洞爺湖のドラマの裏に、マキャベリズムの中国外交、枕詞外交の日本(田村秀男)
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▼洞爺湖のドラマの裏に、マキャベリズムの中国外交、枕詞外交の日本(田村秀男)
「拉致」の言葉を宣言にいれるかどうかなんて実は意味がない。末尾に重要なメッセージを加えました。田村
国際政治経済学入門68 産経エクスプレス 7月5日付けから
7月7日に開幕する主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)の隠れた最大の議題は中国のサミット加盟問題である。これまでの準備会合で、日、米、英、独、仏、伊、加、露の8カ国(G8)グループに中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカの「新興経済国」5カ国を新規メンバーとするよう、英仏から提案があり、議題になる。日本政府は抵抗の構えを崩してはいない。「G8には成熟した先進民主主義国の集まりという基本的生い立ちがある。成り立ちに照らし合わせ、どういう国が適切かをメンバー国が合意の上で決めていく話だ」(町村信孝官房長官)という具合だ。背景には、メンバー拡大で「アジア唯一のサミット参加国」という地位と、その影響力が揺らぎかねないとの懸念がある。実際には「とりわけ中国はサミット正式メンバーに入れたくない」(政府関係者)と、中国に対する拒否反応がもっとも強い。
中国の参加については、昨年の主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)の際、安倍晋三首相(当時)が議長のメルケル独首相に対し、中国のサミットへの正式参加は容認できないと表明し、一応受け入れられた。ところが、サルコジ仏大統領は英国のブラウン首相を誘って、今回の提案で一歩も引かず、福田康夫首相は議題として受け入れざるをえなかった。「中国の加盟」提案の背景はいくつかある。例えば、数年後には中国の国内総生産(GDP)規模が日本を抜く。さらに、世界最大の二酸化炭素排出国である中国を抜きに8カ国サミットでは有効な地球温暖化防止対策を構築できない、などである。中国は輸出攻勢による巨額の貿易黒字を稼ぐという点でも、世界最大の問題大国であり、主要国国際協調の枠組みに加えたほうが世界のためになる、という言い分が欧州側にある。皮肉なことに民主主義の価値観を共有する日本は米国の同盟国であり、国際紛争も起こさない「問題小国」なのだが、「日本こそがアジアの代表」というその言い分はなぜか通らなくなっている。なぜか。
国際社会での日本の存在感の薄さとは裏腹に、中国は「よい意味」でも存在感を高めている。
最近、ノルウェーで開かれた「オスロ・フォーラム」は6年前にスタートした世界の紛争解決を話し合う国際会議で、世界中で紛争解決にかかわっているシニアレベルの実務者や政府関係者、専門家、さらに英国などの閣僚、欧米の政権トップのアドバイザーなどで構成されている。今回はイランのハタミ元大統領も出席、日本からも元国連事務次長の明石康特定非営利活動法人日本紛争予防センター会長らが参加した。会議筋によれば中東問題からイラン、ダルフール、ソマリア、ビルマ、アフガニスタンなど、広範な課題を議論したが、「アジアのパワーとしては中国一色で、日本という言葉さえ出てこなかった」という惨状だった。
中国からは、政府系の中国国際問題研究所の副所長で中国外務省の元高官ら二人が参加。ことし三月に中国外務省が主催して北京で、アジアでの紛争解決のための「アジア地域フォーラム」を開いた実績を誇らしげに報告した。「アジア地域フォーラム」はオスロ・フォーラムのアジア版で、オスロ・フォーラムを主催しているノルウェー政府は日本での開催も一時は検討したが、「日本だと、参加者が集まらない恐れがある」との理由で、北京に持っていかれた。今回のオスロ会議では「中国政府はアジア地域での討議に一層協力していく」と宣言し、会場に強い印象を与えたという。ミャンマーに関するセッションでは中国の話が注目の的になった半面で、日本の対応についての質問はゼロ。日本が巨大な復興支援を引き受けているアフガニスタンに関する討議でも、「日本という国名すら一度も出てこなかった」(会議参加者)。
