軍事情報
ようちゃん、おすすめ記事。↓軍事情報 4月14日
■太平洋コマンド司令官の歴訪
太平洋コマンド司令官のキーティング海軍大将は十一日、訪問先のインドネシアでユドヨノ大統領と会談。地域の海上治安、平和維持等における米の関与を継続することで合意しています。大将は、地域の海上の安全に果たすインドネシアの役割の大きさを明言しています。
⇒キーティング大将は、インドネシア訪問前の八日にミクロネシア連邦、九日にブルネイを訪問しています。
■イスラエル、補給処攻撃に報復
イスラエル軍は十二日、先週イスラエルのナハルオズ石油補給処に対して行なわれた攻撃に対する報復としてガザ地区を空襲、ハマスメンバー二名を含む五名に損害を与えたそうです。オルメルト首相は攻撃を実施したことを認め、ハマスによるイスラエル攻撃の策源地を攻撃したものだとしています。
■イランの遠心分離機は492基
英国筋によれば、イランは現在492基の遠心分離機を、ナタンツのウラン濃縮施設で運用しているそうです。イラン政府は核兵器製造の恐れを懸念し、核開発計画凍結を要請する国連の要求に逆らって計画を拡大していることが明らかになりました。
■サンドハースト陸軍士官学校でパレード
英国のサンドハースト陸軍士官学校で十一日卒業式があり、第156回目となる「王のパレード(Sovereign's Parade)」が行なわれました。エリザベス女王陛下の名代で臨席されたアン王女の前で、士官候補生たちは隊列を組んで整然と行進しました。サンドハースト陸軍士官学校はチャーチルの出身校としてよく知られています。
⇒将校名簿の中に、海外留学生の一覧がありましたのでご紹介します。
ちなみに留学生中最優等はパキスタンのSyed Saifi Hassan Naqvi見習士官でした。これを見ると、イギリスの対外方針が透けて出てくる気がしますね。見ているうちに、以前お届けした武器輸出に関する記事を思い出しました。
「(前略)武器輸入国はその輸入に関連して若くて優秀な軍人を輸出国側に留学させるケースが非常に多く、しかも発展途上国では彼等が後年に高位高官となって国政に参画する可能性が高いのです。そのとき、若いときに学んで好印象を持った国とは必ず友好的関係になるものです。それは現在の途上国の指導者の殆どが、若い時代にそれぞれの外国に留学した経験を生かして、それらの国との関係強化を求めていることでわかります。(後略)」(ヨーソロ)
軍人交流の積み重ねの重要性を感じます。
■米、イラク撤収への動き
十日、米のブッシュ大統領はイラク・アフガンで展開する部隊の展開期間をそれまでの十五ヶ月から十二ヶ月に短縮すると発表しました。これについて統合参謀本部議長のムレン海軍大将は十一日のCNNとのインタビューで「われわれに求められている任務は三つあるが、そのバランスは非常に微妙な均衡下にある。現在の最優先任務はイラクでの展開を通じ同国の治安を改善することだ。アフガンへの展開と可能行動に集中するのはそのあとだ。あわせて健康な軍を維持する必要もある。
大統領の展開期間短縮決定は、軍の健康を維持するための重要な前進だ。わが軍(特に地上部隊)は現在相当な圧力とストレス下にある。そんななかで彼らは任務を果たすことに喜びを見出しており精強だ。ただ、展開場所による差異が見受けられている」
大将は、「すべての指揮官は部隊にかかるストレス、特にPTSDの影響を懸念している。陸軍部隊の約一〇~一五%は三~四地域に展開してきたが、指揮官はPTSD・その他の病気の発見と治療に力を注いでいる」と述べてます。
⇒ムレン大将は、以下のようなことも述べています。
・治安維持作戦でわが軍はイラクで相当な成功を収めた。
