」と、ここを財務省に突っ込まれるでしょう。ぼくが主計官ならそう攻めます。その場限りの方便を繰り返しているとやがて高いつけを払うことになるでしょう。別に輸入品の方が調達コスト、運用コストが必ずしも安いとはいいません。ですが、国産が一番安くて高性能という「原理主義」的な考え方で合理的な調達はできないでしょう。何しろたった24輛の120自走迫撃砲をわざわざ開発するような組織のいうことは鵜呑みにできません。例えば機動戦闘車にしても60輛ぐらいなら輸入の方が安い、200輛を越えれば国産の方が有利などといった議論もあってもいいのではないでしょうか。調達数、いつまで調達するか、また開発と調達を合わせたプログラムの総額も決めず(特に国会が承認せずにです)に開発を決定し、初めに国産ありきの前提で場当たり的に開発や調達を進めるのはもうやめるべきです。
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それ以外に有効だと思うのが唯一の機甲師団たる第7師団の解体です。というのも、第7師団あるいは他の北海道の部隊のみに配備されている「北海道限定商品」というべき少数かつ高額な装備を国産化しているため、内地の部隊の装備の近代化まで金が回らないからです。例えば96式120mm自走迫撃砲、99式自走155mmりゅう弾砲などですが、この格差が非常に大きいわけです。では北海道の部隊が他の先進国に比べて肩を並べるような装備を揃えているかいうとこれまたネガティブなわけです。 UAVにしても、装甲車の近代化にしても、C4IRにしても、暗視装置やNBC装備にしても遅れています。なんだか北海道の部隊からフリードリッヒ二世の巨人部隊を彷彿するのはぼくだけでしょうか。ですから、第7師団を解体あるいは機甲旅団に格下げすることによって第七師団限定、あるいは「北海道限定商品」をやめて全国の部隊に行き渡るような装備の調達に切り替え、全体に部隊の近代化を図るべきです。同時に新装備開発と導入に際しては、その調達の数量および調達期間を事前に決め、国会の承認を取るようにすべきです。そうでないと20年以上もかけて既に旧式化した値段だけは高い装備をだらだらと調達するという金の無駄遣いを続けることになります。別に第7師団を解体しなくともそのような変革はできるのでは、という意見もあるでしょうが、そのくらいのことを考えないと前例墨守の官僚組織は動きません。また今の陸自に必要なのは機甲師団よりも海兵隊的な水陸両用部隊の方だと思います。
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▼防衛産業の明日はあるか (清谷信一)
最近夏休みを利用してあれこれ防衛関係者に取材をしております。まあ休みが休みになっていないのですが。ただ先方もこの時期出社している人も普段よりは忙しくないのでゆっくりお話もできるわけです。さすがぼくも今週週末はお休みです。普段は記事に直結する取材が多いのですがこういう時はあまり記事を関係ないテーブルトーク的な取材をしているわけです。本当は普段からもっとこういう取材をする余裕が必要なんですが。最近の取材で感じたことは防衛産業の縮小と閉塞感が強いことです。我が国では商社も含めて防衛産業といっても企業の小規模な一部門です。昨今売り上げが落ちており、他の部門から白眼視されたりもしています。実際防衛産業から撤退を考えている企業も増えているようです。商社でも取扱品を絞り始めています。これ以上仕事が減るとウチは手を引くからな、と露骨に当局を恫喝している●●●のようなメーカーもあります。逆にフィンメカニカやBAEシステムズなどは日本市場でのプレゼンス拡大を画策しています。実際の所業界再編なくして日本の防衛産業の基盤維持は難しいところに来ていますが、官民ともにそんな気は更々無いようです。アブナイところほど危機感がない、当事者意識がないものですが。こんなことをいうとそんな必要はないと強弁する人もいます。特に官の主導での業界再編に反対する人は意外に多く、ホンダの四輪車参入の例を出したりします。かつて通産省はホンダが四輪に参入するのを自動車メーカーが共倒れになるからと防止しようとしました。ところがホンダは世界有数の四輪メーカーになったではないかと。ですが、これは根本的に間違っています。まず自動車メーカーの場合、国内国外ともに熾烈な市場競争に晒されています。ところが防衛産業の場合は同じ分野でも縄張りがあり、概ね互いに不可侵となっています。これはまるで国営企業みたいなもんで、ここに競争はありません。つまり前提条件がまったく違います。加えて世界では巨大な企業がドンドン巨大化しています。これは高騰する研究開発費を捻出するためです。対して国内の研究開発費は少なくしかも、何社もダブって同じような研究開発をしていたりして無駄使いしていたりします。市場で揉まれるともなく、他国よりも圧倒的に少ない研究開発費で、他国並みあるいは他国以上の性能の装備を開発生産できると信じるのは非常に楽観的はあるいは偏狭な「愛国心」に目が眩んでいるとしかいえません。
業界も官の側も防衛産業の維持とはいっていますが、それは目先の天下り先の維持であり、長期的に我が国の防衛産業の維持・振興を考えているとは思えません。本来この問題はもっと政治が主導権をとって進めるべきだろうと思います。もっとも野党の防衛問題の有力議員が「戦車工場で仕事がない?そんならトラクターつくればいいじゃない」とか仰るわけです。ロシアをそれをやってもダメだったのですがご存じないようでした。そろそろ予算案も出てくることですし、野党のセンセイ方にはもっと頑張っていただきたいと思います。
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