・北の核に日本製「真空ポンプ」 キーワードは「台湾」だった (再掲)
ようちゃん、おすすめ記事↓産経・ ■【疑惑の濁流】1)
・北の核に日本製「真空ポンプ」 キーワードは「台湾」だった
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080628/crm0806281403017-n1.htm
国際原子力機関(IAEA)が昨年7月に実施した北朝鮮・寧辺(ニョンビョン)の核施設に対する査察で、厳重に輸出管理されているはずの日本製「高性能ポンプ」が見つかった。“危険な国家”には渡らないはずのシロモノなのに、北朝鮮は日本からの輸出規制が比較的緩い「台湾」を経由させて核関連物資を入手していた。日本を離れた途端、制御が効かなくなり、北に流出するさまざまな軍事転用物資。その先に見えてくるのは「核の闇市場」の恐怖である―。
日本製“危険物資”が北の核施設にあった
IAEAが寧辺の核施設で見つけた高性能真空ポンプは、神奈川県相模原市の機械装置メーカー「東京真空」製のものだった。北が何の用途で使用したかは不明だが、このポンプは汎用性が高く、核物質生成の過程で細かいチリやゴミを完全に排除する精密作業などに使うことができる。「核施設には必要不可欠な一品」(公安関係者)だという。信用調査機関によれば、東京真空は平成4年12月に創立。資本金は1000万円で、「小規模だが、東大をはじめとする公的研究機関のほか、日立製作所や日新製鋼、三菱重工業など電気、金属、機械、化学など国内基幹メーカーのほとんどすべてが顧客。技術力は一級の実力派企業」(信用調査筋)だ。その高性能ポンプを、東京都港区の貿易代理業「ナカノ・コーポレイション」が15年夏、約50万円で10台を台湾向けに輸出した。ナカノ・コーポレイションの台湾への輸出は、精密機械などを中心に20年以上続いており、今回のポンプと同様のものをこれまでにも名門の台北大学や医療機関などにも輸出してきた実績がある。IAEAからの連絡を受けた日本側は、神奈川県警が刑事事件として、このポンプがなぜ北に流出したかを捜査中だ。東京真空、ナカノ・コーポレイションとも、神奈川県警の事情聴取に「北朝鮮との貿易実績はない」と説明。これまでのところ、両社と北朝鮮との直接のつながりは見えてこない。「あれだけの専門技術と優良顧客を持っていながら、業務停止の危険を冒してまで北朝鮮に輸出するメリットはないはずだ」業界や経済産業省関係者らの多くもこうした見方を示す。日本企業の関与がないまま、結果的にポンプが北に持ち込まれた可能性も否定できない。知らないうちに、軍事転用可能なメード・イン・ジャパンの物資が北に流れている危険な現状。「台湾経由での北への物資流出の実態を解明したい。北は今後も台湾に狙いを定めて、組織的に拠点を構築する可能性が高い」公安筋はそう指摘する。
「日本」厳しく、「台湾」を“バイパス”に
「日本のハイテク製品や高度技術情報が台湾経由で北に渡っている実態について、警察当局が本格的に把握したのは“あの事件”がきっかけだった」 公安筋はこう話す。“あの事件”とは、平成18年8月に摘発された凍結乾燥機の不正輸出事件のことである。東京にある対北朝鮮貿易専門商社の代表を務めていた在日朝鮮人の男が、外為法で北朝鮮向けの輸出が規制されている「凍結乾燥機」を、無許可で台湾に輸出。物資は最終的に北朝鮮に渡っていたことを公安当局は確認した。「凍結乾燥機は、個体を急速に凍結、水分を取り除いて乾燥、保管する装置で、細菌培養など生物兵器の研究、開発に転用できる。北朝鮮には輸出できない貨物にリストアップされ、規制されている」(警察幹部)
経済産業省幹部もこう述懐する。
「通常の企業であれば、この手のきわどい貨物の輸出の際は、間違って輸出して業務停止などの行政処分を受けることを恐れ、何度も経産省に足を運んで輸出先の地域やスペック(仕様、規格)などを確認するものだが、この企業は最終荷受け地が北朝鮮であることを知りつつ、それを隠して輸出した確信犯だった」在日朝鮮人が多く住む日本はこれまで、北朝鮮にとって、思うままに物資調達できる拠点として機能してきた。しかし反テロ警戒網の強化で水際の取り締まりが厳しくなり、調達ラインは機能しづらくなってきた。そこで構築されたのが、台湾という“バイパス拠点”だとみるべきなのだ。
政府関係者が強調する。
