太田述正 有料メルマガ【社説】暴力沙汰に発展した聖火リレー | 日本のお姉さん

太田述正 有料メルマガ【社説】暴力沙汰に発展した聖火リレー

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太田述正 有料メルマガ【社説】暴力沙汰に発展した聖火リレー

1 始めに
聖火リレーを通じて、最も対中世論が変わったのは韓国です。
朝鮮日報の論説・記事を通じてこのことを見てみましょう。

2 韓国の対中世論の劇的な変化
「・・・北京五輪の聖火リレーが行われた27日、五星紅旗(中国国旗)がソウルの都心部を覆うと、市民の間で「どこからあれほど多くの中国の青年が現れたのか」と いう驚きの声が上がった。ソウル市民は中国の青年たちによる行動を「愛国心」と理解した。しかし、翌朝には彼らを見る視線は冷淡なものに変わっていた。・・・世論が急変したきっかけとなったのは、ソウル市中区のプラザホテルで起きた無差別暴行をとらえた動画だった。動画には中国人とみられる100人余りがホテルのロビーに押し寄せ、チベット支援団体のメンバー数人を壁側に追いやり、国旗のポールや手足で暴行を加える場面が映っていた。止めようとした制服姿の義務警察(兵役中の男性が行う警察業務)が殴られもした。中国人らは「殺せ」「謝れ」などと叫んだ。・・・ある大学教授は「外国で自国の聖火を迎える立場ならば、五星紅旗だけでなく、太極旗(韓国国旗)やオリンピック旗も持参するのが常識的な行動だ。五星紅旗だけを持参し暴力行為まで見られた今回の事態は、民主主義を経験していない中国人が異なる意見を受け入れられないことも原因ではないか」と話した。」(
http://www.chosunonline.com/article/20080429000023
http://www.chosunonline.com/article/20080429000025
(どちらも4月29日アクセス。以下同じ))

→対中世論の劇的な変化のきっかけを伝える記事です(太田)。
<韓国の>歯に衣を着せないことで有名な政治評論家が・・・北京五輪をナチス支配下における1936年のベルリン五輪になぞらえた。・・・「ベルリン五輪では世界平和の追求ではなくナチスの帝国主義のプロパガンダが行われた。」と彼は述べた。そして当時、やはり街頭での少数派に対する暴力が頻発していたとも・・。更に、ソウルにおける暴力は、<中共人の>暴力的な抗議行動が自由社会の洗礼を受けた人々によって行われたことを考えると、中共における状況がどんなに「ひどい」ものであるかを実感せしめたと付け加えた。


「チベットで今何が起こっているかを想像すると慄然とする」と。・・・」

http://english.chosun.com/w21data/html/news/200804/200804290018.html )→これは、中共及び中共の人々に対するこの上もない非難です(大田)。

「・・・世界中で行われた北京五輪の聖火リレーが、中国のチベット人に対する弾圧を非難する各国の市民たちによる抗議で騒乱に発展している。しかし、中国人が他国の首都で乱暴狼藉を働くという事態は、今回のソウルが初めてだ。中国人は一体何の権利があって、他国の首都のど真ん中に集結し、暴力沙汰を起こしたのか。今回の事態は決して、なあなあで済ませられる問題ではない。韓国と中国の関係は日増しに緊密になっている。中国は韓国にとって最大の貿易相手国であり、また60万人の韓国人が中国に居住し、その数はさらに 増え続けている。中国が上手く付き合っていかねばならない隣人であることは言うまでもないことだ。しかし、だからといって、他国で行われるイベントをメチャクチャにしてしまうような隣国は、真の意味での隣人とはいえない。


中国が果たして、五輪を開催できるだけの良識を持った国なのかどうかも疑わざるを得ない。


・・・ 中国人の常識レベルもさることながら、果たして韓国や韓国人が彼らにどのように見られたがゆえに、白昼堂々とこのような暴力を被ったのだろうか。韓国の歴代政権は政治的な理由で、中国に対し言うべきことも十分に言えなかった。また「知識人」と言われる人たちも、左派、右派を問わず、中国のすることは黙って 見過ごした方が無難だ、という対応をしてきた。こうした過去が、今日の中国人たちの無礼で傲慢な態度を生んだのではないだろうか。・・・ソウルの都心で何時間も暴力沙汰が続いたにもかかわらず、警察が中国人の暴徒を一人しか逮捕できなかったという事実は、韓国政府がどれだけ生ぬるい対応を取ったかということを示すものだ。徹底的な捜査を行い、暴力沙汰を起こした中国人たちを厳重に処罰すべきだ。」(ttp://www.chosunonline.com/article/20080429000032、
http://www.chosunonline.com/article/20080429000033

→返す刀で、これまでの韓国の人々や政府の対中フィーバーや対中事大主義的傾向を断罪しているわけです(太田)。
「中国の・・・山東大学の孫文広教授ら9人の学者はこのほど、インターネット上で実名で声明を公表 した。声明は「学者の立場で、最近理性を失いつつある中国人の『愛国主義感情』に意見を述べるときが来たと感じた。国粋主義的な外国人嫌悪症は中国の発展 を阻害するだけだ」と指摘した。学者らは「われわれもチベットの独立に反対し、五輪を通じた中華民族の復興を支持する。愛国主義は自由に対する愛情、大衆の知る権利、発言する権利の保障を伴わなければならない」と付け加えた。学者らは「若い学生のゆがんだ愛国主義は、中国政府が政治学理論と教科書に対する検閲を実施し、一方的な教育が行われているためだ。

