ロシア政治経済ジャーナル No.529 2008/8/10号
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ロシア政治経済ジャーナル No.529 2008/8/10号
★米・グルジアVSロシア・南オセチア戦争
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まったく、うかうかオリンピックも見ていられません。グルジアは7日、南オセチアへの攻撃を開始しました。ロシアは南オセチヤを支持し、介入。事実上、ロシアとグルジアの戦争がはじまっています。全世界の99.9%がびっくり仰天したこの出来事。しかし、世界に16600人ほど、「あ~やはりはじまったか」と驚かなかった一群がいます。いうまでもなく、日本のスーパーエリートが集結する、RPEジャーナル読者の皆さま。特に「中ロ同盟」を読まれた方は、「きたきた」と思われたことでしょう。今回はこの紛争について、わかりやすく解説していきます。
▼グルジアと南オセチアってなに?
まず基本から。グルジアと南オセチアの関係について。グルジアは、カフカスにある国です。北はロシア、南はトルコ、東はアゼルバイジャンと接している。この国は、もともとソ連の一部。他の旧ソ連諸国同様、ソ連崩壊のドサクサにまぎれて独立をはたしました。で、南オセチアってなんだ?法的には、グルジアの自治州(南オセチヤ自治州)ということになっています。ここにはグルジア人とは違う、オセチア人が住んでいる。
1990年4月、南オセチアは主権宣言をおこないました。つまり、どさくさにまぎれて自分たちも独立してしまおうと考えた。
ロシアのチェチェン共和国や、(旧ソ連ではありませんが)セルビアのコソボとよく似たケースといえるでしょう。
1991年1月、グルジアとオセチアの紛争が勃発。
1992年1月、南オセチアで、「独立」に関する住民投票が実施され、92%が独立に賛成しました。
同年5月、南オセチア共和国最高会議は、国家独立法を採択。
同6月、停戦合意。同7月、ロシア平和維持軍が配置された。
1993年、南オセチア最高会議は、憲法を制定
1996年11月、南オセチアではじめての大統領選挙実施。
このように、南オセチアは92年以降、実質独立状態にある。しかし、国際的に承認されたわけではない。いまだに国際法的には、グルジアの自治州という位置づけなのです。
▼なぜ今?
南オセチアは、実質16年間も独立状態にある。グルジアはなぜ今になって、南オセチアへの攻撃を開始したのでしょうか?これはセルビアのコソボ自治州が、実質独立を勝ち取ったことと関係しているのです。コソボは08年2月、一方的に独立を宣言しました。
その主張は、
・コソボ住民の90%はアルバニア人である
・アルバニア人はセルビアからの独立を望んでいる
・民族自決権により、セルビアはコソボの独立を認めるべきだ
さらに、セルビアがかつて「民族浄化を行った」という話が、コソボ独立を後押ししました。そして、欧米のほとんどの国が、コソボを独立国家として承認してしまった。「領土保全の原則」「民族自決権」この二つは矛盾するのですが、領土保全の原則が通常上とされてきました。それで普通、独立を目指す側は、話し合うか独立戦争をして、本国に独立を承認させるのです。他国が新独立国を承認できるのは、通常その後になります。しかし、コソボの場合、セルビアが納得しないまま、欧米は独立を認めてしまった。それで、ロシア外務省は、08年2月17日にこんな声明を出しました。
<ロシア指導部は従来、「コソボ独立が承認された場合には世界的に適用される『前例』となり、国際秩序の崩壊を招く」などと主張してきた。17日の外務省声明も、同様の論法からコソボ独立の「危険な結末」を強く警告している。>(産経新聞 2月19日)