・イラクの治安は劇的に改善している。それは、この七月に治安旅団がイラクを出るにあたって、米政府が将来の兵力撤収にむけた検討をはじめる状況をもたらした。・イラクの治安維持はイラク政府が自らの手で行なうものだ。イラクの現状はまだ脆くいつどうなるかわからない。われわれはイラク政府が自らの手でそれが達成できるよう努めてゆく
部隊の撤収については十日にゲーツ国防長官が上院軍事委員会で「イラクの治安は劇的に改善しており、七月終わりに治安旅団の撤収を行なう」と述べています。ブッシュ大統領は十日、七月に最後の治安旅団が撤収したあと四十五日間にわたって将来の展開兵力評価を行なう担当者として、イラク多国籍軍司令官のペトラウス陸軍大将を推薦支持しています。ちなみに十一日、昨年二月からイラクで展開していた治安旅団で一師団隷下の四旅団戦闘チーム(指揮官 ギブス大佐)が帰国しています。
■米シ国防相がホットラインで会談
米とシナは昨年軍事ホットライン設置で合意しました。米は同様の関係を四十カ国以上と結んでいます。
十日、米のゲーツ国防長官はシナとの軍事ホットラインのテストを行ない、シナのカウンターパートである国防相の梁光烈上将を呼び出して対話しました。
ゲーツ長官は「国防相就任を祝福する。これは両軍の交流強化にとって重要なステップだ」と述べ、軍同士の交流を増やし、「実質的な対話」をどういう形で増やせば不測の事態を避けうるかについて話し合ったそうです。
梁上将は今年初めの大寒波の際、米がシナに提供した援助に対する感謝を表明しています。
⇒米国防総省報道官のウィットマン氏は「今回の件は、米シ軍事交流が全般的に見てこれからもよくなっていくことを証明したものだ」と述べています。
■太平洋コマンド司令官の対シナ認識
米太平洋コマンド司令官のキーティング海軍大将は十日、訪問先のインドネシアで記者会見を行い以下のようなことを述べています。
・シナの軍拡は疑問と懸念を引き起こす。その理由と感触を明確に知るための最高の方法は指導者と付き合うことだ。
・わが国は特定の武器開発に対する懸念をシナに表明している。それは地域制圧兵器、衛星攻撃技術、そして潜水艦兵力の増強だ
・それらがシナ自身の権益を護るためのものであれば、その旨われわれに話せば良い。それならばフェアだ。しかしシナの行動を見ていると、十分に説明しているとは思えない
・太平洋コマンド司令部は、シナが提示する内容を通じてその透明度のみならず明確な意図を探る。シナの意図をよりよく理解するため、シナ側との対話を続けたいというのは変わらぬ願望であり意向である
・シナは穏やかな軍備拡張・調和のとれた発展が目的と常に明言する。それには賛成するが、先ほどあげた特定武器の開発を行っている間、何のためにそれを行い、何を達成しようとしているかについて、われわれに分かる形で伝える必要がある。われわれが観察し把握していることと、目的とされていることの間には矛盾がある
・シナやシナ軍を無視することが目的ではない。われわれはシナの中共、シナ軍を孤立させたくないのだ。彼らとともに仕事をしたいのだ。
⇒キーティング大将は、シナとの協力を望む姿勢を示しています。それには多国間軍事演習への同軍指揮官クラスのオブザーバー派遣が含まれています。それにより米と同盟諸国はシナとの関係をよりオープンにできるかもしれない、ということだそうです。
大将はこう強調しています。「われわれの目的は頑ななシナの姿勢を溶かし、彼らと交流することだ。われわれというのは米ではなくアジア太平洋地域すべてのことだ。この交流は、シナにとっては彼らが信じているとされるものを証明する機会となり、シナの軍事計画に関して地域が抱える脅威の減少につながる可能性もある」
●一〇一空挺師団に指揮転移
十日、アフガンのバグラム空軍基地で、在アフガンの八十二統連合任務部隊(八十二空挺師団中核・ISAF東部方面コマンドの中核)の後を受け任務にあたる一〇一空挺師団司令部が、一〇一統連合任務部隊(CJTF101)として正式に開設され、指揮転移が行われました。
