チベット暴動は、中国軍・武装公安警察の「やらせ」か?
二回目の掲載です。↓
▼チベット暴動は、中国軍・武装公安警察の「やらせ」か?それとも民族自決を求めるチベット青年僧の「暴発」か?(じじ放談)
チベットにおける暴動に関連して虐殺された者は百数十名といわれるが、中国軍・公安警察の厳重な報道管制があるため真実は闇のなかである。中国当局が公表した数字の何十倍に達しているのではあるまいか。チベット問題は、情報がいろいろ錯綜している。真実が見えにくくなっている。そこで公開情報を整理しておきたい。チベット問題、北京五輪開会式への各国首脳の出欠問題、聖火リレー問題などを巡る紛争の背景を検討してみたい。
第1.チベット暴動の背景
(1)チベット文化崩壊の危機(中国による経済的・文化的侵略の進展)
1995年以降、ラサ地区は中国資本による開発が進展。特に、北京オリンピックの準備でそれが加速し、1年単位で町の姿が変貌している。ラサの旧市街地は路地裏が入り組んでいるが、年々取り壊され大通りに変わっている。高層建築が増え、ショッピングセンターや高級ホテルもできた。上海に通じる鉄道も開通し、駅舎は東京駅など目がないほど大きい。ラサを訪れる旅行客も06年度が21万人、07年度が36万人と激増している。
ラサからエベレスト登山のベースキャンプまでの道路は舗装され、民宿、お土産屋、定食屋、女性付きパブまである。昨年から観光バスもどんどん上るようになった。(以上、VOICE5月号「わが聖地・チベットの苦しみ」野口健より要約抜粋)
チベットは、経済的にも文化的にも中国化が急速に進展しているということができる。旧市街地を取り壊し、広い道路をつくり、大規模な市街地開発する手法は、北京や上海でもおなじみの光景である。漢族による経済的進出と文化的影響の増大は、第二次世界大戦前に我が大日本帝国が行った韓国併合・台湾併合・満州国の日本同化政策と共通するものがある。被支配民族の伝統と文化を否定し、支配民族である漢族に同化させる政策である。チベット人の伝統と文化は風前の灯といってよい。だから、チベットの知識人である僧侶が「伝統と文化を守れ」とのスローガンを掲げて平和的デモを行うのは当然である。資金を持ち経済観念が発達した漢族が好景気にわいているのを横目に見ながら、チベット人が社会の片隅で貧困にあえいでいる。「格差社会」中国の縮図というべきでだ。中国では、農民、労働者、学生の暴動が年間10万件近く発生している。チベットにおける暴動は、民族意識を伴った社会的不平等に対する怒りではなかろうか。
第2.チベット暴動に「火をつけた首謀者」は、中国人民解放軍か?
整然として行われていたデモが、デモに潜り込んだ煽動者によって暴力デモに発展することは珍しくない。整然としているデモであっても「不満は内向している」から、デモを規制する側の対応次第では、激情にかられた一部の人間が投石したり、破壊活動を行うことは広く見られる現象である。雰囲気にのまれたデモ隊が暴徒化するのは群集心理として不思議ではない。さらに、デモを鎮圧する側の軍や武装公安警察が「デモを武力で鎮圧する目的を持って」、デモ隊を挑発すれば、デモが暴徒化する確率は高まる。つまり、武力でデモを鎮圧できる条件が整う。また、当局側があらかじめ「デモの指導者を籠絡し、暴徒化させるよう言い含めておけば」さらに、デモが暴徒化する確率は高まる。1960年の安保闘争(日米安保条約延長反対闘争)では、学生が暴徒化し国会突入したほか、全国各地で学生デモが暴徒化した。後刻、明らかになった事実であるが、当時の全学連委員長が「公安警察とつるんでいた」という。公安警察側の想定どおりデモを暴徒化させた結果、警察は機動隊の大幅増員を実現できた。警察予算も大幅増になったはずだ。
今回のチベット騒乱について、ダライラマ14世は29日、ニューデリーの記者会見で以下の如く、中国軍のデモ関与を示唆した。「(チベット僧が行ったデモに、僧侶の格好をした数百人の中国軍兵士がいた。彼らは、チベットの刀ではなく中国の刀を所持していたという目撃証言があると指摘。暴動は中国軍・武装公安警察が仕掛けた可能性があると示唆した。」仮に、これが事実であるとすれば、100%の確率で暴動を起こすことができる。治安を担当する軍と武装公安警察が「暴動を起こす部隊を僧侶姿に変装させてデモに潜入させた」から、希望の場所で暴動を起こすことができる。軍が派遣した報道要員が「暴徒の姿を放映する」こともできる。想定どおり、暴動鎮圧、治安維持を理由として軍を派遣し武力行使できる。チベット人が抱える多くの不満感情を一挙に押しつぶし、チベット人の息の根を止めることができる。
第3.チベット人若手僧侶の民族自決の戦いが復活し再生したのか?ダライ・ラマの影響力が減退したのか?
