政治的な発言も米国からEUに移っていくこ とになる
宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成20年(2008年) 3月27日(木曜日)
通巻第2134号
馬英九・台湾次期総統、就任前の訪米をワシントンは受諾の模様
ブッシュ大統領は馬英九当選を歓迎した
************************
馬英九次期台湾総統は、就任前の訪米を希望していると記者会見で述べた(23日)。台湾筋によれば、すぐにヴィザ申請が出された模様で、米国は申請書類をいったん受領後、発行するかどうかの検討に入るとした。台湾にある米国協会(事実上の大使館)は、「国民投票」に反対する立場から陰に陽に馬英九を支援してきた。
馬英九は親米派として知られ、ワシントンの中国政策を妨害しない理由で、支援された。それは当選後の記者会見でも繰り返したように「われわれはピースメーカーであり(陳水扁政権のような)トラブルメーカーにはならない。(だから米国のいうように)独立も統一もなく、ひたすら現状維持政策を選択する」。就任式は5月20日、現政権とどれほど異なる政策が打ち出されるのか、外交筋、政治関係者、マスコミの関心が集中している。
~~~~~~~~~~~
♪(読者の声1) 貴誌前号にある「このようにふとした(馬英九の)発言に含まれている中華ナショナリズム。なぜ李登輝氏のように「中国が民主化されたあとで、話し合いをすればいい」と言えないのか。つまり馬の価値観のなかでは「民主」の上位に「中華ナショナリズム」があること、それが馬英九にまだ強固に残存する危険性なのである。」この指摘は貴台ならではのもので、卓見と思います。若い世代(李前総統の求めた新台湾人にすでに自覚無くなっている)には、チベットの騒動は遠い出来事だったのでしょう。
そこを謝候補と周辺はどこまでわかっていたのか、こういうズレも大差敗因の一つでしょうか?(SJ生)
(宮崎正弘のコメント)台北滞在中、或るスナックで若い女性に片っ端から聞いてみました。「誰に投票した?」「もっち馬英九よ」「あなたは台湾人」「そうよ」「で、なぜ馬英九?」「だって、景気わるいじゃん」。或る鍋レストランにて若者三人組(女子学生一人をふくむ)、懸命に鍋をつついている。「誰に入れた?」「。。。。。」「台湾本省人?」「そうです」「誰に入れたかは公表しないんだ」「そうですね」。
いつも民進党ファンの多い飲み屋。五人の従業員のうち、ふたりが今回ばかりは馬英九に入れたという。「理由は?」「だって格好いいじゃない」。滞在中、25回タクシーに乗った。20人が明らかに民進党支持だった。職業、階層、年代を鮮烈に分けた選挙でもありました。
♪(読者の声2)昨年に兵役を終え現在大陸で働いている一人の台北人の青年(本省人)と交流があります。どうして民進党の謝氏が二萬票も差をつけられ、国民党の馬氏に惨敗したのか、彼に理由を聞いてみました。選挙には行けなかった彼が分析する所、いくつかの原因を挙げ:
【一】それまでの国民党と何ら変わらない程の民進党の腐敗と堕落。
(高雄市長時代から、謝長廷には“九大幕僚”と呼ばれるブレーンがいるそうですが、全員贈収賄の疑惑を抱えている。他にも陳水扁周囲の疑惑等。所謂「腐敗と金権の象徴」は、今や民進党に成りつつある。)
【二】民進党政権下での台湾経済の停滞。
【三】有権者を脅して二者択一を迫るかの様な政策と選挙運動。
今更詳しく述べるまでもありませんが、台湾に行ったことのない私が气になったのは【三】の見解です。
彼が言うには民進党の取った選挙運動が、愚劣であったそうです:
「もし国民党の馬氏が当選したら、戒厳令時代の台湾になる。」
「現在の自由と民主主義は損なわれる。」
「そして台湾は中国に侵略される。」
「だから民進党が政権を摂らなければならない。」
