日経平均株価が54年ぶりの12日連続安。いわゆる「じり貧相場」を読む。 (じじ放談) | 日本のお姉さん

日経平均株価が54年ぶりの12日連続安。いわゆる「じり貧相場」を読む。 (じじ放談)

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▼日経平均株価が54年ぶりの12日連続安。いわゆる「じり貧相場」を読む。 (じじ放談)
54年ぶりという日経平均株価の連続安が続いているから、株を大量に保有している金融機関や年金等の機関投資家は膨大な含み損を抱えているのではないか。何を隠そう筆者も「観測気球」として残した1銘柄が30%も下落したから、相応の痛みは感じている。「年金基金の5兆数千億円に及ぶ含み損に比べるとマシか」と自分を慰めている訳なのだ。株価は売り手が多ければ下げるし、買い手が多ければ上げるという単純なゲームである。参加資格にも厳格な要件はないから一定の資金があれば誰でも参加できる。

(なぜ、株価は下げ続けているのか?)
1日に500円や1000円も急落する相場ならば、少額投資家である大衆は「狼狽売り」するか、我慢して「反騰を待つ」かのどちらかを選択する。あわてて損切りしたところ、売った値段を底値として反騰することもあるから「しまった」と悔やむこともある。急落→反騰相場は売り手も多いが買い手も多いから場が賑わう。出来高も膨らむ。日経平均が54年ぶりの「12日間連続安」という相場は、典型的な「じり貧相場」といってよい。売り手並びに潜在的な売り手の軍勢が巨大なのに、買い手の軍勢は寡兵であるから、どうしても「じり貧相場」にならざるを得ない。売り手の大軍には「1円でも高く」「損害は1円でも少なく」という心理が働くから無理して売ってこない。相場を暴落させると損が膨らむから、少しづつ「売り」を出す。買い手が少ない分売り手も「少しづつ慎重に」売ってくる。買い手が寡兵である理由は、米国発金融危機の底が見えないこと、最大の消費国である米国の実体経済が悪化し消費が大きく減退し始めたこと並びに原油等商品価格の急騰による世界的インフレ懸念が強く、企業の業績が停滞又は下降すると想定されることである。業績悪化が予想される会社の株を購入する意欲がわかないのだ。つまり、投資家が世界的スタグフレーションを警戒しているから買い手が増えない。株に向かっていた資金はタンス預金されるか、銀行の普通預金口座に還流する。賢い資金は、債権か金(きん)等の現物に向かっているかもしれぬ。「底値で株を買いたい」と狙っている個人は、株式市場の外側から情勢を観望し「様子見」を決め込んでいる。「じり貧相場」の厄介な点は「自立反発」が起きない点にある。我慢して株を持ち続けていると「含み損」が膨らむ。「我慢すればするほど含み損が膨らむ」という構造であるから、素人だけでなく玄人筋も泣く。

(原油を初めとする商品価格が高騰するインフレの脅威)
我が国のバブルは「土地と株の急騰」が主役であった。我々庶民は損得に無関係な安全地帯にいた。もっとも、バブルの最盛期に借金して住宅を購入した個人は不運であったが、多くの庶民は、手が届かないほど高騰した住宅価格を眺めるだけで手も足も出なかった。結果から見るとこれが幸いした。商品価格の高騰に起因するインフレは、庶民の生活を直撃する。「商売できない事業者」や「生活できない庶民」が続出する。韓国やフランスでは、燃料費の高騰に悲鳴を上げたトラック運転手がストを行った。我が国や台湾では「遠洋漁業者が燃料代の高騰で採算がとれない」として休漁した。ハイオクガソリンも1リットル190円を超えた。今後、1バーレル200ドルともなれば、1リットルが300円時代となるかもしれぬ。月間100リットルを購入するならばガソリン代だけで3万円もかかる。エライことになった。ガソリン代だけでなく、食料品やあらゆる生活必需品が高騰する。世界各国の民衆は生活水準を切り下げ、倹約に努めるが物価高騰の津波には勝てない。どんなに倹約しても「食えない」階層が増える。暴動も多発する。治安も乱れる。米国の自動車販売が二桁の減少となった。燃費のよいトヨタ車やホンダ車の売れ行きも低迷している。燃費の悪い大型車を製造しているフォードやGMは大幅な減益に陥り、大幅な減産と人員整理に追い込まれている。数日前の日本経済新聞は「GMは時価総額でマツダに並んだ」という記事を掲載していた。米国自動車業界の雄GMがマツダと同じ値段だというからびっくりする。将来の業績向上が見込めず、かつ退職者年金などの特別出費が増える等の事情から「数年以内にGMが倒産する確率は70%である」と評価される有様である。20世紀、米国経済の象徴であったGMの株が「ぼろ株」になってしまった。「栄華盛衰は世の習い」とはいうものの、現実の厳しさに驚くばかりである。GMやフォードという世界的企業の株が「紙切れになる」おそれがあるから、投資家が株投資に慎重な姿勢を示すのはやむをえない。株は会社を所有する権利書というべきであるから、会社が倒産すれば「紙切れ」となる。逆に、会社が発展すれば、株価は上がり投資家の儲けが膨らむ。

