竹島における反国家的・国家反逆的不作為
竹島における反国家的・国家反逆的不作為
No.359 平成20年 8月 1日(金)
西 村 眞 悟
7月30日に桜チャンネルの収録があった。放映は昨31日夜と本日8月1日の夜。その中で、私は竹島に関しておおよそ次の通り発言した。
韓国の首相が竹島に着陸して同島にいる守備隊を激励したという。この行動は、今までの次元を超えた行動である。従って、我が国も同じように次元を越えて竹島を海と空から封鎖し、一切の航空機と艦船の領海内への立ち入りを禁止する。同時に、既に竹島にいる者達については、数日中に退去するならば、不法入国の罪は問はないと表明するべきである」竹島の問題は、韓国が大騒ぎをしてくれたおかげで、かなりの日本人も、このまま今まで通り放置しておくわけにはいかないと感じ始めた。この変化は、極めて当然である。
韓国は、北朝鮮の観光地で韓国婦人が兵隊に射殺されても何も騒がず、ただ我が国の中学校の地理の授業で竹島を我が国の領土と生徒に教える事に反発して連日のデモをして、「歴史的、地理的、民族的に竹島は韓国の領土である」と叫んでいる。
(この韓国民の反応は、昭和49年8月15日の「文世光事件」の時の反応と同じである。つまり、在日韓国人の文世光が北朝鮮の工作員となり北朝鮮の命令により朴大統領を狙撃した事件において、韓国民は犯人である北朝鮮に対しては何も言わず日本に対する憎悪をむき出しにしたのである。)さらに、50名の与野党の韓国議員は、今度は対馬が韓国の固有の領土であるという決議を提案し、それに連動して数十名の韓国軍OBが対馬に来て対馬市役所の前で竹島は韓国の領土、対馬は韓国の領土を主張して座り込みをした。
ここまでくれば、我が国政府は、「竹島は我が国固有の領土です」と国内で今まで通り繰り返すだけですますのか、それとも、口だけではなく行動で竹島の領有を明確にするのか、決断を迫られているのである。
私は、行動により我が国の主権を明確にすべきであると判断して、海空の自衛隊による竹島封鎖という冒頭の発言をした。
しかし、現実にそれをしたのは韓国だった。韓国は首相の竹島不法入国後に、海軍と空軍を動員して演習と称して竹島周辺を封鎖したのである。では、我が国政府はこれらの事態に際して何をしていたのか。韓国政府に厳重抗議し、駐韓大使も東京に帰ってきて政府に事態を報告したのか。何もしていない!
だからにアメリカ政府が、韓国に配慮して竹島の帰属を再び韓国としたことに対しても、総理と官房長官は、アメリカに対して何の対外的表明もしない。そして、今朝の8月1日の朝刊のみだしは次の通り。「内閣改造きょう断行」何が「断行」か。ちゃんちゃらおかしいとはこのことである。今断行するべきは、竹島が我が国固有の領土であるという事実を明確にする行動ではないか。
とはいえ、現在の我が国の内閣が、また、福田康夫という人物が総理であるにもかかわらず何もしないと非難して済む状況ではない。歴史的に作り出されてきた我が国の政治構造が、福田内閣をしてかくも国益に反する不作為に陥らせているのだ。福田康夫内閣は、この惰性の上に乗っている。さも本人も、本日立ち会い写真に収まる新閣僚も快適と思っているのだろう。どんなものであれ、惰性に乗ることほど快適なことはない。特に権力であればなおさらである。
我が国は、北朝鮮には国民を拉致されて奪われ韓国には領土を奪われ、ともに長年放置してきた。さらに、本年4月26日には、たかだか5千人の中国人に長野市を制圧されて中国の解放区として明け渡している。また、対馬には、対馬は韓国の領土という「観光客」が傍若無人に入り込んでも何の対処もしない。
我が国政府は、まさに「反国家的不作為」を決め込んで各派閥から何人入閣するかという国家とは関係のない内閣改造に夢中になっている。その内閣改造の目的は、拉致被害者救出のための内閣でも、領土確保のための内閣でもなく、まして、国家防衛の為の内閣でもない。
この状況が、平和だと思ってはならない。さらに、この状況を放置して、我が日本国が存立できると思ってはならない。東アジアの我が国周辺の情勢は、世界で一番厳しい。国難と把握してもよい状況である。
