軍事情報別冊 (スペイン&ラテンアメリカ講座 (2)) | 日本のお姉さん

軍事情報別冊 (スペイン&ラテンアメリカ講座 (2))

軍事情報別冊 (スペイン&ラテンアメリカ講座 (2))
   ~戦略・情報・兵法・地政学・言語・社会などから見る~
平成20年(2008年) 6月19日
┏【目次】───────────────────☆
┃  ☆ ご案内(エンリケ航海王子)
┃  ☆【第2講】 16世紀のスペイン情勢について
┃  ☆ 広告に関するご案内
┃  ☆発行:おきらく軍事研究会
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
◎◎◎ 【第2講】16世紀のスペイン情勢について   ◎◎◎
孫子塾副塾長・孫子塾関西支部長
同志社大学/京都外大・スペイン語非常勤講師
米田 富彦
http://espania.okigunnji.com/2008/06/post-1.html

己を知ったら、彼のことを同時に知らねばなりません。
本講座が、スペインやラテンアメリカに関する知識から、読者の

皆さん個人、個人における知恵が導き出せるように意図され

設定されているものである以上、先ずは、より深くスペインの

ことを知るために、戦略(ストラテジー)的、情報(インテリ

ジェンス)的、そして、両者を統括している“兵法的な思考法
(脳の実践活用の方法論)”から述べ、読み取る力を増幅させ

て行きたいと思います。

読者の皆さんは、この講座で述べられている「戦う思考法」を

己の“血”と“肉”と“骨”と“命”と“魂”に染み込ませて行き、

他人のものではない自分自身のものにして行っていただく

ことを念じております。本当は、読者の皆さんには、顔つき

目つき雰囲気が今の自分とは違って来るようになっていただ
きたいと思っているのです。これぞ“財産”というものです。

読者の皆さん、そもそも、身の上に将に来らんとする問題を

解決しようとすること、即ち、“戦い”を踏まえて「知る」という

ことは、自分単体だけで終わる行為ではなく、自分を囲む

環境、敵そのもの、敵を囲む環境、敵の“敵”になる人・原因や

その活用条件の存在、利害関係の無い第三者と第三者を

囲む環境、それに問題の進展によっては、漁夫の利を手中に

することが可能な者の所在(有ることを前提として言う言葉が

所在です)、あるいは、とんだとぱっちりを浴びる可能性のある

者の有無(確立二分の一の話しになります)、そして、
己と彼との行為から出てくる様々なリアクションの数々...

