点滴作り置き(天国へのビザ)
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▼点滴作り置き(天国へのビザ)
Dr.I が ていねいに 解説しています ↓
点滴作り置きの問題、1 (06/13) http://kenkoubyoukinashi.blog36.fc2.com/blog-entry-328.html
「谷本整形」で、点滴をした後に具合が悪くなって、熱が出たり、吐き気がしたりして、死人まで出ている。っていう話題が、いろんなマスコミで報道されていますよね。
なんとなく、「点滴の作り置き」が諸悪の根元だ。みたいな報道がされていますけど。そもそも、「点滴の作り置き」っていうのがなんなのか。どこが悪いのか、っていうことが、一般の人にわかりやすく解説しているような報道がないように感じたので。ちょっと、ここで解説していきますね。
今回は、点滴を作り置きしたら、何が悪いのか。っていう事を中心に書いてきますけど。実は、本当の問題点というか、「何故、点滴を作り置きしなければならなかったのか。」っていう根本的な問題点に関しては、どのマスコミでも報道されていないんですよ。それに関しては、この後の記事にでも書いていくとして。今回は、その前に、問題点の整理として、「点滴の作り置き」についての解説をしていきます。昨日、今日の報道では「セラチア菌」という細菌が、血液の中から検出されたようなので。おそらく、「セラチア菌」という細菌が体の中に入って「敗血症、菌血症」となって、こういった症状が出たり、死人が出たのだと思われます。本題と離れちゃうので、今回は解説しませんけど。「セラチア菌」っていうのは、2002年だったかな。院内感染で問題になった細菌ですね。詳しくは、このサイトなんかも見てね!→ 『ドクトルアウンの気になる健康情報:セラチア菌』
まずは、基礎知識。
細菌っていうのは、はっきり言って、どこにでもいるもんなんですよ。特に、「手の平」っていうのは、いろんな所を触ったりするもんだから。とってもたくさんの細菌がいます。そいで、細菌が体の中(血液中)に入ったら、「敗血症、菌血症」っていう病気になって、高熱が出たりして大変な事になります。体の中に点滴を入れる時は、特にそうなんだけど。そうでなくても、病院のように、体が弱っていて、病気になりやすいような患者さんがたくさんいるような所では、きちんと「手洗い」をしなさい。っていう事は、医療関係者というか、一般の人達の中でも常識です。「手洗い」って言っても、水で簡単に洗っただけでは、爪やしわの中にいる細菌が、水分を吸収して手の表面に出てくるだけで、かえって細菌が多くなる、って事もあるので。石けん等を使って、時間をかけて正しい方法で手洗いをしないといけないんですけどね。正しい方法で、手洗いをすれば、手にいる細菌の数は、かなり減ります。ただし、細菌の数を「ゼロ」にする。っていう事は非常に難しいです。人間の体とか、生き物の場合はね。何百度っていう高温にする、とか。毒ガスみたいなガスを、人間にかけるわけにいかんでしょ。全ての細菌を殺して、ゼロにするとしたら、それをやらなきゃいけないんで。生き物に関しては、基本的には無理なんですわ。
仮に、一時的に細菌の数がゼロになったとしても、皮膚の汗腺から時間が経てば、細菌が出てくるし。どこかを触った瞬間に、そこにいる細菌が、手にくっついてしまいますからね。大事なのは、「細菌の数を減らす」っていう事です。あくまでも既存の報道からの情報ですが、「谷本整形」の話を見る限り。「清潔操作」っていうのが、非常に雑だったようですね。これは、点滴の作り置き、以前の問題です。2008年6月13日、毎日新聞の報道によると、
>院内感染対策の指針がなく、作り置きした薬剤を 事務机に置いたり、看護師がタオルを使い回しするなど、 ずさんな衛生管理が明らかになった。
>医療機関では手洗い後は紙タオルや、使い捨ての滅菌布を使うのが普通だが、布製タオルを掛けて看護師が共有使用していた。
