偏向報道と報道統制、どっちが罪深い? (福島香織) | 日本のお姉さん

偏向報道と報道統制、どっちが罪深い? (福島香織)

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▼偏向報道と報道統制、どっちが罪深い? (福島香織)
■前回エントリーで、中国の超有名サイトの「アンチCNN」の方からいただいたコメントは興味深かった。というのも、中国で突如燃え上がった「アンチCNN」世論、そしてこれに対して南方都市報論説委員の長平氏が4月3日に同紙に発表した「報道統制」に関する呼びかけの論評、それを受けての「長平は売国奴!」といった反論など、最近の一連の偏向報道と報道統制を巡るネット上の議論は、私のような〝偏向報道記者〝にはいろいろ深く考えさせられることがあったのだ。
■ちなみにこの長平氏は12日、VOA(ボイス・オブ・アメリカ、米国営短波放送)から「報道の自由防衛賞」を贈られた。改めて南方日報集団はすごい、と思うよ。こういう記者がいるんだから、中国の報道と言論の未来は、やはりいい方向に進んでいると思う。
■というわけで、今回のエントリーは、チベット問題とは少し距離を置いて、報道の本質を考えてみよう。アンチCNNサイトと、長平論文をめぐる、中国ネット世論を紹介。

■偏向報道・虚偽報道VS報道統制 「どっちが罪深い?」 → 

(答え:報道統制)
なぜなら、偏向報道・虚偽報道は、自由な世論に叩かれて

いくうちに修正されるから

■まず、アンチCNNサイトについて紹介しよう。前回のエントリーで、アンチCNNサイトからいらっしゃったLiuyichenさんから中国語のコメントをいただいた。ここのブログの公用語は日本語なので、読めね~とフラストレーションがたまった人がいたかもしれない。で、これも翻訳して紹介。コメントの翻訳って、省略とかスラングとかがあって結構むつかしいのだ。間違っていたら御免。
■Liuyichenさんからのコメント
■(新華社報道の)翻訳ありがとう、たしかに非常に長いね、ごくろうさま。中国人民の目ははっきり物が見えるし、人民はばかじゃないですよ。3・14事件を経験した外国人旅行者、中国の漢族、回族、チベット同胞たち、みんな経験してきました。だから最も発言の資格を有するし、みんな心の中では知っているのです。いったい中国共産党は血なまぐさい鎮圧を行ったのか?これもなぜ全世界の華人が特別憤っているか、その原因です。
■今回の事件をみれば、華人同胞は外国に対し空前の団結の強さです。今回は中国共産党の勝ちです。華人全体が中国共産党にたいしては別の視点でみています。どうしてか?みんな以前はほとんどが反共産党だったんですよ。中国共産党が大嫌いでした。特に89年から19年たっていますが、みんな真相を知っています。
■3・14事件に話をもどすと、なぜ毎回すべて若いラマ僧がもめごとを起こすのでしょう?その実、チベット独立なんてありえないのに。
■これはあるチベット族の友人が私に話してくれたことですが、チベット族同胞は全部で300万人、ラサの暴動参加者はせいぜい1000人、その他チベット族地域も数千人、四捨五入してもせいぜい10000人でしょう。もしチベット青年会議が数百元の人民元を与えれば、きっと結構な人数が暴動に参加すると思います。現在の若者の多くはラマ教を信じていないですから。
■世界各地では、中国は人権はないといい、チベットの文化的絶滅や、民族の大虐殺や、なにやかやいってますが、1950年前のチベット人口はいったい何人なのか、よく研究してみたらいいですよ。120万人の種族の大虐殺ってどこから出てきた話なの?これこそでたらめだし、中国共産党が毎年チベットにどれだけの予算を分配しているかもみんな調べるといい。とっても多いんですよ。
■文革時期の話も同じで、漢族がラマ寺院を打ち壊しにいったのではなくて、みなチベット族同胞が打ち壊したんです。現在、中国共産党は若いラマ僧の数を抑制しているけれど、これは非常に正常なことだと思います。ラマ僧はみな共産党から給料をもらっているんですよ。公費で医療を受けるって、お金がいらない、ってことでしょ?ラマ僧らがどんな活動をしているのか、もし申請しなければ、共産党はなぜラマに給料を出すんですか?