指揮官のシュレッサー少将は着任の辞で「有志連合、アフガン政府と協力し、イスラム民主国家アフガンの構築に努力する。過去三十年にわたって苦しみつづけてきたアフガン国民のために活動してゆく」と述べています。
ISAFの東部方面コマンドはパキスタン国境を含むアフガン東部の十四県を管轄します。
一〇一空挺師団は「スクリーミング・イーグル(鋭く叫ぶワシ)」の別称で知られる空挺部隊です。米軍の二つある空挺師団のひとつです。(もうひとつは八十二空挺師団)駐屯地はケンタッキー州キャンベルにあります。今回アフガンに派遣されたのは7200名で、司令部、四旅団戦闘チーム、一〇一戦闘航空旅団、一〇一兵站旅団がアフガンの一〇一統連合任務部隊の一部として展開しています。同師団の一、二、三旅団戦闘チームは現在もイラクで展開中です。
■米とチリ、情報共有合意に調印
米とチリの国防相は八日、科学技術・ハイテク技術情報の共有をはじめる合意に署名しました。二国間の相互関係はさらに強化されそうです。
米国防総省で行なわれた調印式の席上、米のゲーツ国防長官は
「民主主義・市場経済・社会正義・人権という価値を共有する両国間の軍事協力関係は強固だ」と述べています。
今回調印された「基本情報交換合意」は軍事技術に関する基礎データ交換を正式な形で行なうための枠組み合意です。
国防総省高官は、「両国間の相互関係を深めることができ、更なる関係を産むことが可能になる」としています。ゲーツ長官は「次のステップとして、チリで特定の軍事科学・ハイテク技術計画開発ができるようになればいいと考えている」と述べています。
六月に米とチリは両国の軍事技術・ハイテク関連研究所のスタッフを交換する合意に調印し、今夏にはチリ軍将校が米陸軍研究所に派遣され、チリに派遣される米研究者の割り当てが行なわれます。
⇒ご参考までにチリ軍の概要をご紹介します。チリ軍は国家元首たる大統領に隷属し、命令は国防相を通じて下令されます。大統領は国軍最高指揮官です。
陸軍
司令官はOscar Izurieta Ferrer陸軍大将。兵力45000人。
司令部(サンチアゴ)の元、七個師団、一個航空旅団(ランカグア)、特殊戦コマンド(コリーナ)で編成されています。ラテンアメリカで最も近代化された軍のひとつです。
海軍
司令官は Rodolfo Codina海軍大将。兵力23000名(海兵隊2500名含む)
「チリ艦隊」(航空部隊・海兵隊を含めて編成)と海洋権益・商船統制保護部隊からなる。二十九隻の水上艦(戦闘艦はフリゲート八隻)、四隻の潜水艦、空輸警戒任務に当たる航空機を保有している。戦闘機や爆撃機は保有していない。水上艦基地はバルパライソにあり、潜水艦基地はタルカフノにある。
空軍(FACH)
司令官はRicardo Ortega Perrier空軍大将。兵力12500名。
五個航空旅団(司令部 イキケ、アントファガスタ、サンチアゴ、プエルトモン、プンタアレナス)で編成されている。南極圏のキングジョージ島でも展開している。F-16S十機の米からの調達を完了した(2007/3)。同年、F-16Sブロック15を数機オランダから調達し同国からの調達はこれで十八機になっている。
国家警察
1973年の軍事クーデター以降、チリ国家警察は国防省隷下になった。民主化後警察は内務省管轄下に入ったが、以前と同じく国防省隷下で活動している。司令官はJose Bernales陸軍大将で、兵力30000名。法の執行、交通整理、麻薬制圧、国境地帯の統制、対テロ任務等に当たる。
その他
兵役は十八歳から四十五歳までの男女志願制だが、国家には徴兵権が授与されている。任期は陸軍12ヶ月、海軍と空軍は22ヶ月である。
