頂門の一針(日曜日) | 日本のお姉さん

頂門の一針(日曜日)

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グルジア侵攻作戦
━━━━━━━━古澤 襄

ヘソ曲がりかもしれないが、NHKが北京五輪の開会式を熱狂的に中継 してくれると、たかが夏祭りの花火風景じゃーないかとテレビのスイッチを切ってしまった。それよりもロシア軍がグルジア軍と本格的な戦闘 に入った方が気になる。

案の定、ロイター通信社はロシア軍の戦車がグルジアの南オセチア自治 州に侵攻した事件をトップニュースで伝えている。BBCはじめ世界の 主なテレビはロシアがグルジア侵攻を開始したことがトップニュースで あって、北京五輪のお祭り騒ぎは二番手のお知らせニュースに過ぎない。

第1次世界大戦の頃はバルカン半島がヨーロッパの火薬庫といわれたが、今の世界の火薬庫は中央・西アジアになった。その一角で武力衝突が始まった。ロシアのプーチン首相は「事実上、南オセチアでは戦争が始まった」と認めている。

夏祭りに浮かれている間にグルジアの火の手が広がってしまう危険性が ある。その火の手は新疆ウイグル自治区にも波及しかねない。だがロシ アは本格介入の構えをみせている。

グルジア政府によるとロシア軍機は首都トビリシに近い軍事施設などへ の攻撃も開始したという。こうなると単なる偶発的な武力衝突といえな い。

グルジア共和国といっても日本人には馴染みが薄い。西アジア北端、南 カフカス地方に位置する国で、地図でみるとカフカス山脈の南麓、黒海 の東岸にあたる。北側にロシア、南側にトルコ、アルメニア、アゼルバ イジャンと隣接している。

この国はロシアと一定の距離を置き、欧米との関係強化を打ち出してき た。グルジア軍も、NATO側兵器による装備近代化やアメリカ軍など との共同軍事訓練を行うなどロシアを刺激する反ロ的態度をとってきて いる。

しかしロシアにとってはカスピ海産原油パイプラインや中央アジア原油 利権等と密接な関わりがある。さらにはチェチェン共和国と接するパン キシ渓谷を中心にチェチェンゲリラの巣窟となっているのでグルジアの 動きには神経をとがらせてきた。

あえて欧米の反発を承知のうえでロシアがグルジアに侵攻してきたとす れば一波乱が起こる。北京の花火見物などと呑気なことをいってはおれ ない。

<【モスクワ9日共同】インタファクス通信によると、グルジアからの 分離独立を主張する南オセチア自治州に軍事介入したロシア軍は8日、 自治州に進攻していたグルジア軍と激しい戦闘を展開。APによると、グルジア側は、ロシア軍機がグルジア軍の3基地と石油輸出用の港湾施設を爆撃したとしている。一方、自治州のココイトイ大統領は親族の報告を基に、グルジアとの戦闘で1400人以上が死亡と主張。(共同)>

<[MEGVREKISI(グルジア)8日 ロイター]グルジアからの分離独立を 主張している南オセアチア自治州のプレスサービスは8日、ウェブサイ トで、ロシア軍の戦車が州都ツヒンバリ北部に侵入したことを明らかに した。ロシア側は、同地域をグルジアが制圧しようとする動きに対応したとしている。西側寄りのサーカシビリ・グルジアの大統領は、グルジアとロシアは戦争状態にあると述べた。

米ホワイトハウスによると、北京オリンピックに出席するために中国を 訪れているブッシュ米大統領は「グルジア領土保全」を支援することを 約束した。ホワイトハウスのペリノ報道官は声明で「米国はグルジアの領土保全を支援するとともに、即時の停戦を求める」と述べた。

南オセチア自治州のココイトイ大統領がロシアのインタファックス通信 に語ったところによれば、グルジアの攻撃で約1400人が死亡した。
グルジアの安全保障当局高官によれば、ロシア機が首都トビリシ近郊の 軍事基地を空爆した。内務省によると、グルジア兵3人が死亡した。

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インフレが来る
━━━━━━━山堂コラム 228

「上げシオ路線」か「上げマン路線」かオラ知らないが、かつて「イン フレ・ターゲット」などと煽ったバカどもたち。それみたことか、わが 国でも、本当に諸物価が上がり始めたぞ。

