中川と前原が企む「危険なゲーム」(1) (2)
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▼中川と前原が企む「危険なゲーム」(1)
水面下で依然続く政界再編への蠢き。野心も露な二人の行きつく先は――
洞爺湖サミット閉幕から一夜明けた七月十日。あえてこの日を選び、「ポスト福田」政局の風を吹かせる仕掛けを虎視眈々と進めてきた女がいた。父・赳夫が果たせなかった夢の「サミット議長」にこぎつけた首相・福田康夫に水を差すように、である。「『東京WOMEN大作戦』出版を祝う会」。ホテルニューオータニ「芙蓉の間」の壇上に上がる主役は史上初の女性宰相へ意欲をみなぎらせる元防衛相・小池百合子だ。元少子化担当相・猪口邦子(比例東京ブロック)とエコノミスト出身の佐藤ゆかり(東京5区)の「小泉チルドレン」二人を従え、東京都の女性衆院議員トリオで共著を上梓。サミット翌日にぶつけてきた。「日本と東京の再生可能なエネルギー源は女性たちだ」本の帯に麗々しく躍る推薦の辞。それは元首相・小泉純一郎のお墨付きだった。小泉「パーティー当日は俺が駆け付けるから。それでいいだろう」小池「いいえ、総理のダメ出しで本のタイトルも変えたんですから。お願いします」本の題名の原案は小池が考えた「東京女子大作戦」だった。無類のオヤジキラーの半面、女性票がアキレス腱と自覚する小池。大都市の女性に優しい政策を打ち出し、政治家として幅を広げて見せたい思惑を秘める。原案を猪口から伝え聞いた小泉は「何だかトンジョ(東京女子大)の作戦みたいだな。変えなきゃダメだ」と再考を命じた。小池はすかさず「東京WOMEN大作戦」に改題したうえ、小泉に「では前書きをお願いします」と談判に及んだのだ。小池の「度胸と愛嬌」には、かねてより勝負師・小泉も大いに利用価値を見出している。前書きこそ逃げたが、帯に推薦文を寄せ、十日のパーティーでメーンゲストとして登壇する破格の対応も承諾した。
前原vs.小沢
「ここには二人の首相候補がいるな」。小泉が前日本経団連会長・奥田碩ら経済人、自民、民主両党の中堅・若手議員との会合で軽口を叩いたのは四月九日夜のことだった。指差した一人がほかならぬ小池。もう一人が民主党副代表・前原誠司だ。「衆院選後は民主党が政権を担当しても、必ず自民党に協力を求める。与党が過半数を制しても、必ず民主党に協力を仰ぐ」と政界再編の機運を煽る小泉に魅入られたかのように小池も前原もこの後、激しく動き始めた。「民主党はマニフェスト(政権公約)や政策を常に進化させる議論を、開かれた形で行なう政党でなければいけない」六月二十六日夜、長野県木曽町のホテル。前原は自らの党内グループ「凌雲会」の議員約二十人を集めた研修会で、九月の代表選挙を代表・小沢一郎の無投票続投で終わらせず、対立候補が出て活発な政策論争をすべきだという立場を重ねて公言した。前原は六月に入り月刊誌に相次ぎ登場、「このまま民主党が政権を取っても大変だ。君子豹変しない限り、まともな政権運営はできない」と小沢の参院選マニフェストに真っ向から反旗を翻した。農家の個別所得補償、基礎年金の税方式化など総額十八兆円ものバラマキ政策の財源を増税なしで確保するという小沢流を「行革だけで捻出するのは絶対無理」と一刀両断した。
警戒した小沢は党内引き締めを図った。温存してきた参院での首相問責決議案を国会の会期末近い六月十一日に可決に踏み切った。福田との対決姿勢を鮮明にし、政界再編に名を借りた与野党馴れ合いを断ち切る狙いだった。ついでに当日に予定していた福田との党首討論もキャンセルした。
「なぜ党首討論に出て行って、民主党としての主張をしないのか。理解に苦しむ」
十日の党常任幹事会。前原は地方遊説で不在の小沢を公然と批判した。「代表選に対立候補が誰も出ないなら、自分が出ざるを得ないかも知れない」と主戦論すら漏らし始めた。無投票を当然視する小沢サイドが黙っているわけがなかった。「前原副代表の妄言を糾弾し、その『退場』を勧告する」
