宮崎正弘の国際ニュース・早読み
ようちゃん、おすすめ記事。↓「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成20年(2008年)5月12日(月曜日)
通巻第2182号
ウィクペディアの偏向記事への不信、不満は日本だけではなかった
英語版でも中東問題の偏向が指摘されている
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情報操作の舞台になろうとはウィクペディアの創業者も想定していなかっただろう。英語版「ウィクペディアの偏向記事は、とりわけ中東問題で、一方の意見に偏している」(ジリィ・イニ氏、ヘラルドトリビュン、5月12日付け) 実際、インティファーダ礼賛の記述以外殆ど目立たない。
「ウィクペディアは部分的に無政府主義、部分的にモブ(愚民)で成り立ち、専門家はまったく相手にしない」(創業者ラリィ・サンガー)。そればかりではない。「百科事典に比べるとウィクペディアの偏向記事はゲーム感覚。もっとも劣悪なスタッフが展開している。」(『エンサイクロペディア・ブリタニカ』元編集長のボブ・マクヘンリー)。と同ヘラルドトリビュンからの要約です。
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♪(読者の声1)やはり危惧していたとおり、天皇皇后両陛下がご訪問された日、中国国営テレビは、天皇皇后両陛下が胡錦濤国家主席夫妻が宿泊するホテルを訪ね、別れのあいさつをされた模様をトップで報じていました。
また同様に、新華社通信は、天皇皇后両陛下が胡錦濤国家主席夫妻を「わざわざ」訪ねたと報じておりました。外交とは、「国益を守るため」のものだと理解しておりましたが、外務省はそうした意味で、完全な失敗でした。この期に及んでも、「お見送り」を「単なる慣例」と、抗議自体が「無知」であるという意見も目にしましたが、大局的な外交という観点で見るとき、そうした手続き上の問題で論ずることが果たして意味があるのだとうかと疑問に思います。
外交における招待客の待遇は、当事国同士の関係性を互いに示すだけでなく、国際社会に対して、当事国間の関係性を示す明確なメッセージとなります。国際儀礼での歓待序列では、天皇陛下は世界序列第一位です。
1994年、平成天皇陛下ご訪米の折、ホワイトタイ(男性は燕尾服、女性はロングイブニング)での晩餐会が行われました。
過去二回、エリザベス女王訪米時(76、91年)に行ったブラックタイ(男性はタキシード、女性はイブニング)で勲章着用というスタイルのディナーより、格式は上だったということです。出席者も前回昭和天皇ご訪米の際の120人を上回り、170名が出席した壮大なものだったといわれます。
その米国では、一昨年の胡国家主席の訪米の際に、「国賓」扱いにするかどうかで、中国政府とのあいだで「かけひき」があり、結局は、国賓並みの厚遇をすることで胡主席の面子を立てはしたが、最後まで「国賓」にすることは譲らなかったという経緯がありました。
米国政府が、中国政府の要求に対して決して折れずに「国賓」とはしなかったのに対し、日本政府は、どれだけの交渉を重ねたのか、「国賓」としただけではなく、序列第一位の陛下を結局は政治の道具として貶め、国際社会に対して二重の意味で、誤ったメッセージを発っしてしまった訳です。
日本国政府、外務省、宮内庁は、天皇家の名を汚し、その地位を貶め、ひいては日本の国際的地位の地盤沈下を招きかねない誤りを犯しました。これに対し、外交や国際儀礼を熟知しているデヴィ夫人は、天皇陛下が民間施設にお出向きになられることを知り、瞬時にこれが何を意味するかを理解し、即座に宮内庁などへの抗議の意をマスコミに発信されたといいます。
また、渡部昇一氏も「天安門事件後、国際的に孤立した中国は、日本に働きかけ、天皇陛下の訪中を実現し、それによって孤立から脱却した。これは当時の中国外相が回想録の中で自慢している事実である。」と、今回の訪日での天皇陛下、皇室への接近、政治利用を危惧され、「皇太子殿下の開会式ご出席は、絶対に実現させてはならない」という主旨を、ニュースレターにて発言されています。
