分厚い社会投資で次世代の将来不安を取り除く(中川秀直=自民党元幹事長・衆議院議員)リベラルタイム | 日本のお姉さん

分厚い社会投資で次世代の将来不安を取り除く(中川秀直=自民党元幹事長・衆議院議員)リベラルタイム

ようちゃん、おすすめ記事。↓

▼分厚い社会投資で次世代の将来不安を取り除く(中川秀直=自民党元幹事長・衆議院議員)リベラルタイム8月号「TALKING」

景況感が一段と悪化している。そうしたなかで、消費税率議論が始まっている。中川秀直自民党元幹事長は増税論、官僚主導体制を
真っ向から否定し、将来も輝かしい日本の姿を目指している。いかなる方法論があるのだろうか

――六月四日の中川先生の勉強会では、議員が三十三人、代理出席の秘書が二十人も集まりましたね。
中川 派中派工作だなんて批判もありますが、心外です。本(同氏の近著『官僚国家の崩壊』)を使って勉強会をしようということで招集されたんです。実は私も呼ばれた方で、働きかけは何もしていません。それで行ってみたら「中川勉強会」だなんて紙がありましたが、呼んだ方も呼ばれた私も、他意はありません。この会合でも申しましたが、やはりいま消費税の引き上げはできません。

――「たばこと健康を考える議員連盟」を民主党の前原誠司副代表らと立ち上げられました。たばこを一箱一千円にして税収を増やすと。
中川 たぶん一千円にまでにはできませんが、健康社会のためにたばこ税を上げて喫煙者が排出権を払って、いまのように蔑視されずに吸えるようになればいいじゃないですか(笑) 消費税の増税はまだ先です。まずは無駄をなくすことと、デフレの解消が先でしょう。


社会投資国家に――いま日本の企業はどこも不況感が漂っています。不況の元凶とささやかれている改正建築基準法や改正貸金業法、金融商品取引法で政策的な齟齬があったとは思われませんか?
中川 それぞれ、運用上の問題があると指摘されています。何が問題なのか、きちんと検証をしなければいけません。さらに、官僚をはじめ、誰も結果責任をとっていないところにも、いまの仕組みに対する問題点があるんです。日本銀行の金融政策もそうですが、官僚、メディア、学界、経済界が一体となって「あなたの責任も追及しないから、私の責任も問わないでほしい」というのが現状です。それを解消するためには、人材を流動化しなければならない。古い省庁別のセクショナリズムはやめるべきです。

――公務員制度改革基本法は成立。しかし、民主党との妥協の中で思い通りにならなかった部分もありますか?
中川 それは逆ですね。民主党の強硬な姿勢のお陰で、与党案で足りなかったところが解消された部分もあります。それから天下り問題に関しては、まだまだスタート地点についたばかりです。各省庁別の天下りは禁止になったので、民間からの人材が欲しい人だけ内閣で世話をする、という法律です。公務員改革は、天下り防止は安倍晋三内閣の時に、相当進んだし、これからさらに実行していけばいいと思います。つまり、何歩も前進しているのです。

――ご著書でおっしゃっている名誉、権力、カネが鼎立する日本社会の伝統の復活はなぜ必要ですか?
中川 やはり必要なところに投資が行われるようにしないといけない。「権力を掌る政府」、「カネを儲ける市場」があって、その他に「おカネで買えない価値」、「損得を超えた価値」等、奉仕による「名誉」を得ることの価値を重んじる社会の創造が重要です。企業社会だけでなく、社会保障・社会福祉の部分でも同じですね。分厚い社会投資国家にしなければいけません。そのために、もう少し柔軟な仕組みにしなければなりません。

――やはり、資本制の社会は、右肩上がりでないといけませんよね。
中川 日本の場合は終戦前後にできた会社が、いまの大企業で、経済を支えています。アメリカ等は最近でも次々と新しい会社やグループができていますが、日本では最近の大企業ベンチャーといえるのは、ソフトバンクと楽天くらいじゃないでしょうか。日本特有の終身雇用というのは、ある意味で安定を与えるということ。しかし、それと年功序列の意味は全くのイコールではありません。年功序列を身分ではなく職業、年功給与から職能給にしなければなりません。日本はなんとなく身分のようになっていますが、それでは生産性はあがりません。

党を超越した旗が必要――日本の政治家は「大戦略」発信力が弱い?
中川 激しい競争の中を生き抜いてきた人には、自然と大戦略の感覚が身につきます。ですから、小選挙区制は、大戦略政治家を鍛え上げるのではないでしょうか。しかし、日本の政治家は、冷戦下や高度成長期に、大戦略や価値判断に基づく決断は必要ありませんでした。だから「結果責任」をともなう判断ができなくなってしまったんです。

