【時流超流】 “暮らし防衛消費”に意外な商機(日経) | 日本のお姉さん

【時流超流】 “暮らし防衛消費”に意外な商機(日経)

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【時流超流】 “暮らし防衛消費”に意外な商機(日経)
原油高を尻目に売り上げは急拡大 「1リットル=200円超え」の観測まで出始めたガソリンを筆頭に、食品や電力料金など、あらゆる業種での値上げが消費者の生活を直撃している。そんな「値上げ列島・ニッポン」の消費の現場に、従来の常識とは懸け離れた風景が見え始めた――。ガソリン高を尻目に自転車販売の快走が続いている。ホームセンターのコメリでは今年4月から7月中旬にかけて、自転車の販売台数が前年同期比で1割増えた。昨今の変化を示すのはその中身。27インチシティー車と呼ばれる大型車が4割以上も増えた。マイカー通勤をしていた男性会社員が自転車に乗り出したことを意味している。コメリによると、自転車の平均単価は1万600円。ガソリン1リットルを180円とすれば、約60リットル分に相当する。車種にもよるが、2~3回の満タン給油で買える計算だ。

・「もう1つの原付き」がブーム
オートバイ市場でも異変が起きている。「もう1つの原付き」が売れているのだ。「原付き」とは「原動機付き自転車」の略。一般にイメージするのはエンジン排気量50ccまでの2輪車だろう。だが、原付きには排気量51~125ccの「原付き2種」という種類があり、この燃料高を受けて販売が急増している。今年1~6月の出荷台数は前年比56%増の5万7709台。50ccクラスが同35%減、2輪車市場全体でも同22%減とジリ貧の中では突出した伸びを見せている。原付き2種は新聞や郵便配達など商用の利用が多かったが、消費者が使い勝手の良さと経済性という隠れたメリットに注目し、人気に火がついた。
まず、時速30kmまでの速度制限や2人乗りの禁止といった50ccクラスに課される制限がない。一方で1つ上のクラス(126cc以上)の2輪車に比べ、税金などの維持費が安く済む。自動車保険に付帯する特約で任意保険がカバーでき、年間の保険料が抑えられるケースが多い。エンジンが小さいから、もちろん燃費も良い。「ライバルは自転車。商談でガソリン高を口にするお客様も増えてきた」(東京都新宿区の販売店、スズキワールド新宿)。中心の顧客層は30代から50代までの男性客で、購入目的は「通勤」だという。スズキによると、とりわけ伸びが顕著なのは中部地区。マイカー通勤が圧倒的に多かった地域だ。ホンダも今年1月に発売した新型車がヒットしている。今年1~6月の販売台数は前年同期比65%増。「生活の足として売れ始めている」(東京都杉並区の販売店、ホンダドリーム杉並)。 2輪車ですら燃料高を意識するのだから、自動車では燃費の良い小型車志向が加速している。ホンダが5月に投入したミニバン「フリード」は発売後2週間で1万台を受注した。排気量1500ccとミニバンでは小さな部類に入る。コンパクトながら車内空間を確保した設計に加え、燃費への意識の高まりが人気の背景にある。ハイブリッド車の評価も高まっている。トヨタ自動車の「プリウス」の国内販売台数は1~6月で前年同期比23%増。現行プリウスは今年で発売5年目。一般的に言って、モデル末期に近づくほど販売が減少するが、プリウスはこの流れの逆を行く。燃料高で消費者が見直し始めたのが、長距離の高速バス。高速バス「キラキラ号」を運行するロータリーエアーサービスによると、今年のお盆の予約状況は家族連れの利用が昨年より多いという。ガソリン高で価格メリットが出てきたからだ。例えば東京~名古屋間の距離は約300km。ガソリン1リットル当たりの燃費を10kmとすると、自家用車ではガソリン代が5400 円(30 リットル×180円)。加えて高速道路料金が7100円(普通車の場合)だから、合計1万2500円となる。キラキラ号の東京~名古屋間の料金は1人片道4000円。3人家族なら1万2000円と自家用車利用とほとんど変わらない計算となる。