パン、バター、うどん、果物、パスタ、卵、肉魚介類、マヨネーズ、佃 煮、漬物ETC・・・食いものは軒並み15~6パーセント。食料品の 値上がりは暮らしを直撃するからすぐ分かる。すぐには分らぬ鉄鉱石や金属石油といった「原材料」や「燃料」の値上がり。本当はこちらの方が深刻で、やがて全ての製品の価格上昇を惹き起こす。

25年ほど前、ブラジルに行ってインフレの凄さを経験した。ブラジルで は13年前にインフレ率2500パーセントという記録があるそうだが、当時 も実感としてはそれを上回るほどのインフレだった。

とにかく商店という商店の売り物の値札が毎日変わる。土産に買って帰 ろうとした「ツッカーノ(鷲)の置物」が前日の250億クルゼイロから何 とよう、きょうは380億クルゼイロだで、という風に。

タバコ1箱買うのに紙幣を鞄一杯詰めて行く―――というのが小噺(こ ばなし)ではなく現実。給料日は現金をすぐ品物に変えねばならない。
その人たちでスーパーの食品売り場が長蛇の列・・・それでよ、次の日 は今度はデノミだで。まったく目まぐるしいの大混乱の黒いオルフェの ポンデアスカルよ。

そのお隣のアルゼンチン。今世紀に入るや、国家財政そのものが破綻し て国が保証の債券(アルゼンチン債)までデフォルト。日本にもチンチ ン債を保有していて「煮え湯」のまされた多くの基金や団体があったの、オラは知っている。

ブラジルやアルゼンチンなど南米諸国の高インフレ・財政破綻。これは 「米国グロバリ経済に全面傾斜したため」という指摘がされた。その警 告に対して当事国はすぐ反応、方針が修正された。ブラチンペルべネボ
リパラの経済は、それまでの米国一辺倒から脱却して、ようやく立ち直 ることが出来たのだ。

まさにその南米の軌道修正の真っ最中。というか、立派なお手本進行中 で、警鐘ガンガン鳴らされているのに、小泉・竹中の「猫騙し」、いや 「猫騙され」―――米国型グロバリ・ハゲタカ経済へのベッタリ追従。

ゼロ金利策にホリエモン、村上ファンドに日銀総裁・・・いままさに始 まらんとするわが国の、大インフレの元凶がこれ。付けはきちん回って きて、米国サブプライムローンに凌辱される「なでしこジャパン」。

因業ババァ掴まされて、軒並み大赤字の銀行に株屋。女性記者とチュウ なんかやってる場合かよ、頭取さん。インフレで物価じゃんじゃん高騰し、食うもの着るもの税金も、医療費も保険料もみな上がる。上がらないのは「賃金」と「預貯金の利子」にもうひとつ。年寄りに支給される「年金額」。

後期の年寄りなどはすぐ死ぬが、死ぬに死ねない若者たち。ニートに日 雇い派遣社員。賃金よりも生活費、そちらの方が高いから、みんなルン ペンかホームレス、お菰さんなどに身を窶(やつ)し、棲みかは御山 (上野)か大川端(隅田川)。

夏のうちならまだ凌げるが、寒風吹き抜く大川の、青テントの中の生活 は、暖をとるにも股火鉢。昔はそんなものもあったけど、火鉢も炭もい まはなく、今度の冬はこたえるぜ。ゴミ出す家庭も貧乏なれば、出てくる残飯さえもめっきり減って、腐った玉蜀黍(トウモロコシ)の芯かじりゃ、古い虫歯がまた痛む・・・(了)

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中共独裁は続くのか?(下)
━━━━━━━━━━━━━平井 修一

中共の路線闘争、権力闘争はソ連に劣らずすさまじい。スターリンはト ロツキーの頭蓋をピッケルで砕いたが、毛沢東は劉少奇を生かしながら 苛むように殺していったから、残虐性では毛沢東は金メダルである。

1957年の毛の言葉。
<わが国では、ブルジョワジーと小ブルジョワジーの思想、反マルクス 主義的思想は、なお長きにわたって存在するであろう。プロレタリアー トとブルジョワジーのどちらが勝つのか、まだ本当には解決されていな い。教条主義者と修正主義者が主張しているのは社会主義路線ではなく、資本主義路線である>

