頂門の一針
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「だまされ続ける」日本国民
━━━━━━━━━━━━━内田一ノ輔
「国民はバカではない」これは政治家や官僚の使う常套句だ。
本当にそう思っているのか。本心では、日本の国民はバカだと感じているに違いない。実際に、政治家や官僚の思惑のために、過去に何度だまされてきたのか。新しいところでは、格差を作り上げた小泉改革であり、郵政民営化、年金問題、薬害問題、後期高齢者を見捨てる保険問題等、数え上げたら切りがないほどである。
しかし、日本国民はその度に「だまされた」とブツブツと文句を言うが、すぐに怒りは収まってしまうし、そしてすぐに忘れてしまうのである。中には、「だまされていた」事すら気付かない人も多い。即ち、「だまされても、だまされても」大して怒ることもなく、平気でいられるノンキな国民なのである。そして、この「だまされる」ことが永く続いてきたことを考えれば、何の学習も出来ていない国民は、間違いなくバカであり、当然、俺もあんたもバカである。
こんな国民気質の下では、政治家や官僚の自浄作用が望めないし、益々 増長させてしまう事に他ならない。「だました」人間が悪であることは間違いないが、はたして「だまされ続ける」国民は何なのか。「だまされた」被害者には他ならないが、誇れることではない。
一方、自分が「だまされた」ことにより、他に被害を受ける人がいると すれば、「だまされたこと」自体が罪となるのである。散々注意されているのにもかかわらず、「振り込め詐欺」に遭うやつは、他人に迷惑のかけないバカである。
この究極は、国民全員が「だまされた」と後悔したあの戦争である。と いう主張が60年前にされていたので紹介する。
昭和20年の終戦を迎えた後、人々は皆一様に「自分達はだまされた」と 口にした。そして、多くの人がこの戦争責任者の罪を指摘し、その追放 を主張した。映画界でも同様の運動が起こった。それらに対し、映画監督の伊丹万作が自分の主張を述べたものが「戦争責任者の問題」というエッセイである。以下はその抜粋。
『我々は昔から「不明を謝す」という一つの表現を持っている。これは 明らかに知能の不足を罪と認める思想に他ならない。つまり、だまされ るという事もまた一つの罪であり、昔から決して威張っていいこととは、されていないのである。
だまされたものの罪は、ただ単にだまされたという事実そのものの中に あるのではなく、あんなにも雑作なくだまされるほど批判力を失い、思 考力を失い、家畜的な盲従に自己の一切をゆだねるようになってしまっ た国民全体の文化的無気力、無自覚、無反省、無責任などが悪の本質な のである。
このことは、過去の日本人が、外国の力なしには封建制度も鎖国制度も 独力で打破することが出来なかった事実、個人の基本的人権さえも自力 でつかみ得なかった事実と、全くその本質を等しくするものである。
そして、このことはまた、同時にあのような専横と圧制を支配者に許し た、国民の奴隷根性とも密接につながるものである。それは少なくとも、個人の尊厳の冒涜、すなわち自我の放棄であり、人間性への裏切りである。また、「悪を憤る精神の欠如」であり、「道徳的無感覚」である。ひいては国民大衆、すなわち被支配階級全体に対する不忠である。
今まで、奴隷状態を存続せしめた責任を、軍や警察や官僚にのみ負担さ せて、彼らの跳梁を許した自分たちの責任を真剣に反省しなかったなら ば、日本の国民は永久に救われることはないであろう。
「だまされていた」という一語の持つ便利な効果におぼれて、一切の責任から開放された気でいる多くの人々の安易きわまる態度を見るとき、 私は日本国民の将来に対して暗澹たる不安を感じざるを得ない。「だまされていた」といって平気でいられる国民ならば、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。いや、現在でもすでに別の嘘によってだまされ始めているに違いないのである。
1度だまされたなら、2度とだまされまいとする、真剣な自己反省と努 力がなければ人間が進歩するわけはない。まず国民全体がだまされたと いうことの意味を本当に理解し、だまされるような脆弱な自分と言うも のを解剖し分析し徹底的に自己を改造する努力を始めることである。』
ーーーーー引用終わり。ーーーーーーーー
これが書かれた昭和21年から日本人は進歩したのであろうか。いや全く 進歩していないことは、前述のとおりである。例えば、アメリカから同じような牛肉を輸入している日本と韓国民の対応の違いは顕著である。日本では全く盛り上がっていないが、韓国では大規模なデモの様子が報じられている。サヨクとかプロ市民の先導と言うより、子供も含めた国民の気質が駆り立てているようだ。
国民の期待を背負った新しい大統領が誕生したばかりであるが、その支 持率も75%から10%代へと急落させるという強い意思表示を示し、結果 アメリカを屈服させると共に、政権の存続すら危ぶまれてきた。一方、薬害被害者の抗議行動に対しても、対岸の火事のように冷ややかな日本人である。日本人が、何となく馬鹿にしている韓国人だが、この点学ぶべきは日本人であろう。
