デモ隊数人が店内で略奪・放火したが、犯人の若い男達の言葉はチベット語ではなく中国語でした
【論説】チベット騒乱の仕掛人
時局心話會代表 山本善心
3月10日、チベットで大規模な反中国デモが行われたが、
このデモがなぜ突然暴動に変化したのであろうか。
商店街近くの車両は放火され、商店のシャッターや
ドアが破壊される映像が世界に放映された。しかし
略奪・放火された商店で生き残った18歳のチベット人
女性は、「デモ隊数人が店内で略奪・放火したが、犯人の
若い男達の言葉はチベット語ではなく中国語でした」と
述べている。
中国では70年前から、チベット暴動の火付け役は中国の
特務兵士と私服警察だと見られてきた。
彼らはチベット僧侶や市民に変装し、今回と同じように
寺院に放火、商店を襲撃し、チベット人のデモ隊に
銃の発射などを繰り返してきた。
その都度中国人が「これはダライ・ラマ法王が命令したもの
で、チベット人は諸悪の根源だ」と言ってきたが、今回の
暴動と酷似していまいか。
中国共産党の戦略・戦術の基本は、敵側にスパイ工作員を
送り込んで敵側が暴動を起こしたかのように見せかけ、
それを根拠にデモ隊に乱射するというものだ。これら
チベット事件の全貌を示す資料や記録(中国人記者・唐達献
による)が残されている。
中国人はどのような悪事を行っても自己を正当化し、謝罪や
反省をすることはない。いかなる事実や証拠を見せつけら
れても、自分たちの罪は絶対に認めないのである。
毒入りギョーザ問題でも、一部を除くすべての日本人は
「真犯人は製造元の天洋食品だ」を考えていよう。
封印された製品の中から大量の殺虫剤や農薬が出てきた
という、動かしがたい事実があるからだ。
現地の声によると、今回の暴動は中国人がチベット人に
変装して起こしたもので、座り込みで抗議した僧侶数十人に
人民解放軍が発砲・暴行したことが事件の発端だという。
このような事態がなぜ、同じように繰り返されてきたのか。
中国がチベットを侵略
1912年の清朝滅亡後、チベットは独立宣言を行ったが、
1949年の中国建国の2年後、人民解放軍がラサに侵攻。
その後は中国共産党幹部がチベットの政治制度や宗教・
伝統文化に介入して、共産党思想を人民に強要した。
その後、チベット語は仏教語とされ、学校では中国語
教育を強制した。建物や施設、道路の名前までチベット風の
ものは消され、中国風に塗り変えられたとのことだ。
チベットは仏教国であり、武器を持たない平和主義、
非暴力路線が国是である。平和憲法と平和主義を掲げて
自国の防衛を怠る国は必ず他国から侵略される、という
モデルケースに他ならない。
チベット人虐殺の歴史
ダライ・ラマ14世は70年代後半に独立要求を取り下げ、
88年には公式に独立の可能性を放棄した。ダライ・ラマの
平和主義、非暴力路線、高度な自治要求という曖昧な姿勢は
国家の資格を失うもので、仏教国だという甘えは
済まされまい。
なぜチベット人は毎年のように暴動を繰り返してきたか。
『ダライ・ラマ自伝』(文春文庫)によると、チベット蜂起に
対する中国側の制裁として、磔、生体解剖、打ち首、
焙り殺し、撲殺、生き埋め、斧で引きずり回して殺す、
「ダライ・ラマ万歳」と再び連呼できないよう舌を抜くなどの
残酷行為で、数十万の人が殺されたとの記録もある。
ダライ・ラマは中国がチベット人を迫害している状況を
国際社会にアピールし、1989年ノーベル平和賞を受賞。
パリ市議会から今年4月21日、パリ名誉市民の称号が
贈られた。
毛沢東は「チベットは外国」と容認
1936年、アメリカ人記者エドガー・スノー氏が延安で
毛沢東にインタビューした。その中でチベット地区に長征の
途中、紅軍が食糧補給や宿泊のことでチベット人に世話に
なったとの話に及び、毛沢東は「それは我々が外国に負
っている唯一の債務だ」と述べている。さらに1945年、
毛沢東は「チベット民族による自立防衛力を強化せよ」と
忠告した。
しかし1949年、スターリンは「チベットをわざわざ独立さ
せて中国の(手に入る)領土を失うべきではない」と忠告、
米ソ冷戦構造という社会主義と資本主義の陣取り合戦の中で
「中国は領土問題に寛大すぎてはいけない」と中国に
勧告した。(2006年、第3期チベット大学学報の
胡岩氏論文より)
後年、毛沢東の寛大なチベット政策は変更され、平和
主義を国是として自衛能力を持たない平和主義の
チベットは「中国の神聖な領土」として併合された。
チベットの観光開発
チベットは中国南西部の高原地帯に位置し、ヒマラヤ山脈
(平均標高4000m以上)に囲まれている。区都ラサの
自治区人口は600万人(チベット亡命政府発表)とみられる。
ほとんどがチベット仏教を信仰している。
2006年に青蔵鉄道が開通して、観光事業や不動産の