十二日午前、前原のバラマキ農政批判に「同僚議員や国民への重大な背信行為だ」と反論する電子メールが民主党議員全員に届いた。筒井信隆、篠原孝、山田正彦の連名。農家への所得補償政策を担う党ネクスト農水相の現職、前職、元職だ。山田や農水官僚出身の篠原は小沢系で、筒井も小沢と連携を深める旧社会党グループの一員だ。「偽メール事件で危機管理能力のなさをさらけ出し、党に多大の損失を与え代表を辞任したことを思えば、謹慎蟄居(ちっきょ)こそ必要で、このような言動を公表する資格もない。出処進退を明らかにされんことを勧告する」○六年に前原が代表を退く原因となった「永田メール事件」も蒸し返し、議員辞職まで要求しかねない激烈な文面。これには逆に「言い過ぎだ」の声も上がり、前原は「泥仕合は避けたい」と沈黙を決め込んだ。批判メールが出回り、党内に波紋が広がった朝、前原は霞が関の中央合同庁舎四号館に向かっていた。落ち合ったのは元自民党幹事長・中川秀直ら超党派の議員グループ。連れ立って経済財政担当相・大田弘子を訪ねると、一通の政策要望書を手渡した。
「『新たな海洋立国』の戦略構築に向けた要望をとりまとめた。骨太の方針二○○八に取り入れるよう強く求めたい」 超党派の「海洋基本法フォローアップ研究会」で中川は代表世話人、前原は共同座長を務める。旗振り役は日本財団会長・笹川陽平。研究会設立は福田と小沢の大連立構想が頓挫した直後の昨年十一月だが、安全保障から資源開発、漁業権益まで包括的な海洋立国戦略を掲げ、基本法制定を挟んで三年越しで連携を深めてきた。政界再編をにらむ地下水脈の一つだ。昨年十二月二十日、前原はこの件を名目に中川の手引きで首相官邸で福田に面会していた。「中川・前原ライン」は翌十三日、さらに加速した。やはり笹川が提唱した「タバコ一箱千円」構想に共鳴する超党派の「たばこと健康を考える議員連盟」が旗揚げ。中川と前原は共同代表に就いてまたも肩を並べ、カメラの放列に収まって見せた。タバコ値上げは小泉の隠れた持論でもある。首相として最後の○六年度予算編成で「一本十円上げたっていい。欧米では一箱五、六百円はざらだ」と号令。政調会長だった中川が児童手当拡充の財源として「一本一円」値上げを敢行した。
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▼中川と前原が企む「危険なゲーム」(2)水面下で依然続く政界再編への蠢き。野心も露な二人の行きつく先は――(文芸春秋8月号無料記事)
民主党で小沢を挑発、あえて波風を立てるのが前原なら、自民党で極端に突出した言動を繰り返すのが中川だ。十三日午後、衆院本会議が散会すると、元首相・森喜朗は中川を連れて国会内の一室に約一時間、差し向かいでこもった。まるで周囲に見せ付けるための「密談」としか見えなかった。わざとらしい演出が福田を送り出している党内最大派閥・町村派の異変を告げていた。党内の視線が俄然町村派に集中したのはこれに先立つ五日、総会で久々にマイクを握って立ち上がった森の挨拶からだった。「福田さんはこんな辛い状況で一生懸命やっている。幸いわが党の総裁候補と噂される方々は誰も福田さんの足を引っ張る動きをしていない。そんな動きは我がグループが一番やってはいけないことだ」 名指しこそ避けたが、矛先は傍らで目を閉じてうなずく中川に向いていた。前日の四日、元法相・杉浦正健ら派内シンパが中川の近著『官僚国家の崩壊』をもとにした勉強会を立ち上げ、三十名超が出席した。配った資料には露骨に「(仮称)中川勉強会」の文字が印刷してあった。官房長官・町村信孝との派内覇権争いで優位に立とうとする「派中派」工作。中川に長年、目をかけてきた森も苦言を呈さないわけにいかなかった。中川は「中川勉強会などと言われているが、あくまで派閥の政策勉強会だ」と釈明に努めたが、十二日には元財務官僚でブレーンの東洋大教授・高橋洋一を講師に招き第二回を開いた。何かに憑かれたような勢いの中川を森はわざわざ衆人環視の「密談」でいさめた。「森が『やるなら派閥を出てからやれ』と中川を突き放した」との噂まで駆け巡ったが、中川は翌週以降も勉強会を続行。もはや確信犯と言えた。森との軋轢(あつれき)も所詮、痴話喧嘩のたぐいとタカをくくる。