これらの行動には、マスコミの違いも大きく影響している。日本のマス コミは国民の側にいるとはいえない。むしろ、政官界の代弁者であり、 マスコミにとっての「客」は広告主であって、読者・視聴者ではないの だ。必要な事実をあえて報道していないという姿勢を見れば明らかである。伊丹万作に言わせれば、現在のマスコミは「大本営発表」を大々的に報じた、当時の朝日を代表としたマスコミと同じであって、正義や言論の自由を謳うが、間違いなく「だましている」側である。
そこには「だまされ続ける」国民がいる。ああ、日本人は60年間、いっ たい何の自己改造の努力をしてきたのだ。であろう。しかし、戦後も国民はだまされ続けたが、大して怒ることなく、国民が一体となって経済を早期に復興させ、技術大国、経済大国にまでなってしまった。英国のBBCが世界28ヶ国の約2万8千人に対して、「世界に最も良い影響を与えている国は何処の国か」というアンケートを行なった。結果、ここ3年連続日本が1番だそうだ。
だが、政治家とマスコミは2等国並である。何が良かったのかと考えれ ば、「だまされ続けてもめげず、前向きに励む国民」であり、当然ここ には国を支えてきた「官僚」の果たした役割を否定する事は出来まい。
しかし「官僚」も堕落し、かなり質が落ちてしまった現状を考えれば、 日本の見通しは決して明るくないのである。やはり日本国民は、国民主権とは何か目覚めなければならない。物言う国民にならなければならない。
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捕らぬタヌキのたばこ税
━━━━━━━━━━━平井 修一
昔から気になっていたのだが、新聞は「庶民」という言葉が好きである。「名もなき庶民のささやかな楽しみ」なんて書く。もろもろの民、大衆、一般人、普通の人の意味だろうが、政治家やエリート官僚、大企業のお偉いさん、大学教授、弁護士、医者、僧侶、有名人(タレント、評論家、歌手、作家)、お金持ちなどは庶民ではない。
無名で、資産といえるほどのものもなく、収入も生活するのがやっと、誇れるほどの仕事に就いているわけでもない、というのが庶民で、それ ならば小生は庶民であり、庶民は月に3万円ほど奥さんから小遣いをもら っているに違いない。
都内のランチは800円、お茶は150円、たばこは300円で合計1250円。20日 間で2万5000円。休みの日でもたばこは吸うからさらに3000円かかり、ド リンク剤を飲んだり喫茶店でくつろげば3万円だ。同僚と1回酒を飲めば もう赤字になる。
庶民のお父さんは仕事を終えて晩酌し、一服プカーッとたばこをふかし て、来し方行く末を考えるのだ。たばこを1000円にしろという暴論が声高に飛び交っている、言いだしっぺはうちだ、と産経新聞がはしゃいでいる。競艇バクチの胴元、笹川陽平が同紙で「1000円に値上げすれば市場が3分の1になっても税収は増えるぞ」とぶち上げたのだ。
庶民はたばこだけで月に3万円の出費になる。たばこを優先すれば昼飯も 抜きになる。お茶も買えない。体調を崩して会社を休み、医者に掛かる から、生産性は下がり、医療費は上がる。
たばこを3日にひと箱にすればいいだろう、1日あたり6、7本にすればい い、というのは「無理な相談、もう何回も試し済み」。結果的に「もう いっそのこと禁煙する」、カミサンも「あんた、それいいわねえ、私も
応援するからね」。禁煙に成功したら2度と喫煙しなくなる。
かくして市場は5分の1、10分の1になり、税収は激減する。捕らぬタヌキ の皮算用で、それどころか角を矯めて牛を殺すの類である。
JTの株価は大暴落し、筆頭株主の国は大損、社員の大半が解雇され路 頭に迷う。葉タバコ農家は壊滅的打撃を被る。たばこ屋、コンビニは売 上急落で青息吐息。
流通経費を含めて原価110円。これを1000円で売るというモラルの崩壊は、たばこ密造の大元、北朝鮮を大喜びさせる。「500円で闇マーケットに流せば大儲け! テポドンテポドン売りまくれ」。台湾は密造たばこが流通しているが、日本もその二の舞になるだろう。たばこを運ぶトラックは全国で1000台以上だろうが、1台あたり3000万円の商品を載せることになる。襲撃され、たばこを奪われ、闇市場に流される。「ひと箱500円でも引く手あまた」というのは新たな犯罪を誘引する。
暴論がまかり通れば道理が引っ込み、明治以来営々と育て上げてきた担 税力ある市場を一気に破壊する。これが産経と笹川の邪論に対する庶民 の「正論」である。
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日本を永久に武装解除せよ(4)
━━━━━━━━━━━━━━━平井 修一
ジェームス三木著「憲法はまだか」を原作としたNHK土曜ドラマ「憲 法はまだか」(演出:重光享彦、1部;1996年11月30日、2部;12月7日 放送)を松山大学の田村ゼミが原稿に起こしている。前回の古森義久氏 の記事と大いに関連して興味深いので、転載する。
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1946(昭和21)年2月13日首相官邸
松本烝治(憲法担当大臣);ご報告を申し上げます。本日午前10時より 外相官邸にて、総司令部のホイットニー民政局長ほか3人と会談をいたし ました。
幣原喜重郎(総理);ご苦労さんでした。どうぞ! 首尾はいかがでし た!
