ロシア政治経済ジャーナル No.525 | 日本のお姉さん

ロシア政治経済ジャーナル No.525

ロシア政治経済ジャーナル No.525 2008/7/17号
★北京オリンピック後の中国
全世界のRPE読者の皆さまこんにちは!
いつもありがとうございます。
北野です。
もうすぐ、オリンピックですね。
中国は、その後どうなっちゃうのでしょうか?
▼中国に進出した日本企業の悩み
このまえ「クローズアップ現代」を見ていたら、中国に進出した日系
企業の悩みについてやっていました。
悩みとは、
「中国の賃金が上がってきてメリットがなくなっている」
この状況に対し、いくつか違う行動をとる企業が紹介されていまし
た。

1、中国内陸部に移動する

賃金が上がってしまった上海などを離れ、内陸部に移りたい。
番組では、「安い労働者」を求めて内陸部を視察する社長さんが
紹介されていました。
しかし、社長はどこに行っても壁にぶち当たります。
内陸部にいけば、賃金は多少安いかもしれない。
ところが、輸送コストが高くつくため、本当に移動するメリットがある
のか微妙。

2、ベトナム・ラオスに移動する
「中国はもう高い」
ということで、ベトナムに移動する。
そのベトナムも高いのでラオスに移動する。
例えば、中国で月給1万2000円レベルの従業員。
これがベトナムでは8000円。
ラオスでは5000円。
まあパッと聞いたら、魅力的です。
ラオスに進出した企業の責任者は、「定着率が悪く、すぐ

やめる」と悩んでいました。

3、中国市場をターゲットにする
今まで、日欧米企業は、「中国で安く生産し、それを自国に逆輸入
する」というモデルで成り立ってきました。
確かに日本でも、どこにいっても中国製があふれています。
ところが、賃金が上がってしまい、利益が出にくくなってきた。
それで、中国市場をターゲットにしようと。
あるアパレルメーカーは、日本向け商品を、ためしに中国で売って
みた。
全然売れない。
で、中国人スタッフに聞いて見ると、「もっと派手派手じゃないと中
国ではダメですよ」とのこと。
日本人と中国人は趣味が違うので、全部作り変えないとダメなんで
すね。
番組では三つのケースがあげられていましたが、どの道がもっとも
有望なのでしょうか?

▼北京オリンピック後の中国は?
中国の未来について、さまざまな意見があります。
安全保障については、いつもRPEで書いています。
経済については、だいたい二つでしょう。

1、中国経済は、北京オリンピック後崩壊する

おそらく今の日本では、これが主流な意見。
本屋に行けば、これ系の本が山ほどあるはずです。
理由は

・株価が半分以下になったから
・共産党の一党独裁だから
・貧富の差がものすごいから
・環境破壊がすごいから
・汚職がすごいから
・(チベットなど)人権を侵害しているから
等々。

2、オリンピック・万博前後にバブルははじけるが、その後も成
長する。
私は、大昔から2を支持しています。
ライフサイクルで、中国はまだ成長期の半ばにいるから。
ライフサイクルの特徴を、大まかに振り返ってみましょう。
・移行期(混乱期)
前の体制が崩れ、まだ支配体制が固まっていない。
日本で言えば戦国時代が典型。
中国でいえば、清滅亡から毛沢東が亡くなるまで。


・成長期前半
優秀な指導者が出て混乱期を収束させ、経済を成長軌道にの
せる。
中国でいえばトウ小平が実権を握った1980年ごろから。
以後中国は、現在にいたるまで年平均10%の成長をつづけてい
る。

・成長期後半
賃金が上がり、成長率が二桁から7~9%くらいまで鈍化する。
輸出主導から内需型に経済構造が変化していく。

・成熟期
生活水準は十分に上がり、高止まり状態。
経済成長率は0~4%程度。

・衰退期
で、中国は日本から、だいたい30年遅れています。

60年代の日本=「安かろう悪かろう」で成長。
90年代の中国=「安かろう悪かろう」で成長。

70年代の日本=「良質で安い」で成長。世界の工場に。
00年代の中国=「そこそこ良質で安い」で成長。世界の工場に。

80年代の日本=絶頂期。
10年代の中国=???
こう見ると、賃金水準が上がってきた中国は今、

「輸出主導から内需主導に転換しつつある」
「成長期前期から後期に移行しつつある」
となるでしょう。

1、中国内陸部に移動する(そして日本への逆輸入をつづける)
2、ベトナム・ラオスに移動する

この二つはいずれも、「安い労働者を求めて」という発想。
長期的には難しいでしょう。
なんといっても、世界的にインフレ傾向ですから。
もう一つ、人口13億人の中国に比べ、労働市場の規模が小さ
ベトナムやラオスでは、賃金上昇が何倍も速くすすむはずで
す。
苦労して工場を移転しても、移った翌年から「賃上げ要求デモ」
に悩まされるに違いありません。
結局、中国に進出している日系企業はこれから

3、中国市場をターゲットにする
のが一番よいと思います。
なんといっても、日本の総人口に匹敵する富裕層がいる。
まあ、日本の国益を考えると一番いいのは、

4、日本に戻り、日本人を雇ってください

となるのですが、現実はなかなか難しいでしょう。


▼中国崩壊論は根拠が薄弱
日本には、中国崩壊論を30年も唱えつづけている人たちがたく
さんいます。
その根拠は時代によっていろいろですが、根本は、
「中国嫌い」
という感情がベースにあるように思われます。
今の根拠を見てみましょう。
・共産党の一党独裁だから?
これは、ソ連を中心とする共産陣営が敗れたからいうのでしょう。
しかし、ソ連はなぜアメリカに敗れたのでしょうか?

