日本国の研究 ・  国際派日本人の情報ファイル | 日本のお姉さん

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■日本国の研究 ・「夕張再建は可能なのか」
              読売新聞夕張支局長 吉木俊司

■出版3か月
「根底にあるのは行政の無責任、閉鎖性、だれも責任を取らない無責任体質。この6年半の私自身の歩みと重ね合わせつつ読ませて戴きました。心に残っていたモヤモヤが晴れまして気分爽快でございます」読売新聞夕張支局は今年3月、『限界自治 夕張検証』(梧桐書院)を出版した。冒頭に紹介したのは、福岡県で第3セクターの酒造会社を建て直した元農協職員の社長からのお手紙だ。そこには、地方自治の問題点が切々と書かれていた。
 
今回の出版には、猪瀬直樹さんから「自分の町が危ないと不安になっている人、救いたいと思っている人、必読です」と、過分な推薦文をいただいた。そのおかげもあって、弱小出版社の本ながら、多くの週刊誌・雑誌などに好意的に書評で取り上げられ、読者から様々な反響も寄せられた。夕張の財政破たん問題は、ひとり夕張だけの問題ではない。地方が抱えている矛盾がたまたま夕張で噴出したのであって、夕張問題を解決できない限り日本の地方の未来はない――。こんな思いで取材を続けてきた私たちも意を強くした。

■いま、夕張は
財政破たん発覚が2006年6月。財政再建団体となって、353億円の借金を8年間で返済する再建計画が始まったのが07年4月。全国の人々に注目され、揺れ続けてきた夕張だが、市民の表情にもようやく落ち着きが見られるようになってきた。しかし、それはあきらめと裏腹かも知れない。人口流出は一向に止まらない。6月末現在の人口は、6302世帯、1万1940人。破たんが発覚した06年6月末から2年間で、人口の約1割にも当たる466世帯、1225人が減った。将来に期待を持てないこと、子どもの教育や医療への不安などが、人口流出に拍車をかけている。その一方で、昨年新たに生まれた子どもは、市人口のわずか0.4パーセント、44人に過ぎない。65歳以上の高齢化率はさらに上昇し、全国の市のなかで最も高い42パーセントにも達している。流出はさらに速度を上げるかも知れない。
 
市は財政破たんから、公衆浴場、トイレ、図書館、支所、体育館など多くの公共施設を閉鎖した。だが、存続させた施設も、もともと古い建物が多く、老朽化が進み、3月には唯一市内に残したプールである屋内プールの屋根が崩落。市内には学校プールも一つもなくなったとあって、今夏、子どもたちは隣の町に行かざるを得ない。さらに、炭鉱で栄えた夕張は、全世帯の45パーセントが市営・道営住宅で暮らす特殊な町だが、旧炭鉱住宅を引き継いだ公営住宅は築30~60年と老朽化し、傷みが激しい。しかし、再建計画には修繕費も建て替え費も認められておらず、市民生活は厳しさを増している。
 
財政破たんした町というイメージの悪さからか、観光面でも落ち込みが顕著だ。スキーシーズンは何とか韓国、台湾などからの観光客を受け入れ、そこそこのにぎわいを見せたものの、夏の観光シーズンに入ってからは観光客の姿は少ない。観光運営会社が歴史村の石炭博物館、幸福の黄色いハンカチ想い出広場など観光施設を循環させているバスには、地元民から「空気を乗せて走っているだけ」との揶揄も聞かれる。破たんして以来、夕張では大相撲、コンサート、フォーラムなど様々な応援イベントが毎週のように相次いだ。これも今年に入ってからは大幅に減った。「2年もしたら、全国の人にも忘れられるのではないか」との市民の心配が現実化している。

■進まぬ企業誘致
財政再建団体になってから初当選した民間出身の藤倉肇市長は、企業誘致を公約に掲げた。しかし、誘致できた企業はこれまで1社もない。土地や人件費がいくら安くても、経営者はともかく、全国最低の行政サービス、最大の住民負担の町にあえてこようとする従業員はいないのが現実だ。危機感を抱いた夕張商工会議所が先日打ち出したのは、なんと、高レベル放射線廃棄物の最終処分場施設、産業廃棄物処理施設、自衛隊テロ訓練場、刑務所など、いわゆる迷惑施設の誘致推進だった。これには、多くの市民があきれはて、怒った。市役所には、近隣の町からも抗議が相次いだ。昨年1年間で新築された住宅は、たったの1軒。公共工事も激減し、市の経済は先行きが見えない。市内の求人は、本採用がほとんどなく、大部分が臨時・アルバイト採用。給与は時給600円台とあって、とても子どもがいる家庭が生活できるレベルではない。

■矛盾する公共工事
そんな中で5月、シューパロダムの定礎式が市内で行われた。ダムは、治水、農業用水などの多目的ダムで、既存のダムの下に高さ110メートルの新ダムを建設し、シューパロ湖を拡大する。完成すれば、総貯水量4億2700立方メートルで日本最大級となり、2013年度の供用開始を目指している。しかし、本当に必要なのか疑問の声は強い。総工費は、計画当初より140億円増えて1611億円と試算されている。夕張市が返済する353億円の5倍近い数字だ。片方で借金返済に苦しみ、ダムには湯水のように税金を投入するという矛盾。道内ではいま、国土交通省北海道開発局があいつぐ談合疑惑から存続の危機に立たされているが、シューパロダム工事でも不透明な安値落札が相次ぎ、公取から指導されている。ダム工事はほとんどが市外の大手業者で、工事に伴う市への経済波及効果はわずかだ。完成に伴って夕張市へは年間2億円の固定資産税などが入るが、毎年返済する金額20億円前後の1割でしかない。

