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<アイルランドがやってのけた椿事>(2008.8.10公開)
1 始めに
EU本部及びEU全加盟国がショックを受けています。EU加盟国たるアイルランドで6月13日に行われた、リスボン条約批准の是非に ついて問う国民投票で、高い投票率の下、反対票が54%対46%で賛成票を上回り、批准が否決されたからです。この椿事が今回のテーマです。
(以下、
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/jun/14/ireland.eu
http://www.guardian.co.uk/world/2008/jun/13/ireland.eu1
http://www.guardian.co.uk/world/2008/jun/13/ireland.eu1
http://www.guardian.co.uk/world/2008/jun/13/ireland.eu1
http://www.ft.com/cms/s/0/8eda1142-3949-11dd-90d7-0000779fd2ac.html
http://www.ft.com/cms/s/0/f2466f88-3975-11dd-90d7-0000779fd2ac.html
http://www.ft.com/cms/s/0/63fef7c2-396b-11dd-90d7-0000779fd2ac.html
(いずれも6月14日アクセス)
http://www.time.com/time/world/article/0,8599,1814373,00.html
(6月15日アクセス)による。)

2 椿事のあらまし
(1)総論
リスボン条約は、2005年にフランスとオランダの国民投票で反対票が賛成票を上回った結果廃案に追い込まれたEU憲法の代わりに締結されたものであり、EU憲法の核心部分であったところの、長任期のEU大統領、強力な外相、そしてより民主的な投票制度といった規定が同条約に盛り込まれています。現在リスボン条約は各国において批准されつつあり、EU加盟全27カ国中18カ国で批准が終わっていたところ、全加盟国中唯一、その憲法上条約の批准を国民投票で行わなければならないアイルランド、しかも人口が420万人でEUの総人口4億9,000万人の1%にも達しないアイルランドにおいて、批准が否決されてしまったわけです。
 一カ国でも批准が否決されれば、リスボン条約は効力を発生しないので、これは大事(おおごと)なのです。

(2)椿事たるゆえん
なぜこれが椿事かと言うと、一つ目は、同条約にアイルランドのほぼ全政党が賛成し(反対したのは7%の得票率しかないシン・フェーン党のみ)、全主要経営産業団体、労働組合、全農業組合、主要メディア、そしてカトリック教会が賛成していたにもかかわらず、反対票が上回ったからです。椿事である理由の二つ目は、反対票を投じた人々の大部分は、リスボン条約の何たるかがさっぱり分かっておらず、EU軍ができて徴兵制が敷かれる、アイルランドの中立(NATO非加盟)が失われる、アイルランドがその低い法人税を維持できなくなる、アイルランドの堕胎禁止政策が維持できなくなるだのといったリスボン条約に書いてないことに反発したり、果てはアイルランドの某地方空港と英国のヒースロー空港を結ぶ定期便がなくなるといったリスボン条約と何の関係も
ないことに反発したり、等のてんでバラバラの、しかもいずれ劣らぬばかげた理由を挙げているからです。
椿事である三つ目の理由は、アイルランドが大いに利益を受けたEUに恩を仇で返した形であるからです。
 アイルランドは1972年に賛成5対反対1の割合でEU(当時はEuropean Economic
Community=EEC)加盟を決め、1973年に加盟国中最貧国として加盟したのですが、現在では世界で5番目の一人当たりGDPの国になっています。
加盟当時は英国への輸出が全輸出額の55%を占めており、主要輸出品はと言えばビール、バター、と牛肉でした。
加盟後は、1980年までに家計所得が三分の一も減少する不景気が到来したのですが、1980年代終わりから税金と規制を他のEU加盟国以下の水準に減らしたところ、アイルランドが英語国であることことにも目を付けた外国企業が押し寄せ、1995年から2000年にかけて年率10%成長を遂げ、EU全体への輸出が70%を占め、英国への輸出は17%に減少しています。これまで、アイルランドはEUから累計400億ユーロ(820億米ドル)の補助金を受け取りましたが、遠からず補助金拠出国に転じる見通しです。
そして、かつては移民送り出し国だったアイルランドが今では東欧からの移民受入国になりました。
アイルランドは、まさにケルトの虎(Celtic Tiger)へと変貌を遂げたのです。このように足を向けては寝られないEUに対し、余りにもつれないしうちをアイルランド国民はやってのけたことになります。