経済成長を重視し、消費税率引き上げは先送りする「上げ潮派」。小泉改革の継承を標榜する裏で、派中派工作という古典的手法で着々と権力基盤を固める使い分けに手段を選ばぬ現実主義者の顔がのぞく。近著では森政権で官房長官の座を棒に振った愛人スキャンダルにも触れ、「不徳の致すところ」と反省して見せた。この程度では暴力団のカゲもちらついた醜聞の「みそぎ」と認める評価は党内にほとんどない。しかし、そこは官房長官も幹事長も務め、六十四歳と脂がのった政治家の性(さが)。宰相の座を狙う野心は捨てきれない。「町村派や自民党の枠を超えて改革の旗に結集を呼びかけたい」「トップになるかどうかなど超越した。大乱世に身を捨てて戦う」。過去を乗り越えて復権を目指す唯一の道は、小泉の後押しを決め手に政界再編の新しい大波に乗るシナリオしかない。発言の端々にそんな思惑がにじむ。
政界再編という火遊び
中川の行動パターンは決まっている。改革を装う政策の看板を掲げ、「ポスト福田」や政界再編に備えた拠点を永田町のあちこちに構築する。その際、常に小泉の威光を背にする位置取りに腐心し、後ろ盾としてちらつかせる。小泉指名の「二人の首相候補」のうち前原を引っ張り出したのがたばこ議連。四月に設立した地球温暖化対策の京都議定書の目標達成議員連盟(もくたつ議連)では小池を幹事長に据え、会長として後見役を決め込む。無論、小泉に名誉顧問就任を頼み込むのも忘れていない。 前原は中川ら「上げ潮派」が牛耳る自民党国家戦略本部の「議員定数は衆院二百、参院五十」「省庁別設置法の見直し」などの大胆な統治機構改革案を「賛同できる」と持ち上げて見せる。半面、消費税増税やむなしと唱える前官房長官・与謝野馨や政調会長代理・園田博之ら「財政再建派」とも気脈を通じている。前原を含む民主党反小沢系にはかつて新党さきがけで薫陶を受けた園田のシンパが目立つ。前原が物議を醸した月刊誌の対談相手は与謝野だった。
「民主党だけが大きく割れても政界再編にはなりえない。自民党からも大きく割れて飛び出し、新党を創るのでなければダメだ」前原は中川にも園田にも繰り返しこう誘いをかけている。「政局屋」小沢には愛想が尽きたが、ただ民主党を飛び出ても自民党を利して裏切り者の汚名を着るだけだ。民主党に手を突っ込む「上げ潮派」「財政再建派」を逆に揺さぶり、自民党の亀裂も深めて政界再編の糸口をつかめないか、手探りを続ける。「中川・前原ライン」も、「話ができている」というより、相手を引っ張り合う政界再編ゲームの色が濃い。ある前原側近は「火遊びに深入りしすぎだ。危なくてついていけない」と懸念する。足元で続く政界再編にらみの暗闘を尻目に、福田は我慢を重ねたねじれ国会が閉幕すると、相変わらず低空飛行の政権運営で開き直ったように「自己主張」を始めた。「二、三年とか長い単位でもって考えた、そういうものを申し上げた。相手によってそういうふうに申し上げたのであってね」二十三日の記者会見。主要国通信社首脳に消費税増税を巡って「決断しなければいけない大事な時期だ」と漏らした真意を追及され、しれっと増税先送りをにじませた。「二、三年」先とは衆院選後を意味する。言い換えれば、自らの手で選挙をやり遂げる意欲を捨てていない、とも受け取れた。と言って与謝野ら「財政再建派」を突き放し、中川ら「上げ潮派」に軸足を移したわけでもなかった。翌二十四日、町村と行政改革担当相・渡辺喜美を呼び、新設する国家公務員制度改革推進本部の事務局長人事で「公募はしない。人事はすべて私の責任でやる」と裁断した。「言うことを聞かないんだよな……」。渡辺と組んで福田に公募を迫り、息のかかった高橋洋一を送り込もうと目論んでいた中川は歯噛みした。
「行く手に乱気流が見える。実際に突っ込んでみないとどんな乱気流か予測できない」福田は二十六日夜、幹事長・伊吹文明、国会対策委員長・大島理森らに「乱気流」を繰り返した。支持率下げ止まりの気配に一息ついたが、サミットをテコに上昇気流に乗る展望もまた、容易には開けない。内閣改造にも「白紙と何度も申し上げておりますけれども、現在は白紙」を決め込む。「首相が納得して辞める場合。それは限られた四つのケースしかない」
