変に「怖い物なし」の福田首相を攻めあぐむ民主の焦り(フォーサイト) | 日本のお姉さん

変に「怖い物なし」の福田首相を攻めあぐむ民主の焦り(フォーサイト)

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▼変に「怖い物なし」の福田首相を攻めあぐむ民主の焦り(フォーサイト)

小泉純一郎元首相や中川秀直元自民党幹事長の後押しで、急に次期首相候補の一人に数えられるようになってきたのが小池百合子元防衛相だ。マスコミへの露出も多く、勢いがあるという点では、同じく有力候補である麻生太郎前幹事長を凌ぐほどだ。だが、彼女は最近、首相候補としては致命傷になりかねないミスを犯した。

 

小池氏が新聞、テレビ各社の多くの政治部記者を敵に回すことになるその出来事は、四月二十二日に起きた。この日、東京・赤坂のANAインターコンチネンタルホテル東京で小池氏は講演した。始まって五分ほどで記者団は会場から閉め出された。どうしてもメディアに知られたくない内容を話す場合、政治家が記者団を追い出すことはある。ここまでなら、よくある話ということで終わっていた。しかし、記者団が退場する直前、小池氏は、その後に記者団が怒りに震えることになる余計なひと言を発した。「今日は、たぶん赤坂の一ツ木通りで自民党と民主党の重鎮が密会していると思います。どうぞ政治部記者の方々、そちらに行かれた方がいいニュースが取れるかと……上司からは褒められるのでは、と思います」会場のホテルから一ツ木通りは目と鼻の先の距離だ。ホテルを出ると、記者たちは一目散に直行し、政治家が立ち寄りそうな料理店に探りを入れた。だが、いくら探し回っても重鎮議員の姿は見つからない。がっかりした一部の記者が、せっかく有力情報を教えてもらったのに密会の現場を突き止められなかったことを小池氏に伝えた。すると、小池氏は平然と「あら、本気にしたの~」と答えたというのだ。つまり、小池氏の話はウソ。記者団はからかわれたのだった。小池氏は軽いジョークのつもりだったのかもしれないが、真に受けた記者たちはおさまらない。「小池は本当に嫌な奴」と担当記者の一人は言う。公正中立な報道が信条だとはいえ、記者も人の子。散々こけにされて黙ってはいまい。しっぺ返しを狙っているはずだ。こんなふうに無用な敵を作ってしまうところが、小池氏が宰相の器としては今ひとつと言われる部分なのだ。補選大敗でも「降板」の声なし。


一方、もう一人の「ポスト福田」候補である麻生氏は今すぐ動くつもりはないようだ。麻生氏が率いる為公会(麻生派)のパーティーが四月十一日、東京・芝公園の東京プリンスホテルで開かれた。来賓としてあいさつした伊吹文明自民党幹事長は麻生氏の目の前で、ぬけぬけと「麻生氏も有力な次期総理総裁候補だ。だが、誰が総理をやっても今の状況はそう簡単には解消しない」と言ってのけた。政局的な動きは控えて福田康夫首相(自民党総裁)―伊吹幹事長の現執行部体制に協力しろ、と言わんばかりの挑発的な発言に会場内には緊張が走った。だが、「誰が総理をやっても……解消しない」という発言は、今の自民党を覆う空気を代弁している。衆院山口二区補欠選挙が四月二十七日に投開票された。昨年九月の福田首相就任以来初の国政選挙だった。だが、自民党は大敗。さらに、その数日後に実施された一部のマスコミの世論調査で、内閣支持率は一割台にまで落ち込んだ。ところが、こんな状況になっても、不思議なことに与党内から福田首相の責任を問う声は聞こえてこない。補選前には、この選挙結果が揮発油(ガソリン)税の暫定税率復活を盛り込んだ歳入関連法案の行方を左右するだけでなく、今後の政局の動向に重大な影響を及ぼし、ひいては福田政権の命運を握る、とまで言われていた。だが、敗戦後、福田首相を降板させるべきだという声は与党内には皆無だ。


補選投票日翌日の二十八日、国会内では、加藤紘一元自民党幹事長が記者団に囲まれていた。自民党候補の落選を受けて、記者団は「福田首相のもとでは、自民党は次の衆院選で勝てないのではないか」と尋ねた。加藤氏は現政権と一定の距離を置く姿勢で知られており、当然この質問には、内閣や自民党執行部に対する批判的な意見が加藤氏から聞けるという期待が込められていた。だが、加藤氏の口から出たのは、「次の衆院選は誰がやっても難しい。福田さんで北海道洞爺湖サミットをしっかりと迎える」という拍子抜けするほど達観した言葉だった。加藤氏は平成十二年に、当時の森喜朗内閣打倒を図った「加藤の乱」で手痛い失敗を味わっている。それだけに、思い切った発言を自重している面もある。だが、加藤氏にかぎらず、表立った倒閣の声は自民党内にはない。今の政府は、道路財源問題、高齢者医療、年金問題などの難題を山のように抱えている。そうした課題の、政府に都合のよい処理を阻害しているのが、野党が参院で過半数を占めている衆参ねじれ国会の状況だ。仮に福田内閣が今すぐ総辞職して、新内閣が仕事を引き継ぐとしても、今の政府が追い詰められた状況が好転するわけではない。与党議員の多くがそのことを理解しているのだ。