ほとんど日本人の思考と変わる所のない二元論的な思考に、少なくとも台湾の若い人たちは鼻白んだとか。
選挙運動にしても、彼の表現を借りれば「非黒即白」的な論調で、「民進党に投票しないことは、台湾を愛してないことを意味する」……を繰り返すばかりだとか。自分達民進党で推進した、新選挙制度で惨敗すると、不服を捲し立てていることも。民進党系のTV番組のトークショーでも、「国民党が政権を摂れば、台湾の民主主義は消えてなくなる」に類したテーマで、一方的に国民党を罵る……日本で言うとバラエティー番組に類するかも知れない、そんな幼稚な活動に堕した選挙運動。彼はこれらの理由を挙げて、今年一月に既に民進党の落選を予測していましたが、「今回、民進党が当選しなくて良かった。彼らは自分達がどうして落選したのか、よくよく反省すべきだ。そうしなければ、民進党に将来はない。」と言ってました。
二十代の一台北青年の見方ですが、各紙の評論に抜けている分析だったので、紹介させて頂きました。
彼の話を聞いて、民進党支持者の批判票が国民党の馬氏に回ったのでは?と思いましたが、前回と今回の投票率と得票率を比較してないので、何とも判断できませんでした。
(禮)
♪(読者の声3)月曜の朝、フジテレビを偶然見ていました。日頃、地上波のテレビ局には出演されない宮崎正弘先生が、台北から馬英九勝利集会の現場から、選挙情勢を臨場感をもって解説されている中継録画をしっかりと拝見しました。解説もわかりやすく、おおいに参考になったと同時に今後、地上波の番組にもどしどしでていただきたいと思いました。
(GY生、西東京市)
♪(読者の声4)過日、国会南門で自決した向井正志氏顕彰の法要(於・上聖寺=じょうしょうじ、日蓮宗)に行ってまいりました。 およそ二百名近い参列がありました。福田首相とマスコミに宛てた「要望書」があるそうですが、内容は当局から明らかにされていない模様。その後、遺骨の引き取りに御遺族も現れたとのことでした。
(SG生、埼玉)
(宮崎正弘のコメント)その向井正志烈士の遺書が公開されないのは不思議です。
♪(読者の声1) 今回の台湾の総統選挙の結果が民進党の今後へ与える影響、とくに彼らがそこから何を学ぶかが貴メルマガで盛んに論じられています。私は、同等あるいはそれ以上に今回の選挙結果が大きな影響を国民党に与える可能性があると考えます。いままでのような無責任な野党的態度を国会でとれなくなります。
また、彼らも中国共産党の危うさずるさを骨の髄まで知っているはずですから、実際に政権を取った以上慎重にならざるを得なくなります。
そうすると次に野党に回ったときも、政権にあったときの対応を指摘されれば無茶な議論もできなくなります。さらにより大きな変化が期待されるのはマスコミです。国民党よりに偏向していると言われていますが、マスコミの習癖は他人の粗を探して誹謗することです。読者、視聴者が野党の醜聞などには殆ど関心がないことや世の理です。
いくら国民党寄りとはいっても、政府要人の醜聞を報道しなければ読者、視聴者からそっぽを向かれます。これが、契機となって台湾の深いところで流れが変わってくる大きな可能性があるように思います。
(ST生、神奈川)
(宮崎正弘のコメント)台湾滞在中は、台湾の全新聞をよみますし、テレビも国民党系、中立系を比較しました。
ご指摘になったように国民党系列のマスコミに微妙な変化が見られた。それは民進党に関する記事が増えたこと。国民党の政策ミスを批判していることです。たしかに日本のマスコミが偏向しているように、台湾のそれも偏向しておりますが、その偏在の中味が問題で、連合報と中国時報は中華思想が強い、けれども自由時報は台湾第一主義で民進党にきわめて理解が深い。スポーツを芸能記事満載の「りんご日報」はセンセィショナリズム一辺倒の、売らんかな商業主義で、ちょっと批評の施しようもありませんが、ただ、これが一番、国民党贔屓でした。本場の香港で最も北京に批判的な新聞なのですが。。。。。。
