食生活を歪めるな (加瀬 英明 ) 戦争と慰霊と国家の品格 (平井 修一 )
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食生活を歪めるな
━━━━━━━━加瀬 英明
コンビニや、スーパーを覗くと、私たちが子供のころには知らなかった、異次元の世界が広がっている。棚や冷凍ケースに、おびただしい種類にのぼる食品が並んでいる。
まるで魔法の館にさ迷い込んだようだが、私たちは野菜や魚や肉や加工 食品が、ラベルに記された細い字を読まないかぎり、いったいどこから 来たものか、いったい何が加えられているのか、まったく分からない。
このあいだまでは、近所の八百屋や、魚屋にあった野菜や魚貝類は、近 くの畑や、海や浜でとれたものだった。店も小さかったし、選択する幅 も狭かった。身近にあるものだから、美味しかった。おとなも子供も農 民や漁師の苦労を知っていたから心のなかのどこかで、つくったり、と った人に感謝した。
ところが、いまでは食品はラベルになってしまった。私たちは無性格な 食品を食べるようになっている。
かつて私たちは農民や漁民の息吹きを感じたのに、食品がどこか遠くか ら運ばれてきた商品になってしまった。インスタント食品や冷凍食品や レトルト食品は工業製品と同じように、工場でつくられている。私たち も人から消費者に変わった。
人々が顔のない食物を摂るようになっている。そうするうちに、地域社 会が崩壊した。
食品は仕入れから小売りにいたる企業論理によって組み立てられた大き なシステムが提供する、人情がこもっていない商品になった。私たちは この大きなシステムの端末に組み込まれている。
今日の日本社会では、男も女も、子供から高齢者まで胴まわりが膨らむ
〃メタボ症候群〃によって悩まされている。かつて子供は糖尿病と無縁
だったのに、肥満を患うようになっている。幼いころからコンビニやスーパーの食品や、ファストフードを常食としているからだ。
このような現象は、女性たちが台所を放棄したことにこそ、もっとも大 きな原因がある。母や姉たちが台所で包丁を振って、家族のために食事 をつくった時には、誰も肥り過ぎて病むようなことがなかった。
母や姉たちが親兄弟や子を餌づけしていた時には、家族の一体感が保た れていた。食事をつくる人の愛情が隠し味となっていた。
売ることだけを目的にして、企業論理によって商品化された食品は、食 物が備えているべき心を失った。
コンビニや、スーパーや、ファストフードのチェーンを経営する魔法遣 いたちが、人々の食生活を操っている。人と人のあいだを結んでいた家 庭の食卓が消えて、人の体と精神が病むようになった。
食は太古の昔から、人の文化を創ってきた。コンビニや、ファストフー ド店が、人にとってもっとも古い文化を壊したことによって、ぬくもり がない社会をもたらしている。
チェーン店はフランチャイズだろうが、直営だろうが、どこに入っても 同じであるように、中央から管理して規格化することによって成り立っ ている。僅かな違いも許さない。スターバックスもマクドナルドも、ど の店に入っても変わらない。個性を否定するものだ。息苦しくなった若 者が狂うことも、理解できる。
贋物の食品が横行している。ファストフードのハンバーガーやチキンバ ーガーからペットフードまで、人間や犬猫の食欲をそそるために化学工 場で製造される人工香味料が、ふんだんに使用されている。
加工食品は冷凍したり乾燥する過程で、もとの食品に備わった味や香り が失われるからだ。人工香料産業では世界のメーカーが凌ぎを削ってい るが、人体に無害だというものの、人や動物を騙すものだ。動物はさて おいて、人を弄ぶものである。
このような人工香料は、便所の消臭に使われている芳香材と、同じ技術 を用いて製造されている。ファストフードを摂る者や、人工香料をまぶ した食品を口に運ぶ者は、トイレの消臭剤を食べているようなものだ。
コンビニやスーパーの品揃えが豊富であるからといって、消費者が選択 の幅が広がって贅沢さを味わえると、喜んではなるまい。