■共産党はラマ僧に対してはすごくよくしていると思います。それになれちゃって、スポイルされちゃったんだ。今回の暴動殺人放火の暴徒が、どういった処遇を受けるかは知らないが、また寛大な処置じゃないのかな?中国の少数民族同胞が、漢族を一人殺しても死刑にはならないが、漢族が少数民族同胞を殺せば必ず死刑ですよ。
■中国の法律は少数民族が非常に恩恵を受けるようにできていて、とても不正常です。泥棒しても、最長24時間の拘束で釈放。CCTVが言うには、(今回の事件で)無辜の漢族と回族の同胞、それとチベット族の少女一人が焼け死んで、計18人が死亡しんたんでしたよね?わたしの友人の話はそれにとどまらず、回族と漢族は多くの暴徒に「月灯りを点け」られ、耳をそがれ、子供すらかち割られ、残虐きわまりなかったそうです。これは出家人がする事じゃない!
■中国でいう「月灯りを点ける」というのは、人をつるして、ガソリンをかけて火をつけて燃やすことです。中国共産党の報道ではなかった。理由は僕らにもわかる。安定こそ中国にとって重要だから。
■これらのラマ僧は仏なのか悪魔なのか?中国共産党はラマ教は邪教と言わなかったが、私の研究するところでは、ラマ教は、その起源から現在にいたるまで、邪教です。政教一致で、愚民愚昧!もう一回奴隷制度のチベットに戻るなんて不可能です。中国人民全体が同意しない。チベット族も含めてね。だからラマ僧らが凶悪に騒ぎを起こすことは何の不思議もないんだ!
■米国はタリバンをもり立ててきたし、もちろんチベット青年会議ももりたてることができるでしょう。チベット独立分子は騒ぎを起こせばいい、気の済むまでやれば。デモを行うために金ははたいて人を雇えばいい、フランスや英国では、ひとり300ユーロ、日本では小銭程度でチャンスができる。これがニュース、おそらく誰もも報道していないね?
■4月6日、ロンドンのチャイナタウンでは、「フリージャパン、フリージャパン」(のスローガン)が登場した。これはお金を払って人を雇った結果で、チベットと日本(ジャパン)の発音がとても似ているから、英国人がふざけているんだ。これもニュースだけど、誰も報じていないね。歴史を研究してやっと歴史(の真相)が明かになるというなら、どうしてメディアなんて信じることができるかな??
■私たちのサイトを見に来て。
http://www.anti-cnn.com/
疑問があったら、どうぞ聞いてください。もしサイトで真実でない報道かあったら指摘してください。(以上)
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■さて、このアンチCNN、というのは、最初、CNNのチベット騒乱事件報道の中で、明かな虚偽、意図的なバイアスを見つけた華人留学生がブログや掲示板で発言。問題のシーンなどを編集した動画を動画サイトに投稿して、華人社会で盛り上がり始めた。その後、23歳の北京在住ネチズンが、上記のサイトをたちあげ、BBC、米ワシントンポストやドイツのテレビなど、欧米メディアの報道の中で、明かな虚偽、偏向報道を事細かに指摘している。
■間違いの多くは、ネパール・カトマンズで発生したデモに対するネパール警察の鎮圧風景を、ラサで発生したデモ鎮圧と報じたものだ。これは、確かに、批判されても仕方のない誤報で、メディア側も謝罪を発表している。また、デモからの救出のため解放軍兵士が市民のからだをつかんで現場から離れようとしている風景を、デモ参加者に暴行する解放軍と報じたり、写真をトリミングして、チベット族暴徒が人をなぐっている風景を意図的(?)に見えなくして印象操作をしたという批判もある。
■サイトは画像中心なので、各自でいってじっくり見てください。だいたい上のコメントにあるようなスタンスでの書き込みが多いようだ。ただ、メディアの一員として言い訳させていただければ、事件発生当初、情報があまりに少なく(統制されていたので)情報が錯綜し、一方で人の命にかかわる緊急報道の必要性があり、あせったメディアがわに非常に混乱が生じたことは確か。これらの虚偽報道は、意図的捏造というよりは、純然たるミステイクではないかと思う。うーん、言い訳にはならないか。
■このアンチCNN世論が、信じられないくらいもりあがって、Liuyichenさんが指摘するように、少なくともネットの世界では、全世界華人は空前の結束をみせたのだった。一般に在外華人は共産党に批判的というが、この件に関しては「共産党の勝ち」というわけだ。
■このサイトは、民間の普通のネット愛好者がインターネットを駆使して情報をあつめ、精査し、立ち上げたということだが、あまりのデキの良さに、半官製メディアでは、という疑いの声も当然ある。しかし、こういう形で、間違った報道を糾そうというアクションが読者であるネットユーザー側から自然発生的におこり、ここまでのムーブメントを作り出したのだとしたら、これこそまさにネットの双方向性のなせるわざであり、中国の言論環境の劇的な進歩という意味で、私は拍手をおくりたい。
■ところで、このアンチCNNサイトに、ある中国人ジャーナリストが4月3日、一石を投じた。これが冒頭でちらりと触れた長平氏の論文である。全文翻訳をぜひぜひ読んでほしい。(南都週刊の編集部に、さっき全文翻訳して日本の読者に読ませたい、問題ないでしょ?と電話したけれど、本人にはつないでもらえず(外国人記者との接触を断っているらしい)、明確な返事はもらっていない。たいてい中国の記者は、勝手にすれば、みんなやってるし、という反応だし、中国のブログではほしいままにコピペされていたから、版権的にはいいんじゃないか?う~ん。と悩んだ末。全文翻訳の5割分を反転で隠してみた。文句がきたら考えなおします。)ーーーーーーーーーーーーー■以下、引用。ーーーーーーーーーーーーー

