チケットが確保できず、旅行業界が期待した五輪特需は不発 :日経 | 日本のお姉さん

チケットが確保できず、旅行業界が期待した五輪特需は不発 :日経

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*【BusinessWeek】 チケットが確保できず、旅行業界が期待した五輪特需は不発 :日経
隣国での開催であり、なおかつ円高という好条件にもかかわらず、日本の旅行業界が企画した「現地観戦ツアー」による五輪特需は期待通りにはいかなかった・・・。 日本は北京五輪に向けて盛り上がりを見せている。目指すは、前回アテネ大会での史上最多金メダル16個に匹敵する好成績だ。開幕間近の中国行きの便は日本からのスポーツファンでいっぱいだと思うだろう。ところが実際には、北京に行く日本のスポーツファンの姿はまばらだ。 前回アジア太平洋地域で五輪が開催された2000年には、日本から観光客が大挙して豪シドニーを訪れた。今大会の中国は、欧米からとは違い日本の隣国で近い。中国元に対して比較的円高が続いているため、両替の際も有利な状況だ。今年5月に中国の胡錦濤国家主席が初来日し、日中関係もここ数年で最もいい状態にある。 しかし日本の旅行関連業界にとっては、五輪は全くの期待外れとなっている。全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)では、この夏の中国便搭乗者数は減少する見通しだ。全日空の子会社であるANAセールスは旅行者数の前年比10%減、JALはそれをさらに上回る20%減を予想している。 「北京五輪は絶好のビジネスチャンスと見込んでいたのに、当てが外れている」と、日本旅行の海外旅行事業部マーケティングチームマネジャーを務める成住俊助氏は失望を隠さない(BusinessWeek.comの記事を参照:2008年8月1日「Does China Want Foreign Tourists at the Games?」)。 日本人が敬遠する理由は何か。中国について悪いニュースが続出したことが響いているとの見方もある。例えば8月4日には、16人の死者を出した新疆ウイグル自治区カシュガルで発生した武装警官隊襲撃事件を取材中だった邦人記者とカメラマンの2人が、武装警官に拘束され暴行を受けた。中国政府当局者は謝罪の意を表したものの、多くの日本人にとって中国のイメージは一層低下した。 今年初めには中国製冷凍餃子の殺虫剤混入事件が起こり、日本はこのニュースで持ちきりになった(BusinessWeek.comの記事を参照:2008年2月6日「Poison Dumplings Kill Japanese Merger」)。

・日本人の対中感情を悪化させる出来事
最近では、チベットでの抗議デモや、聖火リレーを巡る妨害行動、四川大地震で噴出した問題などが日本で大きく取り上げられた。「こうした出来事で中国の印象は悪化している」と、ANAセールスの広報担当、澤木優子氏は嘆く。 また日本人の記憶に新しいのが、2004年に北京で開催されたサッカー・アジアカップでの嫌悪感を抱かせる出来事だ。中国代表が日本代表に敗退すると、中国側サポーター数百人が瓶を投げつけたり、反日的暴言を放ったり、日本国旗を燃やしたり、日本代表チームのバスを包囲したりという暴挙に出たのだった。 旅行者数の減少は五輪のせいばかりではない。日本からの中国旅行者数は今年大きく落ち込んでいる。ここ6カ月での中国ツアーの売上高は、ANAセールスで前年比40%減、日本旅行では前年比50%減となっている。旅行代理店大手ジェイティービー(JTB)は、この夏(7月15日~8月31日)の中国旅行の売上高で前年比37%減を予想する。 1つ大きな問題は深刻なチケット不足だ。専門家によると、開催国は通常チケットの50%をスポンサーや海外市場に配分するが、中国は全700万枚のチケットのうち4分の3を自国向けに確保しているという。 「五輪スポンサーからもチケットがないかと電話が来ている。一部の日本選手の後援会でもチケット入手が難しく、選手の家族の分ですらなかなか手に入らないと聞いた」と、日本旅行の成住氏は明かす。何カ月も交渉した揚げ句、日本オリンピック委員会(JOC)が獲得した五輪チケット枚数は要望した枚数の半分程度の7万枚にとどまった。これはアテネ大会の5万枚よりは多いが、1988年ソウル五輪の16万枚には遠く及ばない。