そうそう蛇足ですが、ジミィ・ライ(リンゴ日報社長)も、ウィリー・ラム(CNN香港のチャイナウォッチャー)も台北に取材に来ていましたね。取材現場で日本からの応援部隊にも多く遭遇しましたが、三宅久之氏とか、松本健一氏も台北にきていました。NHKは総計20名の大部隊でした。海外から合計400名前後が取材にきており、このこと一つとっても国民党の勝手放題の報道はもはや不可能です。
♪(読者の声2)雑誌『WILL』五月号の巻頭論文「皇太子さまに敢えて御忠言申し上げます」(西尾幹二氏)に注目しました。
西尾氏のブログによりますと同論文のタイトルはH編集長が付けたそうです。論文の中身は分かりやすく、ズバズバを通り越してズケズケした物言いが痛快で、一気に読み切ってしまう興味深さがあり、ある意味で面白味に溢れています。
まことに明快な立論で観じ入ってしまいます。
イージス艦のみならず自国さえ漂流状態で舵取りの出来ない政治家ばかりを戴いている日本人には、中国のことを批判したり台湾の行く末を心配したりするとともに、自国によりかまけるべきでしょう。
自国の頭の上のハエを追うことのほうが先決で大切です。その意味合いにおいてH編集長と編集部が同誌五月号の巻頭に西尾論文を据えた判断は時宜を得ており、まっとう至極なものと云えます。
さて頭の上のハエとは、雅子皇太子妃とその父小和田恒氏と一族郎党、それに加えて外務官僚群のことです。
西尾氏は天皇制度を船に、天皇皇族をそれに乗り合わせた乗客に喩えています。
天皇皇族は船主ではなく国体という船を一時的に預かっている立場にあると説きます。日本人が心を砕き心配しなければならないのは、雅子妃の体調ではなく、雅子妃を迎え入れた天皇制度という国体のほうなのです。近代西洋思想の能力主義(メリトクラシー)、学歴主義や人権を雅子妃を輩出した小和田一族から導入し受け入れてしまった天皇制度の一大危機なのです。たまたま皇族になり船に乗り合わせた雅子妃が船酔いを起こしてなかなか治癒せず体調不良をエンドレスに訴え続けるなら、さっさと下船して皇太子妃をお辞め頂くことが好ましく、それこそが日本国の喫緊事なのです。
宮内庁に入り込んでいる外務官僚らも引き揚げさせるべきなのです。
このまま雅子妃の完治を座して待っていたら肝心の船が腐り溶け消え、奥平某や上野某女らヒダリ巻きの日本溶解推進派の思う壺なのです。
武士の世界ならば、家来が殿様に諫言する場合腹を切ります。その覚悟があればこそ諫言は許容され殿様を動かします。
平成の世の西尾氏にそこまでの御覚悟は必要ありませんが、それに等しい気迫なくしては皇太子の心を動かせないでしょう。雅子妃は皇太子妃の座を降りないでしょう。
西尾氏の皇太子への諫言は天皇制度を護り、国体のこれ以上の毀損を回避し護ることにあります。それが西尾氏の御本意でしょう。
命を懸けたに等しい諫言を皇室に呈した西尾氏は日本武尊、有間皇子、楠木正成、大塩平八郎、西郷隆盛、乃木希典、三島由紀夫の列につらなる憂国の烈士に序せられる名誉を受けることとなるかもしれません。(しなの六文銭)
(宮崎正弘のコメント)対照的に『週刊文春』の皇室報道のていたらくぶり、女性週刊誌のかわらない蒙昧さ、あれはH編集長の出身母体ではありませんか。
ーーーーーーーーーーーーーー
国際戦略コラム NO.2895
中国の強硬外交で孤立へ
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
中国はチベット問題強硬策で、世界的な孤立に陥る。 Fより
中国は国内世論上、外交では強硬策を取ることが多い。
日本に対し てはギョーザの農薬混入問題で中国での混入を