という事だそうですから。手洗いをして、仮に手がきれいになっても、タオルを共有していますからね。このタオルには、細菌がたくさんいるんで。せっかく、手洗いをして手がきれいになったのに、また手に、たくさんの細菌が付いちゃうんですよ。これが、まず1つ目の問題点ですね。
そして、やっと本題。「点滴の作り置き」についてです。元々ある、薬とか点滴のセットに関しては。これは、「滅菌」といって細菌を殺していますから。細菌の数は「ゼロ」です。そいで、手で注射器を使って、薬を入れて。点滴のセットでつないで。患者さんに針を刺して、点滴をつないで、体の中に薬を入れていきます。問題になっているのは、「点滴の作り置き」ですから、これをどうやってやるのか。っていう事を、もっと具体的に書くと。まずは、薬が入っている小さい瓶から、注射器を使って、薬を吸います。そして、「谷本整形」の場合だったら、「生理食塩水」の中に、注射器を使って薬を入れます。「生理食塩水」も「点滴の薬」も、この場合は、ノイロトロピンって薬とメチコバールっていう薬のようですけど。中は清潔(無菌)です。でも、薬を注射器で外に出して、それを生理食塩水の中に入れる時に、細菌が一緒に入る可能性があるんですよ。
「手」を使っていますからね。直接、手で針や薬を触る、っていう事はないんですけどね。でも、やっぱり細菌がゼロのまま、っていうのは難しいです。
「手」の細菌をゼロにする事は、基本的にはできませんから。大事なのは、手の細菌をなるべく減らす。そして、仮に細菌が薬の中に入ったとしても、細菌が繁殖して増える前に、薬を使う。っていう事が大事になります。細菌っていうのは、放って置いたら、どんどん数が増えちゃいます。特に温度が高いと、ものすごい勢いで増えてしまいます。
例えば、常温(25℃)では一時間で2倍になるとすると。
細菌が最初は1個しかなかったけど、
1時間経てば、2倍になって2個に。
2時間なら4個。
3時間なら8個。
4時間で16個。
5時間で32個。
10時間なら1、024個。
20時間なら1、048、576個(約100万個)
24時間なら約1600万個
っていう具合に、とんでもないくらいの勢いで増えていっちゃいます。冷蔵庫に入れて、5℃にしておくと、3時間で2倍に増えるとすると。
細菌の数が最初は1個だとすると。
3時間で2個。
6時間で4個。
9時間で8個。
18時間で64個。
24時間で256個。
って感じになるんで。細菌が増える速度は、相当遅くなります。手洗いをきちんとしても、細菌の数はゼロにはなりませんけど。仮に1/10になるとすると。手洗いをしていたら、最初の細菌の数は1個だけど。手洗いして、汚いタオルで手を拭いて、手洗いしていないのと同じ様な状態なら、細菌の数は10倍の10個って事になります。点滴の作り置きっていうのは、事前に薬を点滴の中に入れて、患者に使うまで置いておく。っていう事で、基本的にはいけないことなんですけど。点滴を作ったら、何分とか何時間以内に、その点滴を使わなければいけません。という、具体的な決まりはありません。私は、点滴の作り置きを推奨するつもりは全くありませんけど。わかりやすく、例え話をあげてみると。
例)
朝の9時に、手をきれいに洗って、点滴を作った。そして、それをすぐに使った。本来であれば、細菌の数がゼロ、っていうのが理想だとは思うんですけど。最初に、細菌が1個入ってしまった。とすると、体の中に入る細菌の数は、1個ですね、当然。朝の9時に、手をきれいに洗って、点滴を作った。それを12時に使った。
とすると。上に書いたとおり、一時間で細菌が2倍の量に増えるとすると。9時に作って3時間ですから。常温(25℃)であれば、細菌の数は、1個から8個に増えます。冷蔵庫に入れておけば、3時間で2倍だから。細菌の数は2個です。点滴の作り置きといっても、3時間であれば、細菌の数は1個から2個や8個に増えるだけです。ところが、この谷本整形の例。2008年6月13日の読売新聞の報道によると >体調不良を訴えた患者23人のうち16人は、今月9日に点滴を受けて発症していたことが 県の調査でわかった。9日は月曜だったことから、県は週末の土曜に作り置きされた点滴液が休診日の日曜を挟んで丸1日放置されて細菌が増殖、被害が集中したとみている。県によると、作り置きして余った点滴液は、夜間、空調の切れた点滴室に置いたままにされ、次の診療日に使うことがあったという。って事だそうだから。手を洗ったけど、不潔なタオルで拭いて。点滴を作ってからは、常温(25℃)で丸1日経った、っていう事にして。そいで細菌の数を計算してみると。