・広がる「もったいない」消費
移動手段をシフトするだけでなく、燃料高から究極の手段で家計を守る動きも出始めた。外出をしない、「出不精消費」だ。そのような選択をする消費者で、ネットでの販売会社が潤う。「大きなビジネスチャンスが到来している。ガソリン代の高騰で、郊外のショッピングモールなどに出かけなくなった消費者はネットショッピングに移ってくる」。楽天の三木谷浩史会長兼社長はそろばんをはじく。その兆しは見えている。例えば食品関連の1日平均売上高。かつては週末の売上高は平日を下回るのが普通だった。消費者が外出するからだ。ところが今年6月以降は、土曜日、日曜日の売上高が平日を15%も上回っている。1997年に楽天がサービスを開始して以来、ほとんどなかった現象だという。売れ筋にも変化がある。食品での人気商品と言えば、現地に行かなければ入手が困難な、地方の名産品だった。だが最近、調味料などの日常品が伸び始めた。「値上げに備えて買いだめしようにも、自動車で出かけると燃料費がかかる。こう考える消費者が、ネットに来た」と楽天では見る。生活防衛の手段を考える消費者の視線はまた、「既に買ったもの」にも向く。安易な買い替えを避け、同じ商品を長く使い続ければ、無駄な出費は防ぐことができる。そんな「もったいない」精神の発露である、修理・メンテナンス市場も活況を呈している。イトーヨーカ堂では今年6月以降、タイヤのパンク修理やブレーキ交換といった自転車修理の売上高が前年同期比10%増えている。同じ自転車を乗り続ける、あるいは倉庫でホコリをかぶっていた自転車に手を入れる人が増えているということだ。「カゴやヘルメット、カギなどパーツの販売額は20%増」(セブン&アイ・ホールディングス)との実績がこの傾向を裏づける。同様の動きは高級品にも見受けられる。靴修理チェーン店「ミスター・ミニット」を展開するミニット・アジア・パシフィックが昨年5月から始めた、高級靴や鞄のクリーニングが好調だ。靴は37店舗、鞄は43店舗で展開中で、平均受注単価は1万2000円前後。決して安くはないが、サービス開始から1年で早くも採算ベースに乗った。「今秋に取扱店舗を大幅に増やす予定」(ミニット・アジア・パシフィック)。前述のコメリでは、今年4月から7月中旬にかけて、野菜苗の販売額が前年同期比で16%増えた。プランター栽培が可能なトマト、ナス、ピーマンが人気だという。「食品偽装問題もあって、野菜を自分で栽培したいという気持ちが強まっている。倹約意識も高まっているのではないか」(コメリ)。

・「エコで快適」に大盤振る舞い
では、消費者は財布の紐を完全に締めたのか。例外もある。猛暑関連の商品群は好調だ。特に、長く快適さが持続でき、かつエコロジーに貢献が可能な商品は、高額でも人気が高い。百貨店の家庭用品売り場でステンレス製の水筒が売れている。高島屋横浜店では今年3月以降、前年比6~10%増で推移。通勤鞄に入る、容量350ミリリットルのタイプが売れ筋だ。価格は3000~4000円と水筒としては高額だが、出勤途中や職場で飲み物を冷たいまま飲める保冷性の高さから指名買いが続く。「冬は温かい飲み物を持ち運べるので、長期的には得だと考えているのではないか。(ペットボトルを使わないため)環境保護に貢献できる点が背中を押すようだ」(高島屋)。毎日、ペットボトル飲料を買い求めていた顧客の切り替え需要が多いという。
ビックカメラの寝具売り場では販売額が前年比6倍と絶好調なのが、寝具用の冷却敷きパッド「朝までクール」(下図右上写真)。体感温度が約3度下がるというのが売り文句で、何度でも使え、冷蔵庫などでの保冷も必要ない。価格はシングルサイズ(90×180cm)の場合、1万6800円。「室内の空調温度を下げずに、寝苦しさから解放されたいと考える人に口コミで広がっている」(ビックカメラ)。生活防衛に走りながらも、快適に、便利な生活をしたいと願う消費者は多い。その視線を捉えるための商戦はこれから熱を帯びる。

・五輪で巣ごもり、「お寒い」夏商戦
例年より早く梅雨が開け、暑い夏がやってきたはずだが、夏商戦は残念ながら「お寒い」結果に終わりそうだ。理由は簡単。8月8日から24日まで開かれる北京五輪にある。テレビ観戦に熱が入り外出を控え、レジャーや買い物をしなくなる「巣ごもり現象」が起きる可能性が高いからだ。内閣府が毎月実施する街角景気調査によると2000年以降、夏季五輪やサッカーワールドカップ(W杯)の開催月の景気の実感を示す現状判断指数は開催の前の月に比べて必ず悪化。調査対象となっている百貨店の販売員、タクシー運転手などからは「外出する消費者が少ない」との回答が多かった。2002年5~6月の日韓共催サッカーW杯では日本が戦った当日の百貨店の売上高は壊滅状態だった。伊勢丹会長(当時)の小柴和正氏は「ひと月に何度も台風の直撃を受けたに等しい」と天を仰いだほどだった。アテネ五輪(2004年)やドイツW杯(2006年)の開催時期の百貨店、スーパー、外食の各業態の売上高は前年実績を大きく下回った。ドイツW杯では日本が初戦で負け、決勝トーナメント進出が難しくなった翌日の日経平均株価が前日比614円も急落。期待が失望に変わると株式市場まで冷え込ませてしまう。五輪・W杯商戦の追い風は大会開始前に終わり、大会が始まればむしろ逆風になる。最近は物価上昇でなどで景気の地合いは芳しくない。百貨店では「再値下げ」「再々値下げ」の店頭広告が目立つ。8月の夏商戦の新記録更新は望み薄だ。暑さと熱戦では消費に火がつかないのだ。ただ、7月22日に政府が発表した経済財政白書にあるように雇用や設備の過剰感はなく、現在の経済全体を見渡せば「踊り場で何とか踏みとどまっている」(三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミスト)。「巣ごもり現象」で消費が失速し、踊り場から景気の局面変化へ潮目が大きく変わっていくかどうか。日本経済が徳俵に足がかかっているのは間違いない。
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【資源ウォーズの世界地図】

