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(5月3日の記事)
1 初めに
マケイン(John Sidney McCain III。1936年8月~)米上院議員が、事実上共和党の大統領候補になったわけですが、一体彼はどんな男であり、民党の大統領候補であるオバマやクリントンと一騎打ちになった場合、どうなるのでしょうか。そのあたりのところをさぐってみましょう。

2 マケインの強み
マケインの第一の強みは、彼が海軍兵学校卒で、米海軍の戦闘機パイロットとしてベトナム戦争で戦い、しかも、撃墜されて1967年から73年にかけて北ベトナムの捕虜となった経験があることです.

対するに、オバマもクリントンもどちらもロースクール卒で軍歴はありません。つまり、米国のために実際に命をかけたという点では、オバマもクリントンも霞んでしまうのです。
米国は、初期のピューリタン等を除けば、要は、より良い暮らしがしたいがために世界中からからやってきた雑多な人々とその子孫によって構成されている国です。
ピューリタン等の子孫だって良い暮らしがしたい、だから金儲けをしたいという風潮に染まってしまっています。
そんな大部分の米国民にとって、マケインは、その経歴だけで仰ぎ見られる存在なのです。 マケイン自身、「私はカネ(profit)のためではなく愛国心(patriotism)からそれをやった」とか、「われわれは、狭い利己的利害よりも統合的価値たる愛国心を優越させようとしない排他的な(alienating)個人主義者達の国に急速になりつつある」などという言葉を連発する.

マケインの第二の強みは、彼が共和党の中では極めてリベラル、つまりは民主党的であるという点です。
すなわち彼は、妊娠中絶反対論者であるという点ではリベラルではありませんが、最初のうちブッシュ大統領の減税政策に反対したこと、不法入国者に市民権を付与する道を開く法案に賛成したこと、ブッシュ大統領による、石油自給率向上をねらったアラスカ自然保護区内での石油採掘解禁に反対したこと、かつまた地球温暖化防止を熱心に提唱してきたこと、等から民主党と大差ないとまで評するむきがあるのです.


これは、本来であれば共和党の大統領予備選で共和党支持者達の広範な支持を得るにはマイナス要因のはずなのですが、にもかかわらず、彼が予備選で勝利した以上は、このことはオバマやクリントンと本選をする際には強みになります。
オバマとクリントンが互いに相手を攻撃しながら激しい予備選を戦っているため、どちらが民主党の大統領候補に選ばれても、敗れた側の支持者の票が一部党を越えてマケインに流れる可能性があるからです。
 実際、最新の世論調査によれば、オバマ支持者の19%、クリントン支持者の28%がそうすると答えているところです.


3 マケインの弱み
マケインの弱みの第一は、彼が71歳と高齢であることです。仮にマケインが大統領に当選したら、1期目の大統領としては、米国史上最高齢の大統領ということになるのです。そのことに対する懸念が、今年に入ってから様々な方面から投げかけられています。(続く)
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<やいち>
皆さんとディスカッションは、急にレベルが上がって楽しく読ませていただいております。1月、2月頃は本編に比べ苦しかったですが、太田氏の回答は、聖徳太子並に冴えてますね。冴える回答といいますと、種類が異なりますが橋本治を思い出します。

<太田>
急にレベルが上がったはずがありませんが、とにかく、お褒めいただいたことに感謝します。

<やいち>
親戚のお爺さんが、「長生きすると、若いころ分からなかったことが分かるんだ。だから、元気であれば長生きしたほうがええ。」
と言ってました。このお爺さんは、結構右よりで、第2次大戦も流れの中で、仕方なかったことだと言うことでした。だから、戦争の敗戦の日本の責任は無く、東京裁判も、不当であると。これで、大方の右の定番の親米となっております。そして典型的に、若者が、アメリカと戦争したことを知らないと嘆いています。
<私はこのお爺さんの言っていることは>よく分からんと思っていました。<しかし、>この辺のところの<太田氏の>話の中で、戦前戦後を通じて反共産主義があり、必然親米となるとのことですが、太田氏の言われるところの自由民主主義の日本が、中国よりも嫌われた点は何なのでしょうか。今でも、アメリカ議会の親中派は新日派より多いと言うようなことを見ることがあります。<日本は>何が、中国に比べて良くないのかと思います。