文芸春秋5月号は「流血のチベット、中国の非道を見た」と題する加藤隆則の論稿を掲載している。その中で加藤隆則は「ダライ・ラマを批判する若手勢力」というテーマで論じている。以下は抜粋である。「中国と亡命政府が続けてきた対話も06年以降途絶えている。実際、対話の不調を見透かすように、五輪開催を支持するダライ・ラマの弱腰を批判する若手も台頭してきている。」
14日付け日本経済新聞(夕刊)は、「ダライ・ラマ、暴力拡大なら辞任」と題する以下1,2の記事を掲載した。(抜粋)
1.訪米中のダライ・ラマ14世は13日、シアトルで会見し、チベット自治区の騒乱について「(暴力に訴える抗議)が制御不能になったら私の選択肢は辞任しかない。この点を繰り返しておきたい。」と述べ、チベット亡命政府の指導者として退任も辞さない考えを改めて示した。
2.ダライ・ラマは「私がチベットの独立や分離を求めていないことは全世界が知っている」と強調、分離・独立を企てていると批判する中国政府に反論した。
以上、中国のチベット自治区として生き残る道を選んでしまったダライ・ラマに対しチベット在住の若手僧侶達はダライ・ラマの中国迎合・融和路線に対し「民族の自決」を対置し始めたということかもしれぬ。隣接する新疆ウイグル自治区の民族自決派との連携を強めるかもしれぬ。ダライ・ラマが「亡命政府の指導者を辞す」覚悟を決めたのは、チベット在住の若手僧侶達との意思疎通が困難になっていること並びに対話を拒否している中国政府を牽制する狙いであろう。
第4.胡錦涛の態度もぐらついている。
胡錦涛の後見人であるブッシュ米大統領の働きかけもあって「ダライ・ラマとの対話を拒否する姿勢を堅持する」ことが困難になっている。4月14日付け中国共産党機関紙人民日報ウエブサイト「人民網・日本語版」は「胡主席:ダライは3つの活動を停止すべき」と題する以下の記事を掲載した。
1.(中国は)人権を著しく侵害し、社会秩序を大混乱に陥れ、人々の生命と財産の安全を脅かす暴力犯罪活動に対しては、黙って見過ごすわけにはいかない。中国中央政府のダライとの対話に向けた門は大きく開かれている。双方が接触し交渉する上での障害はダライの側にある。ダライが誠意を持っているならば、以下の3つについて行動で示さなければならない。
2.(1)ダライは、祖国を分裂させる活動を停止し、(2)暴力活動を画策し、煽動する行為を停止し、(3)北京五輪を妨害する活動を停止すれば、中国政府はいつでもダライと接触し協議する用意がある。
ダライ・ラマと胡錦涛の認識において、上記(1)と(3)において差はない。問題は(2)の暴力行為の煽動だけである。だが、ダライ・ラマの諸発言を勘案すると、ダライ・ラマが「暴動を煽動している」との中国当局の見解は何らの証拠がない。独断と偏見による「一方的思い込み」というほかはない。中国政府としては、「中国軍と武装公安警察が騒動を誘発して拡大させている」事実を知りながら、軍の責任を問うことができないから「すべての責任をダライ・ラマ」に押し付けているのか?という疑問もわく。軍は「アンタッチャブル」だから、そして「軍の挑発に乗れば、政権の危機をもたらす」から、軍の関与を指摘できないということか?