■チベット事件:真相と民族情緒(南方都市報 4月3日)
■ラサ事件発生後、弊紙(南方都市報)は迅速に情報提供したが、国内メディアは慣例どおり口をつぐんでいた。数日後、各メディアはただ、チベット自治区の責任者の簡単な報告と談話を載せただけだった。その報告は、事件について一言あるだけだった。「このほど、ラサでごく少数の人間が打ち壊し略奪焼き討ちなど破壊活動を行った」。
■過去の経験を振り返れば、多くの中国人が海外メディアからより、多くの情報を獲得するだろう。このとき、いくつかの海外メディアが虚偽の報道をネット上のウエブサイトや動画サイトで流しはじめており、これは中国民衆の西側メディアのサイトに怒り世論でたたく事件となっていた。いわゆる「アンチCNN」「アンチBBC」「アンチVOA(ボイス・オブ・アメリカ)」である。ドイツ、米国、英国、インド国流と内たし、中国民の一部国営メディアはラサ事件の報道中あきらかに事実の誤りがあるという。記者の職業規範からみれば、これら誤りは非常に低級で、ひどい場合は意図的なミスリードの疑いもある。これら数者のメディアは謝罪と訂正を行■あらゆる虚偽ニュースと同様、これはまずメディア自身の公的信頼性を傷つけ、一万の真実があっても、一つのウソの言い訳にはならないのである。この事件の続報においてまた将来的なその他の大事件において、もし中国メディアが自由報道が出来ず、海外メディアもまた疑わしくなってしまえば、ならば、真相はどこからくるのだろう?
■これら外国メディアの虚偽報道を暴いたネチズンたちは、世の人にラサ事件の真相を知らせようと行動している。しかしこの主張は論理的でないところがある。なぜなら、彼らの行動は、ただ、人々に西側メディアの報道が事実ではないと知らせることだけが目的となっているからだ。
ラサでいったい何がおきたのか?大勢の中国人はただ政府の封鎖された情報を数日後、統一発表した記事で見ただけである。単一の独占的な新聞発表の情報源について、私はそれがウソだとはいわないが、しかし真実だと確認もできない。じっさい、海外メディアの多くが、これを「中国政府が念入りに編み出した真相」と言っている。
■その後、政府が組織した外国プレスツアーで、彼らの報道の多くは翻訳されてこなかった。西側メディアを世論で叩くブームの熱波で頭がかっかしており、たとえ翻訳されても、ほとんどの人は信用しなかっただろう。
■怒りはいまだ拡散している。アンチCNNサイトは「我々は必ずしもメディアそのものに反対ではなく、いくつかの非客観的な報道を批判しているだけだ。われわれは西側人民に反対であるのでは決してなく、偏見に反対しているだけだ」との声明を出しているが、実際のところ、そういうレベルではなくなっており、多くのネチズンはこの声明に相反する方向に走り、ひどい場合は最初からまったく逆の立場にたっている。
■つまり、ネチズンたちは、本当のところニュースの客観公正などまったく気にせず、メディアの立場にこだわっている。つまり、偏見を受けつけない、というのではなく、ポイントはどの方向に偏っているか、ということである。
■もし、本当にニュースの価値という立場にたてば、ネチズンたち西側メディアの虚偽報道を暴くだけではなく、中国政府の情報源と国内メディアの2重の統制も疑わねばならぬ。疑いなく、後者(統制)のほうが前者(西側メディアの虚偽報道)よりも、ニュースの価値をさらに著しく損なうものである。