【ルーマニア報告】欧州最大の金鉱山開発をめぐるバトルジョージ・ソロスも参戦 (日経)
ルーマニアといえばチャウエスク、コマネチ、そして吸血鬼ドラキュラが思い浮かぶ。そのルーマニアで、ヨーロッパ最大の金鉱山開発の是非をめぐってバトルが続いており、いま世界が注目している。カナダの鉱山会社が西部山間地のロシアモンタナ(Rosia Montana)という地域で大規模に金・銀を採掘しようというプロジェクトである。それに対して、ルーマニア政府、議会、地域住民反対組織、考古学会、科学アカデミー、国際NGO(非政府組織)、EU(欧州連合)議会、国際金融機関、資源メジャー、それになんと米国の投資家、億万長者のジョージ・ソロス氏まで加わってバトルが展開されているのである。

7月半ば、その現場を取材してきたので以下現状をお伝えしたい。
この地域は約2000年前のローマ時代から最近まで金が採掘され、山塊の地下にはいまでも広範囲にわたって無数の坑内採掘の跡が残っており坑道が縦横に走っている。昨年世界遺産に登録された石見銀山よりも歴史的にはるかに古く、規模も大きく文化遺産として大変価値あるものとしてルーマニア科学アカデミーや世界の考古学会からも評価されているところであるが、国の鉱業地帯に指定されているため、これまで世界遺産に申請するなど思いもよらないことであった。 最近まで国営鉱山会社が細々と採掘を行っていた。ローマ時代から掘り続けられた鉱床一帯にはまだ多くの金が残っているので、今度は現代の大規模露天採掘・精錬技術で根こそぎ掘ってしまおうという計画である。 カナダの探鉱会社が目をつけて探鉱、開発計画を進めてきたものである。鉱石中の金の含有量は1トン当たり1.5グラム、銀が7グラム鉱石は2.2億トン、1年に約1300万トン採掘して16年間分の鉱量である。したがって、金は330トン、銀が1700トン取れることになる。これは時価で100億ドルの価値と見られている。金価格高騰から、鉱山会社としては1日も早く採掘を始めたいところだ。
しかし採掘が行われる場所が問題だ。開発計画地域周辺2カ所の谷筋には、4つの教会、墓地、そして2000人が住む村落があるので、すべて移転させなければならない。それは、鉱石を粉砕して金を取り出す精錬過程で発生する2億トンの大量のテーリングと称する廃棄物を堆積するダムと、金の精錬に必要な大量の水を貯めるダムを建設するためである。会社側は、家屋と土地の買収をなかば強引に進めてきたために地域社会の人たちが反対に立ち上がった。反対理由は3つある。 まず、何よりも、降って湧いたような移住の話。先祖代々平和で豊かな森に囲まれた山村を離れなければならないこと。とりわけローマン・カソリックとギリシャ正教の信心深い村人たちにとって古い教会も墓地も破壊されることは耐え難いことだ。 次に大きな問題は、国際的な論争の的になっていること。それは、金を溶かし出すために使うシアン化ソーダ(青酸ナトリウム)である。シアンは青酸カリと同類の猛毒であり、廃棄物のテーリングの中に含まれる。大雨や、急激な雪解け水によってダムの決壊が心配されることである。 土砂流失による被害だけでなく、シアンと重金属による河川の汚染は深刻な人の健康被害と漁業被害を生じる。その影響範囲が遠い下流の地域にまでおよぶ。 3つ目は、ロシアモンタナ地域が約2000年前のローマ時代の金採掘跡で、考古学的にも大変価値があり、そのような文化遺産が大規模露天採掘によって完全に破壊されてしまうことである。