コソボの動きを見た南オセチアは、「南オセチア住民の90%以上は、グルジアからの独立を望んでいる。コソボがOKなら、俺らもOKだろうということで、旧ソ連諸国で形成される独立国家共同体(CIS)および国連に、独立承認を求める決意を固めていったのです。一方ロシアは、NATO入りを目指すグルジアを憎んでいますから、南オセチアに対する支援を強めていきました。これに危機感を感じたグルジアが、独立を阻止するために今回南オセチアの首都ツヒンバリに進攻した。そして、ロシアの平和維持軍司令部や兵舎も空爆。ロシア軍はこれに反撃した。この原稿を書いている時点で、南オセチア住民の犠牲者は2000人とつたえられています。グルジアは、一時ツヒンバリを支配した。しかし、ロシア軍は首都からグルジア軍を排除することに成功しています。さらにロシア軍は、南オセチアと共にグルジアからの独立を求めるアプハジアでもグルジア軍を空爆している。全面戦争の様相を呈してきました。
▼米ロ新冷戦のはじまり
基本を見てきました。これだけだと、「グルジアの国内問題にロシアが介入したのね」と思える。しかし、この戦争は実質米ロの戦争なのです。「あ~陰謀論ね」新しい読者さんはそう思うでしょう。しかし、読みすすめていくうちに、事実であることをご理解いただけるはずです。米ロ関係を超特急で振り返ってみましょう。
00年、プーチンが大統領に就任。
01年、プーチンはアメリカのアフガン攻撃を支持。
両国関係は改善される。02年~03年、ロシアはアメリカのイラク攻撃に最後まで反対。両国関係は悪化する。しかし米ロ関係が決定的に悪化したのは、いわゆるユコス問題が原因でした。アメリカ(具体的にはエクソンモービル・シェブロンテキサコ)は、ロシアの石油最大手(当時)ユコスの買収交渉を進めていました。アメリカは戦争により、イラクの石油利権を独占した。今度は、世界埋蔵量14%を占める石油大国ロシアの利権に食いこみたい。ところがプーチンの命令により、ロシアの検察は、ユコスのホドロコフスキー社長(当時)逮捕してしまいます。そして、ユコス売却の話は流れました。ユコスはその後、国営石油会社ロスネフチに吸収されます。プーチンの「ロシアの石油利権はアメリカに渡さない!」という強い意志表示に、アメリカは激怒。アメリカは、「ロシア封じ込め」を決意したのでした。
▼後半へ
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★今度は中国幕府の天領か?
「・・・僕がうまれたのは、中華人民共和国小日本省です。。。」アメリカ幕府の衰退により、強制自立を迫られる日本。はたして、自立できるのか?北野が「日本自立」への秘策の数々をまとめました。こうご期待!「いつでるのですか?」CKOPO!
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▼後半
▼バラ革命はアメリカの革命
その結果、03~05年にかけて、旧ソ連諸国で次々と革命が起こった。最初のターゲットは、今回問題になっているグルジア。グルジアの東には、これも旧ソ連の石油大国アゼルバイジャンがあります。アゼルバイジャンの石油は今まで、ロシアの黒海沿岸都市ノボロシースクまでパイプラインで運び、そこから世界市場に出されていました。アメリカは、「アゼルバイジャンの石油を、ロシア領を通過しない形で、世界市場に出そう」と考えた。具体的には、アゼルバイジャンの首都バクー→グルジアの首都トビリシ→トルコのジェイハンをつなぐパイプラインをつくろう。このパイプラインは、当然ロシアの国益に大きな打撃を与えます。それでロシアは、グルジアからの独立を目指す南オセチヤ・アプハジアへの支援を強化します。グルジアの大統領は当時、シュワルナゼさん。ゴルバチョフ時代ソ連の外相を務めた人物で、日本でも人気がたかかった人物。シュワルナゼさんは、もともと親米なのですが、ロシアからの圧力で右往左往しはじめました。それでアメリカは、「このじいさんではダメだ、俺らの傀儡を立てよう」となった。03年11月2日、グルジアで議会選挙が実施されました。結果は、親シュワルナゼの与党「新しいグルジア」が21%で1位。2位はサアカシビリ(現大統領)率いる「国民運動」で18%。野党は、この選挙結果は「不正だ!」とし、「選挙やり直し」と「大統領辞任」を求める大々的なデモを行います。11月22日には、野党勢力が国会議事堂を占拠。23日に大統領は辞任しました。これを一般的にバラ革命といいます。この革命がアメリカの革命だったこと、日本の新聞にも載っています。例を挙げておきましょう。
<グルジア政変の陰にソロス氏?=シェワルナゼ前大統領が主張