■まさにすでに発生した(アンチCNN世論の)事実のように、メディアの虚偽報道に対する矯正は相対的に容易であり、幾人かの忍耐強く注意深い中国ネチズンは実際にそれをやってきたわけだ。だが、報道統制に抗議することで向き合う相手は、国家権力であり、世界中どこであってもどうしようもない、と叫ぶばかりだ。
■一部中国民衆はすでにわかっているだろうが、虚偽報道と偏見は最も恐ろしいものではないのだ。ただ、開放的な世論環境があり、十分な指摘と討論が許されれば、それらは真相と公正にむかう機会があるのだ。今回ネチズンは外国メディアに対する反撃に成功した、これはとてもよい例である。
■最も早くに問題を発見し、素早く反応したのは、海外の中国人留学生だった。彼らは問題をあばく動画をつくり、BBSに流し、Youtyubeのようなネットサイトでも放送。かりにこれらネットメディアが統制を受けていれば、こうした問題を暴くプロセスは多くの困難にあっていただろう。
■これら(指摘された欧米メディアの)虚偽報道はニュース価値を最も損なうものであり、多くの人に客観公正への信頼をさらに放棄させるものであり、狭隘な民族主義的立場を選択させたものである。ネチズンらが得た結論は、世の中の価値なんて、すべて人を騙すばかばかしいものだ、ということであり、ただ国家利益を奪い合うだけである、ということだ。ネチズンらは、ついには、この考え方をもって、ウソをつくことすら、一種の国際慣例だといい、自分の身の回りにある、あるいは歴史上にある(中国の)ウソも納得するのである。
■もちろん、一部の人はもともとこのように考えているし、今回のメディア事件は、彼らにまた一つ論拠を与えたわけで、この証拠に基づいてまたほかの人に話すのだ。
■しかし、私がみたところでは、この機会により広い討論と深い思索を行おうという中国人も多い。西側の人間の中国に対する偏見は、中国を見下した一種の文化的優越感に源を発することがわかったが、なら、警鐘をならすべきは、漢族が少数民族に向き合うとき、この種の文化的優越感で偏見を誘導するようなことはないだろうか。
■西側の人々の中国に対する歪曲報道は、耳を傾け理解しようとせず、サイド(Edward W.Said)の語るその種の東方主義の想像に耽溺してしまうのが原因だが、なら、我々は少数民族に対してどうであろうか?
■もし、われわれが民族主義という武器で西側に反抗するならば、少数民族に民族主義を放棄して、主流の国家建設に加われとどうして説得できようか。ダライラマは、政府に対し、再度自分を評価するように求めているが、ならいったい彼はどのような人物なのか?当局が定めた人物像以外に、メディアが自由に討論してさらに一歩真相を指摘することは許されないのか?(長平:南方週末新聞部主任、外灘画報副編集長を歴任後、現在、南都習慣の副編集長)(以上)
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■さて、この論評は発表直後から「反華論文」「売国奴論文」と激しいバッシングにあった。しかし、それだけでなく、擁護論もすぐにおきた。で、ネットの各地で激論バトルが始まったのだ。

