太田述正 有料メルマガ ・ 日本の進路 | 日本のお姉さん

太田述正 有料メルマガ ・ 日本の進路

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1 始めに
中共当局がマルクス主義に代わって構築しようとしている新しいイデオロギーをネオ儒教と名付けた(コラム#995、997、1210、2425)のは、ひょっとして私が世界中で初めてなのではないかと思いますが、今度'China's New Confucianism'という本を上梓したダニエル・ベル(Daniel A Bell)(注1) がどんなことを言っているかをご紹介しましょう。

 注1)『イデオロギーの終焉(The End of Ideology)』(1960年)の著者のダニエル・ベルとは別人。

 (以下、特に断っていない限り、上記の本の書評である
http://www.atimes.com/atimes/China/JF07Ad03.html
(6月7日アクセス)、及び
http://www.independent.co.uk/arts-entertainment/books/reviews/chinas-
new-confucianism-by-daniel-a-bell-841037.html?service=Print、
ベル自身のコラムである
http://www.nytimes.com/2008/05/21/opinion/21bell.html?n=Top/Reference/
Times%20Topics/Subjects/E/Education%20and%20Schools&pagewanted=print、
http://www.dissentmagazine.org/article/?article=767
(以上、いずれも6月12日アクセス)による。)

2 ダニエル・ベルの所論
(1)共産主義の死
中共当局は、公式には共産主義を捨ててはいない。しかし中国共産党は、もはや階級闘争や金持ちへの憎しみや私有財産に対する反対を強調することはない。資本家だって今では共産党の党員になれるし、法制度もゆっくりとではあれ、次第に資本主義諸国のそれと近似しつつある。もっともこれは、中国共産党の共産主義理解が深まったからだと言えないこともない。資本主義段階を飛び越えて共産主義社会が到来することはありえない、というわけだ。
それにしても、中共で、将来到来するはずの共産主義社会について議論されることが全くと言ってようほどないのは不思議と言えば不思議だ。(私の親戚でも何でもないもう一人の)ダニエル・ベルは「イデオロギーの終焉」を唱えたが、これは、あらゆるイデオロギーが終焉を迎えたということを主張したものではなく、米国において共産主義が終焉を迎えたと主張したに過ぎないのだが、まさにこのような意味において、中共でも共産主義は終焉を迎えたのだ。それにしても、到来するかどうか誰にも分からない共産主義社会が到来するまでの間、中共の政治制度はどうあるべきなのか。ここで、議論は三つに分かれる。
 第一は、欧米流の自由民主主義の採用だ。
 第二は、自由社会主義の採用だ。
そして、第三が、新儒教主義の採用、ということになる。

 第一については説明を要しない。
中共当局は1988年に農村部に選挙制度を導入し始め、現在では約70万の村で選挙が行われている。これは、13億人の総人口の75%に選挙制度が普及している勘定だ。これがやがて都市にも普及し、普及度は100%に達するだろう、また、中央にも選挙制度が導入されるだろうと思われていたのだが、どうやらそうはならないようだ。
次に第二についてだが、自由社会主義を推奨している代表格が清華大学のCui Zhiyuan教授だ。 同教授は、1994年に労資協同を唱え、ボトムアップで自然発生した株式共同組合制度(=shareholding-cooperative system =SCS)の普及を提案した。この提案は中共当局によって採用され、農村地帯に普及した。これを全国に普及すべきだ、というのが自由社会主義だ。
 
 2)新儒教主義
そこでいよいよ新儒教主義についてだ。そもそも、かりそめにも共産主義が一時的とはいえ、支那で大衆の間に浸透したのはどうしてなのだろうか。それは、物質的に充たされることの追求や世俗主義といった共産主義の側面が伝統的な儒教的な物の考え方と合致したからだ。だからこそ、儒教的な物の考え方と背馳するところの、文化大革命の際の家族的紐帯を断ち切って国家に尽くすべきであるとする考え方は定着しなかったのだ(注2)。

(注2)中共でカラオケ・バーが瞬く間に普及したのは、孔子が音楽大好き人間であったことを思い起こせば当然だということになる。また、カラオケ・バーのホステスが売春をするとすれば、それもまた、「私は肉体美よりも徳の方が価値が高いとする者に会ったためしがない」との孔子の言にかなっている。

すべてが始まったのは、胡錦涛主席が2005年2月に「孔子は「調和を追求すべきだ」とおっしゃった」と述べた時だ。一ヶ月後に胡錦涛は、党の幹部達に「調和的社会(harmonious society)」を建設せよと指示した(注3)。