中国はミャンマーの軍事政権と深い協力関係にあり、スーダンでのダルフール紛争と同じく、人権抑圧の政権に強く肩入れしていることは国際社会の非難の的になっている。また、中国自体、先のチベット暴動にみられるように、その人権無視の政策が一向に緩和していない。ところが、北朝鮮問題に関する六カ国協議の議長国としての役割が示すように、中国は「ならず者」国家を支援しつつ、他方では国際紛争の調停者として振舞い、「調停者」としての顔で国際会議をリードしているわけである。きれい事ではなくマキャベリズムが横行する国際政治の現実を中国は踏まえているのに比べ、「人権」「価値観の共有」という、聞こえはよいが紛争解決の枕言葉だけで対応するしかない日本。その差が、洞爺湖サミットで浮き彫りになりそうだ。 (特別記者・編集委員)
以下は、ブログならではの筆者のコメント。
マキャベリズムを「悪」だと道徳的に非難するのは構わないが、大人はそうしない。外交とは与えられた条件のもとで、国益なるものを最大限獲得することでしか歴史的評価を得られない。「たらちねの」言葉でおぼれても米国の庇護でG8の一員だと「ウインザー」という似非英国式で良い気になる日本は恐らく、それだけでもG8のメンバー失格だろう。米英と大陸欧州ロシアの歴史からしても、そのマキャベリズム巧緻は芸術的にすら思える。中国もまだその域にはるか及ばない。中国の上前をはねるのが、いる。どこのだれか。ブッシュもコンドリーサもしょせんは捨てられる駒。明日付けの産経新聞朝刊で明らかにしよう。ナイーブに拉致での「ワシントンの裏切り」なんかを責めているようでは、マキャベリズムの世界の笑いものだ。
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▼ウラン濃縮不問の裏に対北朝鮮利権英米コネクション (田村秀男)
・【円ドル人民元】「うごめきだした対北朝鮮利権獲得」
米政府の対北朝鮮テロ支援国家指定解除決定を受けて、英国の ロンドンではウランを含む対北朝鮮の鉱山利権獲得を目指す投資ファンドが相次いで本格的な活動に入った。代表的なファンドは「朝鮮開発ファンド」と呼ば れ、米政府の解除の動きが表面化した昨年10月に資金規模を当初予定の500万ドルから1000万ドルへと倍増させた。別の投資家グループは対韓国株式投 資を目的とした「三王国韓国ヘッジファンド」の投資候補先を北朝鮮とのビジネス取引がある現代グループなど韓国企業に絞り、これら韓国企業と共同で対北朝鮮投資を目指す。国際金融筋によれば、これらのほかにも同じくロンドンや香港に本拠を置くいくつかの投資家グループが対北投資ファンドの設立を目指しているという。
ブッシュ米大統領は6月26日にテロ支援国家リストから北朝鮮を外すと発表した際、「北朝鮮の金融および外交的孤立にほとんど影響を及ぼさない」と語った。確かに米国は核実験関連など対北経済制裁を残しているが、テロ支援国家ではないとの政治的お墨付きが出たことで、米国の投資家はロンドン経由でファンドに参加しやすくなった。さらに金融取引規制や軍事転用可能物資の対北輸出規制が緩和されるし、経済支援や世界銀行など国際金融機関の対北融資にも道が開かれる。米国企業や個人が現地で上げた収益に対する税制も一般の外国並みになる。
今回の指定解除では、北朝鮮のウラン濃縮が「核申告」から除外され、事実上不問に付された。この動機は謎だが、金融面からみるとかなりはっきりする。朝鮮開発ファンドはもともと、米国を本拠にする計画で準備が進められていた。代表者の元英国海軍技術将校のコリン・マクアスキル氏は2001年9月、国務省東アジア・太平洋担当のケリー次官補(当時)から「米国法に合致すればファンドに反対しない」との言質を取り付けた。ところが、ファンド設立間際になっていた2002年10月、北朝鮮のウラン濃縮疑惑が表面化し、米国の投資家が手を引いたために、本拠をロンドンに移したいきさつがある。
北朝鮮はウランや金、チタンなど鉱物資源が豊富で、米国の穀物・金属商社カーギル、鉱山開発技術を持つエンジニアリング大手のベクテル、さらにゴールドマン・サックス、シティ・グループの金融大手などがウラン濃縮疑惑が表面化するまでは対北朝鮮投資に強い関心を寄せていた。
マクアスキル氏は冷戦の最中の1970年代末から一貫して故金日成国家主席および金正日労働党総書記直轄の「首領系企業」集団との鉱物取引にかかわってきた。ワシントンとも強力なネットワークを持ち、昨年のマカオの銀行「BDA」口座の北朝鮮資金凍結についても、米財務省に対し強く凍結解除を促した。
朝鮮開発ファンドには米国務省北朝鮮担当元高官のリン・ターク氏もアドバイザーとして参加している。ブッシュ政権によるウラン濃縮疑惑の棚上げは、平壌・ロンドン・ワシントン・の三角コネクションを復活させ、北朝鮮のウラン資源利権獲得で米英が先行する道筋をつけたようだ。これまでは中国系資本が北朝鮮の鉱山利権をほぼ独占してきたが、ウランは含まれていない。
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