■どんな風にネット上のバトルがおきたかというと、

■4月4日、中華ネットのあるネチズンがブログに「警告!南方都市報はまさにさなぎから反華メディア反華勢力の国内代表人に孵化した」という批判文章を発表し反駁を展開。
■4月5日、別のネチズンが「南方都市報の反動は歴史的根元的なものだ」とする文章を発表。これに対し南方都市報のある記者がネット上に中華ネットの愛国者を批判する文章を発表したため、この論評を巡るバトルが激化。
■また同じ日、中華ネットで南方都市報のファンを名乗るネチズンが「南方都市報は売国奴なんかじゃない!」という擁護論を発表。同紙が本当に売国奴新聞かどうかは、もっと多くの証拠が必要だといった主張。
■4月6日は、中華ネットのネチズンが「南方都市報よ、世の中の価値で、民族の統一を凌駕するものはない!」と愛国的反論を発表。また別のネチズンが「ロンドンで、チベット独立派が聖火を強奪しようとしたが、これを南方都市報と長平はなんと論評する?」といった反論。「南方都市報の長平よ、たとえデマを流させても、あなたの言論の自由は破壊されないか」といった論評が発表された。
■これは中華ネットという掲示板サイトだけの動きだが、同様の議論がさまざまなネット掲示板でおきたのだった。だいたい長平論評への反対2、支持1の割合だろうか。
私は、ネット時代の中国のジャーナリズムは、こういう風に成長していくんだなあ、とちょっと感動したね。中国の公式メディアは党中央宣伝部の指導を受け、ジャーナリズムというよりは宣伝、プロパガンダがお仕事である。ネットのない、一昔前なら、中国の国民は真相をしろうともせずに、当局の公式発表を(本当はあまり信じていないが)そのまま受け取って納得していたのではないか。
■ところが、いまやネットがあり、国内報道であきたらないネチズンたちは、海外の報道から情報を集める。もちろん、ネット統制は厳しく、アクセス禁止などもあるが、海外の同胞が動画や写真を送ってくれれば、それがコピペされ、瞬く間にひろがる。なおかつ国内報道と海外報道を見比べ、海外報道の誤報を指摘できるだけの判断力や知識を持ちうるのだ。で、一般のネットユーザーにすぎない読者がそれを自ら発信して、ネット世論を起こして、世に自分の意見や正しさを問うことも可能なのだ。
■メディアは党の喉舌で、世論を正しく導くのが使命だが、ネット時代は読者がメディアの偏向報道を是正し、議論をしてその報道の問題点、責任を追及することができる。もちろん、今回のアンチCNNは、政府の方針と一致しており、政府の意向に逆らわない場合、という条件つきではあるが。
■しかし、それが統制下で自由に制限があるとしても、議論の過程で、誰もが情報の取捨選択と価値判断を自分でして意見表明できる自由をかみしめるんじゃないだろうか。それがネットジャーナリズムの真価というなら、これについては、ひょっとすると中国の方が日本より1歩半くらい進んでいる部分があるかもしれない。
■長平氏が指摘するのは、まさにアンチCNNサイトは、ネットの(制限はあるとはいえ比較的大きな)自由が生んだ落とし子であり、その自由の落とし子として、欧米メディア批判に終始するのではなく、国内の報道統制の問題にも目を向けてほしい、という呼びかけである。もっとも、報道統制批判の矛先の相手は国家権力であり、独裁国家で一般庶民はそんなこと恐ろしくてできないのだから、無茶いうなよ、という感じではある。あるいは、長平氏はひょっとして、このアンチCNNサイトが一般ネチズンが自発的に立ち上げた純然たる民間サイトだとは思っていないのかもしれないが。(これは想像)

■さて一般市民はもちろん、普通の記者だって恐ろしくてなかなかできない、中国の報道統制批判を、「偏向報道は世論にたたかれることで修正できるが、国家権力による報道統制はどうしようもない」という言い方でずばっとやってしまった長平氏は、目下、外部からの取材はうけつけず、本人のブログもアクセスできず、相当の圧力を受けている様子。せっかくVOAから賞もおくられたのに、それについての書き込みも軒並み削除。最後は国家権力による報道統制で、こういった活発な議論が封殺されてしまうのかと、と思うと非常に残念である。

■しかし、アンチCNNサイトと長平論評をめぐる議論がネット上で繰り広げられた過程で、やはり報道の自由、ネットの自由を押し広げようとがんばり続けている、中国のジャーナリズムの健在を確認できた。これなら、チベット騒乱の真相だって、いずれたどり着けるはずだ。弊ブログも、アンチCNNサイトほど影響力はなくとも、小さな議論を喚起できるよう、コメント欄は誰にでもオープンでありたい。誰かが来ちゃダメ、なんてことは、いわないよ。偏向報道だと思われるなら、その偏向を修正すべく、論拠を出して批判してほしい。