品揃えが豊富になって、顧客の選択の幅が広がるほど、食品が粗末に扱 われる。売れ残る食材が増えるから、コンビニやスーパーが食品を大量 に投棄することになって、貴重な食物を浪費することになる。
コンビニやスーパーや、ファストフードのチェーン店の経営者は、従業 員にいたるまで、人を操ることだけを考えている。店員たちは一挙一動 がマニュアルによって、操り人形のように動かされていて、客に対して 人工香料のような笑いを浮かべる。経営者も金儲けばかり考えているか ら、きっとそんな笑顔をしているのだろう。
このようなチェーン店は若い低賃金の従業員やパート労働者によって支 えられている。商品と同じように、マニュアルによって徹底的に動きが 規格化されているから、すぐに馘(くび)にすることができるし、かわり を雇うことができる。
人類の文化と文明は世界のどこへ行っても、食を確保することから始ま った。採取時代から、狩猟時代、耕作時代を経てきた。ところが、今日 では先進国に住む大多数の人々が、工場でつくられた加工食品を摂るよ うになっている。
このように食生活が大企業によって握られるようになったのは、この2、 30年のことだ。老若男女が肥満や、生活習慣病を患うようになったのは、数千年にわたって続いてきた食生活を歪めた天罰であろう。
農業ほど水を使う産業は、他にない。アメリカでも、中国でも地下水位 が下がって、水が枯渇している。肥料、農薬、耕運機から、遠い距離を 運ぶまで、安い石油に依存してきた。天候が安定していることも必須条 件だったのに、地球が異常気象のサイクルに入っている。
私たちは食生活を変えねばなるまい。
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戦争と慰霊と国家の品格
━━━━━━━━━━━平井 修一
思はざる 病となりぬ 沖縄を たづねて果さむ つとめありしを
昭和天皇の御歌である(昭和62年)。沖縄訪問を直前に控えて病に倒れ、慰霊ができなかったことへの痛恨の思いがうかがえる。「女ひとり玉砕の島を行く」(文藝春秋、2007年)などの著作があるジャーナリスト、笹幸恵(ささゆきえ)氏が月刊誌「やすくに」(平成20年4月号)に寄稿している論文がずーっと頭から離れないでいる。タイトルは「何が戦後か――団塊ジュニアが見た慰霊碑の“いま”」。以下、
引用する。・・・・
<「ここは、島全体が墓場なのです」
平成18年10月、初めて硫黄島に訪れたときのこと。航空自衛隊硫黄島基 地隊の隊司令に、私はこう教わりました。
・・・硫黄島における日本軍の戦死者は1万9900名、戦傷者は1033名。数 字で表現してしまえばひと言で終わってしまいます。
しかしここに、2万名に及ぶ将兵たちの「命」があったこと、彼らにはそ れぞれ親兄弟、愛する人々がいたこと、そして2万名の「命」があれば、2万通りの人生がその先にあったであろうことを考えると、私は「墓場」といわれたこの島で、数字で表すことのできない重みに押しつぶされそうになりました。・・・
そんな飢えと渇きの島に再び訪れる機会を得たのは今年2月13日でした。
日本遺族会の60周年記念事業の一環として、硫黄島での慰霊祭が行われ たのです。
・・・遺族の方々にとっては長年の念願が叶い、また国家として、これ からの慰霊事業を考えていく上でもきわめて大きな前進であったと思い ます。翌日、私はその報告のために靖国神社に参拝いたしました。
一方、今回の慰霊祭を通して、あらためて胸に刻んだ思いもありました。それは、まだまだ国家における慰霊のあり方が十分とは言えないこと、硫黄島におけるそれは確かに大きな前進であったけれども、スタート地点に過ぎないものであることです。・・・
連綿と続く歴史の中では、60余年前のことなど、つい最近の出来事のは ずです。私にとっては祖父の世代に当たります。私の大好きだったおじ いさんが生きた時代、それはどんな時代であり、彼らはなにを思いなが ら生活してきたのか。そしてあの戦争とどう向き合ってきたのか。