第5.中国軍と武装公安警察の諜報機関は、聖火リレー妨害行為をやっているのか?
(以下は、14日付け大紀元日本が掲載している記事である)
中国国営テレビ局CCTVチャンネルが在仏の中国人留学生に取材した。この留学生は「友達に、顔の黒いチベット人に似ている者がいる。彼は、毎日300ユーロの日給で、チベット人に偽装して聖火リレーを攪乱するバイトをやっている」と発言した旨放映した。この留学生が障害者の聖火リレーランナーからトーチを奪おうとしている写真や、中国国旗を掲げた集団の先頭で歩いている写真など計5枚を証拠写真として添付。大紀元日本は「スパイを雇って暴力事件を起こさせ、それを口実として相手を弾圧する手口は独裁体制国家が民衆を迫害する手法である」と指摘している。
中国共産党指導部にとって「北京五輪」は最大の国家行事であり、これを成功させることは胡錦涛指導部の悲願である。だから、世界中でなされる聖火リレーが平穏無事に終わることを念じていると考えてよい。という訳で、聖火リレーの妨害行為は、胡錦涛指導部が画策したものと考えることはできない。(聖火リレー妨害工作を仕掛けているのは誰か?)
その1。チベット独立を支援する西欧諸国の人権擁護派が仕掛けたのか?
英国はチベットを独立国家として承認したことがある。毛沢東のチベット侵攻作戦並びにチベット人大虐殺について西欧諸国は厳しく弾劾した歴史がある。今回のチベット人大虐殺について最も厳しく非難しているのも欧州各国だ。北京五輪の開会式への首相が欠席すると決めているのは英国、ドイツ、ポーランドなどの東欧諸国、カナダなどである。つまり「人権問題にうるさい」諸国家並びに個人である。俳優のリチャード・ギアや米国下院議長ぺロシもこの戦列だ。という訳で、英国やフランスの聖火リレーを妨害した勢力が「西欧の人権擁護派」である可能性は高い。グリーンピースの反捕鯨活動を見ても、その言動は過激だ。「荒っぽい手口」に共通性がある。だが、中国人仏留学生(共産主義者?)をバイトで雇い入れた手口には疑問が残る。西欧の人権団体は通常、「自ら体当たりして得点を稼ぐ」という傾向が強い。中国人留学生を雇用し、妨害行為を行わせるという手口は不可解だ。これでは「人権擁護派の得点」にはならない。
その2.胡錦涛指導部を追い落とす狙いを持った中国軍(武装公安警察)の謀略か?
仮に、チベット僧侶のデモに数百名の兵士を潜り込ませ、騒乱状態をつくり出したのが事実であると仮定する。北京五輪直前のこの時期に、なぜ中国軍はチベットで騒乱をつくり出す必要があったのか?が問われなければならない。胡錦涛指導部にとって、最大の国家行事であり、政権の運命がかかっているほどに重大な北京五輪を台無しにしかねない騒乱をつくり出す必要があったのか?その上、「念には念を入れて」聖火リレーを妨害して騒ぎを大きくする必要があったのか?