「日朝間では輸出規制されている品物でも、日台間では規制されていないか、またはかなり緩いケースがあることを北は知っている。朝台貿易が増加し、輸出貨物が増大していることも、密輸には好都合なのだ」各国の治安機関は、台湾から中国を経由して北に向けた精密制御機械部品や銃、砲弾の加工に必要な精密旋盤などの不正輸出事件を確認している。北朝鮮は、こうした迂回輸出に利用する台湾企業にあらかじめ資本を注入していた。「北朝鮮は、台湾を調達拠点化するために大きな初期投資をしており、今後も台湾拠点工作から撤収しないとみるべきだ。今後、台湾が北への闇の物流拠点として本格的に機能し始める前に、包囲網を狭めていく必要がある」これが公安筋の見解だ。
北の手口は…そして「闇のネットワーク」に拡散か
こうした事態を懸念した台湾当局も、警戒を強めている。台湾の公安機関である法務部調査局は昨年、規制物資を北朝鮮に不正輸出していた台湾国内の企業を集中的に捜査。同4月には、精密工作機械の不正輸出を摘発した。
日本の警察関係者が言う。
「北朝鮮企業は北京の商談会や商品見本市など公開の場で台湾貿易会に接近する。不正輸出には雑貨や金属加工製品を積んで北朝鮮と台中港を頻繁に往復する北の貨物船を利用している。指定輸出先は、中国での北朝鮮工作拠点とみられている遼寧省瀋陽にある北朝鮮系企業だった」政府関係者も「北は約600万台湾ドルの代金の支払いにマカオの銀行口座からの国際送金を利用するなど、大がかりな舞台装置を用意していた。国家ぐるみで台湾の物資調達拠点化を進めていることがうかがえる」と指摘した。台湾で摘発された企業が輸出したのは、CNC(コンピューター数値制御式)工作機械。「ミサイル製造の多くの段階で不可欠な機械の1つ」(国内メーカー幹部)とされる。その最終的な荷受け先は、北朝鮮の軍需企業「リョンハ機械合弁」だった。さらに昨年11月には台湾当局が最も恐れていた事態が発覚する。台北市の貿易会社がウラン濃縮などに転用できる精密制御機械を、中国経由で北朝鮮に不正輸出していたのだ「北の核実験や新型弾道ミサイルの開発などから、台湾も欧米各国、日本に歩調を合わせて規制と取り締まりを強化していたが、巧妙な手口で流出を防げなかった」
在京の台湾関係者は悔しがる。
包囲網をかいくぐり、着々と軍事転用可能な物資を手に入れる北朝鮮。この現状は北の軍事力増強だけにとどまらない。公安関係者は危機感を募らせる。「北はシリアやイランなどと、核兵器、通常兵器での技術協力をしている可能性があり、そうした国にも北からさらに流れてゆく恐れがある」闇のネットワークを通じて、軍事関連物資や製造した兵器、技術を拡散させることで、北は膨大な外貨を獲得する。ネットワークには、国家を超えたテロリストや武装集団も含まれる。その最終地点にあるのが「核の闇市場」だ。=次回へ続く
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■【疑惑の濁流】2)
“核の闇市場”に出回る「日本製」 横流しする「北」 テロリストに渡ったら… http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080629/crm0806291511011-n1.htm
核計画の申告書を6カ国協議の議長国・中国に提出した見返りに、米国からテロ支援国家指定の解除手続き開始という譲歩を勝ち取った北朝鮮。その核開発に、日本から流出した技術や物資が使われていたことは「疑いようのない事実」(公安関係者)となっている。こうした物資は台湾を中心とした第三国を迂回するルートで北に渡るのが最近の主流。日本の安全保障を脅かす事態だが、脅威はそれだけにとどまらない。“危険な物資”は北からすでに「闇のネットワーク」に供給されていたのである-。
不正輸出品の行き先は「総書記直轄の軍事施設」
「台湾迂回ルート」の象徴的なケースがある。
平成18年8月、輸出規制されている凍結乾燥機が台湾経由で北朝鮮に不正輸出された事件だ。日本の警察当局はこの事件をきっかけに、台湾ルートの迂回輸出に着目する。日本の輸出元となった企業の代表者は「熱誠者」といわれる、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の熱心な活動家だった。活動家を摘発した警察当局は、押収した発注、受注関係書類や見積もり書、関係者の供述などを丹念に分析。凍結乾燥機のほかに、電気撹拌(かくはん)機やγ線測定器、CO2計測器、試薬なども北朝鮮に納品されていたことを確認した。北朝鮮で、これらの機器が設置されていたのは「烽火(ボンファ)診療所」だった。名は病院だが、この施設は一般の病院とはかけ離れた“裏の顔”を持つ。韓国情報機関関係者によれば、この施設は金正日総書記直轄の軍事研究施設なのだという。
生物兵器プラント計画! 日本の法は“ザル”に等しく…