兵役対象となう年齢層の人数は男性312万3281名、女性312万8277名である。ちなみに二〇〇五年時点で兵役対象の十八歳になった人の数は、男性14万84名、女性13万4518名である。GDPに占める軍事費の割合は2.7%となっている。(2006年)
■サイバー空間への軍の対応
サイバー世界における進歩の早さは凄まじいものがあります。
それを上回る形で軍がサイバー空間と取り組むにあたって、情報の流れに関する厄介な規制は過去の遺物なのかもしれません。
米軍諸職種連合センター(在カンザス州レブンワース駐屯地)コンピュータネットワーク及び電子戦部長のパークス大佐は七日、オンラインジャーナリストとブロガーとの電子会議の席上、「兵士の言葉をいかに統制するかを懸念するのでなく、電子空間に落とし込まれた彼らのメッセージを軍がいかに迅速に取り上げるかという点に集中する必要がある」と述べています。
同大佐は続けて以下のような発言をしてます。
「陸軍には事態が起きてから対処する傾向がある。しかし現在は過去と違い、情報を通じて人々に影響を与える方式が主流となっている。そのため陸軍は、兵士の発言を統制するよりはむしろ、事実を伝達することに集中している。兵士が何かをいうために必要な十分な事実を伝えることで、わが兵士は事実を述べることができるようになる」
大佐の見積りによれば、兵士が直接提供している情報の八〇%は正しいそうです。のこり二十%の不正確な情報がもたらす危険性も、オンライン情報に対する軍の積極的対応を維持するうえで効果があると見ています。
大佐はオンラインジャーナリストやブロガーに対し、「何を言われているかに気づくことができる限り、内容は常に修正可能だ。あなた方には、人々が軍や指導者に不信感を抱かないよう、われわれが事態が起きてから対処しているのではないことを、十分確実に常に人々に知らせることができる」と述べています。
あわせて大佐は、コンピュータネットワークとシステム上における対サイバー攻撃防御が電子戦のもう一つの鍵となる要素、と述べています。
「わがネットワークとコンピュータシステムに対して国境を越えた攻撃が行なわれている」そうです。米軍諸職種連合センターは、過去の攻撃から教義を抽出する研究機関で、将来想定される攻撃に備えた防御能力を現在構築中です。(おき軍事情報部)
◎◎◎ 幕僚長から権限を奪う方向へ ◎◎◎
防衛省改革会議の中間報告の方向は、統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長から執行権限を奪い、大臣補佐に特化させることにあるようです。
大臣が直接細かい命令を出すそうです。
石破氏は、かつてキューバ危機の際にケネディーが直接に現場の駆逐艦長に指示を出して顰蹙を買った愚をやろうとしています。現場の臨場感の無い素人のヒトラーが作戦レベルに余計な口を出して精強なドイツ国防軍が敗戦に追い込まれた愚をやろうとしています。
マニア大臣の趣味道楽も、ここまで来ると国家に害毒です。
大臣には戦術レベルの命令を出す気など「今は」無いでしょうが、制度として自分で命令を出すことにすれば、やがてはそうなります。些細な失敗に対して面子を保つ繕い塗りをしようとして結局キズを深くするのです。歴代の独裁者が必ず落ちた陥穽です。
最高指揮官である首相や大臣は「軍事は外交の延長」の立場から「国家の方針と所望結果」を示すに止め、用兵レベルのことは用兵者に任せるべきなのです。どうしても任せられなければ、用兵指揮官を信頼できる者に代えれば良いのです。「政治の世界で決めねばならぬ(当然結果責任のある)事柄」と、「プロに任せてやらせるべき(用兵者の責任に帰する)事柄」の仕分け、これこそが「シビリアン・コントロール」の真の意味ではないでしょうか。