最初は、手洗いをしていない状態と同じだから、最初から細菌の数は10倍の10個。
そして、それが常温で丸1日って事だから、便宜的に24時間として計算すると。24時間で1600万倍だから、10x1600万=1億6000万個
細菌の数、1億6000万個ですか(汗)。しかも、土曜日に作って、月曜日に使ったなら、本当は24時間じゃなくて、それ以上だから。数億とか、数十億になる計算っすかね。まあ、この細菌(セラチア菌)の数の増え方が、こんなに早いのか、っていう問題とか。そういう事はあると思うけど。点滴を作り置きして、丸1日常温で置いておく。っていうのが、どれだけ細菌の数が増えて悪いのか。っていう「イメージ」はわかったかな、と思います。ちなみに。何度も言うようですが、私は点滴の作り置きを奨励するつもりは全くないんですよ。はっきり言って、この谷本整形は問題外ですが。きちんと手洗いをして、点滴を作って、冷蔵庫で保存すれば、3時間経っても、細菌の数は2個です。からね。そこら辺は、理解していただきたいですかね。この事件の後に、おそらく厚生労働省から、「点滴の作り置きはいけない」っていう行政指導か通達か、そこらへんが出るとは思いますが。看護師の内診問題でもそうですけど。どの位の病院がやっているかは知りませんが、一律に全部駄目。っていうのは、問題があるように思えます。30分なら良いけど、2時間なら駄目。とかっていう、きちんとしたルールを作るのは、実際問題としては難しいし。10分でも駄目だ。っていうなら、相応の看護師の数がいないと絶対に無理ですからね。それをやらないで、厚労省が責任逃れの為だけに、現場の事を考えない通達だけ出す。っていう事は、避けて貰いたいものですねー。
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参照1:『2008年6月13日:毎日新聞』
三重・伊賀の点滴死亡:タオル使い回し 谷本整形、ずさんな衛生管理
三重県伊賀市の「谷本整形」で点滴を受けた患者が異常を訴え、73歳女性が死亡した問題で、谷本広道院長が12日、診療所で報道陣の取材に応じ、点滴薬剤の作り置きについて「以前はたくさんやっていた」と述べた。一方、県の立ち入り調査などで、院内感染対策の指針がなく、作り置きした薬剤を事務机に置いたり、看護師がタオルを使い回しするなど、ずさんな衛生管理が明らかになった。院長は「野戦病院のような診療所で、多い時は(1日)350人の患者を診ている。院内感染の発生率も高いと思う」と語った。「昨年と一昨年に(今回と同じような被害が出た事案が)2件あった」と明かした。一方、立ち入り調査などによると、診療所では毎朝、10~30人分の点滴薬剤を作製。鎮痛剤の点滴の調合作業は待合ロビーの奥の「中待合」の作業台と隣接する点滴室の2カ所で行い、調合後は点滴室の事務机の上で薬剤納品用の紙箱に入れて保管。医療機関では手洗い後は紙タオルや使い捨ての滅菌布を使うのが普通だが、布製タオルを掛けて看護師が共有使用していた。
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参照2:『2008年6月13日:読売新聞』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?b=20080612-00000064-yom-soci
点滴治療後の体調不良、被害は休診日後に集中…三重県調査