「輸出済みの資材や装置で、『生物兵器プラント』を建設しようとしていた疑いが浮上した。規制貨物がやすやすと第3国を迂回して輸出されている事実に、警察は重大な危機意識を持った」捜査幹部はそう振り返る。この活動家は、この事件以前にも、ミサイルや、核開発に不可欠なステンレス鋼を北朝鮮に輸出していたことを、税関や警察当局は把握している。輸出先は、「核・生物・化学兵器の開発に関与している可能性がある」として、経済産業省がリストアップしている外国企業に該当する軍関連企業「リョンハップ・トレーディング・コーポレーション」だった。警察当局はこの輸出に関しても捜査したが、活動家が輸出したステンレス鋼の加工状態が、規制されている硬度を若干下回っていたため、このときは立件を見送ったという。ただ、「運び込んだ後に、北朝鮮で硬度を強化することはたやすい」(捜査関係者)といい、“武器商人”たちは、いとも簡単に軍事転用可能な物資を北朝鮮に持ち出している。日本の外為法が“ザル”である実態が浮かび上がる。
不正輸出→軍事転用→核、通常兵器→拡散
さらに深刻なのは、「日本からのハイテク物資が北朝鮮で軍事転用され、すでに核や高度な通常兵器となって拡散している可能性が強いことだ」と経産省幹部は指摘する。日本のハイテク物資や情報、技術が第3国を経由して北朝鮮に持ち込まれ、それが兵器となって世界に拡散する恐怖-。北朝鮮はすでに他国に通常兵器や核の技術協力を持ちかけていることを、各国の情報機関などは把握しているのだ。在京米筋が明かす。「ホルムズ海峡の北側のイラン領海内に小さな島がある。イランはその島にミサイルの発射ラウンチを備えた砲台を南側を向けて設置、海峡をいつでも封鎖できる態勢を維持している」衛星情報によれば、このミサイルは北朝鮮の中距離地対艦ミサイル「改良型シルクワーム」によく似ているという。
なぜイスラエルはシリアを空爆したか?
また在京米筋は、北朝鮮がブット政権下のパキスタンとの間で「ミサイル技術を供与する代わりに核開発の協力を受ける」という秘密の技術交換条約を結んだ可能性を指摘する。パキスタンの「核開発の父」と呼ばれたカーン博士を中心とする核の闇市場が、IAEAの調査によって判明し、各国の治安・捜査機関によって、関与した組織人物が摘発されたのは4年ほど前。パキスタンは「『核の闇市場』はすでに存在しない」と主張するが、その後も、ネットワークは消滅しておらず、武器商人らによる取引は秘密裏に行われているとの見方が有力だ。イスラエルは昨年9月、シリアの軍事施設を空爆、破壊した。イスラエルは長くこの事実を国際社会に認めなかったが今年2月、来日したオルメルト首相は福田康夫首相と会談した際、破壊した施設が、北朝鮮の技術支援で建設された核関連施設であることを、詳細な根拠を交えて伝えたという。「メード・イン・ノースコリアの兵器や核技術が『核の闇市場』に出回れば、イランやシリアだけでなく、テロリストの手にも渡る可能性が強まる。核技術の安全弁のメルトダウンという恐ろしい世界になる」在京米筋はそう警告している。
「核の闇市場」に出回るメード・イン・ジャパン…その裏には北の影
日本の物資が「核の闇市場」にすでに流出していることを彷彿させる事件もあった。日本の最先端の精密機器がリビア国内の核施設で、国際原子力機関(IAEA)の2003年から04年にかけての査察によって見つかったことがある。精密機器は「3次元測定機」で川崎市の世界的トップメーカー製だった。警察当局は、この測定機がシンガポール経由でマレーシアの現地法人に輸出されたものだったことを突き止めた。マレーシア行きの物資がなぜリビアにあったのか-?警察関係者によると、マレーシア現地法人は、測定機を同国内の別の精密機械メーカーに転売したが、このメーカーの役員には、ある「興味深い人物」(捜査関係者)が名を連ねていたのだ。その人物は「核の闇市場」ネットワークを構築したパキスタンの「核開発の父」、カーン博士の側近のスリランカ人だった。さらに、マレーシアには、台湾にあるような北朝鮮の貿易拠点もある。
「日本の高度技術製品が、絶対に流れてはいけない闇のネットワークに供給され始めている可能性があることに、背筋が凍る思いがした」政府関係者はこう振り返った。当時、リビアと同様に核の闇市場から物資を購入していた国々の中に、北朝鮮が入っていたと各国情報機関はみている。手に入れた軍事転用可能な物資や技術を「核の闇市場」に持ち込む。それは武器や兵器として製品化されていることもある。そうした物資を調達するために、絶え間なく「市場」に顔を出す。武器商人が暗躍するサークル。そのネットワークには常に北の影が透けて見えるのだ。
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