「小泉メッセージ」の意味は、 こんな政治情勢を踏まえて、福田首相は実に淡々としている。内閣支持率が一割台に落ち込んだという事実さえ、福田首相とその周辺の人々をそれほど動揺させるには至らなかった。なにしろ、一報を受けた官邸関係者は悪びれもせずに親しい記者たちに、「ガソリン値上げ、後期高齢者医療、いろいろ悪条件が重なったのに、思ったほど下がらなかったという感じ」と語っているのだ。また、首相側近は「首相もそれほど気にしていない」という。こうなると、逆に「怖い物なし」と言っていいほどだ。開き直った福田首相は奇妙な余裕すら漂わせている。今年二月ごろ、町村信孝官房長官は、胡錦濤中国国家主席来日から北海道洞爺湖サミットへと続く五月から七月の期間を「外交の季節」と名付けた。内政で落ち込んだ内閣支持率を外交で取り戻せると期待していたのだろう。たしかに胡主席との日中首脳会談は、新文書調印という一定の成果はあった。だが、チベット騒乱やガス田問題での福田首相の態度は期待はずれで、この程度で支持率が飛躍的に回復するわけもない。それでも福田首相は「自分の(支持率の)ために仕事しているわけじゃない」と、のん気なものだ。

 

大型連休後半の五月五日、福田首相は東京・紀尾井町のグランドプリンスホテル赤坂に伊藤達也首相補佐官を呼び出し、年金や医療保険、介護保険などの社会保障制度について、「運用の実態や、国民のニーズを迅速かつ正確につかみたい。たとえば、社会保障に関する国民の意識調査のようなものを検討してほしい」と指示した。年金や後期高齢者医療制度に対する国民の批判が爆発する中、今ごろになって「世論調査を検討しろ」とは、遅すぎる。だが、福田首相は、よく言えばきわめて着実に、悪く言えばのんびりと政策課題に取り組もうとしているのだ。

四月二十二日昼、政局を読むことにかけては定評がある小泉元首相が町村官房長官を通じて福田首相にメッセージを送った。「総理大臣は気力、体力、胆力だ」

 

この発言は町村派議員の解説によると、「首相というポストは本人が辞めると言わないかぎり辞めなくていい。だから、気力、体力、胆力が充実していれば、辞めなくて済む」という激励の言葉なのだという。小泉氏は昨年三月にも、相次ぐ閣僚の不祥事でダウン寸前だった当時の安倍晋三首相に、「七月の参院選で負けても、首相を辞める必要はない。堂々と胸を張っていけばいい」と助言している。いかに野党が参院で暴れても、与党が衆院で多数を占める今の国会状況では、内閣不信任決議案は可決される可能性はない。支持率が急降下しようが、野党提出の問責決議案が参院で可決されようが、福田首相は気にせずに政権に居座っていればいい、居座れるだけの気力、体力、胆力を持てと、小泉氏は権力者の心構えを説いているのだ。そして、小泉氏の助言を待つまでもなく、自民党内では、福田政権が七月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)まで存続することが既定路線になりつつある。

 

ただ、四月から始まった後期高齢者医療制度に対する国民の囂々たる非難の高まりは、福田首相にとっては予測をはるかに上回るものだったにちがいない。施行後に制度上の不備や手続きミスも発覚して、政府への風当たりは強まる一方だ。しかし、新制度をつぶさに検証してみると、一概にこの仕組みそのものが悪いとばかり言い切れない面もある。

 

四月二十三日、自民党山崎派はグランドプリンスホテル赤坂でパーティーを開いた。各派の領袖クラスが来賓としてあいさつする中で、もっとも場内を沸かせたのは、津島派会長の津島雄二元厚相だった。津島氏は「第一級の政治家が集まっている」などと型通りの賛辞を贈って山崎派を持ち上げてみせた後、唐突に、「私、後期高齢者なんですよ」と話題を変えた。一瞬、場内が静まったのをみて、津島氏はポケットから小さなカードを取り出して高く掲げた。カードは健康保険証だった。「新しい保険証をもらいました。あまりありがたくないようなちっぽけな保険証だ。でも、これによって、私の保険料は安くなりましたよ。保険料が安くなった人は黙ってんですよ。いろいろな事情で保険料が上がる人が騒いで、安くなった人は黙っている。その結果、マスコミが、『政府は年寄りをいじめている』と言わんばかりだ」

 