・欧州などの選手は北京の大気汚染を恐れて日本で合宿
ANAセールスはJOCから五輪チケット販売の委託を受けた旅行代理店8社のうちの1つ。現在までに同社が販売できた数量は、顧客人数で目標の70%、チケット枚数で80%にとどまっている。売れ残っているのは、陸上競技など日本選手が勝てそうもない競技のチケットだ。 「柔道や体操、水泳などの人気競技のチケットを手に入れるのは至難の業」とANAセールスの澤木氏は言う。例えば柔道の場合、序盤戦のチケットは50枚確保しているが、決勝戦は10枚程度。「お客様に序盤戦だけ会場で見て、決勝はホテルに戻って見ろと言うのも無茶な話だ」と同氏はこぼす。 JOC広報担当のイシカワ・セイジ氏は、7万枚という日本へのチケット配分はほかの国よりずっと多いと言う。しかし、多くは野球のように欧州で人気のない競技のチケットで、人気の高い屋内競技のチケット数はかなり限られていると認める。「人気競技のチケットを希望枚数入手するのは困難だ」(同氏)。 一方、日本から中国に移動することが確実な一団がある。北京の大気汚染に対する根強い不安から、ほぼ20カ国の代表選手団が日本で最終調整を行っているのだ(BusinessWeekチャンネルの記事を参照:2008年2月20日「北京五輪、日本で最終合宿が人気」)。 例えば福岡ではスウェーデン選手140人、オランダ選手30人が直前合宿を張っている。スウェーデン五輪委員会が初めて視察に訪れた2005年2月以来、同国代表チームの福岡での調整合宿は12回を数える。 福岡市市民局スポーツ部の竹中菊博氏は、「国際空港、ホテル、練習場間の移動が便利で、選手にかかる負担が少ない」と説明する。 北京までは飛行機で4時間強だが、中国東部の大連か青島での乗り換えが必要だ。6月までは福岡発の直行便もあったが、国営・中国国際航空(エアチャイナ)は利用者が少ないことを理由に7月から運航を中止している。
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*【「老百姓」たちのオリンピック】 (3)開幕式の日、北京市街は――旧正月が2回来た!?:日経
…オリンピック開幕まで3日に迫った8月5日、北京市政府はいきなり通達を出し、開幕式が行われる8月8日は市内の企業や行政機関を休日にしてしまった・・・ 。先週金曜の夜(2008年8月8日)、北京オリンピックの開幕式をテレビの衛星生中継でご覧になった読者も多いだろう。筆者は北京の自宅で、中国中央テレビ(CCTV)にチャンネルを合わせて見たが、2008人の奏者による一糸乱れぬ「光のカウントダウン」からクライマックスの「夜空を駆ける聖火ランナー」まで、まるで特撮映画を見ているような凝りに凝った演出だった。 それもそのはず。開幕式の総指揮を務めたのは「紅いコーリャン」などで知られる中国を代表する映画監督、張藝謀(チャン・イーモウ)氏。オリンピック・スタジアムのグラウンドに、中国の歴史を絵巻物風に再現した演出も斬新だったが、筆者が度肝を抜かれたのは、スタジアムの南15kmほどにある永定門から天安門を経て会場まで26発の花火を打ち上げたシーンだ。 テレビ中継では、南から北へ次々に上がる花火を、カメラが上空から追いかけながら撮影していた。おそらくヘリコプターだろうが、夜間飛行であり、やり直しのきかないぶっつけ本番である。少しでもタイミングが狂えば撮ることができない、計算され尽くした映像だった。おそらく張監督は、盛大な式典を世界中に印象づけるため、スタジアムの観衆以上にテレビの前の人々を意識していたのではないだろうか。 そして、世界の国々の中で最も多くの人々がテレビ中継を見たのが、ほかならぬ中国である。現地の調査会社によれば、オリンピック開幕式の国内の視聴者数は8億4200万人に上り、聖火台に点火した時の視聴率は90%を超えたという。 では、北京の老百姓(普通の庶民)たちは、テレビ中継をどんなふうに見ていたのだろうか。

・8月8日は休日になっていた!