【モスクワ1日時事】グルジアのシェワルナゼ前大統領は、11月30日放映のロシア公共テレビの討論番組に参加し、グルジアの政変が米国の著名な投資家、ジョージ・ソロス氏によって仕組まれたと名指しで非難した。ソロス氏は、旧ソ連諸国各地に民主化支援の財団を設置、シェワルナゼ前政権に対しても批判を繰り返していた。>(時事通信-03年12月1日)
03年11月29日付朝日新聞。<「混乱の背景に外国情報機関 シェワルナゼ前大統領と会見
野党勢力の大規模デモで辞任に追い込まれたグルジアのシェワルナゼ前大統領は28日、首都トビリシ市内の私邸で朝日新聞記者らと会見した。大統領は混乱の背景に外国の情報機関がからんでいたとの見方を示し、グルジア情勢が不安定化を増すことに懸念を表明した。前大統領は、議会選挙で政府側による不正があったとする野党の抗議行動や混乱がここまで拡大するとは「全く予測しなかった」と語った。抗議行動が3週間で全国規模に広がった理由として、「外国の情報機関が私の退陣を周到に画策し、野党勢力を支援したからだ」と述べた」>この他にもいろいろありますが、長くなるのでやめておきましょう。米ロ新冷戦の詳細については、これをお読みください。
うざったいくらい証拠と資料をあげています。
↓
「中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日-一極主義vs多極主義」(草思社)(詳細は→ http://
▼サアカシビリは、アメリカの許可なしで動かない。
つまりこういうことです。グルジアの現大統領サアカシビリは、アメリカの傀儡である。よってアメリカ政府の命令・あるいは許可なしで、軍事行動を起こすことはありえない。つまり、グルジアと南オセチアの戦争は、アメリカの命令か許可のもとに行われている。グルジアの動機は、南オセチアの独立を阻止すること。これはわかります。では、アメリカの動機はなんなのでしょうか?RPE読者の皆さまならおわかりでしょう。ロシアは、現在アメリカで起こっている危機の原因を作り出している。具体的にいうと、ロシアは意図的にドル体制を崩壊させている。
<ルーブル建て原油取引開始 ロシア、影響力強化狙う
【モスクワ9日共同】モスクワの取引所、ロシア取引システム(RTS)で8日、初のルーブル建てロシア原油の先物取引が始まった。サウジアラビアに次ぐ世界第2位の産油国であるロシアは、自国通貨建ての自国産原油市場を創設することで、国際原油市場での影響力強化を図る狙いだ。>(共同通信06年6月9日)<米露“破顔一笑” 「ルーブルを世界通貨に」プーチン大統領ますます強気
07年6月12日8時0分配信 産経新聞
【サンクトペテルブルク=内藤泰朗】ロシアのプーチン大統領は10日、
出身地サンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラムで、同国の通貨ルーブルを世界的な基軸通貨とすることなどを提唱した。同国など急成長する新興国の利益を反映した経済の世界新秩序が必要であるとの考えを示した形だ。世界的な原油価格高騰を追い風に強気のロシアは、米国主導の世界経済に対抗し、欧米諸国に挑戦する姿勢を強めるものとみられる。>それでどうなったか?ドル体制が揺らいできたので、アメリカへの資金流入がとまったのです。そして、1、住宅バブル崩壊。 2、サブプライム問題顕在化。 3、アメリカ経済危機。 そんな中、ロシアは史上空前の原油高により、相変わらずの好景気を謳歌している。(最近下がってきましたが。)アメリカは憎きロシアを封じ込めるために、
・東欧MD計画
・反ロ軍事ブロックNATO拡大(特に、旧ソ連のウクライナ・グルジア)
等々さまざまな攻撃をしかけている。そして、アメリカに忠実なサアカシビリは、「NATO入りを目指す」と宣言したり、ロシアのWTO加盟を邪魔するなどして、役割を果たしてきました。
▼機能不全の国連