即ち、凡そ、問題の処理に関わる「コンテクスト(前後関係の

考慮、文脈の認識のこと)」というものは、総合的に当事者

自身において意識されなければならないのです。

よって、このようなところから、現在、スペインに関する事柄

から開始されていますが、読者の皆さんは、本当は、日本の

ことも、スペイン以外の国々のことも、同時進行で観察して

行かねばならないということなのです。

読者の皆さんは、様々な事象から正しく、その“行間”を読み

取ることが求められているのです。そして、実践の段階では、

“点”や“線”や“面”に固執しないで、「システム」で対処する

こと...即ち、“立体”で対処することが求められるもので

あります。また、自分自身に存在する“我(エゴ)”からも、

あれこれ感情を刺激して自らの心を波立たせて止まない

“敵”からも、さらに取り巻く環境からも、もっと自由な思考で

刻一刻を対抗して行くことが必要となるものです。一つの問題

に対処して、恐怖と不安を感じるのも心の自由ならば、勇気と

悦楽を感じるのも心の自由です。心は、そのどちらにでも従う
ものです。この恐怖と勇気、苦痛と快楽を真ん中で統括して

いる存在、それが仏教的に表現するのならば“空”と言える

ものです。

完全無色透明で二つの相矛盾する事柄の真ん中にあって

何色にでもなる、有るけど無い、無いけど有る...ここから、

数字で言うと“2(恐怖/勇気、苦痛/快楽、己/彼、

味方/敵)”の平面ではなくて “3(所謂、弁証法的立場、

漢文で習った「中庸」の発想)”の立体になっているところを

感じ取ってください。

読者の皆さんは、今一度、上述のような言葉を噛みしめて、

納得し覚悟をしていただきたいと思います。人とは、心から

納得し、覚悟が決まって勇んでくれば、たとえ火の中、

水の中、どのような逆境でも、かつての神風特別攻撃隊や
硫黄島での激戦を戦った将兵(その人員構成、および、どの

ような方々が前線にいたのかを一度調べてみるとよく分かり

ます)のように生きることも死ぬことも超越し、後世に残る

“功(いさおし)”を成すものなのです。

この戦いを前提とした視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの

センスが冴えていない者、これが“素人”でもある訳ですが、

読者の皆さんは、段階を重ねて注意することで、段々と

“玄人”になって来るのです。今日は、無理でも、畳の目程の

たゆまぬ努力が必要です。

以上のような兵法的思考を踏まえて、ここでは、日本と

スペインとが出会った16世紀という時代の中で、先ず、

スペインはどのような立場と条件を有していた国であり、それ

から日本がどのような立場と条件を有していた国であった
のか、そして、そこから何が言えるのか...ということに

ついてお話しして行きたいと思います。

1.16世紀のスペイン情勢について
(1)スペインの国内・国際情勢

スペイン(Espan~a)とは、1469年、イベリア半島内で覇を唱え

ていた二大キリスト教勢力(共に王国)である、お菓子の

カステラの語源になったカスティリア王国のイサベル1世

(女王)とアラゴン王国のフェルナンド2世の国王同士の

婚姻を通じ、政治体制を統合一本化して、旧来の封建的政治

体制を乗り越えた先駆的な連合王国の「国家」として誕生

したものです。これが、途中、共和制や独裁制などがありま

したが、今日まで続いている「スペイン王国」の始まりです。

この誕生したスペイン王国とは、一つの組織として、他の

組織との“他流試合(ヘゲモニーとサバイバル)”を前提に

しているものです。かのマキアヴェッリは、『君主論』の中でも

当時のスペイン王国を時代を先取した一つの理想的な

存在として意見を述べているところです。


スペイン王国は、南スペイン・アンダルシア地方にグラナダ

王国(イスラム教徒のムーア人、即ち、ベルベル人の国)として

残存していた勢力をレコンキスタの総仕上げとして1492年に

制圧し、イベリア半島からのイスラム教徒たちを駆逐しました。

レコンキスタとは、“再征服”の意味で日本では「国土回復

運動」と訳されます。これは、711年にイスラム勢力によって

ゲルマン系のヴィシゴート王国(キリスト教勢力)が制圧され

た後、北部山間地域で旧ヴィシゴート系王族・貴族が722年の

“コバドンガの戦い”での戦勝以降、1492年まで約800年間

続いたキリスト教徒たちの不断の戦いです。

この1492年には、他にクリストファー・コロンブス(スペイン語

ではクリストーバル・コロン)が新大陸を発見し、そしてアント

ニオ・デ・ネブリーハによって最初のスペイン語文法の本、

即ち、『カスティリア語文法』の著作がなされました。これは、

その後、国家の概念と共に各国語の文法書の先駆けとなっ
た重要事件でもあります。
国家と言語は切っても切れない

関係があることは当然のことです。

また、在イベリア半島のユダヤ人たちにキリスト教徒になるか
国外退去かの選択を迫った年でもあります。この中で改宗

ユダヤ人がスペインでは興味深い存在となって行きます。