強い関心を抱いていたものの、本を読んでもなかなか想像することがで きません。そこで私は、ほとんどなにも語らずに他界した祖父の足跡を 追うかのように、戦争体験者の方々に話をうかがい、戦場となった地へ 足を運びました。
・・・そのときの体験は拙著「女ひとり玉砕の島を行く」に記していま すが、私はそこで慰霊碑の現状について目の当たりにしました。
たとえば、陸上戦闘における攻守ところを変えたガダルカナル島。硫黄 島と同じく、2万名近くの将兵たちがこの地で亡くなりました。その半数 が戦闘ではなく、餓死または病死という悲壮な最期を遂げています。 しかし、ここには国立の慰霊碑がありません。
・・・関係者からの寄付を募って建立した慰霊碑がいくつかありますが、実際は管理が難しく、破壊されたり落書きされたり、または銘板が盗まれたりといった被害に遭っています。・・・
かつて戦場となった地に慰霊碑を建立する。その事に反対する人々もい ます。戦争を知る人々は高齢化し、維持管理が困難になるのは自明のこ と。それなのになぜ慰霊碑を建立するのか。
そして他人の土地に無断で上がりこんで戦争を始め、今度はその土地に 慰霊碑を建てたいなどという。それは現地の人々の立場に立ってみれば 勝手な言い分に過ぎないのではないか。
こうした意見は、もっともだと思います。けれども海外に建立された慰 霊碑は、夫や父を失った遺族にとって、心のよりどころであることも事 実です。・・・
私が慰霊巡拝の旅に参加したときにご一緒した遺族は皆、「やっと父の 元を訪れることができた」と涙を流します。父が実際に戦ったであろう その場所で「お父さーん」と声を限りに叫び、「ようやく親孝行ができ た」と口にする方もいらっしゃいます。
そうした姿を目の当たりにするたびに、私は「何が戦後か」という強い 憤りを覚えます。戦争の傷跡を負って生きている人々が現在もいること、それを今まで知ろうとしてこなかった自分への腹立たしさも含めて、です。そして同時に慰霊碑の重みをひしひしと感じます。遺児にとって慰霊碑とは、父そのもの、なのです。
・・・戦争があった島すべてに慰霊碑を建立するのは、現実的ではない かもしれません。しかし、せめて当時の作戦区域に即した状態で、ある いは主要な戦闘があった地域に、それぞれ国立の慰霊碑を建立すること は可能だと思います。現地の人々への了解を求めるのも、個人が私費を 費やすものではなく、本来は国家レベルで行われるものでしょう。
素人考えかもしれませんが、そこで年に1度でも、かつての敵味方、そ して戦場となった現地の人々とともに合同慰霊祭を行うことができれば、戦没者への慰霊とともに、各国との永続的な友好関係を築けます。そして、平和を希求する日本のスタンスを国際社会にアピールすることにもつながるはずです。
戦争は個人が起こしたものではありません。国家が、そのために命を賭 して戦った人々をきちんと慰霊して初めて「戦後」を迎えることができ ると思います。だからこそ政治家や官僚など、国を代表する人々には現 地に足を運び、民間人が建立した慰霊碑の実態を確かめてほしい。
また、現在の平和を享受する私たち一人ひとりが、慰霊のあり方を考え ていかなければいけないと思っています。>
・・・・国家が戦争を発動しておきながら、戦死者は民間で勝手に慰霊せよ、国は与り知らぬ。これで国家のモラル、品格が立つわけはない。靖国神社にさえ参拝しないリーダーを戴くニッポンに神風(追い風)は吹かず、あとは衰退するばかりだろう。
明治天皇の御歌(明治37年)
かぎりなき 世にのこさむと 国のため たふれし人の 名をぞとどむ
る
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話 の 福 袋
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◎中国・新疆の爆弾テロ取材の邦人記者3人、一時拘束される
【北京=佐伯聡士】中国新疆ウイグル自治区クチャ県での爆弾テロ事件 を巡り、同県公安当局は10日夜、事件の取材のため現地入りしていた産 経新聞中国総局の記者と、時事通信社の記者、カメラマンの計3人を一 時拘束した。3人は派出所に連行され、約1時間半後に解放されたという。 ◇
