よみがえれ美しい日本3 | 日本のお姉さん

よみがえれ美しい日本3

◎8月号巻頭言 佐伯啓思の賢者に備えあり
「グローバル資本の暴走を食い止めよ」
ビジネス情報誌「エルネオス」URL:http://www.elneos.co.jp/
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先頃の洞爺湖サミットでは、二酸化炭素排出量の削減がもっぱらのテーマとなった。環境問題が重要なことはいうまでもないが、今日の環境問題は、資源エネルギー問題、食料問題などと連動しており、本来は、それらを共通の枠組みで論じるべきであった。しかも、今日、これらの問題の背後には、グローバル化した金融市場を暴走する過剰資本という問題がある。環境問題は、もはやそれぞれの国が個別に対応できる規模を超え出てしまったが、その背後には、これまた、もはや一国のレベルでは制御不能な過剰資本がある。確かに、問題はグローバル化しているのである。その場合に重要なことは、例えば過剰な資本がグローバル化し、金融市場や住宅市場、商品市場などで投機を引き起こすとき、破壊的な影響を受けるのは、各国の国内経済であり、さらには国民生活だということである。
昨年来のアメリカ発のサブプライム・ローン問題は、世界的な株式市場の不安定性をもたらした。住宅バブルの崩壊から始まって株式市場からも逃避した資本は、食糧や資源(石油)の先物市場へ流れ込み、これらの価格を急騰させた。過剰な資本が、株式市場でプロの機関投資家による投機に興じている分にはさして問題はないが、食糧や資源の市場へ流れ込んで投機的に動くことはゆゆしき事態である。
サブプライム・ローン問題が、この状況に対して直接の責任を問われることは事実である。だが、それが今日の経済の危機的混乱の原因というわけではない。サブプライム自体も、むしろ、今日の極度に規制緩和されたグローバル金融経済の不安定性の結果というべきなのである。
もともと、資本、労働、そして自然資源は生産要素といわれ、モノを生産するための基本的な財貨である。通常の場合、この生産要素は自由な市場取引には任されていない。なぜなら、生産要素の供給量や価格が市場条件によってあまりに不安定に変動すれば、長期的な生産計画そのものに大きな支障をきたすからである。
だから、それらは多かれ少なかれ、政府や様々な機関の管理や監視のもとに置かれていたのである。貨幣資本は政府と中央銀行の管理下にあり、労働は法や組合によって保護され、資源も多かれ少なかれ政府の監督下にあった。
それを崩したのは、グローバル化する経済のもとでの構造改革であった。構造改革の決定的な意味は、従来は規制によって市場化の圧力からなかば保護されてきた生産要素までも自由な市場競争へ投げ込み、商品化したという点にある。まさに構造を変えた。
商品は、利潤を目的として流通する。したがって、資本は金融市場で莫大な利益を生み出し、労働はアウトソーシングやフリーターという形で低コスト化され、資源や食糧も商品市場で利益を生み出すようになった。つまり、市場で商品本来の姿を見せたのである。
金融市場を暴走する資本が、自然資源や食糧という一国の生産と国民の生活基盤を揺るがすことは、どうしても防がなければならない。そのためには、むろんエネルギーや食糧の自給率を高めることも必要である。だが、それと同時に、生産要素については、自由市場の手にすべてをゆだねるのではなく、政府や法による、ある程度の規制や保護が不可欠となる。とりわけ、完全に規制をはずれてコントロール不能となったグローバルな投機資本に対して、各国が何らかの規制をかけることがまずは求められているのである。
(京都大学教授)
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◎関西零細企業経営のオッサン 悔し涙を流すの記 (18)      
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本日の上海事情                 25 JUL.,2008  
              
