宮崎正弘の国際ニュース・早読み ・ 国際戦略コラム
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宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成20年(2008年)5月26日(月曜日)
通巻第2201号 (2200号突破記念増大号)
四川省大地震の再建に5000億人民元(7兆5000億円)
初年度国家財政出動700億元だけは決定、しかし将来の財源は示せず
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四川省の災害による実損は1500億元と見つもられた。
復興資金には合計5000億人民元が必要と当局の計算がなされ、初年度の国家財政からの出動700億元だけは確保された(多維新聞網、25日付け)。
国務院には地震対策チームが発足した。
復旧の第一は交通網(鉄道、高速道路)、電話網(携帯の中継局を含める)、電力と水道。とくに電力はダムが損壊して四川省内の電力は完全に不足している。
水道も疫病の発生が伝えられ、再建が急がれるがまったく見通しは立っていない。復旧の第二は役所、学校の建設などだが、これには地方自治体が債券発行などにより調達する計画、また民間ならびに国際的な援助を頼みの綱にしている。当面は救援作業の継続であり、物資の整理、均等の分配のための監査も必要。同時に医療チームと病院の充実、多省の病院への搬出、仮設住宅の建設なども急がれている。
というわけで復興に必要な資金は5000億人民元(7兆五千億円)と見積もられる。財源の見通しが立たず、いったい神戸の再建はどのようになされたのか、という質問が当局に集中しているという。神戸震災の再興費用は24兆円(当時の日本のGDPの2・5%に相当した)。
中国のGDPの3%相当額が、5000億人民元。残り4300億元の資金に関して、具体的計画はない。それにしても「中華」「愛国」大合唱の中国で五輪開催の秒読みが始まってからというもの、SARS、AIDS、鳥インフル、そして昨年は大洪水被害に株式、不動産の暴落。ことし二月の大雪、三月のチベット、さらに大地震ときた。
孔子は『中庸』に書いた。「国家将に興らんとするや必ず禎祥(ていしょう)あり。国家将に滅びんとするや必ず妖孽(ようげき)あり」(国が興隆しようという時には人々も世の中も活力で満ち溢れ、国が滅亡しようとする時には不吉な前兆がある)。
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♪(読者の声1)貴誌2200号の(読者の声1)への貴台のコメント、「それに比べると台湾のデモクラシーは、若いけれど、やや日本的で優しいのでは?」そうありたいと願いますが、すでに陳前総統への検察チームの動きが始まっているようです。台湾が韓国を真似る必要のないことを、貴台の隠密ルートと公然ルートで、台湾の現政権に伝えることはできませんか? 馬英九総統が検察を抑えれば、韓国のレベルを越えることができると。さらに大陸への優越性を保持できると。就任式での演説には、修辞でその気配があるように感じましたが。そこを衝いていただければ。(NI生、東日本)
(宮崎正弘のコメント)民進党の多くが陳水扁さんから離れてしまったため、同情が広がっていません。その隙を巧妙に国民党が衝いてきた。外省人と本省人の心理的乖離がこれから浮き上がるかも知れません。復讐するは我にあり、というのが国民党の非主流派の外省人ですから。
しかし呉伯雄主席も江丙伸副主席も本省人。副総統の粛萬長も本省人ですから、あまりやり過ぎると国民党は空中分解の危機に遭遇します。
♪(読者の声2)貴誌2199号に政治学者、永井陽之助のことが出てきましたが、彼のデビュー作とは『平和への代償』ですね。
しかしこの分野に関しては日本の論を考究することはさておき、ラスキ氏等西洋の社会思想家、政治学者たちが格闘した「主権在民」の矛盾といった議会制民主主義の根本的な問題を本来の意味での「ラジカル」に考え抜くことが非常に大切であると思います。
議会制民主主義が社会に根付くために必須の過程が日本には欠けていたように思います。特に戦後にはまったく等閑視されてきたのではないのでしょうか。むしろ戦前の多少左がかった末弘厳太郎氏のような法学者がこの問題を取り上げています。私にはこの西洋社会思想史の難問と取り組むことが、翻って、日本の国体を現代という視点に立って理解し再創造するために肝要であると考えます。(ST生、神奈川)
(宮崎正弘のコメント)こんどは懐かしい情景を思い出しました。
『日本学生新聞』のインタビューで、(昭和42年だった記憶があります)、東京工業大学に赴任されたばかりの永井陽之助教授を訪ねたのです。カメラを当時、目白にあった「論争ジャーナル」へ借りに行き、テープレコーダーは小生が英文科のLL教室で買わされた、とてつもなく重い機械でした。えっちら運び込みました。同行したのは山浦嘉久氏で、着くなりインタビューそっちのけの議論が始まり、結局、記事にならず『平和の代償』の読み方のような囲み記事を書いた記憶があります。その後、しばし永井氏はレトリックのうまさで論壇を風靡しましたね。いまとなっては、あの議論は何であったのか? 丸山真男からレトリックだけ学んだのでしょうか?