そして、国外退去のユダヤ人、これがスペイン系ユダヤ人と

してオスマン・トルコ領をはじめとして、北アフリカ、バル

カン半島、オランダ、イギリス、ドイツなどの様々な土地へと

移住しましたが、セファルディー・スペイン語という15世紀の

古風なスペイン語を現在も共同体単位で保持しています。

スペインの“ルネッサンス”とは、イタリアでのような建築、

美術、文学などの芸術的側面が主流であったというよりも、

「未知の世界に進出を開始すること」であって、それが当時の

大航海時代につながっています。当時の常識では、天動説

であり、海の彼方が崖になっていたり...というようなことを

真面目に信じていたのですから、そのような常識に対して

合理的に実際の事象について考えて、計画を立て、実行し

て成果を収めたことは、興味深いことでありましょう。

気分が重く、心も暗くなって、閉塞感に覆われ、誰が見ても

苦しみ悩んでいる...それは分かりました...では、この

ような時に木々の緑を見よ!花屋に咲き乱れる美しい花々を

見よ!小鳥はさえずり、雲は流れている!これが「現実」

なのです。頭で常識と思うのは、「貴方の勝手」であって、

「現実は頭で思っていることとは違う」のです。

どちらがホンモノなのでしょうか。
このような点に気がつくのがここでのミソというものです。

読者の皆さん、要するに、この言葉では言い切れないような

気づき、発想というものが、“軍事”に活用されると「軍事

革命」とか「革命的軍事改革(RMA)」のキッカケともなる

ものです。読者の皆さんにおいては、さしずめマーケティング

とかシェア争い、各種の民事訴訟の収め方、プレゼンテー

ションのテクニックなどとして弁えておかれると良いでしょう。

当時のスペインと日本(戦国期)に共通している点は、国際

舞台、国内舞台とそれぞれが演じる舞台に大小の違いこそ

あれ、置かれた立場が旧来の思想・環境・体制を温存・

維持・継続する「現状維持」より、イノベーション(革新)と

ブレイクスルー(突破躍進)を主旨とする「現状打破」が主流

であり、日本語的に表現すれば、「革新とは、組織の内部

から起こるものではなくて、外部から組織をぶっ壊す形で

行われる」という“非常識が常識”という、まさに常識に

「下克上」の態度を取っていたことでありましょう。

新興王国=”スペイン王国”の誕生は、欧州をはじめ、他の

全ての王国や共同体という既存勢力に対する「対抗勢力」の

誕生を意味するものであり、世界を舞台に覇権を競う力が

整えられて行ったということなのです。往々にして新興勢力の

出だしが良いのは、その繰り出してくる発想に対して、既存

勢力が速効的な対抗策を打てないこと(慮らざるところを攻め

られるから)にあり、そこから、新興勢力の取る新しい方式が

こちらに強制されることに一種の放心状態になってしまう

ところにあります。スペインとは当時、まさしく、そのような
新興勢力であったのでした。


また、イベリア半島という、地理的条件を有利に展開し、

当時としては、優勢な陸軍力と海軍力の保持に努めつつ

(これら両面の軍事力の充実については、当時は、スペイン

かオスマン・トルコぐらいであった)、国際政治上の主導権
を握る立場に至ったのです。ちなみに半島というのは、

三面が海に囲まれ、一方が陸地でつながっている地形

ですが、イタリア半島、ギリシア半島、イベリア半島、

または、北方のスカンディナヴィア半島など、かなり外向的な

民族集団がそれらを拠点として居住し活躍しています。即ち、

民族移動のような対外進出が特徴的なところです

ところで、スペインは、昔から文明の栄えて来た地中海での

覇権を巡り、他国と切磋琢磨して行きますが、この地中海と

地理の上で大変よく似たところがあるのを読者の皆さんは

ご存じでしょうか。ここも地中海世界のように交易が発達して、

文明が花咲いてもよかったのでしょう。が、そうはなりません

でした。

ヒントは、アジアにあります。

お分かりになられたでしょうか...実は、日本海がそうなの

です。いつも見ている地図を逆さまにしたりしながらご覧にな
ると、これは、とても興味深いことと思います。

では、話しをスペインに戻しましょう。当時のスペインは、

「政治-軍事-経済」の“トライアッド(三副対)”を他の欧州

地域に比べてより調和的・強力的に維持しつつ、文学・芸術

等、他の分野においても16世紀からの約150年間は、
長らく主導権を握り続けたのでした。スペインは、ルネッ

サンスを享受する側でなく、創出する側の“先進的立場”で

あったことが特徴とするべき点であると言えましょう。

この当時は最強国のスペインも、この15世紀から16世紀に

至る絶頂から、350年くらいのスパンで、夏の夕日のように

長い時間をかけながら、ゆっくり、ゆっくりと、所謂、“ヘタレの

国”に没落して行きますが、現在は、また上昇の方向に

あるのです。

ここも日本と比べてみると興味深いところでありましょう。

(つづく)
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