1、原油価格が下落した
2、第1次アフガン戦争で軍事費が急増した
3、レーガンが軍拡競争をしかけ、ソ連の軍事費が激増した

要するに、ソ連が負けたのは、「ソ連型社会主義・共産主義経済
」が資本主義経済に負けた。
そして、覇権国ソ連がボロボロになったので、共産陣営すべてが
滅びてしまった。
中国は、79年から政治は独裁、経済は資本主義という特殊な体
制でやってきた。
それで、共産陣営で唯一生き残ることができたのです。
(北朝鮮やキューバのように、ボロボロ生き残り国はある)
要するにソ連が滅びたのは、
共産党の一党独裁だからではなく、経済が破綻したから。
共産党の一党独裁で、経済が順調な場合はどうなのか?
例えば、独裁者スターリンの下でソ連経済は成長し、体制は磐
石でした。(人権は最悪だが)
そして、ソ連は原油価格が高かった70年代、絶好調だったので
す。

・貧富の差がものすごいから
アメリカもロシアも、貧富の差はものすごい。
それで体制は崩壊していませんね。
なぜかというと、貧しい人に革命は起こせない。
たまに、そういう例もありますが、よくよく調べてみると、革命勢
力は外国から資金援助を受けていたりする。
とにかく、革命には金がかかるのです。

・環境破壊がすごいから
環境破壊がひどくて革命が起こった例を、私は知りません。

・汚職がすごいから
汚職というのは、基本的にどこの国にもあります。
日本でも、毎日汚職のニュースがあるでしょう。(最近では大分)
それでも、日欧米の汚職は、他の国々と比較にならないほど少な
い。
汚職が国を滅ぼすのは、国のトップの浪費が原因で財政が破綻
する場合。
財政に関していえば、日本も中国のことを笑えません。

・中国は人権を侵害しているから
スペインはその最盛期、中南米の民を大虐殺していました。
イギリスは、日の沈まない国だったとき、世界中で人権を侵害して
いました。
ソ連は、最悪の独裁者スターリンの時代、もっとも急成長していま
した。
もちろん、人権は守らなければならない。
しかし、現実問題として、
人権を守る国は繁栄する
人権を守らない国は繁栄しない
という法則は存在しません。
ソ連でいえば、人権を守り始めたゴルビーの時代崩壊しています。

▼中国がGDP世界一になる日
RPEは、大昔から「中国をあまく見るな」と警告しつづけてきまし
た。
そうこうしているうちに、
中国はまもなくGDPで日本をぬき、世界2位になることが確定して
しまった。

<中国、名目GDP世界2位へ 今年にも日独逆転 「元高」が押
し上げ
08年4月9日8時27分配信 フジサンケイ ビジネスアイ
中国が名目GDP(国内総生産)で早ければ今年にも日本を追い
抜き、米国に次ぐ世界2位の規模に躍り出る可能性が出てきた。
日本を上回る経済成長スピードに加え、対ドルで人民元為替レー
トが上昇ピッチを速めていることが、ドルベースのGDP値を押し
上げているためだ。
日本の“指定席”だったアジア首位の座を奪って、米国と比肩す
る経済大国と位置づけられる中国。
国際社会の影響力も一段と強まり、アジア経済の勢力図も大きく
塗り変わることになりそうだ。(坂本一之)>
そればかりではありません。
カーネギー基金は、はやければ2021年、おそくても2035年ごろに
中国のGDPは、世界1になると予測しています。

<リポートは同基金のアルバート・ケイデル中国問題上級研究
員がまとめた。
それによると、中国は成長エンジンを現在の貿易から中国国内
の個人消費や官民の投資による内需主導型に転換し、1けた台
後半の安定成長を続けると指摘。
2035年までに、GDPで中国の6倍の規模を持つ米国を抜いて
世界一の経済大国になると予測した。>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
< ただ、これは控えめな推計で、実勢より低い人民元の対ド
ル相場を購買力平価で是正し中国のGDPを測り直した場合は
05年時点で約2・5倍に膨らむ。
この場合、中国のGDP世界一達成は21年以降と大幅に前倒し 

される。
今世紀半ばに中国のGDPは米国の2倍弱に達し、米国は現在
の欧州連合(EU)と同じ第2勢力に転落。
国際的な主導的地位を失うという。>
(7月12日8時26分配信 フジサンケイ ビジネスアイ)

さて、私は中国経済について
1、バブル崩壊
2、減速
3、再び成長開始(成長期後半入り)
と予測していますが、同時に

日本唯一の仮想敵

であることを忘れてはいけません。
アメリカ幕府崩壊後日本は、
中国幕府の天領になるのか?

それとも

真の自立国家になるのか?

これから10年が正念場です。
(おわり)