アフガンには自衛隊を派遣すべきではない。(じじ放談) | 日本のお姉さん

アフガンには自衛隊を派遣すべきではない。(じじ放談)

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▼ペシャワール会中村哲医師のアフガン・パキスタン現況報告を読み解く。アフガンには自衛隊を派遣すべきではない。(じじ放談)
我が国のメディアはパキスタンやアフガニスタンの現況を報道することはほとんどないから、現地で医療や水路建設などのボランティア活動に従事しているNGOの報告は貴重な情報である。ペシャワール会報No.96号(2008.6.25発行)の巻頭文「自立定着村の創設に向けて」と題する中村哲医師の現地報告から、アフガニスタン並びにパキスタンの最新情報を紹介し、現地の情勢がどのような状態であるのかを検討してみたい。

中村哲は2007年度の(活動)概況と題する中で、現地情勢を以下1,2,3,4,5,6,7のとおり報告している。(抜粋)
(アフガニスタン情勢について)
1.アフガンでは欧米軍が7万人に増派されて戦火は泥沼状態となり無政府状態が急速に広がった。08年初頭に発表された米情報部の報告でさえ、「政府支配地域は30%」としている。農村部で外国軍とその協力者が安全でいられる地域は、もはや消滅しつつある。アフガン東部で米軍の協力者として振舞ってきたパシャイ民族系の軍閥たちも、タリバン勢との妥協の道を探っているといわれる。多くの地域行政の末端ではタリバン勢力の参加なしには秩序が保たれなくなっている。

2.カブールでの復興劇をよそに、東部・南部のパシュトゥン人の地域は、無政府状態に拍車がかかり、パキスタンに隣接するパクティア、パクティカ、ザーブル、二ングラハル、クナールらの諸州では、餓えた数百万の民衆の怒りが暴発寸前だと誰もが見ている。アフガンの民衆にとって政情以上に脅威なのは、大干ばつによる食糧不足である。これに世界的な食糧危機が重なり、イランやパキスタンからの小麦輸入が一時停止した。この食糧不足が容易に暴動に発展し、収拾のつかぬ事態になることは十分予測される。

3.農村を基盤とするタリバン側も、現在のところ混乱を望まず「外国軍とその同調者を標的とする」と宣言、自重していると思われる。国連組織さえ(欧米軍の)手先としてしばしば住民から襲撃されている。

4.4月。カブール市内大統領官邸前でのカルザイ大統領暗殺未遂事件、5月。イスラマバードのデンマーク大使館が爆破された。外国兵への襲撃と死亡は、過去6年間で最高に達することは確実視されている。首都カブールを一歩離れると、全土でイスラム主義勢力への支持が圧倒的であることは知られてよい。

5.6月「日本軍派遣検討」の報が伝えられるや、身辺に危機を感じるようになった。日本が兵力を派遣すれば、我がペシャワール会医療サービスは、邦人ワーカーの生命を守るために、活動を一時停止する。私たちはアフガン人が「故郷を荒らす日本兵」を攻撃するのを止めることができない。これが冷厳な現実である。

パシュトゥン人を主体とするタリバンは、農村部を中心に国土の大半を支配地に置きつつあるとのことである。他の部族の軍閥とも連携を強めている由で、毛沢東のいう「農村から都市を包囲する」という戦術と同じだ。タリバンの目下の戦術は「外国軍とその協力者を標的にする」というもので、一種の消耗作戦といえる。徐々に敵の力をそぐ狙いであろう。自爆テロや待ち伏せ攻撃を主体としたゲリラ戦だ。最先端兵器で武装した米英軍と正面衝突しても勝てる可能性はゼロであるから「持久戦」を展開しているのだろう。

だが民衆にとっては相次ぐ戦乱と大干ばつが最大の問題であるという。外国からの食糧輸入が停止又は大きく減少すれば餓死者が続出する。無政府状態で治安が悪化しているというから、各地で暴動が多発しても不思議ではない。餓えた群衆が数十万・数百万単位で「外国の援助で潤っている首都カブール」になだれ込んでも不思議ではない。目下、米英軍を中心とする欧米軍は「タリバン掃討作戦」を中心にすえ、カルザイ大統領を中心とする傀儡政権の基盤固めを急いでいるが、餓えた数百万単位のアフガン国民の救済をどのように行うのか見えてこない。「戦争が忙しく、それどころではない」ということかもしれぬ。

我が福田内閣は「自衛隊という名の軍隊」をアフガンに派遣することを検討すると表明している。欧米と国連事務総長の強い要請を受け「先延ばしすることが困難になった」と理解しているのかもしれぬ。

