ロシア政治経済ジャーナル  メドベージェフの訪中(中ロ同盟のその後) | 日本のお姉さん

ロシア政治経済ジャーナル  メドベージェフの訪中(中ロ同盟のその後)

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メドベージェフの訪中(中ロ同盟のその後)
全世界のRPE読者の皆さまこんにちは!いつもありがとうございます。北野です。メドベージェフ新大統領が、中国を訪れました。そこで今回は、中ロ関係の現状と未来を考えてみます。

▼基本を抑えよう
まず、中ロ関係の基本を抑えておきましょう。現在世界情勢にもっとも大きな影響を与えているのは、
1、アメリカ(GDP・軍事費共にダントツ世界1)
2、中国(GDP世界3位、軍事費世界2位)
そして、共産陣営の元覇権国ロシアはアメリカを憎み、中国を恐れている。これが基本です。なぜロシアがアメリカを憎んでいるのかはわかりますね。冷戦で負けたから。現在ロシアを牛耳っているKGB軍団は、表面上どう行動していても、「アメリカを没落させ、復讐してやる!」と固く決意している。ロシアはなぜ中国を恐れているのか?まず人口差。ロシア1億4000万人に対し、中国は13億人。極東を見ると、ロシア700万人に対し、中国東北3省は1億2000万人(!)。「極東・東シベリアを中国に乗っ取られるのではないか?」
これが、ロシアの恐れ。また、両国の力関係が逆転している。中国の軍事費は、米国防総省の予測では、10~15兆円でダントツ世界2位。GDPは、ドイツを抜いて世界3位になった。今年中にも日本を抜き、世界2位に浮上する可能性もある。ソ連時代親分面をしていたロシアですが、今ではあらゆる指標で中国に負けている。これも恐れの理由。それでロシアの願いは何か?「アメリカと中国、戦って両方滅びろ!」しかし、歴史はロシアが中立でいることを許してくれないのです。01年、ロシアはアメリカのアフガン攻撃を支持し、米ロ関係を改善させました。しかし02~03年、イラク攻撃に最後まで反対し、米ロ関係は悪化。03年、アメリカのエクソンモービルとシェブロンテキサコは、ロシアの石油最大手(当時)ユコスを買収しようとした。しかし、プーチンはユコス社長のホドロコフスキーを逮捕さ石油利権をアメリカに渡さない決意を示します。怒ったアメリカは、「ロシア封じ込め」政策に転換。旧ソ連諸国でカラー革命を次々と起こしていきます。

03年末、グルジア・バラ革命。
04年末、ウクライナ・オレンジ革命。
05年3月、キルギス・チューリップ革命。
これらの革命がアメリカによるものだった証拠は、「中ロ同盟がアメリカを滅ぼす日」
(詳細→  
http://tinyurl.com/yro8r7 )にうんざりするほどたくさん載せておきましたので、参考になさってください。

それでも一応。

<混乱の背景に外国情報機関 シェワルナゼ前大統領と会見。野党勢力の大規模デモで辞任に追い込まれたグルジアのシェワルナゼ前大統領は28日、首都トビリシ市内の私邸で朝日新聞記者らと会見した。大統領は混乱の背景に外国の情報機関がからんでいたとの見方を示し、グルジア情勢が不安定化を増すことに懸念を表明した。>(03年11月29日付朝日新聞)

<アカエフ氏は政変を企てた組織として、民主化を求める米国のNGO、国際問題民主研究所や「フリーダムハウス」のほか、駐キルギス米国大使の名前などを挙げた。>(共同通信05年4月7日)激怒したプーチンは、仮想敵NO2中国と組み、アメリカを破滅させることを決意します。(これをRPE的に(悪の?)薩長同盟という)05年、中ロは国境問題を解決し、初の合同軍事演習を実施。さらに、両国と中央アジア4国からなる上海協力機構(SCO)を拡大し、反米の砦化していきます。05年には、アメリカの宿敵イラン、そしてパキスタン、インドが準加盟国になった。07年には、SCO初の軍事演習も実施された。中ロは世界の多極化を進めることで、アメリカの覇権に挑戦していきます。06年、ロシアはルーブルでの石油取引を開始。07年、プーチンは「ルーブルを世界通貨にする!」と宣言。世界的ドル離れが加速していきます。そして07年夏、サブプライム問題が表面化。プーチンは、「アメリカは既に自動没落の過程に入った」と判断。これから仮想敵NO1は、アメリカではなく中国になるだろう。そして、07年秋からアメリカとの和解を模索するようになっていった。具体的には、ラブロフ外相などが「米欧中で、新しい世界秩序をつくろう」と発言した。(中国抜きで)

▼悪化していた中ロ関係::中国はなぜロシアを必要としているのか?

