穀物は食糧なのか、それとも燃料なのか
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▼穀物は食糧なのか、それとも燃料なのか
(フォーリン・アフェアーズ)
原油価格が高いレベルで推移し、一方で環境問題への関心が高まるなか、世界的に代替燃料としてのエタノールが注目を集めている。しかし、トウモロコシや大豆を原料とするエタノール生産は世界の穀物供給を逼迫させ、価格を高騰させている。メキシコのトルティーヤ粉だけでなく、サハラ砂漠以南、その他のアフリカ、アジア、ラテンアメリカの貧困地域の主食であるキャッサバの価格も2010年までに33%、2020年までに135%上昇すると考えられている。バイオ燃料の需要増によって主要産品の実勢価格が1%上昇するごとに、世界で食糧難に苦しむ人々の数は1600万人ずつ増えていく。しかも、栽培・生産のために多くのエネルギーを必要とするトウモロコシや大豆は、環境を汚染する作物だ。エタノールを真にグリーンで持続可能な代替燃料とするには、木や草のセルロースからの生産の実用化を期待するしかない。
C. Ford Runge ミネソタ大学応用経済学・法学教授で、同大学の国際食料・農業政策センター(CIFAP)所長。専門は貿易や資源政策で、これまで米下院農業委員会のメンバーや米国際開発庁(USAID)の食料援助スタッフなどを務めた。
Benjamin Senauer ミネソタ大学応用経済学教授で、CIFAPの共同所長。これまでに米農務省経済調査局調査員、国際食糧政策研究所(IFPRI)客員フェロー、世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)の客員研究員などを務めた。
エタノールバブル
1974年、石油輸出国機構(OPEC)が課した石油の禁輸措置の経済への悪影響が高まるなか、米議会は、トウモロコシを原料とする代替燃料であるエタノール生産の促進に向けた最初の法制化措置をとった。
1977年4月18日、エネルギー自給路線を求める声の高まりを受けて、カーディガンをまとってテレビに登場したジミー・カーター大統領は、アメリカ市民に、国内で入手できる資源でエネルギー需供のバランスを図るのは、ライフスタイルの見直しが不可欠となるために、「社会規律面での戦い」になると、その覚悟を訴えた。
1970~80年代にガソリンへの鉛の添加がしだいに低下したことも、新興のエタノール燃料の追い風となった(鉛をガソリンに添加すると燃費が向上するため重宝されていたが、鉛が有害物質であることが問題視され、しだいに、エタノールとの混合ガソリンが注目されるようになった)。一連の税制上の優遇措置と補助金もエタノール使用に向けた追い風をつくりだした。だが、こうした措置がとられたにもかかわらず、アメリカの輸入石油への依存は高まり、エタノールは周辺的な代替燃料の座に甘んじてきた。
だがここにきての原油価格高騰と潤沢な政府の補助金を背景に、トウモロコシからつくられるエタノールが大きな注目を集めている。
米再生可能燃料協会(RFA)によると、2006年末の時点でアメリカ国内には110のエタノール生産・精製施設があり、その多くが精製能力を増強するための設備投資を行っており、新たに建設中の施設も73ある。これらの設備投資計画、新規施設建設計画が完了すれば、2008年末までに、アメリカのエタノール生産能力は年間114億ガロンに達すると試算されている。ちなみに、ブッシュ大統領は2007年の一般教書演説で、2017年までに、アメリカが、現在の目標レベルの5倍に相当する、年間350億ガロンの再生可能燃料を生産することを求めている。
エタノールその他のバイオ燃料が注目されたことで、数億ドルの税金を補助金としてのみ込んでいる代替エネルギー産業はいまや大きく勢いづいており、これは何もアメリカに限った現象ではない。