上海に来て4日になる。さぞやオリンピック景気で盛り上がっている事と思って来たのだが、市内で感じる余りの無関心に拍子抜けしてしまった。テレビのニュース等でオリンピックに向けての色んな報道が一日中流れている以外、当地の市民の話題になることも殆ど無いと言って良いようだ。
唯一上海では数年前に建設された全国一の8万人サッカー競技場でサッカーの3位、4位決定戦が行われる予定で、現在競技場周辺厳重警備で封鎖されている以外、市民の話題には全くのぼっていない。中国のサッカーは世界レベルから余りにかけ離れている為サッカー好きな上海市民でさえ観戦する気にならないと言う事情もあると思うが。
オリンピックが上海市民の話題になると言えば、当局の次のような目だった規制強化に対する不平、不満ぐらいのものだろうか。
・ 食品の衛生検査が厳しくなり、ローソンなどのコンビニからおでんや肉マンが姿を消し、上海中心地域の路上から屋台が全く消えた。
・ 地下鉄、鉄道各駅での乗客に対する荷物検査で、改札口の混雑が益々激しくなった。
・ ビデオ屋の陳列棚から全てのコピー商品やいかがわしい作品が消え、商品棚に殆ど商品が無くなった。
・ 特殊サービスを売り物にする理髪店モドキが全て休業。
以上は全てオリンピックが終了するまでの辛抱という事である。

僕が今回こちらで会った上海人全員が北京オリンピックを余計な迷惑と感じており、例によって政府の面子を世界に示すだけの為の行事で、国民には何のプラスにもならないものと冷たく捉えている感じだ。中国人選手に対する応援や期待の声も全く聞こえてこない。
せめてオリンピックまで株が上がり続けてくれていればそれなりにオリンピックも評価出来たのに、これほど株が急落したのではそんな値打ちすら無くなってしまった。と言う不満も度々聞かれる。

北京政府がこれほど資金と政治を投入し国家の威信を発揮しようとしたにしては余りにも散々な市民の反応である。

アトランタオリンピックの直前にテネシーに居り、殆ど誰もオリンピックを話題にしていない事に意外な思いをした記憶があるが、中国も同じような大国の風格を持ち始めたのだろうか。いやそうとも思えないのは、むしろ不満や反感の意見を聞くことが多く、TVニュースがオリンピック情報になるとすぐにチャンネルを切り替えると言う話まで出てくる事である。

連日30度近いヒートアイランドとなった上海はこれまで公安の厳しい監視による治安の良さに定評があったが、このところ不満の爆発といえる犯罪が頻発している。つい最近は無鑑札の自転車を公安に没収された北京からの出稼ぎ男が包丁をもって公安局のビルに駆け込み11回まで駆け上る間に6人の警察官を刺殺した事件とか、路線バスに石油缶を持ち込んだ男が乗客を巻き込んで焼身自殺したとか。(因みに昆明では市内路線バスの爆破予告が有り2台のバスが続けて爆破され数名の死傷者が出ている) これらは全て現在の上海市制始まって以来のテロ事件である。

事態の深刻さに上海当局は最近お触れを出した。どんな事柄であれ誰かの悪巧みを嗅ぎつけた者、或いは聞き知った者は当局に届け出ること。事の重要性に応じ15万円から450万円位の報償を与える、と言う内容である。然し以前のように積極的に当局に協力し報償を得ようと言う市民は少なくなったのか、或いは2次災害を恐れる為か、今日までのところ情報をもたらす者は以外に少ないと言う事である。了。   
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超・映画評 愛と暴力の行方 奥山篤信著 扶桑社 発売中 http://www.strategies21.org/leonessa.htm
 
豊かな海外経験を生かした元商社マンの映画評。対象は「夜顔」「ダ・ヴィンチ・コード」「硫黄島からの手紙」「不都合な真実」「椿三十郎」などこの2年間に日本で上映された洋・邦画117作。何げないしぐさや映像の断片に込められた意味を解き、作品の思想、背景をえぐり出す。著者の人生観や哲学を重ね合わせて論評、時には一刀両断に。特に、国際社会に生きる日本人への叱咤激励は傾聴に値する。映画評であり人間賛歌の書でもある。
ー東京新聞 6月5日今週の本棚よりー

三菱商事OBの「憂国の日本男児」奥山さんは、無類の映画好きとしても知られる。ミニシアター系からハリウッド超大作まで世界のあらゆる映画を見まくった結果の一冊。
「硫黄島からの手紙」について(家庭中心の話で、アメリカの小市民的な理想像をそのまま日本にも当てはめたみたいやな)。並の映画評論家にはこんなことは言えまい。ーWiLL 5月号 編集部の今月のこの一冊よりー。