◎軍事情報 (【転載】日本を滅ぼす「プランC」の恐ろしさ)
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◎軍事情報 (【転載】日本を滅ぼす「プランC」の恐ろしさ)
◎ 日本を滅ぼす「プランC」の恐ろしさ ◎◎
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国際政策コラム<よむ地球きる世界>No.109
by 大礒正美(国際政治学者、シンクタンク大礒事務所代表)
平成20年6月26日
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国際政策コラム<よむ地球きる世界>No.109
by 大礒正美(国際政治学者、シンクタンク大礒事務所代表)
平成20年6月26日
日本を滅ぼす「プランC」の恐ろしさ
だいぶ昔のことだが、シンクタンク(頭脳戦車)の機能が本家アメリカと日本では全く違うと教えられた。どこが違うかというと、アメリカの場合、顧客に提出する報告書で提案を2つ示すが、日本では3つになるという。アメリカではA案とB案、日本ではA案、B案、その中間に位置するC案の3つ。そして、ここが肝心の所だが、日本の顧客は必ずC案を採用する。だから受注側は、はじめから顧客が採用することを前提としてC案を作成することになる。A案とB案は、C案を際だたせるための隠し味でしかない。
米国の場合、発注した役所や企業では、二者択一だから責任者はイヤが応でも決断をしなければならない。日本では折衷案を採用すれば誰も反対しないから、責任者は責任をとらなくて済む。
ここが、日米で文化的に深い断絶が存在するところである。よくハリウッド映画などで、「プランBに切り替えよう」などというセリフが出てくる。「プランC」は出てこない。
戦後の日本では、この特徴というか欠陥が国の根幹をグズグズに溶かしてきた、と言っても差し支えない。
非武装の状態をA案とすれば、独立回復と引き替えに要求された再軍備はB案だった。しかし我が国は中間のC案を採用した。現在もそのままの自衛隊である。そのため今でも国民の大多数が、日本をフツーの国だとは思っていない国の安全保障だけでなく、最近は国内の安全保障、すなわち司法の分野にまで、この危険な文化が浸透してきた。気がついていない人も多いと思われるので、2つの動きを挙げておこう。
第1は、来年5月から施行される裁判員制度である。
これは、日本の現状であるプロ裁判官のみによる裁判をA案とすると、米国のような陪審制度がB案ということになる。新たに始まる予定の裁判員制度は、どう見てもC案であるが、その必然性はよく分からない。
米国は実質的に無法の地を開拓していったという歴史から、裁判官も検事も「民」の仲間うちで、裁判自体も仲間内でまず「有罪」「非有罪」だけを決めるという伝統を維持している。すべての刑事犯は、仲間である陪審員によって裁かれる(弾劾だけ例外)。陪審裁判を「受ける権利」が憲法で保証されている。
日本は正反対の「お上」が裁く文化を維持しているから、陪審制度を受け入れにくい。最高裁も導入(復活)反対を貫いたと言われる。
それなら、はじめから現行A案を捨てるがB案はない、と誰もが知っていたわけだ。なんのことはない、その中間で反対の少ないゴチャ混ぜ案が実現してしまったということらしい。アメリカの陪審員は量刑に関わらないのに、日本では極刑を含む重罪犯の量刑に裁判員が加わることになった。
施行が来年に迫った今年になって、尻上がりに裁判員制度の問題点が取り沙汰されるようになってきた。なかには憲法違反ではないかという指摘もある。同じ司法制度改革に連なる法科大学院(ロースクール)も、制度設計の大ミスがハッキリしてきた。この続きに当たるのが第2の問題点である。すなわち、にわかに「本当の終身刑が必要」という主張がはびこりだしたことである。
現行の死刑がA案だとすると、死刑廃止がB案となる。廃止論者は世論の約2割と少数派だ。そこで、無期懲役との段差が大きすぎるのではないか、と言い出した。無期懲役といっても実際には仮釈放や、恩赦減刑といった規定に助けられ、長くても20数年で娑婆(しゃば)に戻ってくることはよく知られている。だから、本当に無期限、すなわち終身(死ぬまで)服役する刑を創れば、死刑判決が少なくなり、シロウトの裁判員も心穏やかに刑を下せるだろうというわけだ。
このC案は、C案であるが故に、日本人にアピールし易いという代物である。授業でも学生に聞くと、「真の終身刑」で死ぬまで罪を償わせる方がいいのではないか、という答えが半数以上に上る。しかし、ものの5分も解説すると、全員が自分の考えていたことが間違いだったと納得する。
日本では百人強、アメリカでは数千人いる死刑囚が、「真の終身刑」を設けたならば、遅かれ早かれ何倍の数に膨れあがるだろう。その全員が衣食住と医療を保証されて、事実上の終身特別待遇公務員になるのである。病気をしたら無料でどこまでも治療を施さないとならない。難病や臓器移植で莫大な治療費が税金でまかなわれることになる。移植の順番待ちはどうするのか。後期高齢受刑者にとっては天国みたいだろう。
教育を受けたいと希望したら、拒否することができない。アメリカでは、刑務所内で大学院教育を受け、弁護士資格をとって、自分で自分を弁護している囚人が現にいるそうだ。
つまり、教育は中学までとし、医療は一切施さない、心臓発作を起こしても放っておくというぐらいの制限を設けた上での終身刑でないと、国民の平均的な人生や余生を上回るような終身雇用公務員が、刑務所内に増えていくことになる。もちろん、そんな非人道的は制限は許されないとC案主張者は言うだろう。だから、自縄自縛。この案は実現不可能なのである。もともと、そんなうまいプランCがあるなら、とっくに世界の多くの国が採用しているはずだ。そこに気がつけば、C案文化がいかに日本を害しているかが分かるだろう。それにしても司法制度の耐震性劣化が気にかかる。
(おおいそ・まさよし 08/06/26)
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/5562/column/latest.html
●おき軍事の余話
< 戦後の日本では、この特徴というか欠陥が国の根幹をグズグズに溶かしてきた、と言っても差し支えない。>
まったく同感ですね。
時・処・位をわきまえない机上の空論のはびこりが、わが国を内部から腐らせています。国に仇なす悪意ある「C案」を見抜けない政治家も多すぎます。あと三十年ほど後の「新生日本」でこの論考を見た後輩は「あの腐った時代にも、えらい人はいたんだなあ」ということでしょう。(おき軍事)