西村眞悟 時事通信 太田述正 有料メルマガ
連休前の各種の集会に観る本来の国家問題意識
No.343 平成20年 5月 1日(木)
西 村 眞 悟
例年、連休前には、各種国民集会が次々と開かれる。私は次の集会に出席して挨拶の機会を与えられた。4月27日の拉致被害者救出のための「制裁強化を求める国民集会」日比谷公会堂)、4月28日の「主観回復記念集会」(九段会館)、4月29日の「『南京の真実』、映写会」(文京シビックホール)、4月30日午前の「チベット問題シンポジウム」(憲政記念館)そして夕方の「人権擁護法案阻止集会」(九段会館)。
この他、29日には「『昭和の日』記念集会」が開かれた。「昭和の日」制定についてはいささか思い入れがあるが、この日は「南京の真実」の映写会を西村塾の仲間が開くので出席できなかった。
また、28日から連休明けまで、拉致被害者救出を訴えるために家族会と救う会の有志が、アメリカのワシントンに行っている。しかし4月末の国会状況が不安定だったことと、5月3日の憲法記念日の集会で講演の予定が入っているためワシントンには行けなかった。
さて、今国会では、ガソリンの値上げか値上げ阻止かに関心が集中しているのであるが(正確に言えば、昨日4月30日まで関心が集中していた、本日から議員は「外遊」の季節に入っている)、上に掲げた4月末からの一連の集会の趣旨と問題意識は、ガソリンへの関心の次元とは明らかに違う。
ガソリン税も確かに国政の問題である。しかしそれ以上に、野党が与党を追い詰める武器・道具つまり「政争の具」として関心が高まっている。
前のインド洋における各国への洋上補給活動を「憲法違反」として反対したことといい、日銀総裁人事といい、この度のガソリンの値上げけしからんといい、その論者には、何か得意な雰囲気、例えば、気難しい子供がおもちゃに熱中しているような雰囲気を感じる。
とはいえ、車は道路が無くては走れない。「道路を造る税を支払うのはいやだが車はどこでも走らせろ。」という論理が通らないことは与野党とも分かっている。従って、いったい道路にいくら金がかかるのか、そのためにいくらの税金がいるのか、頭を集めて「衆議」すれば、お互い納得できる。野党議員も、地元に帰って、「あの街からこの村への道はどうしても必要です」と有権者に言われれば、「その通りです」と答えているはずだ。
この意味で、参議院に回してから60日過ぎたから直ちに憲法の規定によって「参議院は否決したものとみなす」こともないだろう。と、いう考えで、昨日「参議院は否決したものとみなす」との採決には「反対」を表明した。
他方、本年の道路計画は、既に全国の津々浦々で特措法財源を前提にて決定済みだ。これをどうするのか。一挙に梯子を外す訳にはいかないという理屈も分かる。よって、自公の与党において「しかるべく」対処されたい、というのが私の態度である。
話を戻して。「憲法違反だから反対」、「大蔵省出身だから反対」そして「値上げ反対」、に関心を集中させて、昨年7月からの国政が動いてきた。まことに都合よく、次々と熱中する材料が転がり込んできたわけだ。
しかし、最大の問題は、この「主役」達が、厳しい国際環境の中での国家的課題について関心を示さないことである。
昨年の秋、国会開会中に多数の国会議員が北京に伺候して感激しているのを観ると、国家的課題に関心を示す能力のない議員が主役になっていることが分かる。
このような国政を続ければ、知らないうちにお国が内部で衰退し、ある時一挙に転覆する。船に例えれば、甲板で優雅な生活ができることが航海だと思っていて、時化に遭えば簡単に船の「竜骨」が折れ「底板」が抜けるというやつである。では、我が国において、どこで船の「竜骨」・「底板」つまり国家的課題が語られているのか。
それは、永田町の国会ではなかった。
即ち、拉致被害者救出、国家主権の完全な回復、真の国家基本法(憲法)とは、中国の動乱とチベット・ウイグル救援など、これら国家の基本的課題は、すべて国会で取り上げられずに、この連休前後のように、国民有志の手で開かれる各地の集会で語られているのだ。そして、この集会に、政党単位ではなく個人の意思で国会議員が参加し発言している。従って、国家的課題に取り組み、それを克服するために国政があるとするならば、この課題に対して現在の政界構造では対処できないが故に、政界の再編は必至である。
ところで、これら一連の集会で多くの事実が語られたが、チベットやウイグルからの衝撃的な報告とともに、長野での体験も語られた。これを次に紹介したい。
まず第一に、北京五輪の「聖火」が通った長野における出来事を、日本のマスコミは報道していない。
