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ようちゃん、おすすめ記事。↓

1 豪ラッド首相とチベット問題
(1)産経新聞の記事
「中国は最大の貿易相手国だが、輸出だけでみると、依然として日本は最大の地位を占めている。・・<しかし、>昨年12月に発足したラッド労働党政権は日本の調査捕鯨に対し、・・激しく非難<した。また>・・ラッド<新>豪首相<は、このたび>・・同盟国・米国を真っ先に訪れたのは当然として、次に欧州諸国、そして中国を歴訪する。が、日本は素通りである。別に早足の歴訪というわけではない。18日間に及ぶ長期外遊であり、中国には4日間滞在する・・野党時代のラッド氏の海外出張費を中国企業が一部負担していた事実が最近明らかになった。そして胡<錦濤国家>主席は・・昨年9月<の>・・野党党首時代のラッド氏と<の>・・初会談の際、まるで褒美を与えるかのように、ラッド氏と家族を北京五輪に招待した・・<オーストラリアにとって>中国は最大の貿易相手国だが、輸出だけでみると、依然として日本は最大の地位を占めている<というわけで、>・・日中両国は豪州において競合関係にある・・知らず知らずのうちに中国の掌中でラッド首相は踊らされていないのか<心配でならない>。・・確実なことは、ハワード、安倍晋三両政権が退陣したことで、自由と民主主義という共通の価値観だけで共鳴できる日豪関係は終わりを告げたということである。」これは、産経電子版に載った同紙シンガポール支局長の嘆き節です。
 (2)豪ラッド首相の講演
しかし、(若干できは悪いけれど、)イギリス直系の自由民主主義国家の首脳であり、支那を熟知している上に、日本の調査捕鯨を激しく非難するような考え方のラッド豪首相が、(鯨と同じく、絶滅する懼れのある珍種であるところのチベット人に係る)チベット問題を抱える中共とうまくいくわけがない、ということをこの記者は思い至らなかったと見えます。
案の定、訪中したラッド首相は、北京大学での講演で、諸外国の首脳の中で突出した率直な発言を行いました。彼は、チベットにおける人権問題を直視せよと語りかけたのです。
そして彼は、自分は支那の、近代支那文化において最もねじ曲げられた概念となった「朋友(pengyou)」、「友誼(youyi)」・・「外国朋友(waiguo pengyou)」とは助けてくれて絶対に批判しない人を指す・・ではなく、7世紀の支那における「親友(zhengyou)」・・直接的な便宜を超えた、継続的かつ深甚、かつ誠実なる友情のためのより広く堅固な基盤を見つめる仲間・・でありたいと述べ、「強固な関係にして本当の友情は、相互の基本的な利害と将来への洞察に関する直接的にして率直かつ絶え間なき対話があって初めて築くことができる」と述べたのです。日本にも中共の「親友」を自認する政治家はたくさんいるけれど、「外国朋友」ばかりであり、ラッドのように北京に行って率直な物言いができる人はいないのではないでしょうか。その上、ラッドは北京官話でこの講演を行ったのですよ。

2 チベット史の真実
(1)チベット史の真実
ようやくチベットの歴史を踏まえて、チベット問題を論じた論考が米英の主要メディアに登場しました。前にも申し上げたように、英米のエリートにとっては、チベットの歴史の大筋など常識の部類に属するが故に、このような論考掲載の意味がなかったということなのではないかと私は解しています。米インディアナ大学のチベット学教授のスパーリング(Elliot Sperling)によるニューヨークタイムス掲載論考の概要をご紹介しましょう。一部私の言葉に直しました。

チベット人は、チベットが7世紀中期以降独立を保ってきたと主張しており、13世紀と14世紀に元に隷属し、18世紀から20世紀まで清に隷属したように見えるかも知れないが、単に元や清の皇帝達の精神的指導者をチベットの著名な高僧(lama)が勤めたという個人的関係が存在しただけであり、チベットは一貫して独立を維持し続けたとしている。
他方、中共当局は、支那(China)は何千年もの間、(少なくとも観念的には)一体的な多民族国家であり続けてきたのであって、支那の政権を奪取したモンゴル人だって支那人であり、支那の歴代政権に隷属してきたチベット人も支那人だとしている。
この二つの支那史観ないしチベット史観のどちらもウソだ。チベット人が唱える個人的関係説は、元と清の行政文書や公定史書が、それぞれの規則、法律、決定にチベットが服していたことを記していることから簡単に論駁できる。
しかし、チベットは元と清にこそ隷属してはいたが、漢人地域と並列の地域だった。また、元と清の間の明(1368~1644年)の時代には、その行政文書や公定史書から、チベットが独立していたことは明らかだ。だから、13世紀以降、ずっとチベットは支那の政権に隷属してきたとの中共当局の説もまた正しくない。そもそも20世紀初頭まで、漢人の文人達は、チベットは18世紀に清に隷属したとしていたものだ。しかも彼らは、チベットが、元の時代にそうであったように、清の皇帝の封建的支配下にある(feudal dependencyである)とし、漢人地域とは区別されていることを認めていた。清が1911年に崩壊した時、チベットは再び独立し、1912年から中共が成立した1949年まで、支那の政権はチベットに支配権を行使したことはなく、ダライ・ラマ政権がチベットを統治する状態が、1949年ならぬ、中共がチベットを武力で併合する1951年まで続いたのだ。すなわち、チベットは、1951年に歴史上初めて、漢人地域と区別されない形で、支那の政権を標榜する漢人の政権の支配下に置かれたのであり、中共当局の支那史観ないしチベット史観のウソの度合いは、チベット人のそれに比べてより大きいと言えよう。
  (2)コメント
以上のようなチベット史の真実を踏まえれば、ダライ・ラマ14世の中共当局への要求は、チベットを清時代の法的状態に戻そうという中途半端なものであるところ、これでは中共当局もチベット人も飲めるわけがないでしょうね。
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<KAZU>
朝生ご出演おめでとう?ございます。私は番組当初から好んで観ていますが、当初の5時間枠から現在の3時間枠になってからは、激論が減り、エンターテイメントとしての面白みは相当減りました(と個人的には感じています)。田原氏の司会を批判する向きも多いですが、それでもなお、田原氏、およびあの番組の果たしてきた役割は大きなものがあると思っています。TVタックルやたかじん、太田総理・・・のような番組が叢生したことにも繋がっていますし・
・・。
太田さんのご登場はまさに待望の真打ちと期待したいところですが、太田さんの含みのある(それが売りになっちることは承知していますが?)丁寧なご発言は、あの番組では他の猛者からすぐ遮られたり、話途中で突っ込みを入れられそうな場面をついつい想像しています(出演後、新参の方からは、いたいことがちっとも言えなかったよなんてぼやきがよく聞かれます)。
狙い目?としては、番組開始時には、静けさがあり、一定の冒頭陳述的な時間配分があろうかと思いますので、その時間に一気に、ブリッツ・クリーク!していただきたいと希望します。そうなれば、朝生でも、チャンネル桜の時のように太田さんが主役になられるものと期待します。大変僭越と重々承知するところですが、長年の朝生ウォッチャーとして大いなる期待を込めて進言させていただきます。