松本;それが奇妙奇天烈な話になりまして。
幣原;奇妙奇天烈?
松本;結論から申し上げますと、マッカーサーはわれわれが提出した憲 法改正案を受諾できないそうです。
幣原;ほうー!やはり11条の軍規定が気に入らんのですか?
松本;いや!そういう問題ではありません。全面的に拒絶されたのです。いや、拒絶したばかりではなく、驚いたことに、奴さんたち民政局で作った別案を持ってきました。
幣原;別案を!
松本;これがそうです。われわれの政府案は要綱のみでしたが、向こう のは長ったらしく、憲法そのものを書いてきたのです。
幣原;受け取ったのですか?
松本;受け取らざるをえないじゃないか!
幣原;序文が付いているんですか!
吉田茂(外務大臣);そこは飛ばして、まず第1条をお読み下さい。
幣原;The Emperor shall be the symbol of the State and of the
Unity of the People,
楢橋渡(内閣書記官長);symbol‥‥
幣原; deriving his position from the sovereign will of the
People, and from no other source.(天皇は、日本国の象徴であり日本 国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に 基く)
松本;一体、総司令部は何を考えているでしょうかね。もっともホイッ トニーは、これを日本側に押し付けるつもりはないと、言いましたがね。
幣原;詳しく話してください!
松本;まあ、要するに強制はしない、強制はしないけれど、マッカーサ ー元帥は、アメリカ国内の、また他の国の強烈な反対を押し切って、天 皇陛下を擁護するために苦心をかさねておると。このGHQの憲法案の 範囲であれば、なんとか、天皇陛下のご安泰を図れるであろうと。
幣原;‥‥
吉田;総理、第8条はいかがですか!
幣原;War as a sovereign right of the nation is abolished.
幣原;abolished(放棄).The threat or use of force is forever renounced as a means for settling disputes with any other nation.(武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する)
楢橋;戦争の放棄ですか!
松本;まあ、いずれにしても、これを丸ごと受け入れる義務はないでし ょう。日本の憲法は日本人の手でつくるべきなんですから。
幣原;それは私も同感です。
楢橋;しかし、GHQは日本政府案を受け付けないといっているのでし ょう。
松本;だから! さっそく終戦連絡局の白洲次郎君を総司令部に派遣し て、交渉にあたらせているんだ。政府案とGHQと根本的な相違はない ということをだな。
吉田;しかしホイットニーは強硬でしたよ。マッカーサー元帥は、この GHQの案が日本政府の案として発表されることを強く望んでいると。
松本;冗談じゃない。そんなみっともないまねできるもんかね。
吉田;もしそれができないなら、マッカーサー元帥自身の手で、日本国 民に発表することになるであろう。
松本;恥をかきますよGHQは。こんな途方もない憲法みたことがない。まるで共産主義の作文ですよ。‥‥とにかく憲法の何たるかをしらないんですな!‥‥一院制になったら、困りますよ。総理も私も吉田君も選挙に出なければならなくなる。
幣原;吉田さん。この文章を知っているのは誰と誰ですか?
吉田;ここにいる4人(松本・幣原・吉田・楢橋)と、白洲次郎君、そ れに通訳の長谷川君だけで‥‥
幣原;定例閣議まで秘密にして置いてください。トップシークレットで す。
吉田;はあ(つづく)