警備する三千人の警察官を遙かに上回る数の中国人が長野に集まり、一定の人数を単位として屈強な中年男に指揮されて行動していた。この指揮者は、体格と目つきから明らかにその筋のものであった。
彼らは中共の大きな赤旗を掲げもっているが、この旗は、彼らの暴行を隠すために使われた。チベットの旗をもっている人を赤旗で覆ってから集団で暴行を加えていた。
そして多くの人が、旗のアルミパイプで突かれて負傷した。
中国人は、集団行動をとっていたが、長野に集まった日本人(国民)は千人ほどで、個人個人の考えで来ていた。そして、おのおの自分の意思でチベットの旗や日の丸をもっていた。この日本国民が、中国人の攻撃の対象になった。その攻撃は、非常に凶暴で、若い女も目をつり上げて敵意をむき出し、突然足蹴りや跳び蹴りを加えてきた。
仮に、警察がいなかったら、重傷者や死者が出たと思う。彼ら中国人は、シュプレヒコールを叫んだが、それは「中国は一つ」というものであったが、「日本を潰せ」というコールもあった。
彼らの傍若無人の暴行を目の当たりに見て、警備の警官に何故逮捕しないのかと詰め寄った。すると、警官は逮捕すれば暴動になるといけませんからと答えて、逮捕しようともしなかった。反対に、警察は日本人ら六人を逮捕したのである。これが、日本の警備当局が北京政府や中国大使からほめられた理由である。
このマスコミが伝えない長野の状況を知ると、いま世界各地で「フリー、チベット」というかけ声が叫ばれているが、もうすぐ「フリー、ニッポン」、「フリー、ジャパン」という事態になる恐れもある。 以上が、ここ数日のうちに報告を受けた長野の状況であった。
あと数日で、胡錦涛国家主席が来日するが、我が総理が何を言うのか注目しなければならない。ガソリン税の次元だけの頭ならば(つまり国会並みの頭で、国民集会の次元に達していなければ)、もはや総理の資格はない。
━[太田述正 有料メルマガ]━─━─━─━─━─━─━
1 初めに
台湾総統選挙に勝利した馬英九の関係者の中から2人に登場願いましょう。
2 李登輝
本日付の産経新聞の電子版に掲載されたインタビューで、前台湾総統の李登輝が次のように語っています。「私は国民党主席を約12年務めたが、一党独裁をもってこの民主化を進めた。今の立法院(国会)と同様、あの時に国民党の議席が4分の3以上なければ、実は台湾の民主化は難しかった。」
→授権された強大な権力を活用せよと馬を激励しているわけです。これが、民進党よりも過激にいわゆる台湾「独立」を推進してきた人物、しかも投票日直前に謝長廷候補支持を表明した台湾の超有力者の口から出たことは、日本でメルマガ「台湾の声」を講読している数多くの台湾「独立」派たる在日台湾人や日本人にとって、大ショックでしょうね。(太田)
「台湾の独立派は口先だけの人が多すぎる。政権が悪いことをしても批判ひとつせず、政権とぐるになって悪巧みをする。汚職がひどすぎた。これが台湾人と思うと情けない。」
→この第二弾で、またまた日本の台湾「独立」派は大ショックを受けるでしょうね。(太田)
「実は中共(中国共産党)は馬氏を心の底から支持しているわけではない。・
・彼はアメリカの影響を非常に強く受けている。」
→ここは、私の見方(コラム#2440、2442(未公開)、2446(未公開))と全く同じですね。(太田)「<ただし、>チベットを応援して台湾のプラスになるか? ならない。」
→ただし、何から何まで米国政府の言うことをマネしちゃダメだよと馬に忠告しているわけです。(太田)
「<馬>のいいところは、正直なところだ。汚職をやったという人もいるが、僕は信じない。孤立的で独り善がりの面もあるが、近代的でもある。・・ただ、「中国人」(外省系=中国大陸籍)でもあり、公に尽くすかはわからない。」
→馬を誉め、その上で、どうせなら漢人系米国人でなく、純粋な(?)米国人になることを促しているのですな。(太田)
「台湾経済を伸ばすには日本の技術が必要だ。どう提携するか。日台関係をよくしていく必要がある。私は国民党を除名された立場ではあるが、相手が頼みに来るなら、知恵と経験は大いに生かしたい。駐日代表をやるには年をとりすぎたが、フリーランサーという形なら何かできると思う。・・彼が来たら私の本を読ませよう。「奥の細道」もね。20年後の台湾は新総統の努力次第で大きく変わる。何をすればこの総統の時代に台湾が飛躍できるのか? 私も今、考えているところだ。」