2005年の世界のエタノール生産量は96億6千万ガロン。そのうち45・2%をブラジルが(サトウキビから)生産し、44・5%をアメリカが(トウモロコシから)生産している。おもにヨーロッパが(脂肪種子から)生産するバイオディーゼル燃料の生産量もほぼ10億ガロンに達している。
エタノール産業の成長は、生産されたトウモロコシのますます多くがエタノールを精製する機械にのみ込まれていくことを意味する。あと数年もすれば、エタノール精製工場がアメリカのトウモロコシ流通量のほぼ半分をのみ込むようになるとする試算もある。エタノール需要の高まりによって、トウモロコシの備蓄は、天候不順で不作だった1995年以降、いまや最低レベルへと落ち込んでいる。いずれアイオワでさえも、実質的にトウモロコシを輸入するようになると考えられている。
エタノール産業が膨大な量のトウモロコシを必要とするために、穀物を中心に食糧供給システムそのものが揺るがされている(アメリカは、世界のトウモロコシ生産総量の40%を生産し、総輸出量の半分以上もアメリカによるものだ)。2007年3月、トウモロコシの先物取引の価格は、それに先立つ10年間で最高の1ブッシェル(約9ガロン)あたり4・38ドルの値をつけた。小麦とコメの価格も過去10年間で最高の値をつけている。これは、小麦やコメなどの穀物がトウモロコシに代わる食糧として用いられだしているにもかかわらず、農家が他の穀物の栽培をやめて、トウモロコシの作付面積を増やしているために、供給が需要に追いつかなくなってきているためだ。
こうした現実はトウモロコシ生産農家にとっては夢のような状況かもしれないが、消費者、特に貧しい途上国の消費者にとっては決して良いニュースではない。
石油と穀物価格の高騰という事態は彼らにとって悪夢にほかならない。世界銀行は2001年の報告で、世界の27億人が一日2ドル以下での生活を余儀なくされていると指摘している。こうした人々にとっては、主食用の主要産品のわずかな値上げが壊滅的な打撃となる。
多目的スポーツ車(SUV)の25ガロンの燃料タンクをエタノールで満たすには、450ポンドのトウモロコシが必要になる。この量のトウモロコシがあれば、一人の人間が1年間生きていくのに必要なカロリーを摂取できる。食用穀物のグローバルな供給を逼迫させているエタノール生産の増大は、世界的に、加工食品、主要穀物の価格を高騰させている。石油価格と食糧価格をリンクさせてしまったバイオ燃料の増産は、今後、食糧生産者、消費者、国家間の関係を大きく変えていく可能性があり、世界の貧困と食糧安全保障に壊滅的な意味合いを持つ恐れがある。
バイオ燃料産業を左右する原油価格
アメリカその他の主要国におけるエタノール産業は、補助金、生産割り当て(買い上げ)、税制優遇措置など、政府によって保護されている。この数年来の原油価格の高騰によって、エタノール燃料の市場での相対的競争力は強化されたとはいえ、実際には、アメリカ政府はトウモロコシ生産農家とエタノール生産者を補助金その他で手厚く保護している。アメリカにおける2005年のトウモロコシ生産への補助金は実に89億ドル。2006~2007年にはトウモロコシ価格の高騰ゆえに補助金額は低下していると思われるが、2005年に導入されたエネルギー法、成立間近とみられるエタノール生産促進のための農業法に盛り込まれた優遇税制、貸し付け、政府ローンを考慮すれば、エタノール関連産業が手厚く保護されていることに変わりはない。すでに連邦政府はエタノールとの混合燃料の生産者に対して、使用するエタノール1ガロンにつき51セントの税控除措置を認めており、これに加えて、州政府の多くが補助金を提供している。
アメリカで2006年のエタノール消費は60億ガロンを超えていると考えられている。2005年にアメリカ政府は2012年までにバイオ燃料の利用を75億ガロンに増やすことを求め、2007年初頭には37人の州知事が、2010年までにバイオ燃料の利用目標数値を120億ガロンに引き上げることを提案している。ブッシュ大統領も2007年1月に、数値をさらに引き上げて、2017年までに350億ガロンの利用を目標に設定している。地下水を汚染させるために段階的に使用が禁止されてきたハイオクガソリン添加物のMTBEの代わりにエタノールを使用するとすれば、それだけでも毎年60億ガロンが必要になる。