(注3)胡錦涛が、事実上リー・クワンユー率いる政党による独裁支配下にあるシンガポールの(やはり支那思想の系譜をひく)法家(的)主義・・罰主義と野党勢力の容赦ない弾圧からなる・・を採用しなかったことを頭に入れて置こう。ちなみに、リーが法家主義を採用したのは、彼が儒教教育を余り受けていなかったことと、弁護士教育を受けたことによると考えられる。

つまり、中共当局は新儒教主義を採用したわけだ。新儒教主義の理論家の代表格がJiang Qingだ。彼は、中国共産党は、共産主義文献を捨て去り、儒教文献を採用すべきだと主張している。Jiangの主張には真に瞠目すべきものがある。

(続く)
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<コバ>
熊本は九州の州都に?
週刊朝日に蒲島熊本県知事の対談記事があり、その中で蒲島氏は、「私の中に二つの存在があって、アクター(役者)としての知事を、批評家としての政治学者が見ている。」と語り、自分を実験台として、将来、蒲島県政を検証したいと思っているらしいです。州都誘致もしたいのだとか。月給100万円カットなど、こうした自分の研究(道楽?)のためのもので、確実に当選できる自民党公明党に乗っかって好奇心で知事になったのかなあと思いました。最近の朝日新聞に、知事会は国から権力や財源を奪う気概を持て、といった社説があった気がしますが、知事が自民党公明党系ばっかりの現状では、やはり民主党による政権奪取が起こらないと、地方が国から独立するのは難しそうです。

<淡水>
コラム#2605「ネオ儒教論の展開(その1) 」を読みました。大陸漢人に儒教の信者などはいません。日本人と朝鮮人が勝手に思い込んでいるだけ。♪♪孔子の言ったことは権力者にとって重宝そのものだったから「舌代」として使われて来ただけのこと。いまここで「ネオ儒教」なる概念を作るよりも道教から切り口を開くべきだと考えています。そうでないと中南海漢人の思う壺にはまる。

→私は「中南海漢人」の考えている新しいイデオロギーが何であるかを読み取ろうとしているだけです。(太田)

中共は蒋介石の国民党と一卵性双生児なのです。どちらも「王朝」の継続なのです。我々の「常識」は通用しません。

→血統原理に立脚していない以上は、どちらも「王朝」の継続とは言えないでしょう。だからこそ、どちらも正統性を担保するための新たなイデオロギーが必要になるのです。かつては中国国民党はファシズム、中国共産党はマルクスレーニン主義をイデオロギーとしたしたわけですが、そのどちらのイデオロギーも欧州が生み出したという意味では国民党と共産党は一卵性双生児であると言えると思います。(太田)

♪♪貴方のブログで若い人たちを育ててください。そして意図的に「留学」させ、将来の頭脳集団を形成できないでしょうか。いま思えば敗戦のとき多くの在大陸日本人が強制送還(引き揚げ)された。このときの「帰国子女」を育成すべきだった。こういうことが必要なのです。コキントウやらの立場で思考できる日本人がいなければならない。そうでないと勝てません。

→ここは、おっしゃるとおりです。(太田)
<ライサ>
<日本の若者の>学力の低下(コラム#2313)は本当に私も感じます。一例を挙げさせていただければ、先日、近所の短大の園芸科学生(学生と言うより生徒と言った方が良いかもしれません)が、親御さんと私の所に来ました。別に私は、家庭教師をしているわけでもなく、そんな能力があるとも思っていませんが、私のことを、「頭が良いから」と言って来たのです。(頭が良いわけ有りません。この一連の投稿を見れば誰でも分かるでしょう)その問題が、なんと以下のようでした。
「ここに1アールの畑が有り、そこに高さ30センチの覆土をしたい、ダンプカーの荷台は横1.8メートル、縦2.5メートル、高さ30センチです。何台のダンプカーが必要ですか」こんな問題でした。私はひょっとすると、こんなの小学校の高学年でも出来るんじゃないかと思いました。他にも平均の問題とか、単位の問題とかありました。mの2乗、mm・・・が読めないなんて、私の常識では理解できませんでした。一体、日本の教育はどーなっているんだと、それこそ仰天の感でした。短大の「園芸科」と言うより「演芸科の」間違えではとさえ思いました。大学の多くが定員割れだと言うことですが、これは、もはや国家的犯罪もしくは国際的陰謀かも知れないとさえ思いました。

