WTO(世界貿易機関)のルール制定権を失った米国と台頭するインド・中国。西欧文明の没落が決定的段 | 日本のお姉さん

WTO(世界貿易機関)のルール制定権を失った米国と台頭するインド・中国。西欧文明の没落が決定的段

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▼米地名委員会が竹島を「韓国領」に戻す ~不適切な日本政府の対応と官房長官の発言~(アジアの真実)
【竹島問題】町村長官「抗議は必要なし」 米の竹島「韓国領」表記再変更:産経
米政府機関が竹島の帰属先を再び「韓国」に戻したことについて、町村信孝官房長官は31日午前の記者会見で日本政府としては特別のアクションを起こす考えはなく、米国の新たな判断に期待する考えを示した。町村長官は「米政府の1機関がやることに、あまり過度に反応することはない」と言明。同時に「(米政府の)結論ではない」とした上で「(竹島問題の帰属先について)米政府は中立的な立場を強調している。今回は米国の立場の変更を意味するものとは受け止めていない」と述べた。また「(米側は)改めて全体を精査すると(言っている)。精査する過程でとりあえず『中間的』な表記に戻したということなので(今後)どのような表現になるか、またいずれ出てくるのだろう」との見通しを語った。一方、帰属先を韓国に戻したことはブッシュ大統領側の指示だったことを踏まえ、福田首相が抗議を行う意思があるかどうかについては「ない。なぜ必要なのか」と反論した。
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アメリカが韓国の要求を無条件で呑んだことに驚きました。8月前半にブッシュ大統領が訪韓予定なのを踏まえ、韓国の民族性を考えると牛肉問題、竹島問題と反米一色に染まって過激デモなどの可能性が十分ある中での訪韓というシナリオを避けるための政治判断であったというのが容易に想像されますが、問題なのはこれを受けての日本政府の対応です。韓国のように政府と国民一体となって大混乱を引き起こすような反応は不要です。しかしながら、まったく何のアクションもとらず、待っていればアメリカからそのうち新たな判断が出てくるだとうという姿勢は間違っています。アメリカと水面下で、訪韓が終わったら再度表記を元に戻すとの密約でもあるのなら話は別ですが、そうでないのであれば最低限の抗議は行い、日本の立場を改めて明確に伝えるべきです。さらに町村官房長官の一言が気になります。”抗議がなぜ必要なのか”などという言葉が官房長官から出ることが情けないと言わざるを得ません。小泉政権時に外務大臣だったときの町村氏は日本の立場と国益を正確に捉えた気骨ある発言で信頼のおける政治家でした。土下座外交に終始する福田首相と方向性の違う発言をし難い官房長官という立場もわかりますが、福田政権下になってからはまるで人が変わったようになってしまったのが残念です。
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WTO(世界貿易機関)のルール制定権を失った米国と台頭するインド・中国。西欧文明の没落が決定的段階を迎えた。(じじ放談)
7月30日付け日本経済新聞・夕刊は以下1,2,3の記事を掲載した。(抜粋)

1.ジュネーブで開催されていた世界共通の貿易自由化ルールづくりを交渉していた世界貿易機関(WTO)の閣僚会合は29日(日本時間30日未明)、先進国と途上国の溝が埋まらず、決裂した。農産物の輸入増に対抗する特別セーフガード(緊急輸入制限措置)の条件緩和を求めたインドと中国が米国と激しく対立し、歩み寄れなかった。

2.今回の多角的通商交渉は(ドーハ・ラウンド)には153の国と地域が参加した。農産品や鉱工業品の関税を一律に削るルールをつくり、世界全体の貿易拡大につなげる狙いがあった。2001年から7年に及ぶ議論を重ねたものの、急速に発言力をつけた新興国と、議論を主導する力を失いつつある先進国の溝は埋めきれなかった。

3.交渉決裂の主因はインドなどが緊急輸入制限の発動条件の緩和に最後までこだわった点だ。米国は国内農家に農業補助金を支給しており、インドは価格競争力の高い米農産品の輸入増を懸念している。インドや中国は米国に補助金の一段の削減を迫る一方、緊急輸入制限で歩み寄りを求めたが、折り合わなかった。日本は国内農業保護の観点から農産品の関税引き下げで守勢に回り存在感を発揮できなかった。