三重県伊賀市の整形外科医院「谷本整形」の点滴治療による業務上過失傷害事件で、体調不良を訴えた患者23人のうち16人は、今月9日に点滴を受けて発症していたことが県の調査でわかった。9日は月曜だったことから、県は週末の土曜に作り置きされた点滴液が休診日の日曜を挟んで丸1日放置されて細菌が増殖、被害が集中したとみている。県によると、作り置きして余った点滴液は、夜間、空調の切れた点滴室に置いたままにされ、次の診療日に使うことがあったという。死亡した同市内の女性(73)も9日に点滴を受けていた。一方、同医院の谷本広道院長が12日、記者会見し、約2年前まで、看護師による点滴液の作り置きを院長自身が知りながら、常態的に行われていたことを認めた。谷本院長は「今回の事件はすべて院長、管理者の私の責任。裁きの来る日を待っています」と患者らに謝罪。そのうえで、「以前はそういうこと(作り置き)をたくさんやっていたが、今回のような大きな事件にはならなかった」と述べた。2年前、点滴治療を受けた2人の患者が気分が悪くなったのを機に、「『そういうことをするな』と(看護師に)言ったつもりだったが、徹底されていなかった」と語った。また、昨年10月、同医院での点滴後に死亡した男性(85)について、谷本院長は「事実関係がはっきりしておらず答えようがないが、点滴によって死亡したということはない」と点滴との因果関係を否定した。
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・点滴作り置きの問題、2 (06/15) http://kenkoubyoukinashi.blog36.fc2.com/blog-entry-329.html
マスコミの報道では、「点滴の作り置き」が、諸悪の根元で、こいつが問題なんだー。という書き方をしていましたが。実際にどこが、どう悪いんだ。っていう事は、具体的には説明していなかったので。「点滴の作り置き」の前に、不潔な状態で点滴を作ると、たくさんの細菌が入ってしまう。そして、常温で丸一日も放っておくと、細菌がものすごい勢いで増殖してしまう。という話でした。ただ、清潔な状態で点滴を作って、数時間とか、冷蔵庫で保存すれば、さほど細菌の数は増えない、っていう事もあるんでしたね。それじゃあ今回は、「何故」点滴の作り置きをするような状況になったのか。っていう、もっと根本的な原因について、書いていきましょうか。既存のマスコミでは、一切触れていないし。何故か、医師ブログでも書いていないようなんですよねー。残念ながら。なんでなんでしょうか。まずは谷本整形が、「儲け主義だ」とかって、マスコミやネットでも言われているようですが。本当にそうなのか、具体的に検証していきましょうか。これやると、日本中の開業している整形外科医、ほとんど全員を敵にまわす様な気もしますけど(汗)。まあ、元になっているのは、一般の人でも手に入れる事ができる本を見て書いていますから。大丈夫かな。
そいじゃあ、問題になった点滴の内容に関しての検証。
>患者が共通して受けた治療は 「生理食塩水」100ミリリットルに鎮痛薬「ノイロトロピン」3ミリリットルとビタミン剤「メチコバール」1ミリリットルを 混合した薬剤の点滴とみられる。
参照:『2008年6月11日:毎日新聞』
という事ですから。それぞれについて、書いていきましょうか。
○生理食塩水
「生理食塩水」というのは、単なる「塩水(しおみず)」なんですが。体液と浸透圧がほぼ同じ食塩水のことを「生理食塩水」って言います。日本薬局方・処方せん医薬品では塩化ナトリウムを0.9%含有する食塩水を「生理食塩液」と定義しています。
出典:『ウィキペディア(Wikipedia):生理食塩水』
主に、「注射の薬を溶かす」為に使いますね。生理食塩水、っていうのは。値段は、「今日の治療薬2008」には、書いていなかったのですが。私が働いている病院の会計で調べたところ、生理食塩水 100mlで、97円でした。
○ノイロトロピン