<太田>
皆さん、ばかに力はいってますね。いずれにせよ、朝生、実際に見たことないので参考になる情報を色々ありがとうございます。

<コバ>
--米兵受刑者の豪華特別メニュー--
赤旗によれば、米兵受刑者はその他の受刑者とは違って、ステーキやデザートなど豪華な特別メニューが用意されているそうです。米軍からの補充食料が認められているからだそうですが、その補充食料も日本政府からの思いやり予算で賄われているのでしょうか? しかし、不平等条約を撤廃させようと努力した昔の政治家のような革命家は今や日本では死滅してしまったのか…。

<太田>
もっとすごい記事が出てましたよ。「日本に駐留する米兵らの事件をめぐり、日米両国政府が一九五三年に「重要な案件以外、日本側は裁判権を放棄する」との密約に合意し、日本側がその後約五年間に起きた事件の97%の第一次裁判権を放棄していた・・・日本の裁判が実施されたケースについて<も>「米側の軍法会議で裁くより、刑罰が軽くなっている・・・現在でも・・・沖縄県などで相次いでいる事件は不起訴となるなどして日本の公判廷で裁かれないケースも多く、事実上の裁判権放棄が慣例化している 日本が米国の属国ではないなどとのたまう極楽とんぼの目開きメクラ・・失礼!正しくは「健常風視覚障害者」・・諸君、いいかげん分かってくれたかい?

<太田>
コラムがらみで気付いた記事をいくつかご紹介しておきます。
 
(その1)
英BAEシステムズの社長(CEO)他1名が、米国入国時に一時拘束され、パソコンと簡易端末(Blackberry)を押収、検査されました 「BAE社は、トルネード戦闘機など武器売却に絡み、少なくとも10億ポンド(約2000億円)に渡る裏金をスルタン皇太子の息子で元駐米大使のバンダル王子らに渡したとの疑惑が報じられてい」ます。

将来、米当局が全入国者全員に対して行うことを検討しているところの、パソコンのハードディスク内容のチェック(コラム#2552)の予行演習という趣があ
る話ですね。これは同時に、サウディ疑惑(最近のコラムでは#2480、2482)でBAEを追求している米国司法当局のなみなみならぬ決意の表れでもあります。

 (その2)
福田首相にインタビューしたワシントンポストの重鎮記者ホーグランドが(JimHoagland)、ミャンマーへの人道的介入(コラム#2539、2541、2547、2549、2555(以上未公開)、2550、2552)に一致して消極的な日本の政治家、官僚、自衛官の姿勢をこきおろす論説を書きました。 一方、ロサンゼルスタイムスは、リーフ(David Rieff)の、ミャンマーへの人道的介入を叫んでいるのが欧米の援助団体と英仏政府要人であることを指摘した上で、前者は自分達の出番がない場合の被害拡大想定を過大視するのが常だとし、後者については、東南アジアに「人道的目的」で植民地を拡大したかつての歴史を省みてモノを言え、という人道的介入に批判的なコラムを掲載しました。それにしても、日本国内は人道的介入否定論ばかりなのか、全く議論が行われてませんね。

 (その3)
守屋前防衛次官の裁判で、19日、東京地裁で守屋への被告人質問が始まりましたが、彼は、贈賄罪などに問われた軍需専門商社「山田洋行」への便宜供与を否定しました。前から言っているように、私は守屋は主観的には便宜供与はしていないと思っている(コラム#省略)ので、予想通りです。国会での証人喚問で、ゴルフや飲食接待の際に一部代金を負担していた、子供の留学費用は自弁したとウソの証言を行ったり、額賀議員との宴席の日にちを間違えたりして(典拠省略)醜態を晒した守屋の愚かさには心底呆れ返りましたが、今回はウソをついていないことを、彼のために祈るばかりです。 
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