六月五日夜。恵比寿の元駐日ハンガリー大使公邸を改装した洋館「Q.E.D.CLUB」。小泉は「女性チルドレン」十二人を前に首相の出処進退の講釈に及んだ。小泉は「病気」「事故」と指を折り、次に「任期満了での退任」を挙げ、最後に、「衆院選に打って出る。負ければ仕方がない、となる」と口にした。健康体でしぶとい福田は前首相・安倍晋三のように政権を投げ出したりはしない、が結論だった。とは言え、神風でも吹かない限りは「小沢が解散しろと要求している時期にわざわざする必要はない」と決戦場となる衆院選は来年に持ち越すのが基本と踏んでいる。「北京の次のロンドンでは五輪種目だ」二十六日夕、小泉は芝公園のザ・プリンス・パークタワー東京のボウリングサロンで気勢を上げた。早大ボウリング部出身の元幹事長・武部勤の発案で「チルドレン」と始めたら「大勢で気軽に遊べて健康にもいい」とすっかりはまった。マイボールも買い込み、週一度は通ってスコア向上に励む姿は政界再編の仕掛け人からは程遠い。
小泉お気に入りの『忠臣蔵』。大石内蔵助は討入りに逸る仲間も欺いて京都の祇園で遊興にふけり、吉良家を油断させておいて大願を成就した。さて、夏を遊ぶ「小泉内蔵助」。まずは九月の民主党代表選を見据えている。(文中敬称略)
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▼経済界の「大物」が音頭とり 岡田克也を「囲む会」が発足(週刊文春)
経済界が次期衆院選後の民主党政権誕生を「十分に実現可能性がある」と見て動き出した。手はじめに今井敬・元経団連会長と御手洗冨士夫・日本経団連会長らが七月十一日夜、岡田克也・元代表を囲む会を立ち上げる。「ほかの参加予定者は、荒木浩・東京電力顧問、上島重二・三井物産顧問、森下洋一・松下電器産業相談役と聞きます。他に、和田紀夫・NTT会長、西田厚聰・東芝社長といった現役の幹部も出席を打診されているそうです」(経団連関係者)
それにしても、よりによって民主党内でも「政局嫌いの政策オタク」とからかわれる岡田氏に白羽の矢を立てたのは、なぜ?
実は今井氏を中心に同じような顔ぶれで、小沢一郎代表を囲む会はすでに行われてきた。今回、初めて他の民主党幹部にも触手を伸ばすのは、「民主党政権なら、首相になる可能性が高いのは岡田氏ではないか」という見立てに基づくという。九月の党代表選は、早くも「小沢再選」が党内の大勢。「次期衆院選までは選挙に強い小沢氏で行くべきだ」との声が強いからだ。
ところが、「本当に選挙に勝って政権を担うとなった時、世論受けしない小沢首相というのは想像しにくい。小沢氏がぶち上げた選挙向けの大バラマキ政策も、そのまま実現は不可能で、別の人が別の現実的政策を実行するしかない。小沢氏自身、自分の役割は選挙に勝つまで、と思い定めているフシがある」(政治部デスク)。そこで注目されるのが、岡田氏が先月出版した『政権交代―この国を変える』(講談社)だ。脱公共事業型の景気回復と不良債権処理を加速した小泉改革を評価し、しかも社会保障費の増大によって増税論議は避けられないと主張。前提となる行政のムダを削るには、役所としがらみのない民主党の方が向いていると説いた。これは消費税率引き上げから逃げる福田康夫首相と違って、まさに経済界の意見と一致する。出版は“政権公約”の発表としか受け取れないのだが、岡田氏は代表選について「ノーコメント。私の判断基準は民主党政権を実現するにはどうするか、だけ」とくり返す。つまり、政権奪取後の首相就任というウルトラCは否定していないのだ。囲む会立ち上げは、財界の「先見の明」となるか。
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▼創価学会が脅えた私の「極秘メモ」――元公明党委員長の告発手記(文芸春秋8月号)
▼武警将校の手記を入手~四川大地震 略奪と暴行の地獄絵(文芸春秋8月号)
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