 (3)頭を抱えるEU
EU憲法を葬り去ったのはフランスとオランダというEU大好き国でしたが、今度リスボン条約が葬られる可能性をもたらしたのもアイルランドというEU大好き国でした。 複雑な案件を各国の国民投票に付したためにEU憲法が葬り去られたとの反省に立って、(アイルランド以外では)国民投票に付す必要がないリスボン「条約」に仕立て直して再チャレンジしたものの、たった一各国、国民投票に付さねばならないアイルランドにおいて、その国民からダメ出しがなされてしまったというわけです。
EU当局とEU大衆との間に大きなギャップがあることが改めて露呈した形ですが、こんなことでは、いつまで経ってもEUは、覇権国米国や、興隆しつつある中共、インド、ロシアといった諸国に伍する政治的経済的存在になれないのではないかという嘆き節が聞こえ始めました。とにかく、このまま批准を続けて行って、アイルランドを除く26カ国が批准を終え、その上でアイルランド国民を説得(脅迫?)すべきであるとか、こうなったら当分の間、EU大統領の設置は諦め、条約の改訂なくして実行できるEUの外交機構の強化やEU議会の権限の強化だけで我慢しようといった声が出始めています。

3 感想
民主主義が嫌いで自由主義が大好きなアングロサクソンは、直接民主制を排し、有権者の拡大にも慎重であり続けたという過去を持っていますが、にもかかわらず、米国を含むアングロサクソン諸国では民主主義化してからも民主主義が機能不全を起こすことはありませんでした。
しかし、アイルランドを含む欧州諸国では、民主主義は機能不全を起こしてばかりいます。ナショナリズム、共産主義、ファシズム、有色人種差別/ホロコースト、表現の自由の蹂躙(ホロコースト否定論の禁止等)、等が欧州における民主主義が起こした機能不全のいくつかの例です。今回のアイルランドにおける椿事は、欧州の一国において、自傷行為的な愚か極まる決定を下すという形で民主主義が機能不全を起こしたものであり、ここに欧州文明の負の歴史に新たな一章が刻まれたわけです。
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<ライサ>
--一般的に言う学力とは何か--
「・・・大学生の学力は年々下がっているにもかかわらず、高校卒業生の学力は下がっていません・・・」(コラム#2718。衆愚)
私は教育界にいませんので部外者かも知れませんが、教えていただければありがたいです。高校卒業と大学入学は、一般的には時間の延長線上に連続していると思うのですが、何故卒業・入学の時間的接点を越えると、下がっていない者が下がってしまうのでしょうか。お示しの本を読むべきかも知れませんが、その前に易しく教えていただけると嬉しいです。私の個人的思いですが、この場合、「学力とは何か」を有る程度決めてからでないと単純に比較は出来ないような気がするのですが。
通常、学力といった場合、大学などのような所で学ぶ、有る程度の専門的知識を要するような物は指さずに、工業・商業・実業高校等で教える専門的知識を除いて、いわゆる一般的基礎的なこと(まー、極端に言えば保育園・幼稚園から小学・中学・高等学校までの)を学力と言うのではと思っていました。もしそうだとすれば、「・・・大学生の学力は年々下がっているにもかかわらず、高校卒業生の学力は下がっていません・・・」は不思議な気がしてならないものですから。

<太田>
ライサさんの冒頭の疑問について。
(短大を除く)大学ほどではありませんが、高校についても進学率が上昇してきているので、高校時代の学力を中学校の時代の学力で置き換えて考えてみましょう。まず、同世代の人数が倍以上あった戦後ベビーブーム時代、すなわち私の大学入学時(1967年)に比べて、中学生の平均IQ的な平均的学力が低下していない可能性は一概に否定できません。
他方、単純に中学校の時の学力上位者が大学に進学しているとすると、現在の大学進学率は50%程度に達しており、私の大学入学時には、同世代の人が倍以上で、しかも大学進学率は13~14%に過ぎなかったのですから、大学生の平均的学力の低下には著しいものがあってしかるべきでしょう。(以上、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%85%A8%E5%85%A5%E6%99%82%E4%BB%A3
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/gijiroku/001/03090201/003/002.pdf を参照した。)

こう考えれば、神永説は成り立ちうるのです。問題は、中学生(高校生)の平均的学力が低下しているのか否かなのです。

<消印所沢>
当方のコミュニティ
http://mixi.jp/view_community.pl?id=342133
のほうで,森本敏氏のことが、ちょっと話題に上りました.貴兄は確か、テレビ番組などでご一緒に出演なされていたこともあると記憶し
ておりますが、貴兄から御覧になった森本氏の評価についてお聞かせ願えれば幸いです。

<太田>
森本氏については、コラム#2299、2381で言及しているほか、コラム#2518、2592で根底的な批判を行っています。ご一読いただければ幸いです。

<ys>
「朋あり、遠方より来たれり。うれしからずや」(コラム#2718。-大橋一弘)て「朋あり遠方より来る。亦楽しからずや」じゃーなかったっけ!