→この第三弾で、上記台湾「独立」派はノックアウト寸前の状態でしょうね。李登輝は総統時代、馬を1993年に法相に抜擢しています(~1996年3月26日アクセス)。いわば李は馬の師(メンター)でもあることを考えれば、このような発言は何の不思議もありません。そもそも、李は日本人として人となったかもしれないけれど、あくまでも台湾の老練な政治家であるということです。
日本の台湾「独立」派は、これまでひたすら李を崇め、馬を罵倒してきたけど、やや単細胞的過ぎたのではないでしょうか。
日本における台湾独立派の重鎮たる林建良さん、私は台湾「独立」の大義を支持している人間ですが、日本における台湾「独立」運動のやり方は、この際、抜本的に見直されたらいかがでしょうか。
少なくとも、もっぱら日本の「右」派に支援を仰がれてきたことは賢明だとは思いません。
3 周美青
周美青(Chow Mei-ching)って誰だって? 馬英九の奥さんですよ。
「台湾の馬英九次期総統の周美青夫人(56)の「庶民スタイル」が話題を集めている。台湾紙・蘋果日報は「短髪で化粧をせず、宝石や指輪、ブランド製品などと縁がない主婦」と伝えた。夫が総統選で当選後初の出勤日となった24日<(月曜)>午前6時46分、夫人は自宅を出た。顔はすっぴんでジーンズ姿、平凡なカバンを肩にかけていた。普段通りに指輪やネックレスも身に着けていなかった。一般市民と同様に路線バスに乗り込んだ夫人は、車内でMP3プレーヤーを聴きながらしばらく立っていたが、席が空いたのでやっと腰を下ろした。通勤時間は約50分。これまでと違うのは護衛3人が張り付き、記者が同行取材するようになったことだ。周美青夫人は大手金融持ち株会社の兆豊金融控股(Mega
International Commercial Bank)に26年間勤めており、名門の台北市立第一女子高級中学(高校)を卒業し、<馬と同じく、>米ニューヨーク大で法修士号を取得したエリートだ。現在の肩書きは法務室処長。会社に着くと、同僚が渡そうとした花束を拒み、「総統夫人ではなく、ただ『処長』と呼んでほしい」と話した。米国留学中に結婚した馬次期総統の・・ハーバード大での勉学を助けるため、夫人は自身の博士課程進学をあきらめ、倹約が身に染みついたという。」「利害の衝突を回避するため、周はこの銀行の取締役と(馬と二人で創設した)Dwen An Social Welfare Foundationの理事を辞任した。・・彼女は馬とともに公的行事に出席したことはほとんどなく、今回の選挙でも最終の数日だけしか馬に同道しなかった。・・<なお、>彼女は二度と公共交通機関は利用しないと語り、月曜と火曜に乗ったバスに記者やカメラマンが大勢乗り込んだことについて他の乗客達に謝罪した。」
日本で共稼ぎの配偶者を持つ首相が出現するのはいつのことなのでしょうか。このような意味でも、台湾の民主主義は日本を追い越した、と言えるのかもしれませんね。
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<太田>
「ケンスケ2」さんの投稿(コラム#2520)に関連して一言。
「朝日新聞社が4月30日夜から5月1日夜にかけて実施した全国緊急世論調査(電話)によると、・・・福田内閣の支持率は20%で、発足以来最低だった前回4月19、20日調査の25%からさらに下落した。 不支持は59%(前回60%)だった。 政党支持率でも自民が24%(同26%)、民主が28%(同22%)と逆転した。民主が自民を上回るのは、安倍内閣時代だた参院選後 の昨年8月以来だ。「いま投票するとしたら」として聞いた衆院選比例区の投票先でも、民主が39%で自民の22%に大差をつけた。今年2月の時点では、投票先は民主32%、自民30%で接近していた。民主は弱いとされてきた女性の支持が増えている。
「日本経済新聞社が4月30日と5月1日に実施した緊急世論調査で、福田内閣の支持率は21%と4月中旬の前回調査から8ポイント低下し、内閣発足以来、 最低となった。・・・政党支持率は自民党が33%、民主党が36%で8カ月ぶりに逆転した。・・・森内閣末期の2001年2月の16%に近づいており、福田康夫首相が厳しい政権運営を強いられるのは必至だ。
面白いのは、昨日公表された、ブッシュ大統領についての米国でのCNNの世論調査結果です。 ブッシュ大統領の支持率は28%と、過去のワースト記録であるトルーマンの22%、ニクソンの24%を依然上回っているものの、不支持率は70%に達し、トルーマンの67%(1952年1月)、ニクソンの66%(1974年8月)を上回る、米国でこの種世論調査が行われるようになった1930年代以降で、最も高い不支持率を記録しました.