そもそもこの接遇には、不可解なことが少なからずありました。
まず、国賓が滞在する迎賓館が工事中だったということで、中国側が指定するニューオータニが宿泊先に決定されたということですが、迎賓館の工事は当初3月までの予定が、6月末までと大幅に延期されていたということです。3ヶ月も予定が延期する工事自体も不自然で理解しかねます。更に、天皇陛下の国賓・胡国家主席への接遇は4月22日の閣議決定によるものとのことですが、その閣議決定には「お見送り」までは入っていなかったということも言われています。宮内庁に抗議した人が、職員からそうした情報を得たとのことでした。
(上記の閣議決定の情報を宮内庁から得た人は、抗議するこちら側が陛下に対して敬語を用いているにも関わらず、対応した宮内庁職員は敬語を使っていないことにも憤っておりました。また、宮内庁職員が勤務時間外の奉仕活動としてお手伝いをしてきた宮中祭祀が、一部職員がこのことを問題として騒ぎ出し、以降宮内庁職員は、皇室の「私事」である宮中祭祀を手伝わないことになったことも知りました。宮中祭祀は、天皇陛下の大事な御仕事であり、世界に誇る文化でもあると私は理解しておりましたので、本来皇室を盛り立てて行くべき宮内庁に、そのような職員が少なからず存在することに、驚くと共に大変憤っております。)
昨日(10日)、テレビ東京のニュースを見ておりましたが、
「中国は、陛下の皇居でのお出迎えの様子を、君が代が流れている映像もカットすることなく流し、更に中国の近代化に日本は重要な役割を果たしたと、初めてお礼を述べました。
これは画期的で評価すべきこと。前向きに新しい日中関係を見ていかなければならない」という主旨の放送をしていました。勿論、真の友好が成されるのは望むことではありますが、この間の「南京」映画の作成、従軍慰安婦問題、抗日記念館等々の反日行動、キャンペーンを報道することなく、安易に新たな「親中キャンペーン」が日本国内で吹き荒れるのではと、このことも危惧しております。これからも、そうした様々なことを注視し、皇族の五輪開会式参列を画策する動きに対しても、都度抗議するなどしていかなければと、改めて思い直しております。(一市民 YS子)
(宮崎正弘のコメント)中国の末端庶民まで知っている日本人は誰だと思われます。小泉純一郎と石原慎太郎です。
炎黄帝(中国人)の言うことを聞かない、珍しい日本人だから。「井戸を掘った人を忘れない」そうです。それがタナカと覚えている中国人はまずいません。「ディエンチュン(田中)? その人、誰ぁれ」まして「フーティエン」?(福田)なんて。いまの日本の総理大臣の名前? 知っていてなにか得になるの?」小生が、「気味悪いほど中国を持ち上げる日本人画家、宗教者、学者、ジャーナリストがいますね?」と聞くと「誰ですか?私たち知りませんが。。。」と答えます。「たとえばヒラヤマとか、イケダとか、アンドウヒコタロウとか、ツクシテツヤとかいう名前ですが。。。。。。。」(漢字で紙に書き直しても)「聞いたことありません」(上海でインテリとの会話デス)。
♪(読者の声2)中国の愛国主義を懸念する声が聞こえますが。反日運動が暴走したように、いまは聖火の保護と胡主席の来日時にみせた、いたるところ紅旗の乱立。日本に何時の間に、あれほどの中国国旗が用意されていたのでしょうか?中国人ヤングの「愛国運動」が不気味です。
(MM生、水戸)
(宮崎正弘のコメント)中国で一番高い、豪華なタバコは「中南海」ではなく、「中華」というブランドです。ボックスが一箱55元(850円ほど)、豪華版が65元(1000円。いずれも20本入りです)。ホテルやバアで買うと80元します。ちょっと甘くて強い、愛煙家のタバコですが、労働者も庶民も高くて手が出ない。それはともかく、日本人は「ピース」を煙にし、中国人は「中華」を煙にするわけです「愛国主義」? 中国人が一番胡散臭いと思っている概念ではありませんか。