(じり貧相場はいつまで続くか?)
米国の住宅バブル崩壊と金融危機は未だ終着駅が見えない。実体経済の失速はこれからが本番であろう。景気は益々悪化し、物価は上がる。典型的なスタグフレーションの暗雲が世界を覆い始める。世界恐慌が懸念される事態となる。世界の同時株安。米国を初め、中国・イギリス・スペインなどの資産バブルが崩壊し始めた。結果、世界経済は短くても数年は大きく減速するのではなかろうか。素人の直観ではあるが、そんな気がする。書店の株式関連コーナーには、なお株売買関連の書籍が並んでいる。なお、投資家に余力がある証拠かもしれぬ。2002年末から2003年初め頃、つまり日経平均が8000円を割れを起こした時期、書店の株式コーナーは縮小され、閑散としていた。誰も株に関心を持たなかった。「じり貧相場」で投資家は「屍累々」になっていたのかもしれぬ。企業倒産が相次ぎ、世情が不安定になり、株の話題に誰も関心を持たなくなった時、おそらく株は「大底」をつける。先見性のある投資家が「こっそり仕込む」はずだ。我々も理屈では分かっている。庶民の悲しい性(さが)として「分かっちゃいるけど・・」ということなのだ。つまり、行動が伴わないのだ。株で利益を上げるものと我々庶民の違いは、「考えたことを、信念を持って行動できるか否か」ということではなかろうか。株長者に特別優れた資質がある訳ではない。「考えた通り行動できる」という常識外れの性格行動傾向を有しているに過ぎない。この一歩の差が「億万長者」と一般大衆を分ける。

(不景気の物価高をどうしのぐか?)
相場を張る志を持った人間であれば、いかに生活が苦しくとも「投資用のタネ銭」は残しておくべきだろう。チャンスは必ず巡ってくる。「明けない夜はない」のと同じように、人類がまもなく滅亡する訳ではない。生きるものはすべて「死と再生」を繰り返す。世界経済も同じである。大不況が永遠に続くものでもない。大不況が一定期間続けば、新しいパラダイムが始まる。資源高騰で潤っている資源国が窮乏し、資源がないといわれる技術立国日本が復活再生する可能性だって否定できない。大いにあり得る。我が国を代表する多国籍企業キャノンが工場を国内に回帰させ始めた。水と自然に恵まれ、労働争議もなく、従業員の定着率も高い日本人の高度な無形文化財に経済価値を認めたということであろう。

これまで企業は「労賃が安い」とか、「消費地に近い」とかの一過性の利益を求めて海外に流出した。多国籍企業キャノンはようやく「日本民族・日本国家が持つ安定した政治システムと整備されたインフラの重要性」並びに「職能に生きがいを見出す日本人の特性という無形文化財」が、企業が永続して発展できる基礎であると気づいたのではあるまいか。目先の利得ではなく、企業を長期的に発展させるためには日本という土壌が最良の環境であると考えたのではなかろうか。さすがキャノンといっておきたい。日経平均が大底をつけたならば「キャノンは狙い目」かもしれぬ。密かに動向を注視してみたい。