否定し、韓国の在中 大使急死事件に対しても医療ミスを
否定している。また、チベット 自治についてもダライ・ラマと
の交渉を拒否している。独メルケル 首相がダライ・ラマと
会見しただけで、在中ドイツ企業が大きな不 利益を受け
ている。
このように、中国外交は独善的な強硬姿勢が強くて反中
感情を相手 国に与えている。
もう1つ、悪いことに中国はアフリカとの関係を強化して、
地下資 源や新規鉄道網を獲得しようとしているが、この
地域は伝統的にヨ ーロッパ諸国が多くの国に政治顧問団を
派遣して、旧満州のような 体制にした国家群である。
ヨーロッパ諸国のODAの大半は旧満州 体制と同様なアフ
リカ諸国への援助で、自国企業の資源や鉄道など の利権
を守るために行われている。
ここに、中国は意図せずに土足で上がりこんでいる。そして、
ヨー ロッパ諸国の利権を無効化するような政治行動や企業
行動を取って いるのだ。
米軍に対しては、太平洋の分割統治を提案するなど、中国の
軍事力 特に海軍力をアピールしているが、それは米ロの2大
軍事大国を警 戒させることになる。ロシアは中央アジア諸国と
共同経済同盟を結 び、中国の経済進出を阻んでいる。
特に中央アジアでのエネルギー 資源獲得についても
ロシアは中国に対して警戒し始めている。
このように世界第3位の経済大国になったことで、その力が
増して 、かつ自国経済を維持するために必要な資源も食料も
大量輸入する 必要になっている。中央アジアから資源が
思ったように獲得できず にアフリカや中東イランなどにシフト
したのであるが、ここでも問 題を起こしている。
また、中東、アフリカと中国を結ぶシーレーンを守るために、
海軍 基地をインド洋に数箇所を置いている。このため、インド
も中国を 警戒することになる。中国の周辺国家は、中国の
独善的な強硬外交 に辟易している。
ここで、8月の北京五輪前にチベット動乱を起こした。この
動乱の 裏にはダライ・ラマを支援する欧米諸国とCIAや
MI6がいると 思うが、しかし、中国の今までの強硬外交政策
で反中感情を多くの 国家が持っているために、この火の手は
時間が経つと共にだんだん 大きくなっている。ドイツ、日本や
韓国との強硬外交が裏目に出た ような印象を受ける。
8月の北京五輪を人質にEU諸国は、中国の人権問題を問う
方向で ある。その証拠にフランスのサルコジ大統領が率先
して、中国非難 をしている。独メルケル首相はおとなしいが、
開会式は出席しない と表明。それに対して、米ブッシュは
経済問題があり、現時点で中 国非難をしにくい。
フランスは一番アフリカに権益を持っていて、
その権益を侵されているのに中国でのビジネス規模は大き
くないこ とで中国非難をしやすい立場にいる。
中国を支持している国家は、反米国家群であり、ロシアを
除く主要 な国家は中国を支持していない。日本のように
音無しも支持した国 家にされている可能性はあるが、
名前が出ている国家ではない。
また、米国サブプライム問題も絡んで、上海株式市場の株価
は40 %も下落している。ここで、チベット問題が起きて、
外国企業の引 上げも増加するなど、その影響は広範に及ぶ
可能性が出ている。
中国政府系投資ファンドが米ヘッジファンドであるブラック・
スト ーンへ投資したが、それも大損をしている。ここで
米ポールソン財 務長官が訪中するが、追加の米ヘッジ・
ファンドか証券会社への投 資をお願いしに行くことになると
見ている。
米国はこのため、中国へ強く言えない状況になっている。
このため 、米国が担っていた人権の世界的な拡大を益々
EUが担うことにな っている。このように政治的な発言も
米国からEUに移っていくこ とになる。このように、現に覇権の
シフトが起こっていると見る。
さあ、どうなりますか??