日本国の研究 編集長 猪瀬直樹
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日本国の研究 編集長 猪瀬直樹
6月9日月曜日、猪瀬直樹は神戸国際会議場にて開催された国連の世界観光機関(UNWTO)主催の大都市観光国際会議に出席しました。
大都市観光国際会議は、アジア地域の大都市観光促進をテーマとして過去2回開催されており、一昨年の上海、昨年の釜山につづいて日本では初めての開催となりました。猪瀬直樹は2016年のオリンピック開催を目指す東京都の代表として、「水と緑と伝統の成熟都市を目指して」と題して講演を行いました。今週のメルマガは当日の講演録を特別配信します。
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「水と緑と伝統の成熟都市を目指して」
□■大都市観光国際会議
■□6月9日(月)13:55~14:15
□■神戸国際会議場にて
さきほど、新神戸に着きました。東京から新幹線で2時間50分ぐらいですけれども、たまたま、上りの電車がちょっと遅れまして、3分遅れたんですね。新幹線が3分遅れたって言うだけで、駅のアナウンスが大騒ぎです。3分も遅れてすいませんと言っていました。
我われ日本人というのは、かなり時間の精度について厳格であります。東京の話ですが、東京は、大体どこからでも10分くらい歩くと地下鉄の駅があります。それから、御存知のように、旧国鉄のJRはやはり鉄道網が発達しています。山手線は3分くらいの間隔でいつも走っています。2分、3分くらいです。新幹線も3分くらいですね。すごいですね。この山手線が環状運転を始めたのは実に1925年のことです。そのころの時刻表を見ますと、始発が4時過ぎなんですね。終電が1時過ぎ。つまり我われの鉄道技術というものは、明治時代に入ってきてほぼ全国ネットの鉄道網作ったんですけど、都市において80年も近く前から過密なダイヤを組んで、そういうソフトの技術を開発して、企業を運営したり、あるいは生活を維持したりしてきた。
●オリンピックを開催する世界的役割とは
ご承知のように、東京はオリンピック候補都市に、6月4日水曜日に決まりました。シカゴ、マドリード、リオデジャネイロ、東京の4都市なんですけれど。一体、オリンピックというものは何のためにやるのか、こういうことを考えてみると、東京は、今、オリンピックをやる、そういう任務というか、世界的役割があるんじゃないか。
1964年に東京でオリンピックが開かれました。高度経済成長にまい進する真っ只中でオリンピックをやった。首都高速道路ができました。併せていまお話した、新幹線もスタートしました。東京オリンピックをやってから、約半世紀。アジアでは、ソウルオリンピックが1988年にありました。それから、2008年、今年ですが、北京オリンピックがあります。東京、ソウル、北京のオリンピックは、発展途上国の進軍ラッパが鳴った中での、インフラの整備を含めて、経済成長の中のオリンピックです。しかし、これからは、ちょっと違うだろうと思います。2012年は、ロンドンのオリンピックです。先日、1月の末ですれども、スイスのダボスで、世界経済フォーラムが開かれまして、僕も参加しましたが、いろんなテーマがあるんですけども、僕の参加したセッションはスリムシティというセッションです。これは、メタボリックではない都市という意味です。
CO2を排出しているのは都市であります。地球温暖化の防止のために、どういう都市のあり方がいいのか。ロンドンでは、例えば、都心に車が入るときに、1800円くらい課税するわけです。ただし、電気自動車やプリウスといったようなハイブリッド車は通れます。逆に四輪駆動とか、スポーツカーは2倍取ります。こういう風なインセンティブとなる政策を打つことによって、都市に流入する車をできるだけ、制限するというか、CO2排出を制限する。これがロンドンのやり方でした。東京では、ディーゼル車の規制をやりました。石原慎太郎知事が黒い煤のようなものがはいったペットボトルを振って、ディーゼル車は規制をしてないとこれだけ排気ガスが出ている、と説明して、だいぶ東京の空気はきれいになりました。
東京がオリンピックをやる資格があるとしたら、成熟国家、つまり発展途上国型ではない、成熟国家の都市のあり方とか、生き方のモデルを示す。そういう意味で東京オリンピックはやっていかなければならない。
成熟国家のあり方というのは、排気ガスを減らす、あるいは、温暖化を防止するための様々な対策を講じる。具体的には、大規模事業所で数値目標を入れて、排出するガス規制、CO2規制をきちっとやる。今度、6月の議会で環境確保条例改正案を作って具体的に示す。あるいは、2020年までに、対2000年度比で25パーセントのCO2を削減する。こういう具体的なものを示していくことが必要である。数値目標をきちんと出して、それを実現していくという、そういう努力をすることで、先進国の成熟国家の都市モデルを築きあげていく。こういうことであります。
●世界に誇る東京の水道技術