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♪((( 資料 )))
李登輝前総統が秋の金沢で「日本人の精神」をテーマに講演の意向を表明
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国民党の一党支配で「かえって民主化はやりやすくなる」とも指摘
石川県金沢市の「八田技師夫妻を慕い台湾と友好の会」(中川外司・世話人代表)は、毎年5月8日に営まれている八田與一夫妻の墓前際に参列するため、6日から訪台し、その晩に行われた嘉南農田水利会主催の歓迎夕食会で同行する石田寛人・金沢学院大学長は李登輝前総統に年内の同大での講演を依頼すると発表した。
台南・烏山頭ダムで営まれた嘉南農田水利会主催のこの墓前際には馬英九・次期総統も参列し、日本統治時代については「許せるが、忘れない」という従来の立場を表明しつつも、八田技師を「一生懸命」の人と称賛し「八田技師の功績は誰もが評価している」と述べた。
台湾で八田與一の功績をもっとも高く評価しているのは、李前総統であり胸像を製作した奇美実業創業者の許文龍氏であることを思えば、馬英九氏の墓前際への参列は、マスコミが指摘するように「反日イメージの払拭」という面も確かにあろうが、李前総統や許文龍氏などへのアピールという面も見逃せない。立法院を制し、総統も制した中国国民党を率いる馬英九氏は、蒋介石・蒋経国時代の「一党独裁」下の台湾人弾圧イメージを払拭し、台湾の自主独立派との「和解共生」姿勢を打ち出そうとしているようだ。それは、大陸委員会の主任委員(大臣に相当)に台湾団結聯盟所属で李前総統側近の頼幸媛女史を選任したことに現れていよう。また、この墓前際直前の5月6日、馬英九氏が許文龍氏を訪ねて懇談したこともその現れと見てよいだろう。
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墓前祭を終えた八田技師夫妻を慕い台湾と友好の会は9日、淡水に李前総統を訪問し、石田寛人・金沢学院大学長は発表どおり李前総統に年内の同大での講演を依頼した。李前総統は「承知しました」と答え、その時期は「もみじのころ、九月か十月」とし、「奥の細道」をめぐる旅途中に金沢へ立ち寄るとした、と北國新聞は伝えている。
また、北國新聞のインタビューで李前総統は、中国国民党について「独裁的な政府に陥るとの見方を否定し、一党支配で『かえって民主化はやりやすくなる』と指摘した。また、3月27日の馬英九氏との会談で「日本のことで話を聞きたい、何か知りたいなら、私は喜んで世話をしますと言った。ただ、具体的にどうするかは言っていない」と、その内容の一部を明らかにしつつ、「こんな高齢で大使や何かの役職に就くことはない」と台湾駐日代表処代表など、対日関係における責任ある立場への就任を否定した。
すでに3月末、産経新聞のインタビューで「駐日代表をやるには年をとりすぎたが、フリーランサーという形なら何かできると思う」と答えているが、それを改めて表明した形だ。
(メルマガ「日台共栄」編集長 柚原 正敬)
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馬次期総統の親日姿勢評価 李登輝台湾前総統
【5月10日 北國新聞】
【台北9日=正札武晴】台湾前総統の李登輝氏が九日、台北県淡水の台湾総合研究院で北國新聞社の取材に応じ、八年ぶりに政権を握る国民党の馬英九次期総統が親日ぶりをアピールしていることについて「日本のことを知りたいなら喜んで世話をする」と述べ、新政権での日台関係発展に協力する姿勢を示した。今年九月か十月に、金沢学院大で「日本人の精神」をテーマに講演する意向も示した。
二十日の馬総統就任により、国民党が総統職と立法院(国会)議員の大多数を手にする「一党支配」の状態となる。李氏は、独裁的な政府に陥るとの見方を否定し、一党支配で「かえって民主化はやりやすくなる」と指摘。ねじれ状態にない安定的な政権で民主化をさらに進めるべきだとの考えを示した。