「ノイロトロピン」は、鎮痛薬の一種です。一番良く使われている鎮痛薬っていうのは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)って言われている薬なんですよ。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、非常に良く効く鎮痛薬なんですけどね。腎臓とか胃に悪いんで。腎臓の機能が悪い人とかには使いにくいし。胃潰瘍とかがある人にも使いにくいんですよ。そういう人の為に、NSAIDsの替わりにノイロトロピンを使う。っていう処方自体は、悪くないのかもしれません。まあ、私は点滴も飲み薬も、一回も使った事がありませんがね。
ノイロトロピンの適応
(内服、飲み薬)
腰痛症、頸肩腕症候群、変形性関節症、肩関節周囲炎、帯状疱疹後神経痛
(注射)
1,腰痛症、頸肩腕症候群、症候性神経痛、皮膚疾患に伴う掻痒、アレルギー性鼻炎
2,スモン後遺症状の冷感、痛み、知覚異常
単なる整形外科の診療所で、
2,スモン後遺症
っていうのは、まずいないと思うので。普通は、腰痛とか膝、肩が痛いっていう患者さんに使うんでしょう。
薬の値段をそれで計算すると
飲み薬の場合
錠剤の値段は、1錠 37.4円
1日4錠飲む薬なので。
1日当たり 149.6円になります。
点滴の場合は、一回 3ml 185円です。
○メチコバール
メチコバールっていうのは、ビタミンB12です。要は、ビタミン剤っていう事っすわ。
適応は
(内服、飲み薬)末梢性神経障害
(注射)
末梢性神経障害、 ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血
という事ですから。整形外科で、ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血っていうのを診る事は、基本的にはないでしょうから。末梢性神経障害として使っているんでしょう。簡単に言うと、「しびれの薬」です。私は循環器内科医なので、糖尿病性神経症で手足がしびれる、っていう人が結構いるんですよ。その時に、このメチコバールを処方します。まあ、飲み薬だけですけどね。効かない人は、全然効かないんですけど。何人かに1人は、すごく効いて、全然しびれがなくなった。っていう人もいますので。使い方によっては、悪くない薬だと思います。
飲み薬の場合は、
一錠 (500ug) 23.8円
一日3錠飲む薬なので、1日では71.4円です。
注射の場合は、1ml(500mg)で131円です。
参照:「今日の治療薬2008」
生理食塩水100mlっていうのは、薬を溶かすためだけのものです。単純にコップ半分くらいの塩水だから。これは、なくても良いものです。
ノイロトロピンとメチコバールっていうのは、点滴も飲み薬も両方ある薬です。どちらの薬も、点滴でやっても、飲み薬を処方しても良い薬なんだけど。点滴と飲み薬の処方。どっちでやったら、どのくらい診療所に売り上げが入るのか、っていうのを計算してみましょうか。参照:「診療点数早見表、2008年4月版」 「今日の治療薬2008」
開業医だから、2週間に一回通院するとして。便宜上、他の薬も飲んでいないし、注射もしていないとして。
2週間分の医療費。
○内服(飲み薬)の場合。
再診料 710円
院外処方箋料 680円
外来加算 520円
薬代 (149.6+71.4)x14=3096.8円
合計
4486.8円
薬代というのは、診療所に入るのではなく、薬局に入るお金だから。実際に診療所に入る売り上げは、710+680+520=1910円になります。
○点滴の場合
2週間に一回診察をして、その後、平日は毎日、点滴だけ受けに来たとすると。2週間では、10日診療所に来る事になりますね。
再診料
710x10=7100円
外来加算、
これは2週間に一回、診察をした時だけだから
520円
注射の手技料
500ml以下の時は、一回につき470円だから
470x10=4700円
薬代
(185+71.4+97)x10=3534円
合計
7100+520+4700+3534=15854円
これは、全部診療所の売り上げになりますね。平日は毎日診療所に来て、点滴をしてもらったとすると。同じ薬でも、点滴をした時と、飲み薬を処方した時の、診療所に入る報酬の差は、
15854-1910=13944円になりますね、2週間で。毎日じゃなくて、週3回点滴をしたとすると。