そして毛は2000万人が餓死したと言われる無謀な経済実験「大躍進」に 突き進んだ。失敗した毛は劉少奇に国家主席の地位を譲らざるを得なか
った。国家運営の実権は劉少奇、トウ小平らの実務派が握っていく。
トウは「白でも黒でもねずみを捕るのがいいネコだ」と有名な言葉を語 った。マルクス主義だろうが反マルクス主義だろうが、国家と国民を豊 かにさせるのが政治家の役割だと、おそらく毛沢東らの原理主義路線を 非難したのだろう。

毛は権力奪回を図り「文化大革命」を発動して劉少奇、トウ小平らを資 本主義に走る「走資派」として断罪、林彪は「毛主席の著作を読み、毛 主席の話を聞き、毛主席の指示通りに事をはこぼう」と紅衛兵を煽って 実務派を殺しあるいは追放していった。

文革は1976年の毛の死とともに終わり、2年後、トウ小平は奇跡の復活を 遂げ、最高権力者として「改革開放路線」を指導していく。社会主義計 画経済から擬似的な自由主義市場経済へ、それでも革命と呼ぶしかない 大転換を血を流すことなくやってのけた。

文革の10年で国民も党もイデオロギー論争の不毛さに疲れていたし、 「マシな生活」を求めていたと言う土壌があったから、この無血の「第2 革命」は成功したのだろう。国家と国民を豊かにさせなければ共産党も中国も終わりだ、とトウ小平は思っていたはずだ。

トウ小平氏が日本の大平正芳元首相と初めて会ったのは1978年10月、 「中日平和友好条約」批准書交換式の時だった。2カ月後の1978年12月7 日、日本では大平内閣が発足した。

大平首相は1979年12月5日、中国公式訪問のため北京に到着した。翌6日 午後、トウ氏は大平首相一行と会見した。以下の対話は中共の資料から の脚色。

大平「中国は自主独立の立場で雄大な現代化計画を打ち立てました。将 来はどのような状況になるのですか。現代化の青写真はどのように構想 したのですか?」

トウ「中国の今世紀の目標は小康(少しのゆとり)です。人民にこれま でよりはいい生活をさせたいと思っています」

大平「当面の目標はどれほどですか?」

トウは1978年の第11期中央委員会以来、経済建設に重点を置き、一心に 「4つの現代化」を進めてきた。しかし実際にどのくらい達成したのか、 どのくらい歩んだのか、心の中ではまだ数えていない。大平の問いにト ウは返答に窮し、1分ほど沈黙した。

トウ「もし80年代に倍増し、90年代に倍増したなら、(1人当たりのGDP)250ドルを基礎として今世紀末までに800から1000ドルまで達することができるだろうと考えています」10年で倍増。2008年の今、1人当たりGDPは2000ドルを突破しそうだからトウ小平路線は多くの問題をはらみながらも成功した。

現在の中国は「国家資本主義市場経済」と言うほかないようだ。国家が 大企業の3分の2の株を持っていると言うからずいぶん変則的だが、見た 目は市場経済である。政治的自由はないが、「稼ぐが勝ち」の自由はあ ふれている。中共は社会主義を標榜しているから「社会主義市場経済」などと墓場のマルクスが目を覚ましそうな偽装表示をして己の正当性を主張している。白を黒と言い換えるのはお得意だろうが、以下の言葉は実にむなしく響く。

<16期中央委員会報告は、改革開放以来の成果及び進展を遂げた根本的
な原因は、中国の特色ある社会主義の道を切り開き、中国の特色ある社 会主義の理論体系を形成したことにある、と指摘している。現在の中国では、中国の特色ある社会主義の道を歩むことは、本当の社会主義を堅持することを意味し、中国の特色ある社会主義の理論体系を堅持することは、本当のマルクス主義を堅持することを意味している>(第17回全国代表大会)

毛沢東派(保守派、原理派)を刺激しないように、なだめすかすような 文章である。下部構造(経済)と上部構造の(政治)の乖離と矛盾。独裁を止めて多党制と言論の自由を認め、ある程度「普通の国」になるのか、それとも独裁のまま「異形の大国」として世界中から嫌われ続けるのか。第3の革命にコキントウは踏み切れるのか。中国から目が離せない。(了)