「反日」のイメージが強かった馬氏が八日、日本統治時代の台湾で烏山頭ダムなどの一大水利事業を完成させた金沢市出身の八田與一技師の墓前祭に参列したことには、「並大抵のことではない」と評価し、親日へと態度を軟化させたことを歓迎した。 本社の取材に先立ち、「八田技師夫妻を慕い台湾と友好の会」(金沢市)の訪台に同行している金沢学院大の石田寛人学長が、李氏に同大での講演を依頼し、李氏は「承知しました」と応じた。 講演の時期は「もみじのころ、九月か十月」とし、昨年に続くライフワークの「奥の細道」をめぐる旅の途中に、金沢へ立ち寄るとした。李氏の県内訪問は、二〇〇四(平成十六)年以来、二度目となる。
李登輝氏との質疑応答の主な内容は次の通り。
― 馬次期総統で日台の親善は進むのか。親善のために李氏が協力する考えは。馬氏は当選後、私の家に来た。私に言わせれば、馬氏は日本のことをあまり勉強していないし、よく知らない。日本のことで話を聞きたい、何か知りたいなら、私は喜んで世話をしますと言った。ただ、具体的にどうするかは言っていない。こんな高齢で大使や何かの役職に就くことはない。
― 馬新政権で台湾の民主化はさらに進むのか。
総統は国民党の馬氏になり、立法院(国会)も(今年一月の選挙で)国民党が大勢を占めた。馬氏が日本嫌いで、国民党の独裁的政府になると心配する人には、こう言っている。私が国民党の総統時、立法院は大多数が同党議員だったが、(独裁でなく)かえって民主化を進めやすかった。(同じ状況になる)馬氏は台湾のため一生懸命やろうと考えれば、かえって民主化はやりやすい。馬氏には日本との関係、アジアとの関係をしっかりやれと話した。
― 馬氏への評価は。
この人は割と正直でクリーンだ。彼が烏山頭ダムに出向き、八田技師の墓前祭に参列したのは、並大抵のことじゃない。私の本にある、八田さんの「日本人の精神」を読んだのかもしれない。馬氏をあまり変な偏見で見てはいけない。
― 福田康夫首相の支持率が低下している。今の日本の政治をどうみるか。 今の日本の指導者は、もう少し強くやらないと。弱々しい格好では、人民は歯がゆくてしょうがない。
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成20年(2008年)5月13日(火曜日) 弐
通巻第2183号 臨時増刊号
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♪なぜ独裁政権の末裔=国民党が執権党に復活できたのか
96年「民主化」以降の台湾政治を丹念に検証、台北ウォッチャーの面目躍如
近藤伸二『反中 vs 親中の台湾』(光文社新書)
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近藤さんは毎日新聞初代台北支局長である。経済が得意の分野で、それゆえ台湾分析にも企業分析動向が加わり、本書の中味を濃くしている。戦後、蒋介石が台湾へ乗り込んできて、日本の政府と民間の財産をごっそりと差し押さえ、蒋介石政府と国民党の財産とした。
台湾本省人の不満が爆発し、二二八事件が起きた。台湾人インテリが殆ど殺された。そして半世紀、台湾は民主化され、自由な選挙がおこなわれ、あの恐怖政治、独裁政治の元凶だった国民党が下野し、八年後に変身して復権した。
国民党の馬英九が、なぜ民主主義・台湾で蘇ったのか?陳水扁政権があまりにも無能であったからか? 原因はどうやらそんな短絡的な現象ではないらしい。近藤氏は、懇切丁寧に戦後台湾史の概略を述べながら、どう統計をとっても統一派のいう中華主義意識の前に「台湾人アイデンティティ」が深まり、一方で政治意識の国際化が進み、むしろ国民党が民主化され、近代化され、スリム化したうえで、馬自身が台湾南部の、従来民進党が圧倒的な地域にロングスティと称して回り、たどたどしい台湾語を必死で喋り、ついに選挙に勝利できた過程を解きほぐしてゆく。