産経新聞社によると、同社で拘束されたのは野口東秀記者(44)。同日 夜、本人から同社外信部に「今、中国の公安当局に連行されている」と 携帯電話で連絡が入った。公安当局からは、五輪記者証で事件を取材し ていた点について「逸脱行為」と指摘されたという。同社は「暴行は受 けなかったようだ」としている。一方、時事通信社によると、拘束されたのは外信部の城山英巳記者(38)と写真部の山崎秀夫カメラマン(42)。同社は「情報収集中」としている。 8月11日1時42分配信 読売新聞
◎猛暑も一服 東京で連続真夏日の記録途切れる
10日の日本列島は関東、東北地方を中心に暑さがやわらぎ、東京の最高 気温は29/2度で、7月12日から続いていた連続真夏日(最高気温30度以 上)の記録が29日で途切れた。気象庁によると、東京の昨年の連続真夏日は17日で、最長記録は平成 16年の40日。気温が下がったのは、シベリアから南東へ移動中の高気圧が北海道上空を通過した影響で、きょう11日からは、また暑さが戻るという。 8月11日8時0分配信 産経新聞
◎輸入小麦価格20%アップへ、昨年4月以来4回連続値上げ
農林水産省は10日、政府が製粉会社に売り渡す輸入小麦の価格を、10月 から20%程度引き上げる方向で検討に入った。8月下旬に発表する。2007年4月、10月、08年4月に続き4回連続の値上げとなり、パンやめ
ん類など小麦製品の店頭価格へも影響を与えそうだ。日本は小麦の約9割を海外に依存しており、輸入小麦のほぼ全量を政府が輸入して製粉会社に売り渡す仕組みだ。10月からの売り渡し価格は、07年12月~08年7月の輸入価格を反映させることになっている。小麦の国際価格が昨年末から今春にかけてピークを付けたため、政府の輸入価格は従来より20~25%上昇している。製粉会社への売り渡し価格は07年4月に1/3%、10月に10%、今年4月に30%、それぞれ上がり、現在は1トン当たり6万9000円だ。これまでに、レストランなどで使う業務用の小麦粉や食パン、カップめん、スパゲティなど幅広い食品で店頭価格への転嫁が広がっている。 8月11日3時2分配信 読売新聞
◎副大統領候補指名遠のく? クリントン氏の演説日決定
【ワシントン10日共同】米民主党は10日、今月下旬にオバマ上院議員を 大統領候補に正式指名する党大会の日程を発表、注目のヒラリー・クリ ントン上院議員は大会2日目にメーンスピーカーとして演説することが 決まった。未定の副大統領候補の演説には3日目があてがわれており、 クリントン氏が副大統領候補に指名される可能性は遠のいたとの見方が 浮上している。ただハワイで夏休み中のオバマ氏は副大統領候補人選についてコメントを避けており、クリントン氏が指名される可能性も完全には消えていない。党全国大会組織委員会によると、大会は25日から28日にかけて、コロラド州デンバーで開かれ、クリントン氏は26日に登壇。同日は米国で女性参政権が保障されてから88周年に当たる記念日で、女性初の大統領を目指したクリントン氏の見せ場としてオバマ氏側が最大限に配慮した格好だ。
◎小学生ら35人が7キロ完泳 大村湾で心身鍛錬
特定非営利活動法人(NPO法人)長崎游泳協会(田中直英理事長)の 大村湾遠泳が10日、西彼長与町の長与港から時津町子々川郷の海岸まで 約七キロのコースであり、長崎市と近郊の小学生ら計35人が挑戦した。
遠泳は心身の鍛錬を目的とした恒例行事で、6年前から大村湾で実施。同 協会が長崎市民総合プールで開く夏季水泳教室に通う小学4年生から高校 1年生までの子どもたちが参加した。午前10時すぎに長与港をスタートした子どもたちは夏空の下、「よーいこーら」と伝統の掛け声で息を合わせながらゴールを目指し、出発から3時間23分後までに全員が見事、完泳。ゴールで待ち受けた保護者らから拍手で出迎えられた。初めて参加した長崎市立西町小4年の尾藤友香さん(10)は「海水が鼻に入ったりして苦しかったけど、最後まで泳ぎ切ることができてよかった」と笑顔を見せた。 長崎新聞 8月11日