第1.15世紀末から世界を支配してきた西欧文明の没落が決定的になった。
1492年のコロンブスによる新大陸の発見は「大航海時代」の扉を開いた。換言すると、先進的工業技術とりわけ海運と軍事技術を発展させた西欧が、世界の諸民族・諸文明を支配して領土を世界に広げた時代である。1521年のスペインによるメキシコ占領、1533年のスペインによるインカ帝国征服を代表的なものとして、世界中の民族・国家が西欧の占領地(植民地)となった。1858年、英国がインドを直接統治下においた。1877年、英国領インド帝国が成立した。西欧は1945年の第二次世界大戦によって国土が荒廃し戦力を大きく減退させた。世界中の民族独立戦争が勃興し、西欧は15世紀末葉以後「力で獲得してきた領土(植民地)からの撤退を余儀なくされた。西欧の力による世界支配は約450年で終わった。インドが英国の統治を脱して独立国家を宣言したのは1950年である。今から58年前だ。

西欧の旧植民地であった各民族・国家は、独立後まもなくして「欧米の権益を国営化する」作業に着手した。スエズ運河(エジプト)の国営化や、サウジアラビアの石油資源の国有化が代表的なものである。世界の資源を収奪して繁栄を誇った西欧は収奪経済からの脱皮を迫られた。欧米列強は「転んでもただでは起きない。」という特徴がある。貿易の自由化を初め、「欧米の利益を図る」目的で「貿易・関税のルール」を作った。直接的収奪から、ルールを介した間接的収奪システムを構築し「西欧文明の没落」を遅らせることに成功した。


第2、地球温暖化防止の「京都議定書」から今回のWTOまで
炭酸ガス等排出ガス削減を取り決めた「京都議定書」は西欧主導で推進された。米国→西欧という西欧文明間の力の移動に過ぎない。世界の通貨ユーロが米ドルの基軸通貨を一部肩代わりしたのも同じである。世界のルールづくりは、米国から西欧に重心が移動しただけで、西欧文明主導であることに変わりはない。今回のWTOで、インド(アジア)が覇権国家米国と土俵の中央でがっぷり四つに組んで譲らず「時間切れ引き分け、再試合」に持ち込んだ意義は、西欧文明の世界支配の終焉を意味する画期的な出来事である。「西欧文明による、西欧文明のための、西欧文明のルール」であった世界の常識が通用しなくなったことを意味する。西欧文明は最後の砦ともいうべき「ルールの制定権」を失った。

第3.西欧文明と対決するアジア(インド・中国)
日露戦争で我が国は西欧文明に属する大国ロシアを敗走させた。16世紀以降、西欧に侵略され収奪されてきたアジアの諸国民を大いに激励した。植民地下の青年に「やれば勝てる」との自信を抱かせ、民族独立の燈明となった。今回のWTOにおいてインドは「覇権国家米国と互角の戦い」を行った。勝利することはできなかったが「引き分け再試合」に持ち込めた。我が「日露戦争」と同じく、アジアが西欧文明に対して「NO」と宣言し、これを貫徹した意義は高く評価されてよい。「西欧文明主導による世界のルールづくりは認めない」と宣言したのである。
我が政府は「農産物輸入制限の一層の緩和」を求められ苦しい戦いを行っていた。経済産業省は西欧側と利害が一致する。農水省はインド・中国と利害が一致する。今回の「閣僚会議の決裂」で農水省側は「ほっと一息」というところだろう。農民団体は安堵している。自民党も「次の総選挙は何とか戦える」という感想ではなかろうか。反面、経済産業省は「渋い顔をしている」といってよい。輸出産業の応援を受けて出かけたからやむをえない。「交渉決裂を喜んでいる」とみなされるのは得策ではないと考え、甘利明経産相も苦虫を噛み潰した「落胆した表情」を演出して帰国せざるをえないという立場である。

第4.当面、世界は「群雄割拠「綱引き」が続く
世界の経済・社会のルールづくりは難航せざるをえない。米ドルとユーロの2極体制も長くは続かない。人民元、ルーブル、円、イスラム通貨等が貿易決済で多用される時代も遠くはない。ロシアはWTOに加盟していないが、加盟していたならばおそらく「インド・中国」との共同行動をとったに違いない。「米国の一極支配を許さない」というのがロシアと中国の戦略的合意事項である。西欧文明は世界支配の最後の手段たるべき「ルール制定権」を失った。今後は、経済力に応じた地域大国としての応分の権利を主張できるだけであろう。力量を超えた過分な権限を行使できなくなった。オバマは「イラクからは16か月以内に撤兵する」と公約に掲げた。その代わり、「余裕ができた軍隊をアフガニスタンに投入する」という。とすれば、北大西洋条約機構(NATO)軍は、アフガニスタンとパキスタン北西辺境州に対する掃討作戦に集中して取り組むことになる。アフガン内戦に介入した旧ソビエトは急増する戦費と犠牲者で国家の屋台骨が揺らぎ連邦解体に陥った。おそらく、米国をはじめとする西欧文明側は、アフガンでの泥沼の戦争に注力しすぎて旧ソビエト連邦の二の舞を演じるのであるまいか。遠隔地での戦争を長期間継続すれば、国家経済を疲弊させ、国家崩壊の引き金を引く。帝政ロシアは東アジアの日本との戦争で疲弊し、レーニンのロシア革命を成功させた。中国古代の戦略思想家「孫子」も、「遠隔地での戦争は短期決戦を旨とすべきあって、長期間にわたる戦争は避けるべきだ。兵と兵糧の補給が困難であるだけでなく、国家経済を破綻させる」と指摘している。ベトナム戦争で米国経済は破綻した。オバマはアフガンでベトナム戦争の再現を行おうとするのであろうか?「内政重視」のオバマはどっちつかずの大統領となる危険がある。