福田首相と(宗主国米国の)ブッシュ大統領とが競いつつ、それぞれがあらゆるワースト記録を更新するのはいつかという状況であるわけです。ただ日本の場合、依然として、民主党と自民党の支持率差が3~4%しかないということは、いかに民主党がダメ政党か、とりわけ小沢氏がいかにダメ党首かを物語って余りあるものがありますね。よほどのことがない限り来年の任期満了まで総選挙がないとすると、まだまだ政権交代必至とは言えそうもありません。
<大阪の川にゃ>
二度手間をおかけしてしまいました。(コラム#2520参照)
後段について太田さんのお答えがありませんとは、以下の「しかし、~安全保障にかかわり~反対です。」について太田さんのお答えがありません、という意味です。
≫1、地方参政権が純粋に民生部門だけなら私も賛成です。地域の産業誘致をどうするかとか、産科の病院をどうやって増やすかとか、です。
しかし、地方参政権といえども、自衛隊・米軍の基地の夜間飛行を制限する問題とか、基地移転とか、竹島の日の制定とか、安全保障にかかわりますので、反対です。≪(コラム#2320)
<太田>
≫地域のいかなる問題だってあなたのおっしゃる「純粋に民生部門」であるとは言えないのではないでしょうか。≪(太田。コラム#2320)
と最初からお答えしています。昔、法学部時代にとった科目に(戦前からあった)「社会政策」がありました。今で言う厚生労働省の所掌をカバーする学問ですが、社会政策という呼称は、戦前、この行政分野を内務省が所管し、治安維持の観点から推進していた名残です。 更に遡れば、これは帝政ドイツで、鉄血宰相ビスマルクが、いわゆる「飴と鞭
」政策として、社会主義運動弾圧と平行して推進した行政分野なのですよ。一事が万事です。「純粋に民生部門」なんて、まず存在しないのですよ。
<翡翠>
コラム#2374「日本論記事抄(その3)」を読みました。この親にしてこの子あり、と言う事ですね。私にはいかにも、とそのときの様子が浮かびます。さもありなん、といったところです。雅子さんがいかに優秀であろうとも、皇紀2668年もの重い伝統を背負う器でない事はもはや自明の理ではないでしょうか・・。
*<太田>
雅子様は、ご自分自身のためにも、離婚された方がよろしいかと思いますが、それができるような方だったら、そもそも徳仁親王とご結婚されなかったでしょうね。
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★(ようちゃんの解説ー身内が防衛省の家族として、書いています。太田氏も同じく証拠の出所は同一と思います。でも立場上、私ほど真実は相手が 妃殿下となれば・・・口を噤むでしょう!)雅子妃は失格です!この女性の小和田氏が全日本八方外交(相手の嫌がる事はしない。商人国家としての日本の立場は政権の如何に関わらずお客様は神様です>の精神で金を稼ぐのが国益だと言う論文を書いてる!又この女性の双子の妹の夫君は在日系の韓国・中国エリートでおまけに創価学会信者ですし 外務省に巣食う創価学会派「鳳会」に婚姻前から所属していた。雅子妃の正体は 知る人ぞ知る! 離婚して自由になさるか、 皇太子共々 秋篠宮家に皇位継承権の順位を譲るのが妥当でしょう。 今離婚して頂くと、皇太子は新しい妃殿下との婚姻で 男子の誕生にも恵まれます!悪魔の雅子妃殿下に。。。。この日本の前途は無い!>これが 我が家の祖父母様やその門下の意見です!私の単独意見ではありません。
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<有料読者>
82歳の半ボケ老人のため、太田論文を全部は理解できませんが、世の流れに遅れないために毎日読んでいます。有難うございます。
ところでFinancial Times(FT)の読み方を、10年位前までは日経は「フィナンシャル」、朝日は「ファイナンシャル」と報道していましたが、朝日もその後「フィナンシャル」に変更しました。朝鮮日報日本語版も「フィナンシル」です。以上お知らせします。
<太田>
英国滞在中に、一年間購読した新聞ですが、コラムを書き始めの頃、私自身、最初どちらの表記にしようか迷ったものです。改めて、@Nifty辞書で調べてみました。とあったので、まんざら私が間違っているということでもなさそうです。。長い言葉の中で使うと、早口になって「ファイ」が「フィ」と訛る、あるいはそう聞こえる、ということではないでしょうか。
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