筆者は以前のブログで、豊臣秀吉政権下における軍閥と事務官僚閥を例示して「中国人民解放(弾圧)軍と政府官僚組織は利害相反する構造である」と指摘したことがある。そして、胡錦涛指導部に相談なく、衛星撃墜実験を行い、我が国領海に原子力潜水艦を侵入させ、米国空母キティーホークの香港寄港を直前に取り消させたのではないかと指摘した。胡錦涛指導部の「台湾の平和的統一路線に反感を抱く北京軍区と南京軍区の青年将校多数が「台湾の武力併合を速やかに決定すべし」との実名による血判状を軍上層部に提出した旨の記事を紹介し論じたことがある。
さらに筆者は、「中国人民解放(弾圧)軍は、米国との戦略的提携を進め、台湾との平和的統一を推進する胡錦涛指導部に対し大いなる不満を抱いているのではないか」と指摘したことがある。中国軍の諜報機関が、中国人仏留学生を籠絡して協力者に育て上げることは困難ではない。中国軍が「胡錦涛指導部を追い落とす手段」として北京オリンピックを妨害することは有効な方法である。中国王朝では昔から「派閥あって国家なし」「血盟団あって国家なし」という風潮があった。この伝統が中国軍に継承されているとしても不思議ではない。「北京五輪による国威発揚」を最大の国家政策として推進中の胡錦涛指導部に対して打撃を与える狙いを持って、中国人民解放(弾圧)軍が、北京五輪並びに聖火リレーを妨害する可能性は低くはない。大いにあり得る。
第6.ブッシュ政権はなぜ、胡錦涛共産党独裁政権を支え続けるのか?
14日付け日本経済新聞(夕刊)は「五輪開会式への欠席・責任逃れ:米大統領補佐官が批判」と題する以下1,2の記事を掲載した。(抜粋)
1.ハンドリー米大統領補佐官は13日、ABCテレビ番組などで、チベット自治区の大規模騒乱に関連して欧州首脳が北京五輪開会式への欠席を表明したことについて「責任逃れだ」と批判した。その上でブッシュ政権の対応に関しては「必要なのは外交だ。我々は外交手段を建設的に用いたい」と強調した。
2.開会式にはメルケル独首相やブラウン英首相が欠席の考えを示している。米国大統領がこれまで発言したことを考えれば、行かないという理由はない」との見通しを示した。
ハンドリーがいう「責任逃れ」という意味は不明である。深読みすれば、「米国と欧州(英独など)は、対中国政策で一致協力して対処するとの合意ができていた。胡錦涛政権を支え、中国の資本主義化を促すという合意があった。欧州諸国(英独など)がこれを失念して、胡錦涛を支えないのは、責任回避ではないのか?」という不満をぶつけたということか?欧米列強間の対中国政策で意見の不一致が表面化した。我が福田内閣は「中国への配慮」を第1において、容共左派である米国務省の見解に無条件で追随している。独自外交の「ド」の字もない外交である。少しはドイツや英国に学んだらどうか。
(北京五輪、チベット人大虐殺を巡る主要国の態度)
チベット人大虐殺について・・・問題なし(ロシア、北朝鮮、キューバなど)
・・・大問題(西欧諸国、米国議会、台湾など)
・・・黙秘(米国、日本、インド、イスラム諸国など)
北京五輪開会式への首脳出席問題
・・・出席(米・日ほか)
・・・欠席(英国、ドイツ、ポーランド、カナダほか)
「チベット騒乱・大虐殺」を作り出した何者かによる胡錦涛指導部追い落とし戦略は「想定した成果を上げつつある」といってもよい。胡錦涛国家主席打倒まで「もうひと押し」というところであろう。さすが「謀略・諜報国家中国」というべきである。中国の謀略的体質は「政敵を倒す」ことで鍛えられる。益々巧妙な手口を考案する。胡錦涛指導部が倒れて喜ぶのは、第1に中国人民解放軍・武装公安警察とこれと連携している江沢民(上海閥)、曾慶紅(太子党系)であろう。第2にチベット・ウイグル族の民族自決派であろう。第3に英独仏と米下院議長のぺロシ議長ほかの人権擁護派であろう。胡錦涛を支えるのが、ロシア、米ブッシュ政権、福田媚中政権そしてダライ・ラマ14世ということになろうか。チベット人の心の拠り所であるダライ・ラマ14世が、中国共産党胡錦涛指導部を支える役回りになったのであるから世の中はわからない。米国務省も英独に袖にされたから「不安もいいっぱい」ということだろう。フランスのサルコジは、英独をとるか、米国務省をとるかで、眠れない日々が続いているのではあるまいか。