1、資源の供給元として
アメリカは、ある面中東攻略一歩手前まできています。サウジ・クウェート・アラブ首長国連邦などは、比較的親米。反米の代表といえば、イラク・イランでした。しかし、アメリカは超反米フセイン政権を崩壊させた。イラン支配に成功すれば、おおむね中東の資源は抑えたといえるでしょう。そうなると、世界でもっとも石油・ガス需要が増加している中国が困る。中国は、陸続きのロシア・中央アジアから石油・ガスをいれるしか道がなくなる。つまり、中国にとってロシアは、資源の供給元としてとても重要なのです。ところが、ここで両国間に大きな問題が横たわっている。中国はロシアから激安でガスを買いたい。ロシアは世界市場価格で売りたい。<ただ、今回の訪中でも、両国間の最大の懸案となっているロシア産天然ガスの中国向けパイプライン建設について合意するのは難しそうだ。ロシアが対欧州と同じ価格でガスを輸出したいのに対し、中国はその半額を主張しており、「ロシアには資源価格引き下げを迫る中国への不満が強い」(露専門家)ためだ。>(産経新聞 5月22日)

2、最新兵器の供給元として
中国の武器輸入の90%は、これまでロシアからでした。またロシアの武器輸出に中国が占める割合は、40%ほどだった。しかし、最近は事情がだいぶ変わっているのです。
<中露、蜜月にほころび 貿易摩擦拡大、強まる中国への反感:4月25日8時1分配信 産経新聞
【モスクワ=内藤泰朗】(中略)中国は、かつてロシアの最大の武器輸出相手国だった。しかし、22日付のロシアの日刊紙、独立新聞によると、最近のロシアの対中武器輸出は62%に下がり、新規契約はまったくない状態に陥った。かつて締結された軍用輸送機や空中給油機の売却契約も、価格をめぐる対立で破棄された。>ここからが最高に面白い部分です。


<さらに、中国側は、ロシアのスホイ27戦闘機とそっくりのコピー戦闘機J11を生産し、~パキスタンなど第三国への売り込み攻勢をかけているとされる。>(同上)というわけで、中ロ関係はこれまで、1、資源 2、武器によって成り立っていた。ところが、両分野で大きな問題がある。では、なぜメドベージェフは、大統領就任後初の外遊先として、中国を選んだのでしょうか?(中国の前にカザフにもいっています)
▼中ロを再接近させた要因
○ロシア側の理由
ロシアは07年秋からアメリカ懐柔に動いたという話をしました。米ロ和解の条件は、
1、アメリカはNATO拡大(具体的には旧ソ連のウクライナ・グルジア)をやめること
2、東欧へのMD配備をやめること
この二つの条件をアメリカがのめば、米ロは和解し、世界は中国包囲網の形成に向かうことになったでしょう。しかし、「冷戦時代の恐怖」を忘れられないアメリカのトップは、ロシアのシグナルを無視することにした。(米ロ和解にむけたロシアのシグナルについては、【RPE】米ロ新冷戦終わらず(08年4月8日号)をご一読ください
↓                                     
http://archive.mag2.com/0000012950/20080408004410000.html  )

例えば、メドベージェフ訪中前にも、いろいろとイヤ~なできごとがありました。


<ウクライナ>ロシア黒海艦隊「追放」 基地貸与打ち切りへ
5月22日10時0分配信 毎日新聞
【モスクワ大木俊治】ウクライナのユーシェンコ大統領は21日、同国クリミア半島のセバストポリに駐留するロシアの黒海艦隊について、両国間の協定が失効する2017年に基地貸与を打ち切る方針を決めた。北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指すユーシェンコ政権はロシアと対立しており、黒海艦隊の「追放」を打ち出したことで、両国関係がさらに悪化する可能性も出てきた。>ユーシェンコ政権はアメリカの傀儡。当然、上記の決定もアメリカの指示か許可なしではありえないでしょう。さらにMD問題でも。

<チェコ>米のMD施設受け入れ
5月22日11時42分配信 毎日新聞
【ウィーン中尾卓司】米国のミサイル防衛(MD)システム受け入れ問題で、チェコ政府は21日、システムのレーダー基地
を受け入れる基本協定を閣議承認した。(中略)しかし、チェコ国内の世論調査では、国民の3分の2が施設受け入れに反対。さらに、ロシアは「わが国の領土への脅威になる」と米国主導のMD計画に反発し、見直しを求めている。>さらに、プーチンの宿敵が選挙で勝利しました。

<グルジア>与党勝利の見通しに…国会議員選挙
5月22日18時55分配信 毎日新聞
【モスクワ大木俊治】21日投開票されたグルジアの国会議員選挙(定数150)は、22日午前(現地時間)までの暫定集計で、北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指す親欧米サーカシビリ政権の与党「統一国民運動」が約6割の得票率で勝利する見通しになった。>

・ウクライナ、ロシア黒海艦隊追放へ
・チェコ、MD受入れ
・グルジア、反ロ政党大勝利
これらのイヤ~なニュースを聞きながら、メドベージェフ新大統領、プーチン新首相は、「やっぱ仮想敵NO1はアメリカだ。中国とはとりあえず仲良くした方がよいだろう」との思いを新たにしたのです。

○中国側の理由
一方中国も、「アメリカはもうダメだな」と思っていた。中国はこんな風に思っていた。
1、ドル体制崩壊でアメリカは没落
2、中国オリンピック大成功
3、中国は次期覇権国家候補としての地位を確固たるものにする