それと、もう一つはですね、伝統を大事にするということです。東京は、江戸という名前で、日本の首都になったのは1600年です。それから、400年、東京は、もちろん過密な都市でした。江戸時代も人口が100万人くらいあって、当時としては、最大の過密都市でした。そういう中で、たとえば、水道をどういうふうに確保したかというと、上水道の川の流れの運河のようなものを作りまして、そして、最後は、木管で各家のちかくに全戸に配る、そういう水道をつくりました。極めて清潔な都市でありました。
現在、東京都の水はとてもきれいです。「東京水」という名前でペットボトルにして売っています。しかも、漏水率を極めて低く抑えました。かつて、東京の漏水率は20パーセントを超えていました。世界の大都市の漏水率は大体20~25パーセントくらい、水は漏れてたんですね。いま、東京の漏水率は3パーセントです。97パーセントきちんと漏れないで供給する体制になっています。もし普通の20パーセントだったらですね、漏水量は人口が250万人のローマの年間の水道使用量に当たるんです。そういう、漏水率の低さやいろいろ努力して、水と緑と環境都市というかたちで東京はこれから成熟していくということになると思います。
このあと、安藤忠雄さんが講演してくれますけれども、安藤忠雄さんのアイデアで東京の湾岸のエリアに「海の森」という公園を作っています。これゴミの埋立地です。ゴミの山です。そこに森を作ります。その森はちょうどイギリスのロンドンのハイドパークぐらいの大きさの森になります。そうすると海から流れてくる風が、高層ビルにぶつかったり、温暖化で、都市の排熱で、温度が上がってますから、ヒートアイランド現象が起きています。その「海の森」から風が流れてきて、都心に風が通り抜けて、東京の後背地である多摩地区は森ですから、その森の中に流れていく。こういうふうな新しい都市の考え方をしていく、ということが、東京が目指しているアイデアです。したがって、オリンピックも半径8キロ圏内で全部新しいものは作らない。一部つくりますけれども、なるべく、50年前のオリンピックの施設を使う。そして、今申し上げましたように湾岸エリアに森をつくって、そして、CO2を吸収し、澄んだ空気を東京の都心に流れ込むようにする。こういうことを考えているところです。
江戸時代から東京は様々な食文化、工芸の文化、いろんな文化があります。ご存知かも知れませんが、ミシュランガイド東京で、3つ星レストランが8、2つ星が25、1つ星が117、計150の店舗がミシュランガイド東京に載る栄誉がもたらされたんですけれど、我われのそういう繊細な感性を、この東京の都市の中で育む。外国の方々が、東京にいらっしゃって、おいしいものを食べていく。
あるいは、江戸文化があちこちに残っています。モダンな高層ビルと同時に神楽坂に、あるいは浅草に、古い建物が古い江戸時代の文化として残っています。そういう伝統にも接していただく。それから、新しいモダンな建物だけでなくて、昨日、残念なことがありましたが、秋葉原のような、そういうクールといわれている文化が次から次へと生まれてくる場所もあるわけです。
新宿にある東京都庁の45階の展望台はタダなんですけれども、200万人の人が毎年訪れます。僕も仕事で東京都庁に行くが、中国人、中国人といっても、香港の方や台湾の方たち、あるいは韓国の方たち、ほとんど外国人です。秋葉原もそうなんです。今、本当に外国の方々が東京ですごす時間を楽しんでいます。それから、秋葉原の新しい、電子機器、IT機器を買って、あるいは、古い街並みを歩いて、散策して、楽しんでおられるようです。
●羽田空港を国際化せよ
そこで、問題があります。海外からたくさんお客さんに来ていただくには、羽田空港を国際化して、できるだけ便利なかたちで利用していただくことが大事です。もちろん成田空港は国際空港であります。成田空港からは都心まで60キロ圏位です。ちょっと時間がかかってしまいます。羽田空港からは20分位で都心につきます。
したがって、成田空港が国際空港で、羽田空港は国内空港であるという、こういう従来型の分け方をしていては、海外からお客さんを迎えいれにくくなってしまいます。これからは考え方をちょっと変えていただく。羽田空港も国際空港としてですね、いま、韓国のソウル、中国の上海、あるいは北京へはいけるということで、一部国際便が解禁されています。さらにこの4月1日に香港へANAでいける。JALも、そう考えているということです。さらに、バンコク、シンガポール、ジャカルタ、羽田から直接いける。これが2010年に第4滑走路ができますので、そのときに、さらにそれは拡大していく、ということがほぼ決まりかけています。それから、深夜の時間帯に、さらにヨーロッパにもいける。ということで、羽田空港の国際化をできるだけ早くそして発着便数を増やして、外国のお客様に、より利用しやすい環境をつくっていくこともまた、東京の役割です。
国土交通省が、成田は国際、羽田は国内という役割分担に固執しています。観光庁もできるわけですから、そのへんもきちんと考えていただく、ということが大事ですね。それから、成田の国際線の便数を増やすということで、東京から成田まで、2010年に京成ライナーという電車が36分で東京から成田を結ぶ。そうしますと、成田からも東京にすぐ近くなるし、羽田もまた国際線でいく。