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チベットにおける暴動に関連して虐殺された者は百数十名といわれるが、中国軍・公安警察の厳重な報道管制があるため真実は闇のなかである。中国当局が公表した数字の何十倍に達しているのではあるまいか。チベット問題は、情報がいろいろ錯綜している。真実が見えにくくなっている。そこで公開情報を整理しておきたい。チベット問題、北京五輪開会式への各国首脳の出欠問題、聖火リレー問題などを巡る紛争の背景を検討してみたい。
第1.チベット暴動の背景
(1)チベット文化崩壊の危機(中国による経済的・文化的侵略の進展)
1995年以降、ラサ地区は中国資本による開発が進展。特に、北京オリンピックの準備でそれが加速し、1年単位で町の姿が変貌している。ラサの旧市街地は路地裏が入り組んでいるが、年々取り壊され大通りに変わっている。高層建築が増え、ショッピングセンターや高級ホテルもできた。上海に通じる鉄道も開通し、駅舎は東京駅など目がないほど大きい。ラサを訪れる旅行客も06年度が21万人、07年度が36万人と激増している。
ラサからエベレスト登山のベースキャンプまでの道路は舗装され、民宿、お土産屋、定食屋、女性付きパブまである。昨年から観光バスもどんどん上るようになった。(以上、VOICE5月号「わが聖地・チベットの苦しみ」野口健より要約抜粋)
チベットは、経済的にも文化的にも中国化が急速に進展しているということができる。旧市街地を取り壊し、広い道路をつくり、大規模な市街地開発する手法は、北京や上海でもおなじみの光景である。漢族による経済的進出と文化的影響の増大は、第二次世界大戦前に我が大日本帝国が行った韓国併合・台湾併合・満州国の日本同化政策と共通するものがある。被支配民族の伝統と文化を否定し、支配民族である漢族に同化させる政策である。チベット人の伝統と文化は風前の灯といってよい。だから、チベットの知識人である僧侶が「伝統と文化を守れ」とのスローガンを掲げて平和的デモを行うのは当然である。資金を持ち経済観念が発達した漢族が好景気にわいているのを横目に見ながら、チベット人が社会の片隅で貧困にあえいでいる。「格差社会」中国の縮図というべきでだ。中国では、農民、労働者、学生の暴動が年間10万件近く発生している。チベットにおける暴動は、民族意識を伴った社会的不平等に対する怒りではなかろうか。
第2.チベット暴動に「火をつけた首謀者」は、中国人民解放軍か?
整然として行われていたデモが、デモに潜り込んだ煽動者によって暴力デモに発展することは珍しくない。整然としているデモであっても「不満は内向している」から、デモを規制する側の対応次第では、激情にかられた一部の人間が投石したり、破壊活動を行うことは広く見られる現象である。雰囲気にのまれたデモ隊が暴徒化するのは群集心理として不思議ではない。さらに、デモを鎮圧する側の軍や武装公安警察が「デモを武力で鎮圧する目的を持って」、デモ隊を挑発すれば、デモが暴徒化する確率は高まる。つまり、武力でデモを鎮圧できる条件が整う。また、当局側があらかじめ「デモの指導者を籠絡し、暴徒化させるよう言い含めておけば」さらに、デモが暴徒化する確率は高まる。1960年の安保闘争(日米安保条約延長反対闘争)では、学生が暴徒化し国会突入したほか、全国各地で学生デモが暴徒化した。後刻、明らかになった事実であるが、当時の全学連委員長が「公安警察とつるんでいた」という。公安警察側の想定どおりデモを暴徒化させた結果、警察は機動隊の大幅増員を実現できた。警察予算も大幅増になったはずだ。
今回のチベット騒乱について、ダライラマ14世は29日、ニューデリーの記者会見で以下の如く、中国軍のデモ関与を示唆した。「(チベット僧が行ったデモに、僧侶の格好をした数百人の中国軍兵士がいた。彼らは、チベットの刀ではなく中国の刀を所持していたという目撃証言があると指摘。暴動は中国軍・武装公安警察が仕掛けた可能性があると示唆した。」仮に、これが事実であるとすれば、100%の確率で暴動を起こすことができる。治安を担当する軍と武装公安警察が「暴動を起こす部隊を僧侶姿に変装させてデモに潜入させた」から、希望の場所で暴動を起こすことができる。軍が派遣した報道要員が「暴徒の姿を放映する」こともできる。想定どおり、暴動鎮圧、治安維持を理由として軍を派遣し武力行使できる。チベット人が抱える多くの不満感情を一挙に押しつぶし、チベット人の息の根を止めることができる。
第3.チベット人若手僧侶の民族自決の戦いが復活し再生したのか?ダライ・ラマの影響力が減退したのか?