よって、今日本国民に課せられた責務は、この国難を克服しうる政治構造を造ることである。今の与野党は、「政党の幻想」に過ぎない。各議員が経費が安く共用スペースが広く家賃分の公的助成金がでる政党という名札の掛かった共同住宅(文化住宅)に入居しているだけだ。
従って、この構造でいくら選挙をしても「惰性」は続き、周辺状況はさらに悪化しているので亡国への傾斜はさらにひどくなる。
この暑い夏、竹島と拉致被害者救出に対する政治の不作為状況を観て、「このままではいけない」という思いが深く国民に浸透する。その国民の憂国の思いのなかから真に国難に対処しうる政治勢力は生まれる。
これが我が国家復元の歴史的必然、つまり、天意である。古人曰く、大日本者神国也(おおやまとは、神の国なり)と。(了)
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台湾の声
【新刊紹介】喜安幸夫『日中激戦2010-東シナ海艦隊決戦』
メルマガ日台共栄より転載
喜安幸夫氏といえば、今や『大江戸番太郎事件帳』、『献残屋』はたまた『菅原幻斎怪異事件控』などの時代小説作家として名を馳せている。編集子も喜安小説の大ファンで、ほとんど読み尽くしている。
一方、台湾関係者なら『台湾の歴史』や『台湾島抗日秘史』の著者として、あるいは「台湾週報」の前編集長としてご存じだろう。また、これまでに『日本中国開戦-激震襲う台湾海峡』や『新日中戦争-尖閣諸島を奪回せよ!!』(いずれも学研の歴史群像新書)など、日中が軍事衝突する近未来シミュレーション小説も発表している。
今回、その第3弾として『日中激戦2010-東シナ海艦隊決戦』を出版した。上海万博の開催を目前にした2010年4月、尖閣諸島近海で遭難しかかった自衛官が見かけた怪しい光から物語ははじまる。中国が尖閣諸島へ侵攻を企て、迎える日本は自衛隊を真に戦える組織とするためのクーデター計画や新兵器の量産に入る。
先の『日本中国開戦』や『新日中戦争』でも、時代小説作家からは想像できない豊かな軍事知識が頻出するが、今回も日本の最新兵器として「J-ファルコン」と米軍が称しているという戦闘無人機(UAV)や無人潜航艇(UUV)などをはじめ、戦艦や飛行機などの名称がいっぱい出てくる。自衛隊の観閲式などには時間があれば必ず出かけるという、自衛隊大好きの喜安氏の本領発揮といったところだ。
また、このシリーズには「日台フォーラム」なる台湾研究フォーラムを模した民間団体が出てきて、日台関係の重要性や中国の目をおおうばかりの実情などを説明する役割どころだ。北京五輪の開催の蔭で強化される中国の独裁体制を思うとき、シミュレーション小説とは思えない迫力で日中関係の危機が現実性を帯びて見えてくる。日本に中国との対決を想定した「決意」を迫る物語でもある。
(日台共栄編集部)
■著者 喜安幸夫
■書名 日中激戦2010-東シナ海艦隊決戦
■体裁 新書、256ページ
■版元 学研(歴史群像新書)
■定価 980円(税込)
■発売 平成20年8月1日
http://shop.gakken.co.jp/shop/order/k_ok/bookdisp.aspcode=1340385300
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【「わしズム」27号】林建良氏が台湾独立の秘策を開示
日本李登輝友の会メールマガ「日台共栄」より転載
日本李登輝友の会事務局長、「日台共栄」編集長 柚原 正敬
小林よしのり編集責任長の「わしズム」27号(7月30日発売)で、本会常務理事でもある林建良氏(メルマガ「台湾の声」編集長、台湾団結連盟日本代表)が「『台湾独立』の秘策はチベット族、ウイグル族との連携にある」と題し、烈々たる論考を発表している。
馬英九政権後の台湾をテーマに、台湾と中国の急接近が今後どういう展開を見せていくのか、「92年コンセンサス」を中国が受け入れた狙いを明らかにしつつ、台中直行便協定は「台湾の投降文書」とズバリ指摘。
また、林氏がさりげなく「尖閣列島の日本領海で起きた」と書く6月10日未明の台湾遊魚船と海保巡視船との衝突沈没事故については、中国の影が見え隠れしていることとともに、「非は台湾側にあるにもかかわらず……日本政府は事件当初から極めて低姿勢で臨み、領海を侵犯されながらも賠償と謝罪をしてしまった」ことが台湾に与えた影響は大きいと指摘する。