開発を進めているカナダの企業、ガブリエル・リソーシスはジュニアーとよばれる探鉱会社で、自ら採掘は行わず採掘準備ができた段階でメジャーの鉱山会社に権益を売り渡して逃げるのが常道だ。ちなみにガブリエルは採掘の経験は無い。現在、産金世界一の資源メジャー、米国のニューモントがガブリエルの19%のシェアをすでに取得している。うまくプロジェクトが進み、操業開始の段階には権益をすべて取得して、ニューモントの鉱山になるというわけだ。
2008年7月現在で、移転対象村落のうち75%の住民が渋々移転に応じている。しかし、残った25%の人たちには大地主が多く買収に応じていない。彼らの反対の意気は軒昂である。会社がすでに買収した建物には目立つ表示板をつけ、会社の所有物件ということを誇示している。一方、反対派は“この家売り物にあらず”という表示板をつけて意思表示しているので反対派であることがすぐに分かる。 本プロジェクトの資本構成は、カナダのガブリエル・リソーシスが80%、ルーマニア国営鉱山会社が19.3%、残り0.3%は3人の個人となっている。したがって政府は以前、鉱山開発を容認していたわけだ。しかし、地域住民の組織的抵抗、国内および国際環境NGO80団体の支援、国際金融機関の融資拒否、EU議会の圧力、国民の反対などによって、政府与党はいま反対の立場を取っている。 議会における与野党の勢力地図を見ると、与党連立政権の自由党15%とハンガリー党7%に対し野党は民主党20%、社会民主党20%、保守党3%、国民党3%その他小政党からなっている。社会民主党は鉱山反対の立場を取っている。民主党には賛成派が多いが、2008年11月に総選挙を控え表立って意思表示ができない状態である。 いまや、このプロジェクトは国家的な重要問題になっている。2007年1月に鉱山開発許可をめぐって、ルーマニア議会の下院が行った国民の意見投票では96%の人たちが反対を表明した。大方の意見が、このプロジェクトは汚職、腐敗にまみれたものだというものであった。いま、ハンガリー党から選ばれた環境大臣は、鉱山会社が提出した環境影響評価結果の審査を凍結している。それを不当として、会社側は行政訴訟を起している。

ここで、ジョージ・ソロス氏の登場である。彼は、もともとハンガリーから米国への移民である。ルーマニアにはハンガリー人が多く住んでおり、90%という村もあるから政党としてもハンガリー党があり、影響力は結構大きいわけだ。ソロス氏は、ロシアモンタナ鉱山に正面きって反対を表明している。 ニューモントの株主でもあるソロス氏は、2007年4月には、同社のCEO(最高経営責任者)に対して「ロシアモンタナの金鉱開発への関与とガブリエルへの投資を進めることをやめるようにアドバイスすることが私の義務と心得る」とサイン入りの正式書状を出した。ソロス氏は、ルーマニアにソロス・ファンデーションを設立しており、鉱山事務所に隣接してインフォーメーションセンターを構え、プロジェクトに反対キャンペーンを行っている。 このセンターの活動はルーマニア・アカデミーとのパートナーシップによるものである。カナダのガブリエルCEO、アラン・ヒル氏は、記者会見でソロス氏のことを偽善者と呼んで非難している。 このように、ロシアモンタナ金鉱開発に風当たりが強くなった要因として、同じルーマニア国内の金鉱山で2000年1月に起きたシアン流出事故が特に大きく影響している。 ロシアモンタナから北に150キロメートル離れた所にあったバイアマ-レ金鉱山のダムが大雨と雪解け水によって決壊して、シアンを含んだテーリングが大量にソメス川、チザ川そしてダニューブ川へと流れ出したのである。 チザ川はハンガリーならびに旧ユーゴスラビアの領内を流れやがてダニューブ川に注ぎ、ルーマニアとブルガリアの国境を通って黒海にいたる。シアン流出の結果、ハンガリー領内のチザ川で1240トンの魚が死に、大きな漁業被害を与えた。その際、川面を大量の死骸が流れる様子が世界中のTVに放映され、150カ国、70の言語の新聞、ラジオ、そしてインターネットで報じられた。金鉱山で使われるシアンの恐ろしさを世界に印象づけた。 幸いにして、ルーマニア政府の通報が早く、飲料水の取水ストップなどの措置が速やかにとられたため人的被害は免れたが漁業被害総額は1億7900万ドルに上った。これはルーマニア政府が損害賠償として全額支払った。操業を行っていたオーストラリアの鉱山会社は天候のせいにしたうえに、自己破産を申し立てて逃げていった。このような、金鉱山におけるシアン流出事故は世界で数多い。
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