第5.我が国の立場(脱亜入欧→脱欧入亜→脱亜入米→世界の日本へ)
明治の我が国は「脱亜入欧」で社会・経済システムを西欧型に転換した。大東亜戦争では欧米列強と対決し「大東亜共栄圏」の「脱欧入亜路線」を採用して敗北した。戦後は米国の色に染められ「脱亜入米」となった。近年、我が国がロシア、インド、ブラジル、中東イスラムほか世界中の国々との経済・文化交流を推進していることは誠に喜ばしい。米国や中国との濃密な関係を是正することは我が国の経済的発展だけでなく、安全保障面からも有意義である。何よりも「リスクヘッジ」の意味がある。全財産を「特定の籠に入れる」という愚かな行為は避けるべきだ。財産管理のイロハだけではなく国家安康の基本である。WTOでの我が国について日本経済新聞は「日本は守勢に回り存在感を発揮できなかった」と解説する。輸出企業の広告費で食っている日経が関税引き下げを願う企業側代理人としての立場を貫くのはやむをえない。だが、日本全体の国益を勘案した時、「安価な農産物がさらに輸入される」ことになれば、我が国農業は壊滅的打撃を受ける。農産物の輸出大国である米国にとっては「万々歳」かもしれぬが、我が国の食糧自給率はさらに低下する。地球温暖化による食糧生産の減少が危惧され、米国の農家保護政策というべきトウモロコシによるバイオエタノール大増産計画が推進されている中、食料品価格が暴騰している。どれだけカネを積んでも「必要とする食料品の輸入を確保するのが困難な時代」になりつつある。このような食料事情下において、米国の農産物輸出先を拡大する狙いでもって「食料品の低率関税化と無制限輸入のルール」を取り決めた場合、我が国は「食糧を武器にした米国の脅しに屈するほかはない」惨めな立場に陥る。

今回、インド・中国が強力に反対した事情も「国内の農業保護」に加え、米国の食糧輸出をテコにした世界支配の狙いを読み取ったからではないか。我が国は日経が指摘するとおり「存在感を発揮できなかった」かもしれぬが、それで結構ではないか。米国とインド・中国の対立に「是々非々」で対応しておけばよい。「国内農業保護」と「輸出企業の利益増進」という二律背反の構造的矛盾を抱える我が国は「人のふんどしで相撲をとる」ほかないのだ。存在感を発揮しようと頑張り過ぎればかえって国益を損じる。米国の一極支配に対抗するインド・中国に頑張ってもらうことは、我が国の国益を全面的に損なうものでもない。プラスとマイナスが相殺されてゼロというところだろう。対立の渦から身を引いて、ロシア、ブラジル、インド、中東イスラムとの交流にエネルギーを注げばよい。「無駄なこと」にエネルギーを消耗する必要はない。
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(まとめ)
世界のルールをつくり、「西欧文明の利益を最大化してきた」時代は終わった。これからは、平等互恵の新しいルールづくりが始まる。もっとも各国の利害対立は二律背反であるからルールづくりが難航することは間違いない。それはそれで仕方がない。「欧米の利益を最大化するルール」を拙速でつくる必要はない。時間をかけて議論すればよい。WTO閣僚会議が決裂した件について我が政府は「困惑した表情」を演じている。それで結構。我が国は主要なプレイヤーが喧々諤々主導権争いするのを嘆き、困惑した表情をしておればよい。どちらかに偏り過ぎて「敵を増やす」べきではない。世界中と平等互恵の貿易を狙う我が国にとって、「西欧文明」に与するのも、インド・中国に与するのも避けるべきである。双方の主張に理解を示しておけばよい。これを「中道」という。仏教でいう「左右にとらわれない心」である。融通無碍、変幻自在の立場と言い換えてもよい。仏教徒である我が民族は、一神教である西欧文明や多神教であるインド文明と一定の距離を保つのが無難ということではなかろうか。