日本の財政は結局どうなのか?(上) (新世紀のビッグブラザーへ blog ) | 日本のお姉さん

日本の財政は結局どうなのか?(上) (新世紀のビッグブラザーへ blog )

ようちゃん、おすすめ記事。↓
▼日本の財政は結局どうなのか?(上) (新世紀のビッグブラザーへ blog )
●『衆院選「負け」覚悟の決断できるの?首相の消費税発言
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080617-00000965-san-pol
福田康夫首相が17日のインタビューで消費税率引き上げに言及したことは、今後の税制改正や自民党内での消費税論議に一石を投じそうだ。ただ、来年秋までにある衆院選を考えるとすぐには進められないだろうという冷めた見方もある。インタビューの途中、首相は唐突に「消費税が今5%なんです。欧州の国に比べると非常に低いんです」と、自ら消費税をめぐる話題を展開した。その後、首相官邸で記者団に対し「消費税を20%ぐらい取る国のメディアが大勢いたから、日本は5%でも国民皆保険で達成していることを理解してもらうつもりで言ったのだ」と解説した。しかし、少子高齢化が進む中で消費税率が5%のままだと日本の社会保障制度は破(は)綻(たん)しかねないことを強くにじませたともいえる。(後略)』

引用しておいて何ですが、実わたしはこの福田首相の消費税発言に関する記事は、まともに読んでいません。どう考えても財務諸表一つ読めないだろう人物の財政論評や、消費税に関するコメントには、全く興味が無いからです。逆に非常に興味が引かれたのは、今年の三月に内閣参事官、高橋洋一氏が出版した「さらば財務省! 官僚すべてを敵にした男の告白」です。この本の中に、日本の財政事情に関する非常に興味深い論述があるのです。元財務省勤務で内閣参事官である高橋氏ですから、当然ながら財務諸表、特に貸借対照表(バランス・シート)を読めるでしょう。
この本が出版されたのは三ヶ月前ですが、実はわたしが同書を購入したのは先週末です。以下、「さらば財務省!」の日本の財政危機に関する著述部分からの引用です。

『つまり、隠れた資産が膨大にあるなどとわかったら、増税が言い出せない。だから、資産は隠す-その一方で財務省が喧伝するのは、日本の財政危機だ。「日本は834兆円もの債務を抱えている。これはGDPの160%にも上る危機的数字だ」と国民の危機感を煽っている。しかし、これは財政タカ派の大増税キャンペーンの一環で、数字自体によく注意が必要だ。

財務省の主張する834兆円は「粗債務」で、国際的にしばしば使われている「純債務」ではない。粗債務は政府が持つ膨大な金融資産を差し引いていない。日本ほど政府が多額の資産を持っている国はなく、2005年末に発表された額では538兆円にも上る。それを粗債務から引くと、純債務は約300兆円まで減る。もちろん「粗債務」という概念も重要なので、いつもいろいろな指標で見なければいけない。(中略)
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既に財政赤字が騒がれていた2002年4月、アメリカの国債格付け会社によって日本国債の格付けが引き下げられた。慌てた財務省は、「日本は世界最大の貯蓄超過国であり、国債はほとんど国内で消化されている。また世界最大の経常収支黒字国であり、外貨準備高も世界最高である。」との意見書を格付け会社に送りつけた。つまり、「純債務で見れば日本は財政危機などではない」と財務省は主張したのだ。日銀と同様、国内向けのアナウンスと海外向けのアナウンスはまるで違うのである。

財務官僚を始めとする財政タカ派はこういった「増税ありき」の数字の操作はお得意で、財政タカ派から出てくるペーパーには数字のトリックが何箇所もある。だが、残念ながら日本のメディアは数字に弱いので、批判検討することなく、資料を鵜呑みにして報道してしまう。私は、財務省のいう財政危機は大げさだと思うが、さりとて安心していいとも思えない。本当に財政再建をしようと思えば、いいところも悪いところもすべてさらけ出して、国民みんなに共通認識を持ってもらうことが先決だ。-高橋洋一著 さらば財務省! 官僚すべてを敵にした男の告白 講談社 P192-P194』

わたしが日本の財政危機「説」について、高橋氏と全く同じ論調で批判を載せた「本当はヤバイ!韓国経済」を出版したのが、昨年(2007年)の六月。ちょうど一年前です。(ああ、ついに一年がたちました・・・。)ちなみに、わたしは高橋氏が拙著に刺激を受けたとか、そんな傲慢なことは露とも思っていませんし、言うつもりもありません。正しいデータを、正しい見方で分析すると、同じ結論を導けるということなのでしょう。ヤバ韓を書いたときにわたしが参考にした日本政府のバランスシートのデータも、2005年版だった記憶があります。
http://www.tek.co.jp/p/debt_time.html
のAJER「借金時計改良版」によると、日本政府の純債務は05年の300兆円から、既に230兆円にまで下落しています。主に日本政府の金融資産が610兆円にまで膨れ上がったせいです。(借金時計改良版の元となっている情報ソースは以下)