<太田>
私が弁護する必要はないのだけれど、
http://www.shintoukai.com/chinese_class9.htm
でも、「友有り遠方より来たれり、また楽しからずや」と「訳」してるように、「来たれり」でも間違いではないのでは?「また」の有無も本質的な問題ではないでしょう。 
以下、蛇足です。
「朋<とは>考え方がお互いに照し合うように、よく見え通ずる友人ということです。多くの友人があっても、趣味が一致しているとか、おなじ志で一筋に生きている人と掛合うチャンスは稀であり、折角出合いがあっても、いろいろの事情で、遠隔の地に住まなければならないことも少なくありません。そのような遠い場所から訪ねて来た親友と久しぶりに近況を報告し合ったり、意見を交換したりするのは、人生の大きな楽しみであると同時に、人生そのものを豊かなものにします。(http://www.iec.co.jp/kojijyukugo/vo38.htm )。
 また、Livedoor Wiki の「ことわざもじり」によれば、これは「インターネットで知り合った萌え友達とオフ会やコミケ会場などで会う楽しさをいうことば。」だそうです(http://wiki.livedoor.jp/rreuentahl/d/%CA%FE%A4%A2%A4%EA%B1%F3%CA%FD%A4%E8%A4%EA%CD%E8%A4%EB )。
最近、私自身、この言葉を噛みしめる機会が多いのですが、まことに幸せなことだと思っています。そうであれば、北京五輪開会式での論語のこのくだりの引用は、ちょっと牽強付会ぎみではないでしょうか。
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【古森義久の北京奥運考】「一つの世界」の行方 (2回目の掲載)

2008.8.10 産経新聞
灰色のモヤに包まれた北京の街を埋めつくす「一つの世界、一つの夢」の真紅の垂れ幕は、壮大な反語なのかと、つい思った。開会式前から競技開始までの3日間、北京での実体験は世界も、夢も、決して一つではないと痛感させられる連続だったからだ。

まず直行した外国人用アパート式ホテルでパスポートを問答無用で取り上げられた。警察に「臨時居住」を即時、登録するためだという。ホテルの部屋のインターネット回線の接続も尋常ではなかった。自分のパソコンに多数の通告情報をインプットし、さらに先方にこちらの情報を送らねばならない。

そのうえで1日ほど使ったパソコンの画面には「スパイウエア探知」という黄色い警告が出始めた。専門家に調べてもらうと、短時間のうちに驚くほど多数のウイルス類その他に侵入されており、このままだと深刻な実害を受けるという。通信を即刻、別の方法に切り替えた。

北京五輪の事前報道にあたった各国報道陣からは中国当局が米欧の大手のメディアやチベット、法輪功などのウェブサイトへのアクセスを阻んでいるという抗議が起きていた。自分で試みてもなるほど、アクセスできない。中国でのこうしたインターネット規制についての英BBCテレビのリポートをみていたら、規制の批判部分でピッという音とともに音声が途切れ、映像が乱れた。これまた明らかに当局の「検閲」だった。

単にオリンピックの報道のために入国した外国人記者たちにもこんな制約や監視のタガが二重三重に課される。米紙の報道では北京市内を走る7万台ほどのタクシーの大多数には当局によりGPS(衛星利用測位システム)に基づく車内盗聴マイクが設置されたという。まさにジョージ・オーウェルが未来小説「1984年」で描いた全体主義国家を管理する「ビッグ・ブラザー」は健在なのである。その運営には気の遠くなるほど膨大な国家の資源や人材が投入される。

中国当局によるこの種の監視や管理は中国総局長としての2年間の北京在勤でさんざん経験したのだが、7年ほどの空白を経て身をさらすと、他の普通の国の規範とはいかに異質であるか、衝撃的な違和感に襲われる。まして中国未体験の記者たちが五輪取材のためにだけ訪れて、こうした制約を受ければ、仰天し、中国をまるで異なる世界として感じるだろう。「一つではない世界」の実体験である。