ところが、さまざまな問題が起こってきた。
・上海株が50%も暴落
毒ギョウザ事件
・チベット問題
・巨大地震
特に痛かったのはチベット問題でしょう。欧米政府の対応は甘いですが、世界の一般人の中国に対する見方が180度かわった。こんなとき、頼りになるのがロシア。なぜか?ロシアは、チェチェン問題を抱えているので、チベット問題では中国支持なのであります。またロシアは、大地震直後真っ先に救援にかけつけています。このように、中ロそれぞれの事情があり、両国関係は再び改善されたのでした。

▼中ロは、グローバルMDに反対
さて、メドベージェフ新大統領は5月23日、北京を訪れ胡錦濤国家主席と会談しました。何が話し合われたのでしょうか?発表された「共同宣言」で、両国はアメリカの軍拡に強く反対しています。具体的には?

・中ロは、アメリカのグローバルMD構想に反対する
・中ロは、宇宙の平和利用を支持。宇宙における軍拡競争に反対
・中ロは、宇宙利用に関する国際法整備をすすめることを支持
・中ロは、大量破壊兵器拡散問題の「政治的・外交的解決」を支持する

どれを見てもわかりやすい内容になっています。両国はなぜグローバルMDや宇宙における軍拡競争に反対するのか?これはもちろん、資金力でも技術力でもアメリカにかなわないから。最後の大量破壊兵器問題。これはアメリカのイラン攻撃に反対するという意味。中ロは、自国の利益を追求しているだけですが、表面上は、「戦争反対、平和支持」である。これは、もちろん国際社会における宣伝材料になります。(アメリカは、イラク攻撃を強行し、国際社会の信用を失った)

▼貿易におけるロシアの不満
さて、両国は「反米」で一体化しているものの、問題点もあります。その一つが貿易問題。両国の貿易量は急速に増加している。しかし、ロシアはその構造に不満をもっている。どういうことか?ロシアには、(日本と同じように)中国製品が洪水のように流れんでいる。服から家電から自動車まで。一方、ロシアが中国に輸出しているのは、ほとんど石油と木材のみ。私は、(【RPE】メドベージェフのロシア2(ロシアはどうなる?)2008年3月3日号 )の中で「ロシア製造業の未来は暗い」と書きました。なぜかというと、
1、ロシアは中国比で賃金水準が高い(外資にとって魅力が薄い)
2、オイルマネーの流入でルーブル高が進み、世界市場でロシア製品の価格が高騰している。(競争力が下がっている)
ここでは詳しく書きませんが、興味のある方は、【RPE】メドベージェフのロシア2(ロシアはどうなる?)2008年3月3日号 

http://archive.mag2.com/0000012950/20080303083509000.html?start=20  )
を再読してみてください。
そんな、「ロシア製品買え!」なんていわれても、中国は困っちゃいますよねえ。それでも具体的に、「中国は、ロシアからこれを買いましょう」という話がでました。メドベージェフさんと胡錦濤さんは会談後、記者会見をした。メドベージェフは「中国との貿易の質を変える」ことに言及。特に、民間航空機・原子力・宇宙分野・IT・ナノテク。さらに、ロシアは中国の交通インフラ発展に協力する。両国の銀行間の協力を深化させる。もう少し具体的な点を見てみると。

・ロシアは中国にウラン濃縮工場を建設する
・ロシアは低濃縮ウランを中国に輸出する
国営ロスアトムのキリエンコ社長によると、契約金額は10億ドル(1000億円)以上になる。さらに民間航空機の分野では、中国がロシアの「スホイ・スーパージェット100」を購入する可能性もあるそうです。(コピーされることを恐れないのでしょうか?)スーパージェット100は、ロシアがボーイング・エアバスに対抗するために開発している。まあ、原子力はともかく、中ロの経済構造が大きく変わることはないでしょう。

▼両国の未来は?
もう一度振り返ると、アメリカが旧ソ連諸国でカラー革命を起こし、ロシアを追い詰めた時期、中ロ関係は劇的に改善された。(特に05~07年)しかし、アメリカがボロボロであることがわかった途端、中ロ間に距離が生じた。(特に07年夏以降)欧米の中ロバッシングが激しくなり、また両国は一体化している、という流れ。中国・ロシアの未来はどうなのでしょうか?これは、アメリカの没落がさらに明白になるまで一体化している。(内部矛盾を放置したまま。。。)ただロシアは、中国を裏切る準備はいつでもできているのです。条件は、
1、アメリカがNATO拡大(ウクライナ・グルジア)をやめる
2、アメリカが東欧MD計画をやめる
3、アメリカがロシアを民主主義国家と認める
実現すればどうなるか?欧米日に、インド・ロシアを加えた民主主義連合は、世界で唯一残された共産党の一党独裁国家中国を封じ込める。そして、中国はいずれ民主化され、世界から日本の仮想敵は消滅する。日本にとって最良のシナリオはこれです。ただ、アメリカがロシアに譲歩するというシナリオは、現段階では夢物語。(おわり)