米ロが対立をつづけているため、国連は機能不全に陥っています。国連安保理は、戦闘行為の即時停止を求める声明を出そうとしています。しかし、アメリカ・グルジアとロシアの主張が真っ向から対立し、結論が出ない状況なのです。アメリカとグルジアは、「グルジアの領土主権を尊重し、ロシアは即座に撤兵せよ」と主張。一方ロシアのチュルキン大使は、「グルジアは南オセチアで民族浄化を行っている。既に1300人以上が犠牲になっている」と主張。逆にグルジアを非難しています。どちらの主張が正しいのでしょうか?これは、一概にはいえません。確かに、国際法的に南オセチアはグルジアの一部。グルジアが南オセチアに派兵することは、国内問題ともいえます。ただ、グルジアが停戦合意を一方的に破り、攻撃をしかけたこと。ロシアの平和維持軍を先に攻撃したこと。南オセチアの一般人をたくさん殺していること。これらはどうなのでしょうか。また、アメリカは過去、同様のケースで、今回のロシア同様、独立派を支持したことがあります。
そう、セルビアからの独立を求めるコソボ。アメリカが現在展開している論理であれば、コソボ問題はセルビアの国内問題でしょう。ところが、アメリカとNATOは、「セルビアがコソボで民族浄化をしている」とし、セルビア空爆に踏み切りました。そして、最終的にセルビアの意向を無視して、コソボを一方的に独立させてしまった。ロシア側からいわせれば、「ロシアはアメリカと同じことをしているだけ」となる。一方ロシア側にも矛盾があります。ロシアは、独立を目指すチェチェン共和国を攻撃した際、一貫して「これはロシアの国内問題だ」としてきました。要するに、アメリカもロシアも、自国に都合のいい論理を展開しているだけ。それで、一概に善悪を判断することはできないのです。私たちは、アメリカとグルジアの主張はこう、ロシアの主張はこうと事実だけをおさえておけばよいでしょう。
▼アメリカの目的
この戦争はいつまでつづくのでしょうか?答えは、「アメリカがグルジアに命令をくだすまで」となるでしょう。アメリカとグルジアの狙いは二つあると思います。一つは、国際社会におけるロシアの評判を失墜させること私は最初、「なんでグルジアは、オリンピックの開会式直前に南オセチアを攻撃したんだろう?」と疑問に思いました。しかし、アメリカ・イギリスのテレビを見ていて納得しました。米英の放送を見ていると、「ロシアがオリンピック開催日にグルジアを侵略した!」というニュアンスなのです。グルジアが最初に南オセチアを攻めたこと、そして、ロシアの平和維持軍も攻撃されたことなどが、まったく無視されています。そのため、米英では「悪いロシアがかわいそうな小国グルジアを攻めた」と刷り込みが行われている。二つ目は、南オセチアの平和維持軍をロシア軍からNATO軍にきりかえること。グルジアは、停戦の条件として、「南オセチアとグルジアの間に展開する平和維持軍をロシア軍ではなく、NATO軍あるいは国連軍にすること」を求めてくると思います。そうなれば、NATO加盟国でないグルジアでも、実質NATOに守られることになる。当然、南オセチアの独立は不可能になるでしょう。いずれにしてもアメリカは今後、「ロシアは悪の帝国」というプロパガンダを展開していきます。そして今回の戦争も、最初のきっかけは忘れ去られ、「ロシアがグルジアを侵略した」という方向に変わっていくでしょう。ですから皆さんは、8月9日付けの新聞を大切に保管しておいてください。そこには、「グルジア、南オセチアに進攻」とあるはずです。
▼ロシアはいかに対抗するか
一方、情報戦ですでに苦境に立たされているロシア。これからどうするのでしょうか?グルジアが疲労して停戦に応じるまで、戦いつづけるということでしょう。ロシアは、グルジアの背後にいるアメリカへの憎悪をますますつのらせていきます。そして、アメリカを没落させる手を打っていく。例えば、イランを守る。(イランは、ドルではなくユーロ・円で原油を輸出している。)例えば、ルーブルによる原油輸出を増やすなどして、ドル体制をますます崩壊させていく。
▼結局特をするのは?
19世紀の覇権国イギリスは、ライバル・ドイツと二回戦争をし、二回勝ちました。しかし、なぜか覇権国家から没落していった。第1次大戦後、経済覇権はアメリカに移り、またソ連が誕生した。第2次大戦後、世界はアメリカとソ連の二極時代をむかえた。そして、アメリカが欧州の西半分を、ソ連が東半分を支配する時代になった。イギリスがドイツと戦っている間に、米ソが台頭したのです。今回は、アメリカとロシアが戦っている間に、中国とインドが漁夫の利をえることでしょう。おろかな。。。
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