♪(読者の声5)すこし前のことですが、中央大学で李登輝先生のインターネット講演会を開催した者です。あの時は、いろいろありがとうございました。先生のメルマガを拝見し勉強させてもらっています。先月まで私は高雄に留学をしていましたが、その高雄で許昭栄先生には大変お世話になっていました。 私自身、高雄の旗津にある公園のことでお手伝いをしていましたので、先週のあの事はとてもショックでした。去年、台湾国際放送で公園の事について紹介する番組を放送し、現在もオンデマンドで聞くことができます。
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高雄の「戦争と平和紀念公園」は許昭栄先生、自身が私財をなげうってようやく第一期工事が完了したばかりで、第二期工事に関しては見込みも立ってない現状でした。実は生前に、許昭栄先生と、台湾無名戦士記念碑の歴史と公園の事を紹介する日本語の本を作成する話をしていました。日本人の我々で何か公園のこと、許先生の遺志を継いでできることがあればと切実に思います。(KW生)
(宮崎正弘のコメント)許さんは80歳という老齢をおして、台湾政治に抗議して焼身自殺を遂げられた。老烈士の名にふさわしい。ちかく追悼の催しがあると伺っております。次回、高雄を訪問しら、当該の公園に出向き、記念碑に合掌したいと考えています。
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国際戦略コラム NO.2941
農業改革について
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農業改革が必要になっている。農業は今が再生の最大の
チャンスで ある。この考察をしよう。 Fより
このコラムの読者MYさんから、現行法律でも農業生産
法人の一形態 としての株式会社は、農業への参入を
認められているが、Fさんの いう「企業の参入をまだ認め
ようとしない。」いうことは一般的な 企業のことですかという
質問をいただいている。
答えはYESです。アサヒビールは、中国では大農場を持ち、
有機 野菜を作り、都市の富裕層向けに出荷している。
近所の農民が会社 員として、このアサヒに勤めている。
出荷は午前3時から作業をす ることもあるという。このように
農業経営も大企業が行うと、栽培 方法や流通経路、
顧客対象が違うことになる。
今チャンスなのは、日本だけではなく、中国やインド富裕層
向けの 有機農産物である。有機農産物はある程度高くても
需要がある。し かし、有機農産物の栽培は難しく、日本の
農家では5000人程度しか 行われていない。需要はあるが、
それに対する供給が追いついてい ないのだ。
現時点、日本の企業参入が許されているのは、カゴメが
行っている ような大規模温室栽培や野菜工場としての水
耕栽培など特殊なもの だけである。路地物は許されていない。
研究開発投資が必要で、かつ失敗のリスクがあるために、
有機野菜 の栽培は普通の農家ではできないようである。
農業は定年退職Uタ ーン組もできない。自分の食べる分しか
作れないのである。農業と いう職業選択の自由は日本には
ないのだ。
その上、農家は減り続け、320万人しかいない。
その320万人 も6割の人が65歳以上という状態である。
零細な農家では農産物 価格は安いので成り立たないことで、
農村部の若者達が都市に出た ために、そうなっている。
このまま、現在のような保護政策は日本 農業を益々衰退させ、
農産物が世界的に不足しているのに、日本農 業が崩壊する
ことになる。今後の農業は自立した企業経営としての
基盤を持ち、大規模な取り組みしかない。その企業に勤める
ことで 安定した収入を得る方が農家よりいいと見る。そして、
今後地方の 土建業も公共工事がなくなり、その企業維持が
危ぶまれている。
その企業が農業に参入する道を取ることが地方の活性化に
とっても 、いいように感じる。もし、農業技術の研究を企業
ベースで行うなら、サントリーの青色のバラではないが、
新製品、新技法を生み出すことになると見ている。
日本の高級な食材をアジアの富裕層は求めているし、日本
農業は違 う発展に向かうと見るがどうであろうか??もう、
戦前の小作農家を引きずる政策を止めるべき時に来たと思うが、
どうであろうか??
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「2933 日本時代への改革を 」について MY
表題稿にある農業への「企業の参入をまだ認めようとしない。」に ついて以下の記述をみつけましたので、検討をお願いします。「日本の農業150年」 編者 暉峻衆三(てるおかしゅうぞう)
有斐閣ブックス 2003年12月初版 p277より
「財界などからの要求をふまえて、(農業生産法人の一形態として の株式会社)を容認することを今後の検討課題とした。曲折を経て 、2000年12月に農地法が改正され、耕作者が主体である農業 生産法人の一形態としての株式会社の農業への参入が認められ、また永年の懸案であった小作料の定額金納制の廃止が実施されることになった。こうして株式会社の土地利用型農業への参入の突破口がこの期に切り開かれ、小作料制度を貸し手(零細農家)に有利にすることによる農地流動化の促進がはかられた。」
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とあります。上記のなかでは
(農業生産法人の一形態としての株式会社、耕作者が主体である農 業生産法人の一形態としての株式会社)と形容詞?のない(株式会 社)は、別物と解釈すべきなのでしょうか。それを踏まえて Fさんは、つまり、一部制限つきの会社は可であるが、オールマイテ ィの会社である「企業の参入をまだ認めようとしない。」と述べて おられるのでしょうか。
「平成の農地改革」が今秋にでるそうで、緩和傾向のようです。現 状でも農地リース方式で企業参入は増えていると思います。