■太平洋コマンド司令官の歴訪
太平洋コマンド司令官のキーティング海軍大将は十一日、訪問先のインドネシアでユドヨノ大統領と会談。地域の海上治安、平和維持等における米の関与を継続することで合意しています。大将は、地域の海上の安全に果たすインドネシアの役割の大きさを明言しています。
⇒キーティング大将は、インドネシア訪問前の八日にミクロネシア連邦、九日にブルネイを訪問しています。
■イスラエル、補給処攻撃に報復
イスラエル軍は十二日、先週イスラエルのナハルオズ石油補給処に対して行なわれた攻撃に対する報復としてガザ地区を空襲、ハマスメンバー二名を含む五名に損害を与えたそうです。オルメルト首相は攻撃を実施したことを認め、ハマスによるイスラエル攻撃の策源地を攻撃したものだとしています。
■イランの遠心分離機は492基
英国筋によれば、イランは現在492基の遠心分離機を、ナタンツのウラン濃縮施設で運用しているそうです。イラン政府は核兵器製造の恐れを懸念し、核開発計画凍結を要請する国連の要求に逆らって計画を拡大していることが明らかになりました。
■サンドハースト陸軍士官学校でパレード
英国のサンドハースト陸軍士官学校で十一日卒業式があり、第156回目となる「王のパレード(Sovereign's Parade)」が行なわれました。エリザベス女王陛下の名代で臨席されたアン王女の前で、士官候補生たちは隊列を組んで整然と行進しました。サンドハースト陸軍士官学校はチャーチルの出身校としてよく知られています。
⇒将校名簿の中に、海外留学生の一覧がありましたのでご紹介します。
ちなみに留学生中最優等はパキスタンのSyed Saifi Hassan Naqvi見習士官でした。これを見ると、イギリスの対外方針が透けて出てくる気がしますね。見ているうちに、以前お届けした武器輸出に関する記事を思い出しました。
「(前略)武器輸入国はその輸入に関連して若くて優秀な軍人を輸出国側に留学させるケースが非常に多く、しかも発展途上国では彼等が後年に高位高官となって国政に参画する可能性が高いのです。そのとき、若いときに学んで好印象を持った国とは必ず友好的関係になるものです。それは現在の途上国の指導者の殆どが、若い時代にそれぞれの外国に留学した経験を生かして、それらの国との関係強化を求めていることでわかります。(後略)」(ヨーソロ)
軍人交流の積み重ねの重要性を感じます。
■米、イラク撤収への動き
十日、米のブッシュ大統領はイラク・アフガンで展開する部隊の展開期間をそれまでの十五ヶ月から十二ヶ月に短縮すると発表しました。これについて統合参謀本部議長のムレン海軍大将は十一日のCNNとのインタビューで「われわれに求められている任務は三つあるが、そのバランスは非常に微妙な均衡下にある。現在の最優先任務はイラクでの展開を通じ同国の治安を改善することだ。アフガンへの展開と可能行動に集中するのはそのあとだ。あわせて健康な軍を維持する必要もある。
大統領の展開期間短縮決定は、軍の健康を維持するための重要な前進だ。わが軍(特に地上部隊)は現在相当な圧力とストレス下にある。そんななかで彼らは任務を果たすことに喜びを見出しており精強だ。ただ、展開場所による差異が見受けられている」
大将は、「すべての指揮官は部隊にかかるストレス、特にPTSDの影響を懸念している。陸軍部隊の約一〇~一五%は三~四地域に展開してきたが、指揮官はPTSD・その他の病気の発見と治療に力を注いでいる」と述べてます。
⇒ムレン大将は、以下のようなことも述べています。
・治安維持作戦でわが軍はイラクで相当な成功を収めた。