文芸春秋5月号は「流血のチベット、中国の非道を見た」と題する加藤隆則の論稿を掲載している。その中で加藤隆則は「ダライ・ラマを批判する若手勢力」というテーマで論じている。以下は抜粋である。「中国と亡命政府が続けてきた対話も06年以降途絶えている。実際、対話の不調を見透かすように、五輪開催を支持するダライ・ラマの弱腰を批判する若手も台頭してきている。」
14日付け日本経済新聞(夕刊)は、「ダライ・ラマ、暴力拡大なら辞任」と題する以下1,2の記事を掲載した。(抜粋)
1.訪米中のダライ・ラマ14世は13日、シアトルで会見し、チベット自治区の騒乱について「(暴力に訴える抗議)が制御不能になったら私の選択肢は辞任しかない。この点を繰り返しておきたい。」と述べ、チベット亡命政府の指導者として退任も辞さない考えを改めて示した。
2.ダライ・ラマは「私がチベットの独立や分離を求めていないことは全世界が知っている」と強調、分離・独立を企てていると批判する中国政府に反論した。
以上、中国のチベット自治区として生き残る道を選んでしまったダライ・ラマに対しチベット在住の若手僧侶達はダライ・ラマの中国迎合・融和路線に対し「民族の自決」を対置し始めたということかもしれぬ。隣接する新疆ウイグル自治区の民族自決派との連携を強めるかもしれぬ。ダライ・ラマが「亡命政府の指導者を辞す」覚悟を決めたのは、チベット在住の若手僧侶達との意思疎通が困難になっていること並びに対話を拒否している中国政府を牽制する狙いであろう。
第4.胡錦涛の態度もぐらついている。
胡錦涛の後見人であるブッシュ米大統領の働きかけもあって「ダライ・ラマとの対話を拒否する姿勢を堅持する」ことが困難になっている。4月14日付け中国共産党機関紙人民日報ウエブサイト「人民網・日本語版」は「胡主席:ダライは3つの活動を停止すべき」と題する以下の記事を掲載した。
1.(中国は)人権を著しく侵害し、社会秩序を大混乱に陥れ、人々の生命と財産の安全を脅かす暴力犯罪活動に対しては、黙って見過ごすわけにはいかない。中国中央政府のダライとの対話に向けた門は大きく開かれている。双方が接触し交渉する上での障害はダライの側にある。ダライが誠意を持っているならば、以下の3つについて行動で示さなければならない。
2.(1)ダライは、祖国を分裂させる活動を停止し、(2)暴力活動を画策し、煽動する行為を停止し、(3)北京五輪を妨害する活動を停止すれば、中国政府はいつでもダライと接触し協議する用意がある。
ダライ・ラマと胡錦涛の認識において、上記(1)と(3)において差はない。問題は(2)の暴力行為の煽動だけである。だが、ダライ・ラマの諸発言を勘案すると、ダライ・ラマが「暴動を煽動している」との中国当局の見解は何らの証拠がない。独断と偏見による「一方的思い込み」というほかはない。中国政府としては、「中国軍と武装公安警察が騒動を誘発して拡大させている」事実を知りながら、軍の責任を問うことができないから「すべての責任をダライ・ラマ」に押し付けているのか?という疑問もわく。軍は「アンタッチャブル」だから、そして「軍の挑発に乗れば、政権の危機をもたらす」から、軍の関与を指摘できないということか?