<太田>
支那を鯨に置き換えれば、ご理解いただけるのではないでしょうか。鯨も戦前の支那も絶滅に瀕する弱者、これに対して日本はこれら弱者の絶滅を図っている生意気な黄色人種、という図式です。日本が捕鯨をする論理をアングロサクソン諸国はハナから理解しようとしませんよね。
戦前はこれよかちょっとはマシだったわけで、日本帝国が大陸に進出した論理については、英国は、自分の帝国主義と反共主義に照らしてそれなりに理解していたけれど、米国はハナから理解しようとしなかったということです。
アーネスト・サトウ、『宝島』、『ジキル博士とハイド氏』の著者スチーブンソン(ロナルド・ドーア(日本専門家。コラム#1039)、マクファーレン(=マクファーレーン。コラム#1397、1399、1400、1402、1403、1405、1476、1587、1589~1591)、と日本人大好き人間の英国人をいくらでも挙げられるのに、英国人よりはるかに人口が多いはずの米国人では、比較的最近のライシャワー(コラム#1425)、サイデンステッカー(コラム#250)、ドナルド・キーン(コラム#2371)・・しかも、いずれも日本専門家・・くらいしか思い浮かびませ
ん。

<やいち>
日米同盟の軍事協力面以外で何か<日本ができることがあれば>あればお答えいただければと思います。

<太田>
日本の米国からの自立に尽きます。

<やいち>
自衛隊については、<太田氏は、>集団的自衛権行使を悲願に活動されておられるところで、<小沢民主党代表が唱えている>国連行動で憲法制限を越える方法は×とのこと。国連と言うのは、イメージしか知りませんが、中ロと言う苦手な相手を相手するのに良い場所(他に見当たらない)ではないでしょうか。絶対避けれない相手ですし、情報収集もやりやすいのではと思います。2国間は<日本は>衝突回避ばかり<で言いたいことを控えているよう>に見えるのですが、国連であればまだものが言えそうです。アメリカが作ったものですし、アメリカが要らないと思えばつぶしにかかるでしょうから、日米同盟と衝突することも無いように思います。アメリカが中国、ロシア(東欧)を入れたものを作りたかったのだと思います。

<太田>
国連創設当時の支那は中国国民党の支那でしたし、ローズベルトは共産主義の恐ろしさが分かっておらず、スターリンをお友達だと思っていたトンデモ人物だったということです。
確かに国連には、世界のほとんどすべての国が代表を送っており、情報収集には便利な場所であることは否定しませんが、中共とロシアが常任理事国である安全保障理事会が国連の中核である以上、国連に多くを期待することはできません。なお、「国連の実相」シリーズ(コラム#325、326)をご参照下さい。

<やいち>
今話題の中国人は、中国工場で経験しましたが、聞いたとおりでした。人の話を聞かないと言うか、自分の主張をまくし立てると言うのは、そのとおりで、中国人同士でもあの調子で、延々同じことを大声でまくし立て、どういう決着になるのかと思うのですが、話し合いは、深くならず表面的です。解決は制度(権力)位しかないとおもわれます。また、日中戦争での日本軍の中国人虐殺についていわれたこともありますし、日本がアメリカと一緒に攻めてきたら、あなたと戦うと20歳くらいの女子に言われたこともあったのですが、この人たちは、日本の若い人より素直で、仕事を一緒にやってて疲れることは、無かったです。要するに良い人です。謝ることは無いですが、言うことが判ってないと言うことではなかったです。確かに難しいですし、さらに中国が民主化したら反日になると言うことも実感できました。