■再建は可能か
夕張市の再建は可能なのか。夕張に支局を開局し、地元に暮らしながら取材を始めて以来2年近く。いつも自問する問いだ。加速化する人口流出、高齢化などを考えると、大部分の市民と同じように、私も現在の再建計画の下での再建は無理ではないかというのが正直な実感だ。公共施設など建物・設備は老朽化するのが必然だ。市の収入は減るばかりなのに、補修修繕費は確実に増え続けていく。ところが、国主導の再建計画では公共施設の建て替え費用どころか修繕費すら認められていない。再建計画では施設面からも町を支えるのは難しくなっている。
 
そんな中で、353億円の返済を公約に掲げていた藤倉市長も、1年間じっくり見てきた直感として「市の体力では10年間で100億円の返済が限界」と、3月以来、マスコミや住民懇談会の席で訴え始めた。「再建計画が遂行できるというなら、国や道のご指導を仰ぎたい」とまで発言はエスカレートし、再建計画の実現の可能性に疑問を呈している。さらに、「市が財政破たんした最大の原因は国の石炭政策とその後の後始末」として、財政破たんに至った国や道の責任問題を強い調子で取り上げ始めている。国はこれにどう答えるのか。ただ無視して、再建計画の遂行を迫っていくのか。全国の危ない自治体への見せしめという考えを変えないのか。
 
■市役所の苦闘
 市役所職員数は現在、財政破たん前の半分以下の111人(消防を除く)にまで減っている。総務省などは、同規模自治体のレベルというが、老朽化した公営住宅や上下水道の補修、南北35キロにも伸びる街並み、厳しい冬の除排雪など仕事量は同一ではない。そんな中で、市職労が昨年度の勤務時間を集計したところ、過労死が心配される月100時間を超える残業をしていた職員が25人(27パーセント)いた。また、再建計画では人件費削減のために残業手当の上限を給与総額の2.5パーセントに設定しているが、この上限を超えて89人(96パーセント)もがサービス残業していた。
 
市には現在、応援のために総務省1人、北海道7人、東京都2人、民間銀行2人、愛知県春日井市1人の計13人が職員として派遣されている。難航する市再建の中で大きな戦力となっており、特に若手の都職員鈴木直道さん(27)らは役所の外にも出て、NPO夕張観光協会、地元の主婦らで作る夕張子ども文化の会「かぜちゃる」の活動などにも積極的に参加。先日開かれた「こどもの本フェスティバルinゆうばり」でも、舞台の演壇の出し入れなど力仕事をこなして主婦らから感謝された。15日から都庁で開かれる夕張市観光物産展でも、藤倉市長とともに夕張への支援を訴えることにしている。

■国の方針は
最近、市民からよく聞かれる。「353億円を返せないとなったら、どうなるのでしょうね」と。国は仕方なく、一部を肩代わりするのだろうか。それとも、すべて肩代わりして借金ゼロの状態にし、近隣の町と合併させるのだろうか。倒産した民間会社が再建できないなら、会社そのものを消滅させるしかない。しかし、夕張を解散させるわけにも、市民を強制的に市外に移住させるわけにもいかないのが現実だ。
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明確に転換した米国の対北路線  (丸山公紀)
 6月27日の新聞紙上は、一斉に米政府が北朝鮮に対するテ
ロ支援国家指定の解除を米議会に通告した報道が満載していた
が、わが国にとっては拉致問題の解決の大きな「圧力」の背景
がこの指定措置であっただけに国民全体が米国の裏切られたと
いう失望と怒りの感情で沸騰している。

 福田首相の態度も既述したように、半島での非核実現と並行
して拉致問題は解決できるという見解であるが、これは決定的
に誤った見通しであろう。何故ならば、何故、半島での非核化
を実現させねばならないのか言えば、当然、北が核保有を世界
に認知させ、さらに周辺国を恫喝しようとしている脅威の源泉
にあるからだ。

 北からの申告書には核計画については記されているものの、
核兵器の情報については除かれているというが、何のための申
告であるかわからないし、第一、その内容の評価、検証につい
て45日間の短期間の時間にできるものでもない。

 少なくとも手続き上、北は世界銀行などの国際金融機関から
の融資を受けることができるだけでなく、IMFや世銀への加盟
問題の際にも米国すら拒否することができなくなった正当性を
付与したことになる。さらに指定解除の動きの何か、フランス
に至っては北との外交を行う用意があると発言するなど、犯罪
国家への制裁は完全に薄められる動きも出てきている。

 米国は何故、テロ支援国家の指定解除をしようとしたのか、
まだ詳細はわからないが、敵国通商法の適用除外までしようと
することは、米国の対北路線が明確に転換したことを意味する
のではないか。同法は米国が1917年に制定した国内法で、輸出
入の他、外為取引、海外での資産移動などの規制、禁止を可能
にする内容で、北に対しては朝鮮戦争(1950~53年)当時に適
用され、法律に従って制裁がなされた敵対関係が解消されるこ
とを意味するのだ。

 米国は戦後の半島における「警察官」たる立場を完全に放棄
するとともに、力を背景とした「正義」の味方である立場を主
張することすら捨てようとしている。少なくとも指定解除の通
告は米国の国際的地位を低下させたと見ることができる。

 45日間の時間、日本政府に残された時間は僅かである。米国
への働きかけに全精力を傾けるべきではないのか。