なぜなら「中国の力さえ借りれば、日本はすぐに退散するという印象を台湾人に与えてしまったから」であり、それは頼りにならない「日本よりも中国に近づくことは当然の選択だとの誤った認識が台湾で広まりかねない」からで、それが中国の「悪勢力」の跋扈跳梁を助長することになると剔抉し、この問題でこれまでにあまり指摘されていない論点を提示している。
林建良氏のこの論考のポイントの一つは、日本人に、台湾に大きな影響力を与えてきた日本が「中国への配慮ではなく、日本自身の国益の観点に立って、台湾を真正面に見つめていくことこそ、台湾の国益に合致する」ことを理解してもらうことにある。そこで、ではこれからの台湾独立派はどうするかという問題を取り上げ、「中華民国体制打倒という初心に戻るべきだ」として、諄々とその理由を開陳する。この論考の最大の読みどころと言ってよい。
その具体策として、台湾独立の最大の障害であり、全人類の敵でもある中国を無害化するために「民主化と少数民族の分離独立運動」を進めていくことを提案している。それがこの論考のタイトルにもなっているのだが、いささか特集「ダライ・ラマ14世に異議あり」に引き付けすぎたきらいがないでもない。
やはりこの論考の最大のポイントは、なぜ独立勢力と言われた民進党政権下で台湾の独立建国が進まなかったのかを明らかにした点にあるのではないだろうか。台湾の独立建国への道筋はまた日本の国益と合致している点にあることを、改めて知らしめてくれる。馬英九政権の本質もよく分かる。一読をお勧めしたい。
■書名 「わしズム」27号(SAPIO増刊・夏号)
■発行 小学館
■定価 1,100円(税込)
■発売 7月30日
http://www.bk1.jp/product/03029678
No.359 平成20年 8月 1日(金)
西 村 眞 悟
7月30日に桜チャンネルの収録があった。放映は昨31日夜と本日8月1日の夜。その中で、私は竹島に関しておおよそ次の通り発言した。
韓国の首相が竹島に着陸して同島にいる守備隊を激励したという。この行動は、今までの次元を超えた行動である。従って、我が国も同じように次元を越えて竹島を海と空から封鎖し、一切の航空機と艦船の領海内への立ち入りを禁止する。同時に、既に竹島にいる者達については、数日中に退去するならば、不法入国の罪は問はないと表明するべきである」竹島の問題は、韓国が大騒ぎをしてくれたおかげで、かなりの日本人も、このまま今まで通り放置しておくわけにはいかないと感じ始めた。この変化は、極めて当然である。
韓国は、北朝鮮の観光地で韓国婦人が兵隊に射殺されても何も騒がず、ただ我が国の中学校の地理の授業で竹島を我が国の領土と生徒に教える事に反発して連日のデモをして、「歴史的、地理的、民族的に竹島は韓国の領土である」と叫んでいる。
(この韓国民の反応は、昭和49年8月15日の「文世光事件」の時の反応と同じである。つまり、在日韓国人の文世光が北朝鮮の工作員となり北朝鮮の命令により朴大統領を狙撃した事件において、韓国民は犯人である北朝鮮に対しては何も言わず日本に対する憎悪をむき出しにしたのである。)さらに、50名の与野党の韓国議員は、今度は対馬が韓国の固有の領土であるという決議を提案し、それに連動して数十名の韓国軍OBが対馬に来て対馬市役所の前で竹島は韓国の領土、対馬は韓国の領土を主張して座り込みをした。
ここまでくれば、我が国政府は、「竹島は我が国固有の領土です」と国内で今まで通り繰り返すだけですますのか、それとも、口だけではなく行動で竹島の領有を明確にするのか、決断を迫られているのである。
私は、行動により我が国の主権を明確にすべきであると判断して、海空の自衛隊による竹島封鎖という冒頭の発言をした。
しかし、現実にそれをしたのは韓国だった。韓国は首相の竹島不法入国後に、海軍と空軍を動員して演習と称して竹島周辺を封鎖したのである。では、我が国政府はこれらの事態に際して何をしていたのか。韓国政府に厳重抗議し、駐韓大使も東京に帰ってきて政府に事態を報告したのか。何もしていない!