社会構造の変化と景気対策、大陸政策で与野党が激突するのは当然にしても、原発や防衛予算でも与野党は鮮明に対立する反面、尖閣諸島の帰属では「あれは台湾領(つまり中華民国領土)」という意味で与野党は一致する。この台湾には労働力不足と嫁不足で、夥しい外国人が流入している。
第一は大陸からの花嫁。およそ26万人。これにベトナム花嫁など加えると、じつに40万が外国からの花嫁である。
第二は3k労働を嫌う台湾の若者を代替し、インドネシアから12万人、タイから8万六千人、フィリピンから8万四千人、そしてベトナムから7万人が労働者として台湾社会にとけ込んでしまったが、多くの台湾人は、これを深刻な問題と考えていない事実。
以下は小生の感想。
李登輝前総統は、選挙直前に『私の一票は謝さんに入れるが』としつつも、国民党の勝利の翌日に馬英九が訪問するや、かれを支持した。
もっとも李政権下で、馬は法務大臣をつとめ、李登輝の教え子でもある。その後、日本外交に関しては舞台裏で多くのサインを出している様子である。馬英九は評者(宮崎)の質問(3月23日、当選翌日)に答え、「私が反日活動家ですって? そういう誤解を解きたい。日本重視路線に変わりはない」(詳しくは週刊朝日に寄稿した)と明言した。これも李登輝の示唆<?>に従ってか、5月初頭には台南へ向かい八田與一の記念碑に詣でるという挙に出た。八田與一は日本人技師で台湾南部の灌漑に尽くした。五月20日の馬英九、台湾第十二代総統就任式には石原慎太郎都知事らが参列する。なにかが変わりつつある。
♪無償の行為、代償さえ求めずに散った日本の若者はそこに何を求めたのか?カレン族独立戦争義勇兵らの孤独と勇気を描くノンフィクション
高部正樹『戦友 名もなき勇者たち』(並木書房)
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見返りもない自己犠牲。映画ランボーで、ベトナムの未帰還兵士を奪回に行く主人公(シルベスタ・スタローン)は寡黙で、無言の兵士は決してワシントンの華やかなパーティには呼ばれない。
政治の晴れ舞台にお呼びでないのに戦線へは突出し、正義の大儀を信じて戦う。正義は、しかし本当にこの世にあるのか?ベトナム戦争は「反共の正義」を標榜して、夥しいアメリカ兵が投入され、逆に残留日本軍が鍛えたベトコンは強く、五万人強が犠牲となった。あの頃、韓国もフィリピンもベトナムに派兵して米国に協力したが、日本は基地の提供と娯楽と、そしてじつは死体処理のセンターとなった。
日本でベトナムからの遺体は洗浄され、脱臭され、ドライアイスをつめて特殊梱包し、米軍輸送機で本国へ運ばれた。往時、日本で職業左翼いがいの日本人も米国の戦争を支援しなかった。その理由は、ベトコンが大東亜戦争における日本の恨みを晴らしてくれているという認識が潜在したからだ。泥沼となってベトナム戦争は長期化し、米兵は本国へ帰還できても、米国内でよそよそしく扱われた。「我々は大儀のために死を賭して闘い、ジャングルに傷つき、そして祖国では栄誉を与えられなかった」と多くの兵士が不満を持った。遠い話ではない、次期米国大統領(に最も近い)、ジョン・マケイン上院議員はベトナムで果敢に戦い捕虜になり、帰国後「負け犬」呼ばわりされた。
本書はランボー的人生の日本人版である。
まさに無償の行為のために、カレン族の正義を信じ、カレンの独立を夢見てビルマ国境で闘い、そして死んでいった日本の若者がいた。
本書は、その知られざる史実を淡々と書いた記録でもあり、三人の戦死者へのレクイエムである。しかしなぜ? カレン独立と彼ら日本人の人生とはいかなる相関関係にあるのか。小生はこの本が少数ではあれ、いまの日本のように全てが停滞し、だれて、大和精神を失った日本人に読まれることを不思議な感動をもって見ている。泰平のぬるま湯に浸かりきり、いや沈みかけ、自衛隊が戦争を知らず、いや、軍人の名誉がなくなってしまったこの国で、国家をまもるという国防議論さえが壮大な無駄となりつつある。
そうした環境に生まれて育った若者が、何の衝動を駆られ、いったい何を求めてビルマはアフガニスタンへ行って戦うのか?