<太田>
個人の問題なのか、短大制度の問題なのか、それとも日本の若者の学力低下問題そのものなのか、ちょっと判然としないケースですが、学力低下問題は、もっと国民的議論が起こってしかるべきです。私のコラムの読者に文科省の人がいなさそうなのが残念ですね。

<スワン>
サルコジ大統領がダライラマと会わないことになったのは残念です。夫人のカーラが会うようですが・・。
http://www.lefigaro.fr/international/2008/08/06/01003-20080806ARTFIG00395-sarkozy-ne-devrait-pas-rencontrer-le-dalai-lama-.php

<太田>
日本でも報じられています(
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080807-OYT1T00308.htm?from=main1 。8月7日アクセス)が、「大統領との面会に代え、南仏エロー県に新しく建てられた仏教寺院をダライ・ラマが訪れる際、カーラ大統領夫人が同席する形でダライ・ラマと面会する」ようですね。

話のついでにですが、フランスではチベット仏教ならぬ日本系の禅も根を下ろしていることが、
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2008/aug/04/healthandwellbeing.familyandrelationships (8月4日アクセス)から分かります。
更にもう一つ。竹島問題にからんで「月のオーダーの一時帰国の後、日本に戻る、という感じではないでしょうか」とスワンさんのご質問に答えて以前(コラム#2674)で申し上げていた、韓国の権駐日大使は、7月15日から韓国に一時帰国していたところ、8月5日に日本に帰任したので、3週間での帰任ということになりました。私の予想よりちょっと早かったですね。
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日本の進路★0436★080807★人口維持には、家制度を復活せよ
★ 表題: 日本の人口維持には、家制度を復活・再開せよ
                         落合 道夫

◇ 家制度は、日本民族が二千年来政府が崩壊しても生残るように作り上げてきた、日本人にとってこの上ない立派な社会制度です。実際に多くの史上の大混乱を乗り越え、民族の再生を成功させてきた実績があります。

◇ 私は人口維持問題の解決には、日本民族二千年来の家制度の復活しかないと思っています。

◇ 民族の社会制度は、本来民族の生存と再生のために、乏しい資源を集中することにより、最大の効果をあげるように最適のシステムが作られました。日本の場合は先祖崇拝に基づく家制度です。

◇ このため占領軍は、日本破壊のために日本の人口を減らすべく、家制度を破壊しました。

◇ 戦後歴代政府は独立したのに、占領破壊政策を墨守しているので現在の混乱になっています。そして、冷戦で米国の破壊方針が放棄された後も、占領利得者が破壊政策を墨守しました。このため今や結婚が行われず、人口が減っているのです。

◇ 平等主義の功罪: 平等は政治の発想であり、生存のための社会制度には馴染みません。生存のためには限りある資産の優先配分が必要です。非常時には、平等は全滅を意味するからです。

◇ このため歴史の長い民族は長子相続、いまなら責任者相続を始めたのです。これにより、個人の生存(寿命に限りがあります)から血族の生存という広い発想になり、民族の発展に役立つのです。

◇ 家制度では、家族の各人の役割、資産の継承は、平等ではありません。それは平等にすると、社会が全滅するからです。

◇ 平等主義は人間のネタミに服従する発想で、遊びであり生存の発想ではありません。家制度は最悪に備える、危機に対応するものです。

◇ 政治的な不満解消の民主主義は、重大な生存を扱う社会制度には馴染みません。

◇ また出産奨励策については、仏など外国の事例は役に立ちません。なぜなら日本人の生存条件は、自然環境、経済環境、歴史環境において固有だからです。それは黒蟻が白蟻の生態を真似れば滅びるのと同じです。

◇ 日本は家制度の復活を行うべきです。そしてこれは結婚、出産増加だけでなく、今問題の老人介護、個人の道徳までを含む民族のトータルの社会福祉文化制度でもあるからです。

◇ この制度には血族における個人の役割、道徳、行動規範、老人介護など広い内容があり、日本の再生と問題解決に役立ちます。戦前の美しい家族愛は、家制度の産物です。いまよりも助け合いました。

◇ 占領軍は、家制度が日本民族の再生に、最重要なシステムと見てこれに古い、非民主的などのレッテルを貼り破壊し、日本民族の衰退を謀りました。

◇ 平等相続による社会の破壊は、仏革命から始まっているのです。(漫画部長島耕作 第三巻 仏のブドー酒畑の項参照)

◇ あるGHQの要員は、日本が再独立し、離日する時に「日本は長い歴史のある民族であるから、我々に破壊された伝統的制度を戻してゆくだろう」と語ったといいます。いまその時がきています。