第5.中国軍と武装公安警察の諜報機関は、聖火リレー妨害行為をやっているのか?
(以下は、14日付け大紀元日本が掲載している記事である)
中国国営テレビ局CCTVチャンネルが在仏の中国人留学生に取材した。この留学生は「友達に、顔の黒いチベット人に似ている者がいる。彼は、毎日300ユーロの日給で、チベット人に偽装して聖火リレーを攪乱するバイトをやっている」と発言した旨放映した。この留学生が障害者の聖火リレーランナーからトーチを奪おうとしている写真や、中国国旗を掲げた集団の先頭で歩いている写真など計5枚を証拠写真として添付。大紀元日本は「スパイを雇って暴力事件を起こさせ、それを口実として相手を弾圧する手口は独裁体制国家が民衆を迫害する手法である」と指摘している。
中国共産党指導部にとって「北京五輪」は最大の国家行事であり、これを成功させることは胡錦涛指導部の悲願である。だから、世界中でなされる聖火リレーが平穏無事に終わることを念じていると考えてよい。という訳で、聖火リレーの妨害行為は、胡錦涛指導部が画策したものと考えることはできない。(聖火リレー妨害工作を仕掛けているのは誰か?)
その1。チベット独立を支援する西欧諸国の人権擁護派が仕掛けたのか?
英国はチベットを独立国家として承認したことがある。毛沢東のチベット侵攻作戦並びにチベット人大虐殺について西欧諸国は厳しく弾劾した歴史がある。今回のチベット人大虐殺について最も厳しく非難しているのも欧州各国だ。北京五輪の開会式への首相が欠席すると決めているのは英国、ドイツ、ポーランドなどの東欧諸国、カナダなどである。つまり「人権問題にうるさい」諸国家並びに個人である。俳優のリチャード・ギアや米国下院議長ぺロシもこの戦列だ。という訳で、英国やフランスの聖火リレーを妨害した勢力が「西欧の人権擁護派」である可能性は高い。グリーンピースの反捕鯨活動を見ても、その言動は過激だ。「荒っぽい手口」に共通性がある。だが、中国人仏留学生(共産主義者?)をバイトで雇い入れた手口には疑問が残る。西欧の人権団体は通常、「自ら体当たりして得点を稼ぐ」という傾向が強い。中国人留学生を雇用し、妨害行為を行わせるという手口は不可解だ。これでは「人権擁護派の得点」にはならない。
その2.胡錦涛指導部を追い落とす狙いを持った中国軍(武装公安警察)の謀略か?
仮に、チベット僧侶のデモに数百名の兵士を潜り込ませ、騒乱状態をつくり出したのが事実であると仮定する。北京五輪直前のこの時期に、なぜ中国軍はチベットで騒乱をつくり出す必要があったのか?が問われなければならない。胡錦涛指導部にとって、最大の国家行事であり、政権の運命がかかっているほどに重大な北京五輪を台無しにしかねない騒乱をつくり出す必要があったのか?その上、「念には念を入れて」聖火リレーを妨害して騒ぎを大きくする必要があったのか?