だからにアメリカ政府が、韓国に配慮して竹島の帰属を再び韓国としたことに対しても、総理と官房長官は、アメリカに対して何の対外的表明もしない。そして、今朝の8月1日の朝刊のみだしは次の通り。「内閣改造きょう断行」何が「断行」か。ちゃんちゃらおかしいとはこのことである。今断行するべきは、竹島が我が国固有の領土であるという事実を明確にする行動ではないか。
とはいえ、現在の我が国の内閣が、また、福田康夫という人物が総理であるにもかかわらず何もしないと非難して済む状況ではない。歴史的に作り出されてきた我が国の政治構造が、福田内閣をしてかくも国益に反する不作為に陥らせているのだ。福田康夫内閣は、この惰性の上に乗っている。さも本人も、本日立ち会い写真に収まる新閣僚も快適と思っているのだろう。どんなものであれ、惰性に乗ることほど快適なことはない。特に権力であればなおさらである。
我が国は、北朝鮮には国民を拉致されて奪われ韓国には領土を奪われ、ともに長年放置してきた。さらに、本年4月26日には、たかだか5千人の中国人に長野市を制圧されて中国の解放区として明け渡している。また、対馬には、対馬は韓国の領土という「観光客」が傍若無人に入り込んでも何の対処もしない。
我が国政府は、まさに「反国家的不作為」を決め込んで各派閥から何人入閣するかという国家とは関係のない内閣改造に夢中になっている。その内閣改造の目的は、拉致被害者救出のための内閣でも、領土確保のための内閣でもなく、まして、国家防衛の為の内閣でもない。
この状況が、平和だと思ってはならない。さらに、この状況を放置して、我が日本国が存立できると思ってはならない。東アジアの我が国周辺の情勢は、世界で一番厳しい。国難と把握してもよい状況である。
よって、今日本国民に課せられた責務は、この国難を克服しうる政治構造を造ることである。今の与野党は、「政党の幻想」に過ぎない。各議員が経費が安く共用スペースが広く家賃分の公的助成金がでる政党という名札の掛かった共同住宅(文化住宅)に入居しているだけだ。
従って、この構造でいくら選挙をしても「惰性」は続き、周辺状況はさらに悪化しているので亡国への傾斜はさらにひどくなる。
この暑い夏、竹島と拉致被害者救出に対する政治の不作為状況を観て、「このままではいけない」という思いが深く国民に浸透する。その国民の憂国の思いのなかから真に国難に対処しうる政治勢力は生まれる。
これが我が国家復元の歴史的必然、つまり、天意である。古人曰く、大日本者神国也(おおやまとは、神の国なり)と。(了)
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台湾の声
【新刊紹介】喜安幸夫『日中激戦2010-東シナ海艦隊決戦』
メルマガ日台共栄より転載
喜安幸夫氏といえば、今や『大江戸番太郎事件帳』、『献残屋』はたまた『菅原幻斎怪異事件控』などの時代小説作家として名を馳せている。編集子も喜安小説の大ファンで、ほとんど読み尽くしている。
一方、台湾関係者なら『台湾の歴史』や『台湾島抗日秘史』の著者として、あるいは「台湾週報」の前編集長としてご存じだろう。また、これまでに『日本中国開戦-激震襲う台湾海峡』や『新日中戦争-尖閣諸島を奪回せよ!!』(いずれも学研の歴史群像新書)など、日中が軍事衝突する近未来シミュレーション小説も発表している。
今回、その第3弾として『日中激戦2010-東シナ海艦隊決戦』を出版した。上海万博の開催を目前にした2010年4月、尖閣諸島近海で遭難しかかった自衛官が見かけた怪しい光から物語ははじまる。中国が尖閣諸島へ侵攻を企て、迎える日本は自衛隊を真に戦える組織とするためのクーデター計画や新兵器の量産に入る。