これほど特殊な国の中国にいくら「世界は一つ」と説かれても、うろたえ、憤るだけだろう。

だから中国政府を代表して五輪取材の外国人記者たちに中国のいまの対外関係を語った外交学院教授の呉建民氏は、中国の異質性を問いただす質問を集中砲火のように浴びた。

「中国には独自の法律とともに欧米とは異なる独自の文化がある。欧米では他者を白と黒に区分し、善悪を単純に分けてしまうが、現実はそんな簡単ではない。欧米諸国は中国を先頭とする歴史の長い国や開発途上の国の文化や価値観への理解を深めねばならない。そうなれば、オリンピックが象徴する調和のある一つの世界ができるだろう」

答えになるような、ならないような説明とはいえ、フランス駐在の中国大使や外務省の報道局長を務めた呉教授は根気よくスムーズに質問に応じていった。

さてこの北京五輪が中国にとってそんな「一つの世界」への飛躍となるのか、それとも逆に世界での異端としての印象を強めることに終わるのか。

過去の中華帝国が全世界に残した偉業を主題とする大開会式によって、いまや新しい史劇のカーテンが引きあげられた。(編集特別委員)
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【栃木県日台親善協会】王金平・立法院院長を歓迎
日本李登輝友の会メールマガジン「日台共栄」より転載

「中国との交流は軍事バランスが崩れないようにすることも重要」と説明

7日に来日した台湾・立法院の王金平院長は昨日、栃木県日光市に入り、同行の羅坤燦・台湾駐日代表処代表代行らと東照宮などを見学した後、夕方6時から「明治の館」尭心亭において、本会理事でもある宇井肇氏が会長を務める栃木県日台親善協会主催による歓迎会に臨んだ。

歓迎会には地元選出の森山真弓・衆院議員、矢野哲朗・衆院議員、船田元・衆院議員、阿部哲夫・日光市副市長らが出席。また、林建良氏(本会常務理事、同会顧問)、萩原正氏(本会理事、同会顧問)、柚原正敬氏(本会常務理事、同会顧問)、薛格芳氏(本会理事、同会理事)など約30名が出席した。

歓迎会は宇井貴彦・同会事務局長の進行で進められ、宇井会長の開会挨拶に続いて阿部副市長、森山議員、矢野議員の歓迎挨拶の後に王金平院長が挨拶。

王院長は「日光に来て、まさしく日の光を感じた」と東照宮などを巡った感想に続いて、本会のことにも触れ「日本に日本李登輝友の会があり、台湾を大切にしていただいていることに感謝したい」と述べつつ、40年前に知り合ったという李登輝元総統との親密な関係について触れた。

今般の来日の目的については「アジア太平洋国会議員連合」(APPU)総会へ出席するためだと述べつつ、「麻生太郎先生から招待状をいただいたこと」を明らかにした。

また、馬英九総統がなぜ中国との関係改善を積極的に進めているかについても触れ「両岸関係の緊張を和らげるためで、アメリカの理解も得ている」と説明した。ただし、国会の立場としては、台湾の主権、安全、2300万人の台湾人の権利が侵されず、脅かされず、損なわれないよう監視していると述べた。

さらに「中国との交流を進めると同時に、軍事バランスが崩れないようにすることも重要だ」とも付け加え、台湾は日米安保条約の一員ではないが、台湾の軍備増強が第一列島線を守ることになると強調し、理解を求めた。

 なかなか決まらない駐日代表については「台湾は日本を重視しているが故に慎重になっている」と説明し、「理想的な人はいるが、意欲がない。意欲のある人はたくさんいるが、適任ではない」と選考の難しさの一端をのぞかせた。

そして、「新しい大使が決まったら、ぜひ日光に行くよう勧めたい」とユーモアを交えつつ、「日光市が積極的に進めている台湾との姉妹都市提携には、仲人として力を尽くしたい」と結んだ。

その後、宴席となり、王院長は畳の間を苦にした様子もなく、日本酒を飲みながら懐石料理を堪能し、出席者と歓談しつつ日光の夜は更けていった。

なお、昨年6月、李元総統が日光を訪問した際、明治の館の庭園の一角にお手植えされた「河津桜」は3メートルほどにも成長し、王院長も見学した。      
(編集部)
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