日本軍をアフガンに派遣するのは、カルザイ傀儡政権を支え、英米軍を中心とする欧米諸国軍を後方支援する意味であるから、これと敵対しているタリバン側から見ると「日本軍は敵」とみなされる。中村哲が「医療・水路建設・農地造成活動を行っているNGO日本人現地スタッフがタリバンの標的となる」と危機感を抱くのは当然である。派遣される自衛隊諸君が標的になるだけではなく、アフガン在住の日本人が標的になると危惧しているのだ。中村哲はタリバン政権時代から、パキスタンのペシャワールにおいて長年、アフガン難民等の医療活動を行ってきた。その後、難民救済を目指して、アフガンでの井戸掘りや運河建設事業などのNGO活動に力を注いできた。米国のアフガン空爆以前、以後の庶民の生活を肌で感じてきた。当然、タリバン勢力との面識もあろうし、カルザイ政権側とも接触を保っているだろう。中村哲は民衆の側からアフガン戦争を見つめてきたであろうから、土着のタリバン側に同情的であっても責めることはできない。「戦火と大干ばつに苦しむ民衆側に立つ」中村哲は、反政府勢力タリバンとカルザイ政府との関係において微妙な立場にある。中村哲が報告する情報は、アフガンとパキスタンの現状を裏と表から見ているから貴重な情報である。

民主党小沢一郎は国連中心主義者であるから、当然にも「自衛隊のアフガン派遣に賛成する」とみなしてよい。それを見越した福田康夫が「自衛隊のアフガン派遣」を検討する旨表明した。筆者は自衛隊によるアフガン支援は西インド洋における給油・給水活動に止めるべきだと考えている。自衛隊をアフガンに派遣すれば、我が国も「欧米」と同様、タリバンの敵となる。ペシャワール会を初めとする民間援助団体(NGO)の活動が不可能となるだけではない。何よりも「イスラムの敵」とみなされる危険が高い。一度「イスラムの敵」となればこれを修復することは容易ではない。イスラム諸国との円満な商いに支障をきたす。我が国内で「自爆テロ」を仕掛けられる危険も高まる。

(パキスタン情勢について)
6.アフガンと隣接する北西辺境州とペシャワールでは、07年夏ワジりスタン、スワト、コハートなどで大規模な反乱が起きた。08年1月ペシャワール近郊で、政府も手をつけなかった一大麻薬組織がタリバン系組織によって壊滅させられ、多くの人々に歓迎された。無政府状態は政府や米軍ではなく、イスラム主義勢力の手によって収拾される勢いを見せている。ペシャワール市内は平穏を保っているが、郊外は既にタリバン勢力とその同調者によって実効支配されていることは知られてよい。

7.民衆の間では、アフガン・パキスタン共に、アラブ系団体に対する不信感が強い。「アルカイダと米軍の連携プレー」という噂まで横行している。(現地の民衆は)国際主義のアルカイダと徹底した土着主義のタリバン勢力では、かなり性質が異なると指摘している。

中村哲が「タリバン勢力」に親近感を感じているのが行間に滲んでいる。中村哲ほかペシャワール会は、米軍の空爆で負傷した人間を治療し、住む場所を追われた難民を支えるべく何千箇所に井戸を掘り、砂漠を農耕地とすべく運河を建設する支援活動を行ってきたから、無差別爆撃を行った米軍に対して好感を持てないのは自然である。ただし、中村哲が現地住民の声を借りて「タリバンと国際テロ組織アルカイダは体質が違う。タリバンはアラブ勢力とは体質が異なる」というレポートには違和感を感じる。タリバンはアルカイダを匿い続けたから米国の空爆を招いたのではなかったのか?さらに、パキスタン軍が首都近郊のイスラム神学校を武力制圧した直後、アルカイダが「ジハード(聖戦)」を宣言したことは有名である。確かに、欧米の工業系大学を卒業した英才の集団であるアルカイダと、土着のタリバンでは戦術も異なるであろう。だが両者は、反米という点で一致し協力し合ってきたのではなかったのか。アフガンではともかくパキスタンでは、近年、自爆テロが頻発しているが、これもアルカイダが実行したか又はアルカイダの手口をタリバン勢力が模倣したのではないかという疑念もわく。

中村哲が「現地住民はアルカイダとタリバンは違うと言っている」という背景は何かを検討してみたい。
(タリバンとアルカイダの意見対立が表面化したのか?)
アルカイダは世界中の米軍基地や米国大使館に攻撃を仕掛けている。9.11の何年も前から米国の施設や軍艦を攻撃している。最後が9.11、ハイジャックした旅客機による米国中枢部へのテロである。その経緯を概観すると、ブッシュの米国が「テロとの20年戦争に引きずり込まれた」といえなくもない。米国のアフガン・イラク戦争は、アルカイダの計画通りのシナリオといえなくもない。米国を中東の泥沼に引きづり込んで体力を消耗させる企てといえなくもない。そして、アルカイダの作戦計画通り、米国はアフガン・イラク戦争で国力を疲弊させている。駐留する米軍の士気は低く精神障害者も少なくないという。