先の『日本中国開戦』や『新日中戦争』でも、時代小説作家からは想像できない豊かな軍事知識が頻出するが、今回も日本の最新兵器として「J-ファルコン」と米軍が称しているという戦闘無人機(UAV)や無人潜航艇(UUV)などをはじめ、戦艦や飛行機などの名称がいっぱい出てくる。自衛隊の観閲式などには時間があれば必ず出かけるという、自衛隊大好きの喜安氏の本領発揮といったところだ。
また、このシリーズには「日台フォーラム」なる台湾研究フォーラムを模した民間団体が出てきて、日台関係の重要性や中国の目をおおうばかりの実情などを説明する役割どころだ。北京五輪の開催の蔭で強化される中国の独裁体制を思うとき、シミュレーション小説とは思えない迫力で日中関係の危機が現実性を帯びて見えてくる。日本に中国との対決を想定した「決意」を迫る物語でもある。
(日台共栄編集部)
■著者 喜安幸夫
■書名 日中激戦2010-東シナ海艦隊決戦
■体裁 新書、256ページ
■版元 学研(歴史群像新書)
■定価 980円(税込)
■発売 平成20年8月1日
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【「わしズム」27号】林建良氏が台湾独立の秘策を開示
日本李登輝友の会メールマガ「日台共栄」より転載
日本李登輝友の会事務局長、「日台共栄」編集長 柚原 正敬
小林よしのり編集責任長の「わしズム」27号(7月30日発売)で、本会常務理事でもある林建良氏(メルマガ「台湾の声」編集長、台湾団結連盟日本代表)が「『台湾独立』の秘策はチベット族、ウイグル族との連携にある」と題し、烈々たる論考を発表している。
馬英九政権後の台湾をテーマに、台湾と中国の急接近が今後どういう展開を見せていくのか、「92年コンセンサス」を中国が受け入れた狙いを明らかにしつつ、台中直行便協定は「台湾の投降文書」とズバリ指摘。
また、林氏がさりげなく「尖閣列島の日本領海で起きた」と書く6月10日未明の台湾遊魚船と海保巡視船との衝突沈没事故については、中国の影が見え隠れしていることとともに、「非は台湾側にあるにもかかわらず……日本政府は事件当初から極めて低姿勢で臨み、領海を侵犯されながらも賠償と謝罪をしてしまった」ことが台湾に与えた影響は大きいと指摘する。
なぜなら「中国の力さえ借りれば、日本はすぐに退散するという印象を台湾人に与えてしまったから」であり、それは頼りにならない「日本よりも中国に近づくことは当然の選択だとの誤った認識が台湾で広まりかねない」からで、それが中国の「悪勢力」の跋扈跳梁を助長することになると剔抉し、この問題でこれまでにあまり指摘されていない論点を提示している。
林建良氏のこの論考のポイントの一つは、日本人に、台湾に大きな影響力を与えてきた日本が「中国への配慮ではなく、日本自身の国益の観点に立って、台湾を真正面に見つめていくことこそ、台湾の国益に合致する」ことを理解してもらうことにある。そこで、ではこれからの台湾独立派はどうするかという問題を取り上げ、「中華民国体制打倒という初心に戻るべきだ」として、諄々とその理由を開陳する。この論考の最大の読みどころと言ってよい。
その具体策として、台湾独立の最大の障害であり、全人類の敵でもある中国を無害化するために「民主化と少数民族の分離独立運動」を進めていくことを提案している。それがこの論考のタイトルにもなっているのだが、いささか特集「ダライ・ラマ14世に異議あり」に引き付けすぎたきらいがないでもない。
やはりこの論考の最大のポイントは、なぜ独立勢力と言われた民進党政権下で台湾の独立建国が進まなかったのかを明らかにした点にあるのではないだろうか。台湾の独立建国への道筋はまた日本の国益と合致している点にあることを、改めて知らしめてくれる。馬英九政権の本質もよく分かる。一読をお勧めしたい。
■書名 「わしズム」27号(SAPIO増刊・夏号)
■発行 小学館
■定価 1,100円(税込)
■発売 7月30日
http://