<太田>
支那人の特性については、コラム#220をご覧下さい。 中共政府のこのところの対外政策の拙劣さ(コラム#2514(未公開).story。4月30日アクセス。このフランシス・フクヤマの論考は改めて取り上げたい)を見ていると、漢人は自己統治能力が欠如しているのではないかという、内藤湖南や津田左右吉の指摘を改めて思い出します。 明を間に挟み、長期にわたってモンゴルと満州族という北狄、東夷の支配を受けたために、漢人の自己統治能力が失われたのか、そもそも、漢人の自己統治能力が欠如ないし減衰してたために北狄、東夷の支配に甘んじることになったのか、判然としませんがね。

<やいち>
太田氏のライフワークの自衛隊についてですが、国際貢献と憲法問題を絡めて話される政治家ばかりで、私には分かりにくいものです。自民は、日米同盟の自衛隊活動の推進を言いながら、イラク給油は国際貢献で国連活動は集団的自衛権に抵触すると。社民は、自衛隊は合憲で、軍事活動は×。分かりにくい話ばかりです。
 自衛隊ができたのは、国際状況(朝鮮戦争)の中の損得でできたものであり、今も政治家の感覚だけで、自衛隊はこれ位の活動と言うのを感じて持っていて、それに憲法をくっつけているようにおもいます。今の皇国史観の親米も損得を考えての親米だとおもいますし、社会党の自衛隊合憲も損得の問題です。自衛隊(外交に含まれると思うのですが)の話は、まず損得だけで話してほしいと思ってます。損得を考えるとき太田氏のブログのように、参考になる情報源がインターネットに出てきて、いい事だと思います。
憲法を授業で受けたとき、憲法は交戦権を否定し自衛権を否定するものでないと言うことで、自衛隊が合憲になり、自衛隊が存在することを知り、目から鱗が落ちました。国がやる気になれば、書いてないことは、出てきてもおかしくないと。集団的自衛権なんて憲法にはどこにも書いてなくて、解釈だけで出てきており、自衛権よりハードルは低いと。今までも損得で、現状に合わせてきたんだから、それでいいと思うんですが、最近は憲法の霞で、損得が見えなくなりそうです。議員さんも、憲法の話はされますが、まともな国際情勢の話を聞くことはありません。憲法何とか会より国際情勢の分析に力を注いでほしいように思います。石破議員も自衛隊とともに憲法の話が大好きです。
「もう解釈では持たない、きっちりどこまでできるか書くべきだ」と言うのが<石破氏の>持論ですが、きっちり書けて、きっちり守れると思えるなんて私には理解できないので嫌いです。

<太田>
日本には成文憲法がない(コラム#2518)、と割り切るべきだ、というのが私の最近の結論です。だからといって、日本は損得ずくだけで対外政策を展開すべきだとか、それが許されるとかいうことにはなりません。
やはり日本は、安倍政権じゃないけれど、自由民主主義の旗をアングロサクソン諸国とともに掲げて対外政策を展開すべきでしょう。しかも、それこそが中長期的に最も日本の国益に合致する、と私は信じています。ただし、そのためにも日本はまず、米国からの自立を果たさなければなりません。
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 軍事情報 (防衛省設置法第12条)
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ちなみに、ヨーソロ様のご高見(*)にあった防衛省設置法第12条とはこういうものです。

「(官房長及び局長と幕僚長との関係)
第12条 官房長及び局長は、その所掌事務に関し、次の事項について防衛大臣を補佐するものとする。

1.陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊又は統合幕僚監部に関する各般の方針及び基本的な実施計画の作成について防衛大臣の行う統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長又は航空幕僚長(以下「幕僚長」という。)に対する指示

2.陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊又は統合幕僚監部に関する事項に関して幕僚長の作成した方針及び基本的な実施計画について防衛大臣の行う承認
3.陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊又は統合幕僚監部に関し防衛大臣の行う一般的監督」