乱開発が行われ、経済的侵略と中国人の移住流入が
加速。今や現地のチベット人には何ら恵みもなく、文化、
自然、宗教の生存環境が破壊により、むりやり中国に同化
された。
さらに中国政府は、1000億元の総予算でチベットに
大空港と180ヵ所の観光プロジェクトの建設を計画中だ。
国内外からにわかに注目されてきた観光と資源の開発が
計画されている。
資源の宝庫と軍事基地
もともとチベットはダライ・ラマを中心とするチベット仏教の
世界であったが、「民族解放」という名の下に漢族化されつつ
あり、チベット語も話せない状況になっている。
中国のチベット侵略を正当化するためのごまかしとすり替え
に、世界は翻弄されるとの見方が大勢だ。
チベットは美しい自然を誇る仏教国であるが、中国は
米国の主要都市やインドを射程に収めるミサイル基地を
チベット各地に点在させている。
チベットは美しい自然や環境を持つ観光資源の宝庫と
期待されている。さらに河川や雪解けから得る美味な
チベットの水は、今後中国の救世主となろう。同時に豊富な
天然ウランや鉱物資源(金・銀・銅)、オイルシェール
(石油を含む水成岩)など、資源は無尽蔵だ。
中国にとってチベットは、自然と資源の宝庫なのである。
聖火リレー中国旗で殴打
さて長野の聖火リレーでは、日本在住の中国人留学生が大挙して動員され、チベット人や日本人に対する暴力行為があったと聞いている。日本の警察は、抵抗するチベット人や日本人を助けようとはしなかった。しかも日本側にはたくさんの怪我人が出ているというのに、中国人の違法行為はあえて見逃している。マス・メディアがこの事実を報道しないのはなぜか、インターネットではこの問題で抗議が殺到した。
知人のA・T氏は筆者宛に「長野聖火リレーでは日本の地でチベット人に対する暴力と同じ無法行為が白昼堂々と行われている。こんな時こそ“人権こそが命、人権を守れ”と言う市民活動家の声が聞こえてこないのはなぜか」という意見を寄せた。日本人はチベット人と同じ犠牲者だというのだ。
聖火リレーの行く先々で、聖火リレー走者と伴走する青ジャージ集団(北京五輪に備えた特殊部隊)や、沿道を埋める中国旗と中国エキストラの異常な光景を眼にしたものだ。すべてが中国優先、中国一色の聖火リレーであった。中国のやることなすこと一切に目をつむる警察の行動矛盾は、日本の衰退現象に見える。
胡錦濤の訪日
5月8日、約10年ぶりに来日した胡錦濤国家主席の歓迎レセプションがグランドプリンスホテル赤坂で行われた。これは日中友好7団体の主催によるものだ。胡主席は会場に15分遅れで到着したが、2000人を超える友好団体の参加者が万雷の拍手で出迎えた。
さて、胡主席は会場で「日中関係は最も重要な二国間関係の一つ」と強調。「日本は戦後平和国家としての歩みを堅持した」と積極的に評価した。訪日の目的は日中関係の修復にあると考えられるが、反日デモの反省と、日本企業の撤退防止など、日中関係の修復が中国の課題であり訪日の目的だと強く感じられた。
しかし中国の覇権主義体質に一歩も揺るぎはない。ましてやオーストラリア、北朝鮮、台湾、チベットに見られる中国の影響力と支配力という大きな流れに、日本も呑み込まれようとしている。胡主席の対日柔軟姿勢は歓迎するが、一方中国の覇権主義が日本国の盛衰・存亡に関わる危機も迫っていよう。日本の政局は、与野党が目先の瑣末な問題で政争に明け暮れているときではないと直感した。
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☆☆☆☆☆☆☆☆5月29日「時局プレス会議」ご案内
タイトル「中国の内政問題ではない-直ちに取り組むべき台湾問題」
講師/永山 英樹 台湾研究フォーラム会長
3月22日の台湾総統選挙では国民党の馬英九氏が圧勝した。台湾の中国化が進めば、それを機に中国がいよいよ太平洋進出に乗り出すのではないか、と危惧する声もあがっている。
講師の永山氏は台湾問題において、本質を突いた正論を展開している。すべて現場主義に基づいた情報分析は的を得ている、との声も大だ。馬新政権を迎えて各界の見方・考え方が錯綜する中、貴重な研究会となろう。
日 時/平成20年5月29日(木)PM6:00
※曜日にご注意下さい。
会 場/日本外国特派員協会 20F「メディアルーム」
東京都千代田区有楽町1-7-1
有楽町電気ビル北館20F
℡03-3211-3161
参加費/8,000円(食事付)
お申込み先/℡03-5832-7231またはメールshinwa@fides.dti.ne.jp
詳細はホームページhttp://www.fides.dti.ne.jp/~shinwa/
でご覧下さい
事前申込のない方は参加できません。ご注意下さい。