オリンピック開幕まで3日に迫った8月5日、北京市政府はいきなり通達を出し、開幕式が行われる8月8日は市内の企業や行政機関を休日にしてしまった。日本ではちょっと考えられない通達だが、政府の朝令暮改には慣れっこの北京市民の多くは、オリンピックのおかげで三連休になったと嬉しそうだった。 「今日はどこへ行っても道路はガラガラ。仲間内でも、仕事を休んで家でテレビを見ているやつらが多いんだ。まるで旧正月が2回来たみたいだよ」 8日午後、筆者がタクシーをつかまえると、ドライバーがそう話しかけてきた。中国語で「春節」と呼ばれる旧正月は、1年に1度、家族や親戚が集まって団欒する、中国人にとって一番大切な祭日である。それと同じように、三連休は家族や友人の家に集まり、皆でわいわい言いながらオリンピックを観戦するのだという。 「あなたは休まないの?」とドライバーに聞くと、「子供の学費のため、お金を稼がなきゃならないからね。でも今夜は早めに切り上げて、テレビで開幕式を見るつもりさ。中国人にとって、待ちに待ったオリンピックだからね」と、笑顔で答えた。 その夜、開幕式が始まって2時間ほど過ぎたところで、街の様子をうかがうため外に出てみた。建物のガードマンとパトロールの警察官を除けば、通りを歩いている人はほとんどいなかった。しかし、地元の人々が暮らす集合住宅の明かりは半分くらい消えていた。どこかの家に集まり、一緒にテレビを見ているのだろう。 路地に入ると、人だかりがあった。集合住宅の1階にある小さな雑貨屋の軒先にテレビを持ち出し、住民たちが開幕式を見ていたのだ。この夜は立っているだけで汗が噴き出るほど蒸し暑かったが、男性たちは上半身裸でビール片手にほろ酔いかげん。女性たちは中継を見ながらおしゃべりに興じていた。どの顔もみな楽しそうだった。 三連休が明けた月曜朝、出勤のためオフィスに向かって歩いていると、路上駐車の集金係(北京の道路には日本のパーキングメーターに似た有料の駐車スペースがある)をしている顔見知りの青年が、にこにこしながら近づいてきた。 「おい、オリンピックは見に行ったかい? 開幕式は壮観だったなぁ」 彼は筆者が外国人であることを知っている。しかも、外国人は金持ちで、みなオリンピックのチケットを持っていると思い込んでいるらしかった。開幕前、彼はこんなふうにぼやいていた。

・市民たちの誇りと幸せ

「あんたたちがうらやましいよ。おれは1日も持ち場を離れられないから、試合を見に行きたくても行けないんだ。そのうえ、自家用車の走行規制で駐車する車が少なくなって、(歩合制の)給料が減っちゃったんだから」 そんな彼は、開幕式を自宅で酒を飲みながら家族と一緒に見たという。その興奮と感動は、少なくとも一時的に、日々の仕事の辛さを忘れさせるパワーを持っていたようだ。 「すごい開幕式だったね。あなたがた中国人の誇りでしょう?」。筆者がそう水を向けると、青年ははにかむような表情で笑った。 オリンピックの開幕式には、日本の福田康夫首相や米国のブッシュ大統領など80カ国以上の元首、首脳級が出席した。空前の規模の警備体制が敷かれる中、三連休の間に北京では米国チームのコーチの親戚が刺殺される痛ましい事件が起こり、新疆ウイグル自治区では公安当局への爆弾テロが再び発生した。 中国政府の首脳や警備の責任者たちは、24日の閉幕式を無事に終えるまで、一瞬たりとも気の抜けない緊張の日々が続く。 一方、北京の老百姓たちは、様々な不満や矛盾を抱えつつも、それをいったん棚上げして、オリンピックを家族や友人たちと心から楽しんでいるように見える。それは、いつの時代も政治に翻弄され続けてきた庶民たちの、したたかな知恵なのかもしれない。この小さな幸せが閉幕式まで乱されることなく続くことを、願わずにはいられない。
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