筆者は以前のブログで、豊臣秀吉政権下における軍閥と事務官僚閥を例示して「中国人民解放(弾圧)軍と政府官僚組織は利害相反する構造である」と指摘したことがある。そして、胡錦涛指導部に相談なく、衛星撃墜実験を行い、我が国領海に原子力潜水艦を侵入させ、米国空母キティーホークの香港寄港を直前に取り消させたのではないかと指摘した。胡錦涛指導部の「台湾の平和的統一路線に反感を抱く北京軍区と南京軍区の青年将校多数が「台湾の武力併合を速やかに決定すべし」との実名による血判状を軍上層部に提出した旨の記事を紹介し論じたことがある。
さらに筆者は、「中国人民解放(弾圧)軍は、米国との戦略的提携を進め、台湾との平和的統一を推進する胡錦涛指導部に対し大いなる不満を抱いているのではないか」と指摘したことがある。中国軍の諜報機関が、中国人仏留学生を籠絡して協力者に育て上げることは困難ではない。中国軍が「胡錦涛指導部を追い落とす手段」として北京オリンピックを妨害することは有効な方法である。中国王朝では昔から「派閥あって国家なし」「血盟団あって国家なし」という風潮があった。この伝統が中国軍に継承されているとしても不思議ではない。「北京五輪による国威発揚」を最大の国家政策として推進中の胡錦涛指導部に対して打撃を与える狙いを持って、中国人民解放(弾圧)軍が、北京五輪並びに聖火リレーを妨害する可能性は低くはない。大いにあり得る。
第6.ブッシュ政権はなぜ、胡錦涛共産党独裁政権を支え続けるのか?
14日付け日本経済新聞(夕刊)は「五輪開会式への欠席・責任逃れ:米大統領補佐官が批判」と題する以下1,2の記事を掲載した。(抜粋)
1.ハンドリー米大統領補佐官は13日、ABCテレビ番組などで、チベット自治区の大規模騒乱に関連して欧州首脳が北京五輪開会式への欠席を表明したことについて「責任逃れだ」と批判した。その上でブッシュ政権の対応に関しては「必要なのは外交だ。我々は外交手段を建設的に用いたい」と強調した。
2.開会式にはメルケル独首相やブラウン英首相が欠席の考えを示している。米国大統領がこれまで発言したことを考えれば、行かないという理由はない」との見通しを示した。
ハンドリーがいう「責任逃れ」という意味は不明である。深読みすれば、「米国と欧州(英独など)は、対中国政策で一致協力して対処するとの合意ができていた。胡錦涛政権を支え、中国の資本主義化を促すという合意があった。欧州諸国(英独など)がこれを失念して、胡錦涛を支えないのは、責任回避ではないのか?」という不満をぶつけたということか?欧米列強間の対中国政策で意見の不一致が表面化した。我が福田内閣は「中国への配慮」を第1において、容共左派である米国務省の見解に無条件で追随している。独自外交の「ド」の字もない外交である。少しはドイツや英国に学んだらどうか。
(北京五輪、チベット人大虐殺を巡る主要国の態度)
チベット人大虐殺について・・・問題なし(ロシア、北朝鮮、キューバなど)
・・・大問題(西欧諸国、米国議会、台湾など)
・・・黙秘(米国、日本、インド、イスラム諸国など)
北京五輪開会式への首脳出席問題
・・・出席(米・日ほか)
・・・欠席(英国、ドイツ、ポーランド、カナダほか)
「チベット騒乱・大虐殺」を作り出した何者かによる胡錦涛指導部追い落とし戦略は「想定した成果を上げつつある」といってもよい。胡錦涛国家主席打倒まで「もうひと押し」というところであろう。さすが「謀略・諜報国家中国」というべきである。中国の謀略的体質は「政敵を倒す」ことで鍛えられる。益々巧妙な手口を考案する。胡錦涛指導部が倒れて喜ぶのは、第1に中国人民解放軍・武装公安警察とこれと連携している江沢民(上海閥)、曾慶紅(太子党系)であろう。第2にチベット・ウイグル族の民族自決派であろう。第3に英独仏と米下院議長のぺロシ議長ほかの人権擁護派であろう。胡錦涛を支えるのが、ロシア、米ブッシュ政権、福田媚中政権そしてダライ・ラマ14世ということになろうか。チベット人の心の拠り所であるダライ・ラマ14世が、中国共産党胡錦涛指導部を支える役回りになったのであるから世の中はわからない。米国務省も英独に袖にされたから「不安もいいっぱい」ということだろう。フランスのサルコジは、英独をとるか、米国務省をとるかで、眠れない日々が続いているのではあるまいか。
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