それから、米軍の横田基地が、東京の西部の方にある。ここも、軍民共用といって、民間が活用できれば、もっともっと、外国の方が日本に来易くなるんですね。羽田の場合は、全国の観光ブロックを結んでいますので、より、外国の方々が羽田を利用し、東京に寄り方々、ちがう日本のめずらしかったり、特徴があったり、歴史のある各地のまちに行くことができるという風になれば一番いいのではないかと思います。
これは、東京の都市としてのあり方が、モダニズムの建物が多くできるということではなくて、さきほどお話したように、安藤さんが「海の森」を作るということを提案してくれましたが、渋谷という若者の住む、渋谷の新しくできる地下鉄の駅の地下2階か3階ぐらいのところから青空が見えるんです。そういう、空気が外からふってくるような地下鉄を構想して、もうすぐ開業、これは安藤さんが後で詳しく説明していただけると思うんです。
それから、東京都の都心の、道路に並木がありますけれども、並木の本数がまだ少ないんですね。これをもっと密度を濃くして、並木のない道路に並木を作る。今50万本の並木がありますけれどもそれを100万本に倍増する。それから、小学校の校庭がまだ芝生でないところがいっぱいあるんですね。これを全部芝生にしていく。それからサッカー場があちこちにありますけれども、いわゆるグラウンドですね。これを500面くらい、緑を増やす。そういうことで、緑にあふれる、きれいな水、そして緑、そういう新しい都市をつくりCO2を削減する。そういう新しい都市をつくる中で、オリンピックが開かれる。
われわれの生活を豊かにするという意味での消費というものが普及しましたが、これから新しい生き方というか、新しいライフスタイルのモデルを、どうこれから、我われが生きていったらいいのかという、そういうことを考えるヒントになるようなオリンピックができればなと思います。
そういう意味で、2016年ですけれども、新しい目標というか、昔ながらの進軍ラッパが鳴るような発展途上国型の景気のいいものではない、静かでありながら、われわれの祖に持っている肉体というか、アスリートのそういう闘いというか、そういうものを静かに緑の溢れる中で、眺めていきたい。それも、ささやか理想かなというふうに思っている次第です。これからの日本の行方というか、それを東京がまずモデルとして、示していく必要がある。洞爺湖サミットが7月にありますけれども、国というのは、全体、動きが遅いですね。ですから、意思決定の早い都市が具体的なモデルをきちっとわかりやすく示していく。世界から観光客の方々に来ていただく。来ていただいて、少しでも参考にしていただく、そういうビジョンをもった都市として、東京はこれからありつづけたい、こういうふうに思っております。どうもご静聴ありがとうございます。
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*【ニュース】香港人が台湾で「釣魚台(尖閣)は中国領!」と叫ぶ
「台湾の声」
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香港の保釣(尖閣奪還)活動家7名が6月17日に台湾に到着した。もともと台湾の保釣グループと合流後、台北県の漁港から尖閣諸島(台湾名:釣魚台)へ向かうことになっていたが、台湾政府が強硬路線にブレーキをかける方針を示したため中止となった。
香港の同活動家らは翌18日に、台北市内の日本交流協会台北事務所前で尖閣問題に対する抗議活動を行い、日本国旗を焼くなどした。
台湾のテレビ「TVBS」の報道によると、同香港活動家らと同行した香港立法会の梁國雄議員は、「現在、大陸政府はまだ2000万の台湾同胞を代表できない時点では、台湾政府は当然独立した主権があり、日本と交渉できる」と発言していたが、その後、同日午後に台湾総統府に陳情に赴いた後、香港保釣活動家らは「釣魚台は中国のものだ! 打倒日本軍国主義!」などと叫び、尖閣諸島が中国(中華人民共和国)領であることをアピールした。
香港人が台湾でこのような活動を行うことを、馬英九政権は取り締まらないばかりか、反論のコメントも出さないのは、暗に支持しているからなのだろうか。
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【読者便り】台湾に害をもたらす反日行動
王 碧昭 (筑波大学教授)
拝啓
馬政権の過激な反日行動は既に日本の国立大学に悪影響を汲み出しました。今週、学内幾つの教授会、教務会議に出席したところ、日本人教授は学生達に「台湾に旅しないように」を通達することを決めようとしました。また、文科省もその意向がありそうと伺いました。
イランで誘拐された横浜国立大生の中村君と同様に、台湾で旅行したら、暴行や誘拐の恐れがあるのではないか、と危惧しています。教授陣によると、日本はこれまで、中国との付き合いに苦労していたが、最近はよくなると評価しつつあります。逆に、台湾の新政権の挙動に驚き、警戒し始めています。今後台湾留学生の受け入り数を減少しようとの考えもありうると、関係者がお知らせくれました。
個人の話で恐縮ですが、大学で十数年務めてきて、日本人同僚は台湾という国を興味を持つようになりました。近頃、大勢の同僚や知人が台湾に旅行に行ってきて、「また行きたい」と台湾のことを称賛してくれました。が、新政権は我々の努力を一夜でぶち壊れまして、無念残念です。