再診料 710x6=4260円
外来加算 520円
注射の手技料
470x6=2820円
合計 7600円
飲み薬の時との差は、7600-1910=4780円になります。
点滴を作ったり、点滴のルートを取るのにも、手間がかかりますから。当然、ある程度の値段は必要だと思いますし。点滴するのに、470円っていうのは、他の先進国と比べると、格安です。
『日米医療報酬比較』を見ると。この記事には点滴の手技料っていうのはないんだけど。
アメリカの場合、
抗生物質筋肉注射は、5500円(薬剤費込み)
血液採取と準備費は、3000円
ですからね。点滴の手技料っていうのも、数千円でしょう。私は日本の点滴の手技料に関しては、文句を言うつもりは全くないです。
一番の問題は、これが、全員に必要な点滴なのか。って事ですよ。同じ薬が内服薬にあるんだから。それを2週間分処方すれば、2週間に一回診療所に来るだけで。毎日点滴をする必要はないんですよ。それに、平日は毎日。って事は、土日はやってないんですよ、痛み止めの点滴。土日は痛くなっても良いんですか。ずーっと痛くて、痛み止めが必要、っていう事なら。毎日飲める痛み止めの飲み薬を使う方が、医学的にも有用です。毎日じゃなくて、週3回、点滴をしに来る。っていう人なら、値段はおよそ半額で、2週間で7600円になるかもしれませんが。痛いのは、毎日じゃないんですかね。それだったら、痛み止めを痛いときに飲む「頓服」っていう処方で出せば、薬剤費はもっともっと安くすみますけどねー。私は、点滴をする事自体が悪い、とか。この薬を使うのが悪い、っていうつもりはありません。
ノイロトロピンというのは、特殊な痛み止めですけど。毎日、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を飲んでいて、それでも、今日は痛みが酷いから、痛み止めの点滴をしてくれ。っていう患者がいたら。その日だけは、痛み止めの点滴をしてあげる。っていう事なら、問題はないと思いますよ。
ただ、「痛み」だけなら「しびれの薬」、メチコバールはいりませんけどね。
ちょっと痴呆が進んでいる患者さんがいて。飲み薬の管理は自分では出来ない。そういう人がいて、家族やヘルパーさんが、診療所に連れてきた時に、痛みやしびれが酷い。っていう症状がある時だけ、点滴をしてあげる。そういう使い方であれば、全く問題ないと思いますよ。ただ、本当に全員、点滴が必要なんでしょうかね。毎日、100人ですよ。点滴をする患者の数が。300人の患者が診療所に来ている、っていうのもすごいですけど。この点滴する人の数は、ちょっと尋常じゃないですよ。具体的に、どんな患者さんがいて、どの人は必要で、どの人は必要ない。っていう判断は、この情報からだけではできませんけどね。でも、「患者の診察もせずに、全く同じ内容の点滴」を、毎日毎日行うっていうのは、異常だと思いますよ。
痛みがどうしても酷い人は、「痛み止めの薬」だけ。飲み薬が効かなくて、しびれが酷い人は、「しびれの薬」だけ。しびれも痛みも両方あって、腎臓も胃も悪い。っていう人は、「痛み止めとしびれの薬」。とか。普通は、患者さんをきちんと診察して、それに対応して、点滴の処方を出して。その後に、看護師が点滴を作ってから、患者さんに点滴をしますから。前の日とか2日前に、処方される前から、点滴を作り置きする、っていう事はありえないんですよ。だから、やっぱりこの谷本整形のやり方は、問題があると思いますね、私は。谷本整形が儲け主義かどうかは、この数字を見て、皆さんが判断すれば良い事なので。私は、何も言いません。
ただ、これは谷本整形という診療所や医師、看護師だけの問題ではない、っていう点もあるんですよ。これに関しては、診療報酬の問題や、厚労省、患者の側にも問題があります。以前から書いているように、日本の診療報酬は格安です。アメリカの値段と比較したこの記事、『日米医療報酬比較』を読めば、よりわかると思いますけどね。ただでさえ安いのに、医療費抑制政策のおかげで、そこから更に診療報酬が削減されています。それでも、開業医というのは、利益を出さなければ、自分達が食べていけないですからね。「薄利多売」、で稼ぐしかないんですよ。患者を集め、対症療法をおこなう診療スタイルが利益を生む現在の診療報酬が引き起こした事件。という言い方もできるでしょう。