・イラクの治安は劇的に改善している。それは、この七月に治安旅団がイラクを出るにあたって、米政府が将来の兵力撤収にむけた検討をはじめる状況をもたらした。・イラクの治安維持はイラク政府が自らの手で行なうものだ。イラクの現状はまだ脆くいつどうなるかわからない。われわれはイラク政府が自らの手でそれが達成できるよう努めてゆく
部隊の撤収については十日にゲーツ国防長官が上院軍事委員会で「イラクの治安は劇的に改善しており、七月終わりに治安旅団の撤収を行なう」と述べています。ブッシュ大統領は十日、七月に最後の治安旅団が撤収したあと四十五日間にわたって将来の展開兵力評価を行なう担当者として、イラク多国籍軍司令官のペトラウス陸軍大将を推薦支持しています。ちなみに十一日、昨年二月からイラクで展開していた治安旅団で一師団隷下の四旅団戦闘チーム(指揮官 ギブス大佐)が帰国しています。
■米シ国防相がホットラインで会談
米とシナは昨年軍事ホットライン設置で合意しました。米は同様の関係を四十カ国以上と結んでいます。
十日、米のゲーツ国防長官はシナとの軍事ホットラインのテストを行ない、シナのカウンターパートである国防相の梁光烈上将を呼び出して対話しました。
ゲーツ長官は「国防相就任を祝福する。これは両軍の交流強化にとって重要なステップだ」と述べ、軍同士の交流を増やし、「実質的な対話」をどういう形で増やせば不測の事態を避けうるかについて話し合ったそうです。
梁上将は今年初めの大寒波の際、米がシナに提供した援助に対する感謝を表明しています。
⇒米国防総省報道官のウィットマン氏は「今回の件は、米シ軍事交流が全般的に見てこれからもよくなっていくことを証明したものだ」と述べています。
■太平洋コマンド司令官の対シナ認識
米太平洋コマンド司令官のキーティング海軍大将は十日、訪問先のインドネシアで記者会見を行い以下のようなことを述べています。
・シナの軍拡は疑問と懸念を引き起こす。その理由と感触を明確に知るための最高の方法は指導者と付き合うことだ。
・わが国は特定の武器開発に対する懸念をシナに表明している。それは地域制圧兵器、衛星攻撃技術、そして潜水艦兵力の増強だ
・それらがシナ自身の権益を護るためのものであれば、その旨われわれに話せば良い。それならばフェアだ。しかしシナの行動を見ていると、十分に説明しているとは思えない
・太平洋コマンド司令部は、シナが提示する内容を通じてその透明度のみならず明確な意図を探る。シナの意図をよりよく理解するため、シナ側との対話を続けたいというのは変わらぬ願望であり意向である
・シナは穏やかな軍備拡張・調和のとれた発展が目的と常に明言する。それには賛成するが、先ほどあげた特定武器の開発を行っている間、何のためにそれを行い、何を達成しようとしているかについて、われわれに分かる形で伝える必要がある。われわれが観察し把握していることと、目的とされていることの間には矛盾がある
・シナやシナ軍を無視することが目的ではない。われわれはシナの中共、シナ軍を孤立させたくないのだ。彼らとともに仕事をしたいのだ。
⇒キーティング大将は、シナとの協力を望む姿勢を示しています。それには多国間軍事演習への同軍指揮官クラスのオブザーバー派遣が含まれています。それにより米と同盟諸国はシナとの関係をよりオープンにできるかもしれない、ということだそうです。
大将はこう強調しています。「われわれの目的は頑ななシナの姿勢を溶かし、彼らと交流することだ。われわれというのは米ではなくアジア太平洋地域すべてのことだ。この交流は、シナにとっては彼らが信じているとされるものを証明する機会となり、シナの軍事計画に関して地域が抱える脅威の減少につながる可能性もある」
●一〇一空挺師団に指揮転移
十日、アフガンのバグラム空軍基地で、在アフガンの八十二統連合任務部隊(八十二空挺師団中核・ISAF東部方面コマンドの中核)の後を受け任務にあたる一〇一空挺師団司令部が、一〇一統連合任務部隊(CJTF101)として正式に開設され、指揮転移が行われました。