しかも著者はビルマで三名の日本人戦友を失いながらも、数年を経ずして、果てはバルカン半島のボスニア&ヘルツェゴビナまで出かけてクロアチア義勇軍に入り、また戦った。何のために?これは文学の重要なテーマでもある。ヘミングウェイ「キリマンジャロの雪」の冒頭場面を思い出す。キリマンジャロの突こつたる頂上付近に一匹の豹の死骸がある。「いったいなんのために何をもとめて豹がその高みにまでやってきたのか誰も知らない」。ビルマ戦後、アフガニスタンからボスニアを経て、戦い続けてきた著者の高部正樹氏は、貴重な証言者である。
▽(以下に短評を二つ)
♪川本敏郎『こころみ学園 奇跡のワイン』(NHK出版)
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いつも変わった本を出す川本敏郎さんだが、アイディア発想法からジャガイモ料理本、こんどは葡萄の話に挑んだ。ところが、この本は葡萄ストーリィとソムリエの話かと思いきや、まったく趣きが異なる。知的障害者たちが足利の地にある「こころみ学園」で、懸命に葡萄を育て、それがいつしか極上のワインとなって、ついには沖縄サミットの首脳晩餐会「乾杯」御用達となった。足利の急斜面にこのぶどう園が広がり、ここで多くのドラマが誕生した。それは足利学校の伝統ゆえのことなのか?川本さんは足を棒にして足利に通い、関係者を取材して、一風変わった感動のメルヘンをノンフィクションに仕上げた。テレビドラマの原作になりそう。
♪伊藤公紀、渡部正『地球温暖化論のウソとワナ』(KKベストセラーズ)
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環境サミットは茶番である。
小生に言わせれば、その前に偽善である。環境を商売に使っている人もたくさん出てきた。しかし地球の温暖化シナリオはウソのデータを怪しい数字に満ちている。胡錦濤来日時に日本側が示した「環境地球儀」って怪しくないか?「地球温暖化」を言いふらすと誰が得をするのか?
本当にこんなウソを信じているとどうなるのか、わずか二十年前には地球に氷河期がくるという説が強くなかったか。あれはどうなったのだろう?前の米国副大統領ゴアの書いた『不都合な真実』は、ゴアたちの不都合な真実をはぐらかしている。このように本書は環境問題の裏側を正反対のデータを挙げて鋭くえぐる問題作である。
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♪(読者の声1)貴誌に紹介された「資料」としての「北国新聞」(5月10日付)の李登輝、馬英九に関する紹介記事から連想したこと。
当選直後の馬に会って、その反日性についていち早く指摘したのは宮崎正弘氏でした。その影響もあってか、その後の馬の変貌振りはすごいですね。新手の和平応変ともいえます。米中日を視野に入れた多面的な含みで、それに同調する李登輝元総統の老獪さもさすがさすが。いい意味で実に食えない爺さんです。貴台はそのあたりを充分に承知の上で、今後も馬の二面性をその都度的確に指摘されることを願います。(SJ性)
(宮崎正弘のコメント)馬英九・新台湾総統に残る唯一の危険性とは、彼の世界観が中国の「民主化」の前に「中華思想」があることです。