我々はこれまで米国を戦争の主役とみなし「イラク・アフガン戦争の動機」をあれこれ憶測してきた。原油とリンクしたドル基軸通貨体制を守るためではないか?とか、中東の原油を抑える意図があったのではないか?とか、盟友であるイスラエルを守護するため、中東地域での米国の軍事力を誇示するためであるとか、いろいろ類推解釈を行ってきた。だが、アルカイダが仕掛けた罠に米国がハマったとすれば、イラク・アフガン戦争の風景は変わって見える。米国の短気で暴力的な体質を読み込んだアルカイダが周到に計画し練り上げた陰謀といってもよい。

アフガンのタリバン(イスラム神学校生徒)は、民族自決をめざす勢力である。米軍と戦争するのも、かって英国やソビエトと戦ったのも民族独立を意図したためであった。わざわざ英国やソビエト連邦に出かけて戦争を仕掛けた訳ではない。今回も、米国が攻撃し、傀儡政権を立ち上げたからやむを得ず戦争をしているといってもよい。大英帝国やソビエト軍と戦争したのと同じ構造である。アルカイダが米国を「不倶戴天の敵」とみなし、世界中で対米戦争(テロ)を展開しているのに対し、タリバンはアフガン並びにパキスタン国内において、欧米軍と戦争するだけである。戦争の目的自体が決定的に異なる。タリバンはアルカイダに対し「アフガンとパキスタンを対米戦争の道具に利用しているのではないか」と感じるはずだ。そして疑念を抱く。アルカイダは対米戦争を勝ち抜くために、世界中を犠牲にするつもりかもしれぬと。アフガンやパキスタンの民衆は民族の自決が悲願である。だが、彼らは米国との終りのない戦争を何十年も続ける気持はあるまい。米国を初めとする欧米軍がアフガンから撤退してくれたら目的は達成されるのだ。それ以上は望んではおるまい。最近、タリバンはアルカイダとの戦争目的の相違に気づき違和感を感じたのかもしれぬ。アルカイダとの同盟関係を破棄したのではあるまいか。又は破棄する決意を固めたのではなかろうか。これまで一心同体とみなされてきたタリバンとアルカイダについて中村哲は、民衆の声を代弁する形式をとって「国際主義のアルカイダ」「土着主義のタリバン」と説明した。中村哲は、タリバンとアルカイダの仲違いが決定的な段階を迎えたと示唆しているのではなかろうか。

(まとめ)
中村哲は「自衛隊がアフガンに派遣されれば、邦人ボランティアの身の安全が保障できないから、ペシャワール会は撤収する」と述べている。アフガンの民衆救済に半生を捧げてきた中村哲の苦渋の決断であろう。自衛隊をアフガンに派遣する件について、欧米とりわけ米国の強い要請があることは周知のとおりである。これまで我が国は、イラクに輸送機を派遣したり、西インド洋に給油・給水艦を派遣してそれなりに努力してきた。「紛争地域に自衛隊を派遣すれば憲法違反であるが、自衛隊を派遣する地域は紛争地域ではない(小泉)」という詭弁を弄してきた。

中村哲のレポートによるとタリバン勢力は「外国軍とその協力者に狙いを絞ってゲリラ戦を仕掛ける」戦術をとっているという。当然、自衛隊がアフガンに赴けばタリバンから狙われ戦闘を行うことも想定される。結果、自衛隊諸君の犠牲者が出るかもしれぬし、タリバンというイスラム教徒を殺害することになるかもしれぬ。欧米列強軍は相当苦戦しているから兵力不足を嘆いている。「猫の手」ならぬ戦争をしたことのない自衛隊にも援助要請が来ているということだろう。米国の大統領選挙は11月4日である。目下の形勢ではオバマが勝利する確率が高い。あわてて自衛隊をアフガンに派遣しなくとも、来年には米国が戦争終結に向けて動きだすかもしれぬ。

という訳で、「自衛隊をアフガンに派遣する件」については、次期通常国会で喧々諤々議論すればよい。ねじれ国会であるから「なかなか結論が出ない」と言っておけばよい。「米国やヨーロッパの要請に応えるべく努力しているのですが、御存知のとおり衆参がねじれておりますので。日銀副総裁の欠員補充もできない有様ですから」等といって、時間を稼げばよい。その内、米国の大統領選挙となるから、ブッシュも強気には出れまい。まして米国は我が国の反対を押し切って「北朝鮮に対するテロ支援国指定解除」を行う手続きを進めている。という理由で米国も、えらそうな立場はとれまい。米国が強引に要請してくるようであれば「貴国と同様、国内にいろいろな意見がありまして」と誤魔化しておけばよい。福田康夫は無原則的に妥協する性癖があるから油断できない。鵜の目鷹の目で監視し誤った決断をしないよう監督を強化すべきである。