指揮官のシュレッサー少将は着任の辞で「有志連合、アフガン政府と協力し、イスラム民主国家アフガンの構築に努力する。過去三十年にわたって苦しみつづけてきたアフガン国民のために活動してゆく」と述べています。
ISAFの東部方面コマンドはパキスタン国境を含むアフガン東部の十四県を管轄します。
一〇一空挺師団は「スクリーミング・イーグル(鋭く叫ぶワシ)」の別称で知られる空挺部隊です。米軍の二つある空挺師団のひとつです。(もうひとつは八十二空挺師団)駐屯地はケンタッキー州キャンベルにあります。今回アフガンに派遣されたのは7200名で、司令部、四旅団戦闘チーム、一〇一戦闘航空旅団、一〇一兵站旅団がアフガンの一〇一統連合任務部隊の一部として展開しています。同師団の一、二、三旅団戦闘チームは現在もイラクで展開中です。
■米とチリ、情報共有合意に調印
米とチリの国防相は八日、科学技術・ハイテク技術情報の共有をはじめる合意に署名しました。二国間の相互関係はさらに強化されそうです。
米国防総省で行なわれた調印式の席上、米のゲーツ国防長官は
「民主主義・市場経済・社会正義・人権という価値を共有する両国間の軍事協力関係は強固だ」と述べています。
今回調印された「基本情報交換合意」は軍事技術に関する基礎データ交換を正式な形で行なうための枠組み合意です。
国防総省高官は、「両国間の相互関係を深めることができ、更なる関係を産むことが可能になる」としています。ゲーツ長官は「次のステップとして、チリで特定の軍事科学・ハイテク技術計画開発ができるようになればいいと考えている」と述べています。
六月に米とチリは両国の軍事技術・ハイテク関連研究所のスタッフを交換する合意に調印し、今夏にはチリ軍将校が米陸軍研究所に派遣され、チリに派遣される米研究者の割り当てが行なわれます。
⇒ご参考までにチリ軍の概要をご紹介します。チリ軍は国家元首たる大統領に隷属し、命令は国防相を通じて下令されます。大統領は国軍最高指揮官です。
陸軍
司令官はOscar Izurieta Ferrer陸軍大将。兵力45000人。
司令部(サンチアゴ)の元、七個師団、一個航空旅団(ランカグア)、特殊戦コマンド(コリーナ)で編成されています。ラテンアメリカで最も近代化された軍のひとつです。
海軍
司令官は Rodolfo Codina海軍大将。兵力23000名(海兵隊2500名含む)
「チリ艦隊」(航空部隊・海兵隊を含めて編成)と海洋権益・商船統制保護部隊からなる。二十九隻の水上艦(戦闘艦はフリゲート八隻)、四隻の潜水艦、空輸警戒任務に当たる航空機を保有している。戦闘機や爆撃機は保有していない。水上艦基地はバルパライソにあり、潜水艦基地はタルカフノにある。
空軍(FACH)
司令官はRicardo Ortega Perrier空軍大将。兵力12500名。
五個航空旅団(司令部 イキケ、アントファガスタ、サンチアゴ、プエルトモン、プンタアレナス)で編成されている。南極圏のキングジョージ島でも展開している。F-16S十機の米からの調達を完了した(2007/3)。同年、F-16Sブロック15を数機オランダから調達し同国からの調達はこれで十八機になっている。
国家警察
1973年の軍事クーデター以降、チリ国家警察は国防省隷下になった。民主化後警察は内務省管轄下に入ったが、以前と同じく国防省隷下で活動している。司令官はJose Bernales陸軍大将で、兵力30000名。法の執行、交通整理、麻薬制圧、国境地帯の統制、対テロ任務等に当たる。
その他
兵役は十八歳から四十五歳までの男女志願制だが、国家には徴兵権が授与されている。任期は陸軍12ヶ月、海軍と空軍は22ヶ月である。