今回の事態は中国政府が世論をどれだけ操作しているかを示している

と批判した。・・・(http://www.chosunonline.com/article/20080429000026

→中共内部にも冷静かつ良心的な声がないわけではないことを報じて、ほんの少しバランスをとったというところでしょうか(太田)。「・・・外交通商部の文太暎(ムン・テヨン)スポークスマンは<28>日、「李容濬(イ・ヨンジュン)次官補が外交部に寧大使を招き、北京五輪の成功を願っているが、前日に一部の中国人青年たちが過激な行動に出たことについては、強い遺憾の意を表する旨を伝えた」と明らかにした。・・・」(
http://www.chosunonline.com/article/20080429000022
局長が大使を呼びつけたわけで、韓国の新政権の厳しい対中姿勢が現れています。以上の朝鮮日報の論調は、韓国の世論を代弁していることが分かります。(太田)

3 朝日の論調
ところで、親中的であったわが朝日新聞の論調にも変化が現れているように思われます。「韓国外交通商省の李容濬(イ・ヨンジュン)・次官補は28日、中国の寧賦魁・駐韓大使を呼び、前日にソウルであった聖火リレーで中 国人留学生らが過激な行動に出たことに抗議した。韓国ではインターネットで、一部の中国人留学生らの暴力行為も動画で投稿され、反発が広がっている。(
http://www.asahi.com/international/update/0428/TKY200804280348.html

と本日朝の時点で電子版で、この劇的な韓国対中世論の変化を報じるとともに、日本の主要紙の電子版の中で唯一、

北京五輪の聖火リレーへの妨害を防ぐため、各地の中国大使館側が旅費を負担するなどして、現地の中国人留学生らを大量動員していたことが関係者の話でわかった。「人間の壁」による妨害対策を指示するなど、対処マニュアルも作成。各地で赤い中国国旗を振っていた「聖火応援隊」は、やはり当局主導だった.(
http://www.asahi.com/international/update/0429/TKY200804280362.html )と中共政府の策動を暴く記事を掲載したからです。

4 終わりに
聖火はこれから香港やチベット人地区でリレーされますが、一体何が起こるのか、あるいは起こらない(或いは起こさせない、もしくは完全に情報を遮断する?)のか、策動の結果墓穴を掘った中共政府の対応が注目されます。
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【社説】暴力沙汰に発展した聖火リレー(上)朝鮮日報/朝鮮日報JNS
北京五輪の聖火リレーが行われた27日、ソウルの都心は修羅場と化した。中国の国旗「五星紅旗」を掲げたり体に巻きつけた数千人の中国人が、中国のチベット弾圧や脱北者の強制送還に抗議する数十人足らずのデモ隊に向かって石を投げ、鉄パイプや金属カッターまで用いて無差別に襲撃し、市民団体幹部やカメラマンが胸部や頭部にけがを負う事態となった。「フリー・チベット」と書かれたTシャツを着た米国人やカナダ人も中国人の集団の襲撃に遭った。中国人の集団はさらに、チベットを支持するデモ隊をホテルの中まで追いかけ、乱暴狼藉(ろうぜき)を働いた。また、これを止めようとした警察官も鈍器で頭部を殴られ病院に運ばれた。世界中で行われた北京五輪の聖火リレーが、中国のチベット人に対する弾圧を非難する各国の市民たちによる抗議で騒乱に発展している。しかし、中国人が他国の首都で乱暴狼藉を働くという事態は、今回のソウルが初めてだ。中国人は一体何の権利があって、他国の首都のど真ん中に集結し、暴力沙汰を起こしたのか。今回の事態は決して、なあなあで済ませられる問題ではない。韓国と中国の関係は日増しに緊密になっている。中国は韓国にとって最大の貿易相手国であり、また60万人の韓国人が中国に居住し、その数はさらに増え続けている。中国が上手く付き合っていかねばならない隣人であることは言うまでもないことだ。しかし、だからといって、他国で行われるイベントをメチャクチャにしてしまうような隣国は、真の意味での隣人とはいえない。中国が果たして、五輪を開催できるだけの良識を持った国なのかどうかも疑わざるを得ない。

【社説】暴力沙汰に発展した聖火リレー(下)朝鮮日報/朝鮮日報JNS
中国人の常識レベルもさることながら、果たして韓国や韓国人が彼らにどのように見られたがゆえに、白昼堂々とこのような暴力を被ったのだろうか。韓国の歴代政権は政治的な理由で、中国に対し言うべきことも十分に言えなかった。また「知識人」と言われる人たちも、左派、右派を問わず、中国のすることは黙って見過ごした方が無難だ、という対応をしてきた。こうした過去が、今日の中国人たちの無礼で傲慢な態度を生んだのではないだろうか。国際関係ほど「原則」と「前例」が重要な分野はない。例えそのときは困難であっても、「原則」を守り通すという「前例」を作っておけば、あとはその前例を踏襲していけるのだ。オランダのような小さな国は、どんな状況に陥っても「国際法の原則」を守るという「前例」を着実に積み重ねることで、大国であってもぞんざいな対応はできない国をつくってきた。言い換えれば、自ら原則を守り、前例を積み重ねることで、国の格、すなわち「国格」を高めてきたといえる。今回の事態は、駐韓中国大使を呼んで「遺憾の意」を伝える程度で済まされるものではない。ソウルの都心で何時間も暴力沙汰が続いたにもかかわらず、警察が中国人の暴徒を一人しか逮捕できなかったという事実は、韓国政府がどれだけ生ぬるい対応を取ったかということを示すものだ。徹底的な捜査を行い、暴力沙汰を起こした中国人たちを厳重に処罰すべきだ。