それと、厚労省の問題ですね。医療費抑制政策がとられている、という事は、厚労省だけの問題ではないんですが。「安全には、お金がかかる」んですよ。JRでの列車の事故でも。渋谷のガス爆発の事故でも。新宿や「すすきの」での、火事でも。谷本整形の事件でも。安全に、もっとお金をかけていれば、こういった事故、事件は起こらなかった可能性が高いです。ただ、今のシステムでは、安全にお金をかけても、目に見えるメリットがないんですよ。今回の谷本整形の場合。
>医療機関では手洗い後は紙タオルや 使い捨ての滅菌布を使うのが普通だが、
>看護師がタオルを使い回しするなど、ずさんな衛生管理が明らかになった。
こういう事ですから。簡単に言うと、使い捨ての紙タオルとか、使い捨ての滅菌布なんかを買うと、金がかかるから。それをけちって、汚いタオルを使い回していた。って事ですわ。今のシステムでは、安全に金をかけても、それが目に見える利益になるわけではないんです。
例えば、使い捨ての紙タオルや滅菌布を使ったら、診療報酬が加算されるとか。具体的に目に見えるメリットがないんですよ。だから、手っ取り早く利益を得ようとして、安全にお金をかけない人間が出てくるんですよ。そんな事は最低限の事だから。っていうなら、それをやっていないのであれば、診療所の営業許可を出してはいけませんよ。一度許可してしまったら、未来永劫、何の監査もなくて、ずーっと続く。っていうシステムにも問題があります。安全、衛生に関わる、人の命に関わる事なんだから。こういう事は、厚労省が規制するとか、管理する責任があると思いますよ。医療費「全体」を削減しようとすると、こういう目先の利益に関係ない、「安全」とか、そういうのが真っ先に削減されるんですよ。どこの世界でも。耐震偽装とか、そういうのでもそうでしょ。そうなるのは、わかっているんだから。きちんと、安全を管理するシステムを作らなかった。というのは、厚労省の問題だと思います。
看護師にも問題があります。看護師が8人で、点滴の患者100人。しかも、全体では患者の数は300人もいますから。はっきり言って、事前に点滴を作り置きしなければ間に合わなかった。という事は言えるかもしれませんけどね。でも、そんな事、やっちゃ駄目に決まっているんですよ。医療従事者なら、そんな事は当たり前です。「どうせ、あの先生。診察もしないで、いつもの点滴なんだから。その場で作ったら間に合わないんだから、前の日から準備して、作っちゃえ。」とか、思っていたんでしょうけどね。看護師の数が足りないなら、看護師を増やす様に言う。もしくは、点滴の患者の数が多すぎるのであれば、点滴の患者の数を少なくして貰う。とか。もしくは、どんなに患者が待ったとしても、その場で点滴を作る。そして、今時、汚いタオルを使い回して。それを実際に使っているのは、看護師なんだから。やっぱり、使い捨てのタオルか滅菌布にしてもらう。っていう事を言わないと駄目だと思いますよ。まあ、診察もしないで、いつもの点滴を処方する。って医者も、もちろん悪いんですけどね。
そして、患者側の問題。当然、既存のマスコミは、これに関しては一切触れていないのですけど。「あの先生は、点滴してくれって言ったら、なんでも点滴してくれる、良い先生だ。」みたいな感じで、患者さんの評判は良かったのかもしれませんが。はっきり言って、医学的には間違っているのに、患者の希望をなんでも聞いてくれる。っていうのは、良い医者とは言えませんよ。患者さんがなんと言おうと、「駄目なものは駄目。」「意味のない治療はしない。」って言ってくれる先生が、良い先生だと思いますよ。まあ、患者さんは医学に関しては素人だから。なかなか難しいかもしれませんが。今回、点滴をしている患者のうちの何割かは、「患者の方から点滴を希望した。」って事だと思いますよ。風邪でもなんでも。飲み薬よりも、点滴の方が効く。って思っている患者さんって、結構多いですけど。はっきり言って、それは間違いですから。場合によっては、点滴の方が良い時もあるから。全部が全部、点滴が悪い。っていうつもりはないのですけどね。