兵役対象となう年齢層の人数は男性312万3281名、女性312万8277名である。ちなみに二〇〇五年時点で兵役対象の十八歳になった人の数は、男性14万84名、女性13万4518名である。GDPに占める軍事費の割合は2.7%となっている。(2006年)
■サイバー空間への軍の対応
サイバー世界における進歩の早さは凄まじいものがあります。
それを上回る形で軍がサイバー空間と取り組むにあたって、情報の流れに関する厄介な規制は過去の遺物なのかもしれません。
米軍諸職種連合センター(在カンザス州レブンワース駐屯地)コンピュータネットワーク及び電子戦部長のパークス大佐は七日、オンラインジャーナリストとブロガーとの電子会議の席上、「兵士の言葉をいかに統制するかを懸念するのでなく、電子空間に落とし込まれた彼らのメッセージを軍がいかに迅速に取り上げるかという点に集中する必要がある」と述べています。
同大佐は続けて以下のような発言をしてます。
「陸軍には事態が起きてから対処する傾向がある。しかし現在は過去と違い、情報を通じて人々に影響を与える方式が主流となっている。そのため陸軍は、兵士の発言を統制するよりはむしろ、事実を伝達することに集中している。兵士が何かをいうために必要な十分な事実を伝えることで、わが兵士は事実を述べることができるようになる」
大佐の見積りによれば、兵士が直接提供している情報の八〇%は正しいそうです。のこり二十%の不正確な情報がもたらす危険性も、オンライン情報に対する軍の積極的対応を維持するうえで効果があると見ています。
大佐はオンラインジャーナリストやブロガーに対し、「何を言われているかに気づくことができる限り、内容は常に修正可能だ。あなた方には、人々が軍や指導者に不信感を抱かないよう、われわれが事態が起きてから対処しているのではないことを、十分確実に常に人々に知らせることができる」と述べています。
あわせて大佐は、コンピュータネットワークとシステム上における対サイバー攻撃防御が電子戦のもう一つの鍵となる要素、と述べています。
「わがネットワークとコンピュータシステムに対して国境を越えた攻撃が行なわれている」そうです。米軍諸職種連合センターは、過去の攻撃から教義を抽出する研究機関で、将来想定される攻撃に備えた防御能力を現在構築中です。(おき軍事情報部)
◎◎◎ 幕僚長から権限を奪う方向へ ◎◎◎
防衛省改革会議の中間報告の方向は、統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長から執行権限を奪い、大臣補佐に特化させることにあるようです。
大臣が直接細かい命令を出すそうです。
石破氏は、かつてキューバ危機の際にケネディーが直接に現場の駆逐艦長に指示を出して顰蹙を買った愚をやろうとしています。現場の臨場感の無い素人のヒトラーが作戦レベルに余計な口を出して精強なドイツ国防軍が敗戦に追い込まれた愚をやろうとしています。
マニア大臣の趣味道楽も、ここまで来ると国家に害毒です。
大臣には戦術レベルの命令を出す気など「今は」無いでしょうが、制度として自分で命令を出すことにすれば、やがてはそうなります。些細な失敗に対して面子を保つ繕い塗りをしようとして結局キズを深くするのです。歴代の独裁者が必ず落ちた陥穽です。
最高指揮官である首相や大臣は「軍事は外交の延長」の立場から「国家の方針と所望結果」を示すに止め、用兵レベルのことは用兵者に任せるべきなのです。どうしても任せられなければ、用兵指揮官を信頼できる者に代えれば良いのです。「政治の世界で決めねばならぬ(当然結果責任のある)事柄」と、「プロに任せてやらせるべき(用兵者の責任に帰する)事柄」の仕分け、これこそが「シビリアン・コントロール」の真の意味ではないでしょうか。