――最近、小沢一郎民主党代表が「政権をとったら総理になる」といっていますが、どう思われますか。
中川 それは当然のことだと思います。政権交代を叫んでいる野党の党首が、選挙に勝ったのに総理にならないといったら、これは詐欺です。民主党は一気に支持を失うでしょう。本心でなりたいと思っていらっしゃるのかどうかわかりませんが、二大政党の大原則に小沢さんも気付かれたということでしょう。それで「総理にならない」といったら、国民は怒ります。ならない人が手を挙げちゃいけません。

――政界再編が話題にのぼります。
中川 政治の目標は、いまの世代より次の世代の方がもっとよくなる社会にすることです。永田町の足し算引き算で、政党のために政治をしたのでは、国民はついてきませんから。現状の世論調査を見ますと、国民は与党二割、野党二割くらいの支持模様で、中間の六割は自民党にも民主党にも飽き足らないというわけです。政治の世界だけでなく、官僚機構に、賛成の人も、反対の人もいるでしょう。やはりそういう意味で新しい価値観、価値体験にしっかり立脚した政策理論を掲げて、そこに人が集まる。政界再編のための再編ではなく、結果的に再編になるのが望ましい。何をするかを問うための再編成が必要ですね。
そのためには旗が必要です。小沢さんだってビジョン実現のために、政党再編をおやりになってきたんだろうと思います。しかし、何年か前に「いま私はどこの党かと秘書に聞く」という川柳ができるくらい、新しい政党が雨後の筍のようにできました。新党をつくるための新党運動ではなく、何をやるかが重要です。

――いままでの自民党はあまりビジョンを語らずにきたのでは? 旗が見えないと国民はついて行きません。
中川 自民党はもっと語らなくてはいけない。だから私は党を超越して、みんなで、一つの旗を用意しなくてはいけないと思っています。政党支持率は、NHKの調査(六月九日)だと、自民党・三二%対民主党・二三%です。ところが比例の投票先となると自民党が二六%で民主党が三五%。もうこんな状態になっています。ただ国民は移ろいやすいものですから、明日のことはわかりません。

議員も血を流す改革――会長を務められている、「外国人材交流推進議員連盟」で「人口の一〇%(約一千万人)を移民が占める『異民族共生国家』にする」とおっしゃられていますが、日系人を中心に受け入れる移民国家ではないんですよね。
中川 まず国際連合の移民の定義というのは、長期滞在や永住に限らず、生まれた国を一年でも離れて留学のような形で、というのも一つの短期移民です。二十一世紀は人口移動の時代です。オーストラリアのケビン・ラッド首相は、今年も短期やスキルや勉強のために数年間の居住、永住、合わせて二十五万人の移民を受け入れるといっています。カナダは永住移民が毎年二十五万人いるそうです。そうやって新しい国づくりをしていかないと、国が持ちません。生産年齢人口が、徐々に減少し、必要な生産者が足りなくなるのです。それは日本だけの問題ではなく、世界中がそういう意味で人口移動の世紀に入りました。移民を受け入れて生産年齢人口を増やさないと、社会が壊れるところが沢山あるんです。

――七十五歳以上の後期高齢者に、医療費を負担させないという国家戦略はとれませんか。
中川 魔法の杖はありませんからね(笑) 高齢者はどんどん増えて生産年齢人口は減ります。生産年齢人口が四千五百万人で、六十五歳以上が三千八百万人になっていくとしたら、高齢者の方に給付と負担のバランスを見て、一割は負担していただかないと立ち行かなくなります。今日もNHKで「社会保障財源、社会保障費用をまかなうための消費税引き上げは必要か」というアンケートがありました。賛成二一・八%、反対五一・〇%。もうそれこそ、役人の数も、公務員の数も、道州制も、根本から抜本改革しないと。公務員の数を減らすならば、議員は自分たちの削減を考えなくてはいけない。

――それは説得力がありますね。自分たちは別ではなく、国民と同じように自ら血を流すと、支持率も高まると思いますよ。
中川 支持率云々ではなく、国民が願っている方向に動かないといけませんから。メディアの影響もあるでしょうが、国民には長い間続いてきた、身内の共同体を優先するような仕組みに対する怒りがありますね。後期高齢者医療制度にしても年金問題にしても。国民は「お金だけの問題じゃない。いいかげんにしろ、バカにするな」ということですね。

――メディアも、とにかく批判するという「みのイズム」のようなところがありますよね。それがある程度の視聴率をとっていると聞くと、政治家としてはやはり意識しますか。
中川 もちろんそうですね。みのもんたさんの番組を意識するという以上に、国民の琴線に触れるような方向で答を出していく。そうして国がよくなる。このまま経済状況がよくならなければ、次の世代の方がはるかに将来不安になりますから。結婚する自信もない、子どもを育てる自信もない、ということになります。それを取り除いていかなければいけないということです。
リベラルタイム8月号「TALKING」