欧州委員会(EC)は、菜種油やヒマワリ油を原料にヨーロッパで生産されたバイオディーゼル燃料の使用を促すために、規制と指令を用いている。2005年に、ヨーロッパは、世界の生産量の80%に相当する8億9千万ガロンのバイオディーゼル燃料を生産している。欧州連合(EU)の共通農業政策でも、直接、間接の補助金の対象とされているサトウキビや小麦の双方からのエタノールの生産が奨励されている。ブリュッセルは、2010年までにEU内で消費される自動車燃料の5・75%をバイオ燃料にし、2020年までにその比率を10%に高めたいと考えている。
現在、アメリカとほぼ同じ規模のエタノール生産を手がけるブラジルは、そのほとんどをサトウキビからつくっている。アメリカ同様にブラジルも、1970年代半ばから代替燃料の生産を試みだした。ブラジル政府はエタノール生産を奨励する誘因、技術基準を導入し、技術開発と市場整備への投資も行い、すべてのディーゼル燃料には2008年までに2%、2013年までに5%のバイオ燃料を混合することを義務づけている。それだけではない。自動車メーカーに対して、バイオ燃料で動くエンジンの生産を求め、この目的を促進するために広範な産業基盤を整備し、バイオ燃料生産のための土地利用政策も導入した。バイオ燃料の生産に積極策を打ち出している国は他にもあり、東南アジアでは、広大な熱帯雨林が伐採されて野焼きにされ、そこに、バイオディーゼル燃料の原料とされるギネアアブラヤシが植林されている。
こうしたトレンドは大きな勢いを持っている。最近低下傾向にあるとはいえ、専門家の多くは、原油価格は長期的に高いレベルで推移するとみている。供給増よりも速いペースで需要が伸びているからだ。これに加えて、新しい油田が発見されても採掘にはかなりのコストがかかるし、資源は多くの場合政治的リスクのある地域に存在することが多い。
米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)の最新の予測によると、世界のエネルギー消費は2003年から2030年の間に、中国やインドなどの途上国の需要増に引きずられて71%上昇し、2015年までに途上国の消費量が経済協力開発機構(OECD)諸国の消費量を上回るようになる。その結果、石油価格が一貫して上昇するために、(急激な需要増を満たそうと)エタノールやバイオディーゼル燃料の生産者は、トウモロコシや脂肪種子にプレミアムを支払ってでも調達しようとする。
石油価格の上昇につれて、エタノール価格も上昇するが、それでもエタノールの競争力が相対的に高いので、ますます多くのエタノール生産者が競ってトウモロコシを購入するようになる。石油が1バレル80ドルレベルに達すれば、エタノール生産者は、1ブッシェルのトウモロコシに5ドル以上を支払っても元がとれると考えるはずだ。
原材料価格がここまで上昇すれば、バイオ燃料志向の高まりは、他の農業部門にも圧力をつくりだす。すでにこれは現実となりつつある。アメリカでは、バイオ燃料産業の成長が、トウモロコシ、脂肪種子その他の原料となる穀物の価格だけでなく、バイオ燃料とは関係がないと思われる作物や農産品の価格さえも高騰させている。
エタノール用のトウモロコシ生産の作付面積が増えたことで、他の作物のための農地が減少している。エンドウやスイートコーンなどの穀物を原料に用いる食品加工業者は、安定した供給を維持するために、より多くのコスト負担を余儀なくされだしており、最終的に、こうしたコスト増は、価格の上昇として消費者に押しつけられる。
