漁民は外交無策の犠牲者 (田村秀男) 国の豊かさとか貧しさというものは外との関係で決まる (田村 | 日本のお姉さん

漁民は外交無策の犠牲者 (田村秀男) 国の豊かさとか貧しさというものは外との関係で決まる (田村

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▼漁民は外交無策の犠牲者 (田村秀男)
内閣府のエコノミストや評論家は価格転嫁ができないのはどうしようもない、日本の構造から来ているだと説明するだろう。つまり、基軸通貨ドルを持つ米国と欧州統一通貨「ユーロ」を持つ欧州は、自国通貨で輸出する。製品価格を引き上げさえすれば、損失はただちに相殺できる。日本の場合、ドル建てで貿易しており、ドル建て価格を引き上げるまでには海外市場だけに時間がかかる。そもそも韓国、台湾、中国などとの競合製品が多くて家電、自動車などメーカーは価格転嫁したがらない。それよりも、国内の方でパートの雇用により人件費を圧縮したり、系列や下請け部品メーカーを絞って購買コストを下げてしのぐ習性が身に付いている。そんなビジネス慣行を改めることは現実には不可能だ、と。

だが、そうだとして無為無策を決め込むのはまさしく政府の怠慢というものである。日本はあくまでも原材料高騰の被害者である。被害者を代表する日本の政府が被害者の体質がおかしいですから、原材料をつり上げる加害者側を不問に付すというなら、日本国民に対する裏切り行為ではないか。そんな政府はないほうがましだいうことになりやしないか。まともな「国益」意識を持つ政治家なら、あるいは敏腕な経営者なら、何もしないことを正当化するような説明は一蹴するはずである。すでに書いているように、政府は国益に立った外交の強い意思があれば、投機抑制を米英に実行させることができる。
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▼国の豊かさとか貧しさというものは外との関係で決まる (田村秀男)
【国際政治経済学入門66】なくせるか身元不明の投機資金 (配信元:sankei express 6月21日付け朝刊から)
記事本文
全国の小型イカ釣り漁船が6月18日午前、各地で一斉に休漁に入った。燃料価格の高騰で採算が悪化しており、小型漁船のイカ釣り漁業者の組織「全国いか釣漁業協議会」(全いか協)の要請に応じ、コスト増を小売価格に反映できない窮状を世論に訴える狙いからだという。その前日、福田康夫首相(71)は7月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)参加8カ国の外国通信社を相手に記者会見し、消費税率引き上げが不可避との認識を示した。

この2つの出来事は全く無縁のようだが、深い関連がある。その国の豊かさとか貧しさというものが外との関係で決まるという基本的な問題意識が今の日本の政治指導者には欠けているから、災厄から国民は逃げられない。昨年8月の米低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)危機勃発(ぼっぱつ)後の急激な石油・穀物相場の上昇以降、日本は10%超の消費税相当分を産油国などに払わされているのに、政府は無策。漁民は自衛手段をとるしかない。

被害者は漁民に限らないことを、首相のおひざ元の内閣府のデータが示している。内閣府が定期的に発表している「国民経済計算」によると、今年1~3月期には日本人1人当たり約4万5800円、年間にして約18万3000円の富が失われ海外に流出している。国全体では年率で23兆2765億円に上る。消費税1%は約2兆円。消費者は消費税11%分を外に払っている計算になる。

これは「交易損失」と呼ばれ、先進国の中でも日本は最悪の部類に入る。漁師さんも下町の豆腐屋さんも、またメーカーの多くは大手、中小、下請けを問わず全員が被害者である。価格を引き上げて消費者に転嫁すればよいというが、消費者も被害者になってしまう。要するに富の流出はおさまらない。ではどうすればよいか。負担増を解消することは困難としても、原油や穀物の価格上昇の行き過ぎを外交力により是正することはできる。