わが自衛隊に対する大臣の指示、承認、監督に複数の素人さんが口を挟む機会を提供しますよ~ということです。軍令軍政すべてですね。最悪です。と思ってしまいがちですが、実態は「口を挟む余地」などという生やさしいものではありません。

■補佐の意味と政治将校制度の類似
「局長が補佐する」と言う意味は、役所の実務としては、当該部局の多くの関係下級官僚が事前に回覧された合議書(民間でいう稟議書)にハンコを押す、と言うことです。(ハンコの数20個は少ない方です)

「ハンコを押す」と言うことは押さない者がいれば合議書は上司に上がらない。つまり「幕僚長が決済して幕から大臣にあげた合議書に対して、更にその上に内局用合議書を被せて各局を回覧するので、若造の官僚にすら拒否権がある」と言うことです。それでいて彼等は責任を一切取りません。

早い話がソ連軍時代の政治将校の役割の大規模なものです。
同時にこれは桜田門(警察)が市ヶ谷(自衛隊)を押さえ込むための仕組みでもあります。警察にとって国内でライバルになる可能性のある組織は自衛隊だけですから、そして旧陸軍から相当な煮え湯を何度も飲まされていますからね。

■警察の自衛隊支配志向
警察庁は外務省と並び、明治以降まったく変わることなく存続している国家機関です。また、わが国で自衛隊をもっとも憎んでいる組織といえます。警察官僚は、警察権力に対抗できる勢力の誕生、すなわち「自衛隊の国軍化」を警戒しています。その代表格が先だって亡くなった後藤田正晴氏(元警察庁長官・内務省キャリア上がり)です。

彼は内務省の官僚時代に受けた2度の屈辱(226事件および終戦時の近衛師団反乱事件で警視庁が軍に占拠された)を晴らすため、自衛隊が法的権限や権威を増やすようなことすべてに、ことごとく反対したといわれています。

氏を神の如く奉じている現元の警察キャリアの多くは、その教えを忠実に受け継いでいます。そして、自分達の既得権益を脅かすであろう自衛隊の行動すべてに監視をつけたいと願い、上記の形で自衛隊を牛耳る仕組みを密かに作っていました。阪神淡路大震災の際に自衛隊出動が遅れたのは、自治体の反自衛隊感情が最大の原因ですが、自衛隊出動に対する警察上層部の妨害もそれに匹敵するぐらいの主因だったと聞いています。

防衛庁正面の警備では、ちょっと何かあればすぐに機動隊が出ていました。おそらく今でも同じでしょう。これだけでも世界の恥さらしですが、自衛隊が警察の要注意対象にされているのが実像なんですね。こんなことをしている国は世界でもわが国だけです。自衛隊車輌が移動する際には必ずパトカーの先導が必要とされる、という事実もその典型です。


■自衛隊国軍化を懸念する人々
実力ではかなわないから、法律で自衛隊を押さえつけておこう。
これが警察官僚が持つ共通の感情のようです。警察上層部がもつ、夜郎自大な軍事への姿勢・思考が幅を利かせ、伝統文化として受け継がれている現状は、実に深刻な問題です。

自衛隊の国軍化をもっとも懸念しているのは、米でも北鮮でも中共でもなく警察庁(そして外務省)といえましょう。自衛隊国軍化への期待が国民の間で広まりつつある流れを阻止しようとする警察上層部の意図を、読み誤らないようにしたいものです。あわせて、このように、憲法改正だけでは解決しない、外には見えない影の仕組みでわが自衛隊の動きが縛られている事実を、忘れないようにしたいものです。(エンリケ航海王子)

以下余談です
そういえば、自衛官も出席した式典なのに、報道映像で流れるのは、
なぜか警察、消防、海保関係者の姿のみということが日常茶飯事です。
自衛官の存在そのものを視聴者の前から消し去っており、後姿すら映りません。見事な世論操作といえます。笑テレビ欄は、今日も刑事ドラマのオンパレードです。
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