国の借金 
http://www.mof.go.jp/1c020.htm
国の金融資産 
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/h17-kaku/19annual-report-j.html
個人金融資産 
http://www.boj.or.jp/type/stat/dlong/sj/fy_stock/index.htm
GDP 
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/gaiyou.html#qe

以前(2008年4月19日)に「財務省の嘘と、メディアの罪 」を書いたときに、上記「借金時計改良版」についても解説しました。

http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/6829474.html  
▼財務省の嘘と、メディアの罪 (新世紀のビッグブラザー)
前略ーーー日本の場合、GDP成長率が債務増加率を上回っており、政府債務対GDP比率が減少を続けているわけです。
①金融資産が増加し、純債務が減少していっている。
②債務増加のペースをGDP成長率が上回り、政府債務対GDP比率が減少していっている。
この二つ、日本政府の債務問題を語るときには、決して無視してはいけない要因だと思いますが、財務省も日本のメディアもスルーして、「実質公債費比率が夕張を上回った!日本はもうおしまいだ!」「国民一人当たりの借金が○×円を越えた!日本はもうだめだ!」といった、所謂「日本ダメポ論」を叫び続けています。どこの世界に、「政府」の債務を「国民」で割り、「国民一人当たり!」などと騒ぎ立てるメディアがいるのでしょうか。その政府の「債務」の債権者は、一体誰だと思っているのでしょうか。(前にも書きましたが、債権者は日本国民です) どこの世界に、保有する資産の額を無視して、債務額だけを騒ぎ立てるメディアがいるのでしょうか。債務と資産で、何かお金の価値や種類が違ったりするのでしょうか?
財務省の場合は、「消費税を上げたい!」という最低な動機が見え隠れしていますが、メディアがこんな基礎的な統計さえ調べようとしない理由が分かりません。例えば企業を例に取ると、幾ら負債が増え続けていても、それ以上に売上や利益が伸びていれば、誰も心配しないでしょう。しかも、資産の方もどんどん増え続けており、資本の額(資産-負債)が増加していっている企業を、誰が心配するのでしょうか?借金は全て悪!と考えている人がいるとしたら、その人は資本主義をゼロから勉強し直した方がいいと思います。日本政府の金融資産が600兆円に迫り、純債務が凄い勢いで減少してる事実、及び日本政府の債務の対GDP比率が減少している事実。この二点を無視して「日本ダメポ論」をメディアが展開しているのなら、メディアは正しい情報を伝えていないという点で、日本国民を裏切っていることになります。もしもこの二点について把握していないのなら、メディアは能力が無いということになります。 前と同じフレーズを使わせて頂きますが、 果たして日本のメディアには、裏切り者と無能者と、どちらが多いのでしょうか。
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その後、4月24日のコメントで、わたしは「政府の巨額な資産について、喜ぶ喜ばないの問題ではないのです。政府の持つ資産を無視して、債務のみを取り上げて騒ぎ立てている財務省のやり方や、メディアの報道姿勢が問題なのです。まずは情報を全てオープンにしなければ、本当は何が問題なのかさえ分かりません。」と書きました。まさに高橋氏の言うとおり「本当に財政再建をしようと思えば、いいところも悪いところもすべてさらけ出して、国民みんなに共通認識を持ってもらうことが先決だ。」と思います。日本の財政が危機だとか、実は危機ではないとか、日本政府の借金が大きいとか、対GDP比では減っているとか、粗債務が巨額だとか、純債務が減っているとか、実はこれらは全て二次的な問題に過ぎないのです。最も重要なのは、財務省が国内と国外でダブルスタンダードを使い分け、国内では無知蒙昧なメディアと組んで「増税ありき」の結論を元に、消費税アップをゴリ押ししようとしていることなのです。

現時点での消費税のアップは、折角デフレを脱却し、名目成長率増加により財政再建が進みそうな日本国を、奈落の底に突き落とす可能性さえあると考えています。こと日本財政の問題については、財務省とメディアの罪は想像を絶するほどに重いです。とりあえずメディアは、バランスシート一つ読めない無学な記者に、財政問題の記事を書かせるのは止めて欲しいです。企業の財務諸表について、バランスシートの負債額のみに注目し、煽り立てる記事を書いた場合、その記者は解雇されるでしょう。なぜ国の財政の場合は負債のみに注目し、煽り立てるのか、論理的な説明をしてもらいたいものです。わたしが批判しているポイントさえ理解できないメディアは、「無知蒙昧で財務諸表の見方すら分からない愚かな自分たちに、せめてバランスシートの読み方だけでもご教授ください。」とメールしてください。懇切丁寧に教えて差し上げます。