また飼料価格の高騰が家畜産業、養鶏産業を直撃している。ミネソタ大学のアグリビジネスの専門家、バーロン・エイドマン名誉教授によれば、飼料価格の高騰によって、養鶏、養豚産業などの収益率は大きく低下している。収益率がこのまま低下し続ければ、生産も低下し、鶏肉、七面鳥の肉、豚肉、ミルク、卵の価格が上昇する。トウモロコシをエタノール生産者と奪い合うことになるアイオワの養豚業者の多くは、今後数年間で廃業に追い込まれるかもしれない。
トウモロコシからのエタノール生産を支持する人々は、エタノールの需要増を満たすには、農地と生産量を増やせばよいと言う。しかし、この10年間でアメリカのトウモロコシ生産の伸び率は2%未満にとどまっており、仮に生産量を現在の2倍に増やせたとしても、需要を満たすことはできない。より多くの農地でトウモロコシを栽培するには、他の作物のための農地を奪い取るか、米農務省の保全休耕プログラム(CRP)によって保護されている土地に、環境を犠牲にして作付けを行うしかない。
こうした基本的な市場の流れに加えて、バイオ燃料マニア(熱狂)とでも言うべき投機熱もみられる。価格が上昇しているのは、バイヤーの多くが、価格が上昇すると先を読んでいるためでもある。ヘッジファンドは、エタノール絡みでトウモロコシの先物にかなりの資金をつぎ込んで、上げ相場に賭けている。バイオ燃料マニアが過熱するなか、後先を考えずに、穀物備蓄が放出されている部分もある。
一方でエタノールは、SUVのような大型の燃費の悪い車を手に入れたいと考えつつも、石油をガブ飲みする車の環境問題への悪影響から購入をためらってきたマイカー族の悩みを解決するかもしれない。アグリビジネス、投機家、一部の農家にとっても、エタノールは大きな利益を手にする機会を提供しているかもしれない。しかし一方で、エタノールブームは、伝統的な穀物流通の流れを混乱させ、内外の農産品に関する貿易と消費のこれまでのパターンを覆してしまっている。
こうしたエタノールブームも、グローバル経済が低迷して原油価格が低下すれば、また別の問題をつくりだす。原油価格が30ドルになれば、トウモロコシの1ブッシェルの価格が2ドル以下にならない限り、エタノールを生産しても利益は期待できなくなるし、一方で、トウモロコシ価格の低下は農家にとっては、いまわしい低価格時代に逆戻りすることを意味する。資金不足のエタノール施設は危機に直面し、提携農家は特に追い込まれる。補助金、買い上げ、優遇税制を求める声はいまよりもますます大きくなる。過剰投資のツケを払わされるエタノール産業に対する救済措置を求める声も高まっていくはずだ。こうなれば、バイオ燃料産業への大規模投資は、全くの当て外れだったとみなされる。一方、原油価格が55~60ドルで推移すれば、エタノール生産者はトウモロコシ1ブッシェルあたり3・65~4・54ドル支払っても、通常の12%の利益率を維持できる。いずれにせよ、エタノール生産への大規模な投資と補助金の根拠とされているアメリカのエネルギー自立路線は、すでにエタノール産業を石油市場における高価格に依存させてしまっている・・・
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ようちゃんの意見。↓
★NHKのクローズアップ現代で 2夜連続「水不足が起きている。農業への影響」を放映していた。豪州の旱魃は酷くてハンバーガ1個作るのに使う水として 牛肉が900L 小麦が70l レタスが2lの水を使うそうです、小麦や米は水を大量に使うので、価格が高く売れて、水をあまり使わないオリーブに畑が転換してる事や、水の売買が行われてる、という事や、地中海地域では、井戸や灌漑にも海水が浸透してきて塩害が起きてるので、地中海の海水を淡水化して使ってる。(日本のITでの
水の濾過装置を応用して、淡水化してる。)など、水の不足が深刻な様子を報道した。 バイオ燃料などは、やはり行き過ぎで良くない。
日本は日本近海に眠ってる氷の石油(メタンハイドレード)の実用化が
一番近道ではと思ってる。