患者の方から、点滴を希望する。とか。あの病院は点滴してくれる、良い診療所だ。っていう口コミで、いっぱい患者がきて。それで点滴をする人が増えて。あまりにも数が増えすぎて、その場で点滴を作っていたら間に合わなくなって。やむを得ず、点滴の作り置きをした。っていう側面もあるでしょうからね。点滴好きな患者側の問題。っていうのも、あるんですよ、この事件には。これが、自由診療で、全額自己負担。っていう事であれば、問題はないのかもしれませんけどね。ほとんどは、高齢者で、多分自己負担は1割ですから。ただでさえ、格安の日本の診療報酬の、更に1割しか自己負担がないわけですから。格安の値段で、満足を得て帰る。こういうのを、「無駄な医療費」って言うんですよ。
内服でも可能なのに、高い点滴を毎日やって。でも、それで保険が切られる事もない。これは、やっぱりおかしいですよ。「無駄な医療費がまだあるから、医療費はもっと削減できる。」って言っている、経済界の偉い人もいますけど。彼らは、何が無駄な医療費かわかっていないんですよ。まあ、素人だから当たり前なんですけどね。具体的にはわからないから、医療費の「総額」を減らす。っていうのが、今の日本の方針です。
その結果、「安全」とか、目に見えない、直接的な利益に関わらない所のお金が減らされて、今回の谷本整形の様な事件が起こった。そういう事だと思いますよ。今回の谷本整形事件の本質は。単に「点滴の作り置きが悪い」っていう事だけ、ヒステリックに報道して。厚労省も、アリバイ作りの為だけに、「点滴の作り置きはいけませんよ」っていう通達を出すだけ。
それだけで、その根本にある原因について何も探ることをしないのであれば。間違いなく、第二、第三の谷本整形事件は起こると、私は思います。おそらく、厚労省から行政処分が降りて、谷本整形は廃院になると思います。日本医師会も、こういう医者は除名する。って言えば、私の評価も変わるんですけどねー。まあ、無理かな。ただ、いくらシステムに問題があるとはいえ、不必要な点滴を繰り返し、安全に必要なお金をかけないで、結果的に死人まで出している。しかも、以前に同様の事があったにもかかわらず、反省もせずに繰り返したんですから。この谷本整形には問題があったんだと思います。
私は医師ですけど。医者だから、っていうだけで、擁護する気はありません。医師にも自浄作用は必要ですから。営利主義に走って、必要な事にお金をかけない儲け主義の人は、医師の内部で退場してもらう。とか、そういう制度も必要ではないかな、って思います。まあ、でもこれを、刑事罰にするか、っていう事は、また別の問題になりますけどねー。 医療安全だけじゃなく、予防できる病気。糖尿病、高血圧に関しては、これを読んで予防してね!
~~~~結論
ようちゃんの意見。↓
★こんな点滴は 不要!!薄利多売でないと利益がでないような診療報酬にも問題があるのかも知れない。それにしてもこの院長に私は同情できない。また、点滴が大好きな患者さんがいる のも事実である。さらに 一般論として 医療に警察が 出てくることについて、日本の異常点を指摘すると。結論:日本のようなやり方は、イギリスでも欧米でも間違った方式とされており、日本のような方式は先進国では異常である。 以上の 2サイト で 今回の問題点は ほとんど 出尽くしです。そして、これも ぜひ 知っていてほしい。日本の場合は、
(1)はじめから警察が介入し、証拠物件を全て押収し、
(2)警察(検察)の知り合いの医者にだけ意見を聞き、
(3)検察独自で臨床の現場からかけ離れた診断基準で診療関連死が刑罰相当かを決める。
非難覚悟で 言わしてもらえば、保険適用で 行った治療については、原則 損害賠償せずと するのも 考えなくては なるまい。患者も 医者と 治療法を 賢く選べと言うことです。普段から医療サイトも覗いてほしいです。