ところで、それでは結局、日本の財政はどうなのか。そもそも財政に問題があるのか、ないのか? 問題があるとすれば、今後どうなるか、あるいはどうするべきなのか。 続きは明日。
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目を覚ませ、消費税10%相当以上の富が流出 (田村秀男)
米年金基金は商品投機で潤うのに、日本は商品高騰で巨額の損失、年金財源不足は消費税引き上げで、ということになる。消費税引き上げは不可避、でなくてもタバコ増税、なるほどそうだ。しかし、その前に国家としてするべきことがある。消費税10%相当以上の富が流出しているのに、何の危機感もない。まるで縦割り官僚の言いなりで、国として何を優先すべきか、福田首相も与野党も目を覚ませ。以下、産経朝刊1面6月18日から
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【経済が告げる】編集委員・田村秀男 「激震市場」の震源地は?
「あっと言う間に、大豆の値段が3倍になった。豆腐をつくって売るよりも、仕入れた大豆を売ったほうがもうかる」と近所の豆腐屋さんは自嘲(じちょう)気味である。同業者やスーパーと競争していて、値上げできない。手取りが減っても家族みんなで耐えるしかない。貧しくなる日本。メーカーは海外産の石油や穀物など原材料の値上がり価格分を転嫁できない。内閣府のデータから計算すると、今年1~3月期には日本人1人当たり約4万5800円、年間にして約18万3000円の富が失われ海外に流出している。これは「交易損失」と呼ばれ、先進国の中でも日本は最悪の部類に入る。
「それにしても犯人はだれ」と、豆腐屋さんは首をかしげる。「それとも直下型地震に見舞われたようなものですかね」
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なるほど、地震なら仕方ないか。確かに投機資金というマグマが商品市場というプレート(地球表層を形づくる厚さ100キロ内外の岩板)を突き動かし、先進国、発展途上国を問わず世界のあちこちで人々の生活を直撃し、苦しめている。いわば世界同時多発型地震である。自然現象の地震なら地殻変動を測定して、正確な震源地や規模、さらにその行方を突き止められる。ところが「市場激震」は原因究明すらままならない。

14日に閉幕した大阪市での主要国(G8)財務相会合では、投機資金が「元凶」とみるフランスなど欧州代表に対し、米国は「中国などの需要増が高騰の主因」と主張して譲らなかった。中国に代表される新興国の経済成長に伴う資源消費増はめざましい。例えば石油需要。自動車の普及台数は100世帯当たりで日本が116台なのに対し、人口10倍の中国はまだ4、5台にすぎない。今は世界の資源需要の中心が新興国にシフトする過渡期で「相場上昇は長期間続く」(丸紅経済研究所の柴田明夫所長)のは間違いない。だが、10カ月間で2倍という原油値上がりペースは異常だ。

米国は、実は世界の余剰資金のたまり場である。住宅バブルにひきつけられて米国に流れ込んだカネは、バブルが崩壊するとやはり同じドルで取引できる国際商品市場に資金を移してきた。ヘッジファンドやアラブ産油国や中国などの政府系ファンドも容易に稼げると判断したからだ。だが商品市場というものは証券市場と違って器が小さい。

米国には年間で2兆ドル以上の資金が流入しているのだが、ニューヨーク原油先物市場の取引規模は約1500億ドルにすぎない。おまけに米年金ファンドまでも商品投資の常連客である。米国の年金ファンドの資産規模は過去5年間2ケタ成長して2007年末で15兆ドルを超え、商品投資の割合を増やしている。そのわずか1%が原油先物市場に匹敵するのだから市場が沸き立つはずだ。米国は証券、不動産、商品と膨大な資金を循環させることで金融ビジネスの収益を稼ぎ、他方で商品相場の高騰のおかげで退職者の老後も安泰というわけなのだから、「投機」を非難するはずがない。一般の犯罪者に限らない。追及されないと社会に害をなす者は一層増長し、事態をますます悪化させる。

日本の政治指導者はワシントンの思惑など気にせず、「産油国への石油大幅増産要請」などないものねだりの議論にくみしてはならない。有権者の豆腐屋さんの素朴な疑問に答え、少なくても犯人の名前くらい明らかにすべきだ。(たむら ひでお)