急ぐべきなのは、原油や穀物など商品相場高騰の元凶である投機の抑制である。「投機規制なんてとんでもない」とヘンリー・ポールソン米財務長官(62)は言うが欺瞞(ぎまん)に近い。簡単にできることは、原油や穀物などにして投機して値をつり上げている投資ファンド、年金ファンド、ヘッジファンド、さらにそのヘッジファンドに資金を流している金融機関の名前を公表することだ。名前が知られることで社会正義に反する行為にはブレーキがかかる。米国はすでにマネーの流れを把握するシステムを持ち、監視している。2001年9月の米中枢同時テロの1カ月後に制定された「愛国者法」である。その狙いはテロリストに資金が流れるのを防ぐためだが、監視当局は米国民、外国人を問わず米国の金融機関の口座を調べることができる。国際金融の仕組みはもちろん抜け穴だらけである。愛国者法のあと、正体を知られるのを恐れたアラブ産油国の王族も中国の国有企業もヘッジファンドもロンドンやカリブ海のタックスヘイブン(租税回避地)に名義上の本拠を移した。ロンドンには身元不明の資金があふれている。ロンドンでは国際金融に関するデータすら一切公表されない。投機者は名目だけロンドンを経由してニューヨークに投資する。

福田首相は洞爺湖で投機規制派のフランス、ドイツと組んで米、英を説き伏せ、少なくても商品投機の主犯たちの名前を公表することを宣言するだけで、投機熱はかなり冷やされるだろう。「アングロサクソン連合」には勝てない、とあきらめる向きもいるだろうが、米国の政治的潮流をみれば明らかに変化している。米民主党のバラク・オバマ大統領候補(46)にアドバイスしている民主党長老が東京に来たので会って聞いてみた。彼は米大手投資銀行の顧問を務めているが、こう言う。「オバマ候補は市場規制を考えている。市場が混乱して投機が横行するのを放任するような共和党の政策とは違う」と打ち明けた。国益を失っているのに何もしない日本は米国の新潮流からも取り残されるだろう。特別記者・編集委員 田村秀男)
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▼続「国の富と貧困」ーー「イナゴの群れ」(kachitasさん)が食い… (田村秀男)
なるほど、特定のファンドはイナゴの大群のようなもの。突如襲来しては、根こそぎ作物を食い荒らし、次へと移動して行く。食い荒らして自身は太るが、荒らされたほうには何も残らない。ファンドが手にした富は生産的な使われ方がされない、したがって生産性が向上しないから、世界全体としても貧しくなりかねない。消費にも回らないので景気をよくする効果もない。スミスや一般均衡理論、さらにケインズと近代経済学に思想的影響を与えたヴァンデビルの「蜂の寓話」が通用しない。
以上は、独立系M&A支援・助言専門会社の社長kachitasさんの以下のコメントから着想した次第
http://kachitas.iza.ne.jp/blog/entry/616950/

今日のコラム(国際政治経済学入門)で、田村秀男氏が触れている様に、ファンドの投機資金が、石油や食料に向けられ価格高騰を引き起こし、日本経済に悪影響を及ぼしています。仕事柄、多くの経営者とお会いしますが、運送コストの上昇や原材料コストの上昇が、企業経営に悪い影響を与えている印象を受けます。ドイツでは、ヘッジファンドを「イナゴの群れ」と呼び、資金の出所を明らかにしようとしていますが、わが国でも同調し、カネの出所をはっきりさせることに賛成です。そもそも、出所を隠し匿名に固執する事自体に、うさん臭いものを感じる人は多いでしょう。投資ファンドへ資金を出すのが悪いと言っているのではありません。堂々と正体を明かしてファンドへ資金を提供すれば済むことだと思います。税務当局に知られたり、表に出せない類のカネだから匿名に固執するのかもしれません。

M&Aに話を移すと、アメリカやイギリスでは、実業の空洞化が進み、軍事・防衛に関連する産業などを除けば、外資系になっている企業が多く見られます。この様に自国に実業が少なくなると、ファンドを組成し、実業企業の多い国(日本やドイツなど)にある企業を買収し、リストラ等を行って、短期の見せかけの利益を大きくした後で、その会社を転売して儲けることを考え付いたのでしょう。そのためには、買収防衛策も邪魔な存在でしょうし、株式の持ち合いも阻害要因になります。人々を賛同させるには「株主資本主義」が都合の良い教義です。これらの事も頭に入れながら、企業を売却・譲渡する方は、意思決定をすると良いと思います。意思決定を行うのに、知識が多すぎて困ることはありません。対日投資については、近日中のコラムで触れたいと思います。
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