津島氏は、今回の新制度批判の構図を、ずばりと指摘した。もちろん、津島氏のように保険料が下がった人ばかりではない。だが、下がっている人も多く存在するという、政府に有利な事実を、これまで福田政権は宣伝してこなかった。 そもそも新制度は、野党議員が口を極めてののしるほど悪い仕組みなのか。たしかに四月十五日から始まった年金給付金からの保険料天引きは、高齢者の心を逆撫でした。「後期高齢者」というネーミングも配慮に欠けていた。だが、それでは新制度は導入しない方がよかったのか。たしかに、新制度は問題だらけだが、旧制度のままで、迫り来る超高齢化社会に日本はどう対応するのか、高齢者の医療費は誰が負担するのか。政府がそうした問題意識をきちんと国民に訴え、新制度の基本的な考え方を十分に説明していれば、これほどまでに世論は反発しなかっただろう。今日の政府批判の原因の半分は、こうした宣伝や説明を怠った福田政権の戦術的な失敗にある。


茶番にすぎなかった「闘争」だが、そんな福田首相を、民主党は攻めあぐねている。国会闘争や補選勝利などでの表向きの威勢の良さとは裏腹に、民主党はかなり焦っていると言ってもいい。「理性も大事だが肉体も大事だ。明日は動きやすい服装で来ること。女性もスカートよりパンツがいい」

 

学校の先生が、翌日の遠足の服装を生徒に指示している場面ではない。四月二十九日夜、民主党本部で開かれた会合で、同党の安住淳国対委員長代理が若手議員らに国会での白兵戦の準備を整えるよう指示を出しているところである。翌三十日に、与党はガソリン税の暫定税率復活をかけて衆院本会議での歳入関連法案の再議決を強行する。民主党は、その本会議の開会を阻止するために、国会議事堂の廊下占拠して河野洋平衆院議長を議長室に閉じ込める計画を立てた。与党議員や衛視らともみ合いになることを想定して、肉弾戦向きの服を着てくるように指導しているわけだ。

 

実際に、三十日にはプラカードを掲げた民主党議員が議事堂二階の廊下にあふれ、大変な騒ぎになった。テレビはその混乱ぶりを報じ、いかにも民主党が懸命にガソリン値上げを阻止しようとしているかのような映像が全国に放送された。しかし、そんな闘争は茶番劇でしかない。

安住氏が服装を指示した直後に、簗瀬進参院国対委員長は若手議員に次のようにアドバイスした。「服は破くより破かれた方が効果的。その瞬間は眼鏡をはずしてもらいたい」この発言の意味するところは、「相手の服を破くな、自分の服を破かせろ」「相手を殴るな、相手に殴られろ」。つまり、「わざと負けろ」と指示しているのだ。なぜなら、「ガソリン税の値上げを阻止するよりも、値上げされてしまった方が政府への批判が高まって、民主党にとって得策」(民主党職員)だからだ。

 

こんなふうに最近の民主党には、政局優先で物事を判断する姿勢が顕著だ。たとえば、民主党は四月十六日から参院で審議入りした道路整備事業財政特措法案を無理矢理、財政金融委員会に付託した。この法案はガソリン税などの道路特定財源を今後十年間にわたって道路特定財源に組み入れる、つまり道路関係の事業だけに支出することを定めるもの。道路建設関連の法案は国会の慣例として、国土交通委員会で審議することになっている。だが、自民党の大島理森国対委員長に言わせると、「民主党は常識的なルールをねじ曲げて」まで、財政金融委員会での審議を強行した。その理由は、国土交通委員会の委員長が自民党議員であり、財政金融委員会の委員長が民主党議員だからだといわれる。委員会審議を有利に進め、福田政権を揺さぶろうというのだ。

 

四月十八日に開催された道路特定財源の一般財源化を話し合うための与野党協議会のメンバー構成についても、民主党は与党側とぶつかった。与党は政策的な話し合いだから各党政調会長が出席すべきだと主張した。だが、民主党は国対委員長をメンバーとすべきだと言い張った。国会情勢を見極めながら政府・与党側を追い詰めるためには、国対委員長の方が有利だからだ。このほかにも、民主党がさまざまな局面で政局優先で動こうとした例は枚挙にいとまがない。だが、どんなに民主党が福田政権を追い込もうとしても、衆院解散・総選挙に踏み切るつもりなど端から無い福田首相に対しては、「のれんに腕押し」である。これまで民主党は年金、高齢者医療、ガソリン税などを政府攻撃の材料にしてきた。しかし、四月三十日の歳入関連法案再議決以降、弾切れの状態に陥り、新たな攻め手を欠いている。このままの状況が続けば、国民の関心は薄れ、福田政権の支持率は再浮上しかねない。次から次へと政権攻撃の材料を見つけなければならない民主党は、まるで泳ぎ続けなければ死んでしまうマグロのようでもある。今の政局は、民主党が猛然と攻撃を仕掛け、自民党は防戦一方のように見えるが、民主党も崖っぷちに立たされているのだ。フォーサイト2008年6月号「深層レポート 日本の政治183」より


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ようちゃん。↓

★小池百合子元防衛相・・・・だが、彼女は最近、首相候補としては致命傷になりかねないミスを犯した。小池氏が新聞、テレビ各社の多くの政治部記者を敵に回すことになるその出来事・・・>その詳細は 本文で分かりますが、でも こんなことが 政治記事とは ね・・・。

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